【100億円マニュアル3】②5年で売上100億円を達成する商品の作り方【完了】

商品力を決定づける3つの要素

一口に「商品力」と言っても、経営者によって捉え方がバラバラです。まず「商品力」を決定づける3つの要素についてお話します。

私は人生の大半をロングセラー商品を意図してつくることに没頭してきましたが、その経験を踏まえ、10年以上ロングセラーでシェアナンバー1を保っている商品223個を調べた結果、商品力は図3で表したジグソーパズルのように、3つのピースから構成されることがわかりました。

図3では、3つのピースに「新カテゴリー」「商品コンセプト」「商品パフォーマンス」という言葉が書かれていますが、それぞれ何を意味するかは、次の通りです。

①新カテゴリー

商品力を決定づける1つ目のピースが、新カテゴリーです。新カテゴリーとは、既存のカテゴリーではくくることができない、既存カテゴリーの範囲外という意味です。よって、新カテゴリーの商品とは、お客様が「これは今までなかった新しい商品だ!」と認識してくれる商品ということになります。

一口に「新カテゴリー」と言っても、大きく3つのタイプに分けられます。1つ目は、市場そのものが存在していない新しい市場を作り出す革新的な新カテゴリー。例えば私が直接開発にあたった「カビキラー」は、擦らずにカビが取れるというカビ取り剤市場がなかった時代に発売したので、革新的新カテゴリーとなった商品です。ヒットしたあと他社が後発商品をいくつか出しましたが、27年たった今もシェアNo.1を保っています。

2つ目は、既存市場を塗り替えてしまうような市場代替的な新カテゴリーです。わかりやすい例がデジタルカメラです。以前は写真撮影にだれもがフィルムカメラを使っていましたが、デジタルカメラが出たことで、カメラ市場が一変しました。今もフィルムカメラは残っていますが、デジタルカメラがカメラ市場を塗り替えてしまいました。

一般に家電製品市場は、新技術を搭載した商品によって、一気に塗り替えられるケースが多いですが、技術の進化だけでなく、消費者のニーズをしっかり掴んだ画期的な売り物であれば、市場そのものを塗り替えることは可能です。

3つ目は、すでに市場はあるものの、その中でお客様が明らかな違いを認識してくれる、既存市場の隣に新しいポジショニングをおこなう棲み分け的な新カテゴリーです。例えば、女性化粧品の「塗るつけまつげ」はまつ毛を濃く長く見せるための化粧品「マスカラ」という市場の隣に、これはマスカラではない、ぬるまつ毛」という今までにない商品コンセプトで新カテゴリー化して、大ヒットしロングセラー商品となりました。

以上3つのカテゴリーを図に表すと、上の図のようになります。3つの新カテゴリーのタイプを比較して、どのタイプが1番収益が大きくなるかは、市場規模や売り物によっても違ってくるので、一概にいうことはできません。

言えることは、どのタイプもロングセラーになる、ということです。なので、これからウリモノをつくる場合には、革新的、市場代替型、棲み分け型のどのタイプでもいいでしょう、

いずれにしても重要なことは、新カテゴリーの商品でなければ、長く売れないということです。実はそのことが明確になったのが、私が57歳のときでした。私は28歳のときにサンスターで男性用トニックシャンプーを開発し、その後、別の会社にスカウトされて25個の新商品をつくりました。

このときすでに「お客様は二度評価する」「売れる商品は商品コンセプトと商品パフォーマンスの力が共に強い」ことはわかっていましたので、お客様の意向を聴きながら、25個すべて「商品コンセプト」と「商品パフォーマンス」の力が強いものをつくりました。

しかし結果的に私にとっての最初の大ヒット商品であるトニックシャンプーと同じようにロングセラーとなったのは、25個のうち10個だったのです。全てロングセラーにするつもりだった私は、当然、悩みました。ロングで売れるものと売れなかったもの、どこがどう違うのか。その違いをどうしても知りたくて、57歳にして大学院ドクターコースで3年間、調査研究を行い、ようやくわかったことが、

ロングセラーにならなかった商品は新カテゴリーの商品ではなかった

ということです。

たとえばロングセラーにならず5年で撤退した商品の一例は、タンク用シャットです。これは他社のヒット商品、タンク式推薦トイレ用溶鉱洗浄剤「ブルーレット」を改良したものでした。「タンク用シャット」は「ブルーレット」の、使い初めの濃いブルーの水が使っているうちに色が薄くなってしまうという消費者の不満を解消して、使ったあとの満足度を高くした物でした。したし、消費者が「これは明らかに違う!」と認識できる新カテゴリーの商品ではなかったのです。

このことから、商品上の問題を解決してもロングセラーにならない。つまり、ロングセラーになるかからないかは、商品の問題ではなく、顧