広告投資検討表の変動要因
ここでは、広告投資検討表の見方と活用法を説明します。
まずは図96をご覧ください。
図96は広告投資検討表の全項目を掲載しています。ご覧のとおり、広告投資検討表の項目⑤から⑧で広告で集客した新規客の初回購入額(粗利)で広告コストをどの程度まかなえたか、その採算性を見ることができます。
そして項目の⑨から12は、広告で集客した新規客の1年間の予想購入額(粗利)で、どの程度、広告コストをまかなえるか、その採算性を見ることができます。
年間採算性の見方は簡単です。
年間採算性の数字が、100%以上であれば、1年間で広告コストの採算がとれることを意味します。反対に100%未満なら、1年間では広告コストの採算が取れないことを意味します。
そして広告投資検討表では、広告コスト、新規顧客数、購買単価、粗利益率、顧客回転数の5つのが入力項目です。
そのうち広告コスト購買単価と粗利益率の3つは、決まった数字を全行に入れます。
残り2つの項目である新規顧客数と顧客回転数の数字は変動します。つまり、広告投資検討表のシミュレーションでは、新規顧客数と、顧客回転数の2つの項目が年間採算性の数字を変動させる変動要因になります。
以上のことを頭に入れた上で、広告投資検討表の見方と活用法を説明しましょう。
【シミュレーション1】1年間で広告コストの採算を取るためには最低何人の新規客が必要か
はじめに広告投資検討表で1年間で100万円の広告コストの採算が取れる、新規顧客数と顧客回転数をみてみましょう。
そのための作業として、巻頭折り込み図81の広告投資検討表の中の項目、年間採算性の数字を大きい順にエクセルの並び替え機能を使って前列並び替えます。この並び替えの作業を行ったものが、巻頭折り込みの図97となります。
図の中の文字が朱色になっている部分が、年間採算性が100%以上のところ、つまり1年で広告コストの採算がとれるところです。
集客する新規顧客数が多いほど、顧客回転数が多いほど、採算がとれやすいことがわかります。
そして図97の中で緑色の四角で囲んだ部分をクローズアップしたのが、次ページの図98です。図98から1年で採算を取るためには。
最低百二十五人の新規客を集客して1年で2回転すれば1年で採算が取れる、そしてこの時のCPOが八千円
ということがわかります。2回転は10章でお話しする新規客のフォローをしっかり実践すれば難しくないので、この最低125人の新規客を集客して1年で2回転すれば1年で採算が取れるという仮説は実現星が高いと言えます。
次に、前ページ図98の青色で囲んだ①②③の行に注目してみましょう。
①は新規顧客数125人、顧客回転数2で採算(年間)が取れています。
②は新規顧客数120人。顧客回転数1.5で採算が取れていません。
③は新規顧客数130人、顧客回転数1、で採算が取れていません。
①と③を比べてみると、新規顧客数を5人多く集客しても、顧客回転数が2回転から1回転に減ると採算が取れません。
このように年間採算性は、新規顧客数と、顧客回転数という2つの変動要因の数字の組み合わせによって変わってlきます。
次に巻頭折り込み図97の中で、茶色の四角で囲んだ行の新規採算性の数字をみてください。
新規採算性が100.8%となっています。
新規採算性とは、広告によって集客した新規客の初回購入の粗利益額と広告コストを比較して、初回購入で採算がどれくらい取れているかをみる項目です。
そして新規採算性100%以上が新規客の初回購入の粗利益額で広告コストの採算がとれることを示します。
新規採算性100.8%の行の、新規顧客数は何人になっているでしょうか。
新規採算性100.8%の行の新規顧客数は240人となっています。
つまり新規客の初回購入の粗利益額で広告コストの採算を取るには、最低240人の新規客を集客しなければならない、そしてこのときのCPOが4000円
であることがわかります。
先の1年間で採算が取れる125人と比べると、2倍近くの新規集客をしなければなりません。新規客の初回購入の粗利益額で広告コストの採算が取れれば、投資したお金はすぐに回収することができますが、集客しなければいけない新規客の数が大幅に増えるので、ハードルが高くなります。初回購入で採算がとれるシミュレーションよりも1年ぐらいかけて採算を取るシミュレーションのほうが現実的でしょう。
【シミュレーション2】広告コストが変わると年間採算性はどう変わるか?
次に広告投資検討表の中の広告コスト150万円と50万円のケースでそれぞれシミュレーションをおこなって、それぞれの年間採算性をみてみましょう。
次のページの図99の上は、広告コスト150万円のケースで、年間採算性をみた表です。そして図99はの下は広告コスト50万円のケースで年間採算性をみた表です。
図99の上の表の見ればわかるとおり、広告コストが150万円のケースでは、
360人の新規客を集客して、1年で1回転すれば1年で採算が取れる、そしてこのときのCPOが4000円。
そして一番少ない新規顧客数で採算を取るには、最低185人の新規客を集客して、1年で2回転すれば1年で採算が取れる、そしてこのときのCPOが8000円
一方、広告コストが50万円のケースでは、
130人の新規客を集客して、1年で1回転すれば1年で採算が取れる。そしてこのときのCPOが4000円
そして1番少ない新規顧客数で採算を取るには、
最低65人の新規客を集客して、1年で2回転すれば1年で採算が取れる。そしてこのときのCPOが8000円
であることがわかります。
前述のシミュレーション1は広告コストが100万円のケースでしたが、広告コスト100万円で1年で採算を取るには、
最低125人の新規客を集客して、1年で2回転すれば1年で採算が取れる。そしてこのときのCPOが8000円
でした。
つまり広告コストが150万円であっても、100万円であっても、50万円であっても、1年で採算が取れるCPOと顧客回転数は同じです。
このように広告コストを変えても、購買単価、粗利益率、顧客回転数を変えなければ採算性は変化しません。
年間採算性に影響を及ぼすのは、購買単価、粗利益率、顧客回転数になります。
【シミュレーション3】最大許容CPOを設定しよう
実際に様々な広告をやりだすと、CPOが1年で採算が取れる範囲内に収まらないケースがたびたび出てきます。そういうことに備えて、あらかじめ自社として許容できる最大のCPOを決めておくと、CPOの幅が広がって、広告を継続しやすくなります。
自社として許容できるCPOを最大許容CPOといいますが、通常、ダイレクトマーケティング業界では、年間LTVの金額を最大許容CPOとする場合が多いおは、前述した通りです。
5年で売上100億円を超える広告投資シミュレーション表の1年目の年間LTVは1万二千円です。ここで、最大許容CPOを12,000円として考えた場合に、年間採算性がどうなるかをみてみましょう。
巻頭折り込み図81の広告投資検討表で、オレンジ色の四角で囲まれたCPO12,000円の行をみてください。
図81の広告投資検討表は、5人おきに新規顧客数を入力していますので、CPO12,000円になる新規顧客数を詳しく調べるために、エクセルで行を挿入して、新規顧客数八十一人から86人のケースもみてみます。
その作業を行った表が次ページ図100です。
ご覧の通り、CPO12,000円の場合は、新規顧客数は81人から86人集客する計算になります。
その中で現実的な回転数で、年間採算性が一番高いのが、新規顧客数86人、回転数2回、最大許容CPO12,000円で年間採算性が72.2%です。年間採算性72.2%というのは、16.6ヶ月で採算が取れる計算となります。
1年で採算が取れることは理想ではありますが、資金に余裕があれば、1年以上広告を継続し、新規客を集客して年間稼働顧客を増やしていくことも経営上、とても重要です。資金に余裕がある場合は、思い切って、最大許容CPOの12,000円までは広告投資を継続しましょう。
さらに図101をみてください。もし顧客回転数を2回から2.8回に上げれば、年間採算性は101.1%となり、1年で採算を取ることも可能です。顧客回転数は顧客フォローで上げることができますので、顧客回転数を上げて採算を鶴というアイデアも同時に考えるようにしてください。
いずれにせよ、広告投資検討表を使って、採算の取れるパターンと方法を可能な限り考えて、広告投資を止めることなく継続的に行いましょう。
広告投資と粗利益率の関係性
広告投資検討表では、粗利益率%の項目に商品の粗利益率を全行に入力していただきました。商品の粗利益率は商品制作の段階でほぼ決まってしまう重要な要因です。しかし、販売時になってようやく粗利を考えて値づけするような企業が多くみられます。しかしこれでは5年で100億円を達成することは絶対にできません。
なぜなら粗利益率によって広告投資の採算性が変わり、広告投資の量が変わってきてしまうからです。
本性の最後に粗利益率と採算性についてのシミュレーションを示して置きますので、粗利益率については、商品製作時に、しっかりと考えるようにしてください。
次のページ図102をご覧ください。
図102の上の表は、広告投資検討表のシミュレーションを使って、購買単価3000円、新規顧客数371人、広告コスト100万円という条件で、粗利益率を10%から90%に変化させて粗利益率ごとに、1年で採算を取るのに必要な顧客回転数を示しています。ここからわかるとおり、1年で採算を取るためには、
購買単価3000円、粗利益率80%の場合に必要な顧客回転数は1.2回
購買単価3000円、粗利益率30%の場合に必要な顧客回転数は3回
というように、同じ定価の商品であっても、粗利益率によって採算が取れる顧客回転数、つまりスピードが違ってくることがわかると思います。例えば3ヶ月に1回ほど購入するような商品であれば、新規客一人に月約6ヶ月ほど採算が取れるスピードが変わってきます。
つまり広告費として出したお金がすぐに回収できるかどうかが違ってくるということです。さらにその回収したお金を広告に再投資して事業を拡大できるかに粗利益率は大きな影響を与えます。
だからこそ、5年で100億円の事業をつくろうと思えば、粗利益率が高い商品を用意する必要があるのです。
さらに図102の下の表をご覧ください。今度は購買単価を4倍の12,000円として、粗利益率10%の場合の採算をみてみましょう。
ご覧のとおり、同じ新規顧客数の場合であれば、顧客回転数は2.3回です。購買単価12,000円の商品の場合、おそらく次回購入までには半年以上かかることもあるでしょう。つまり定価を高くすることが重要なのではなく粗利益率が高いということが重要なのです。
是非商品開発の段階から粗利益率が高い商品を作ることを心がけましょう。
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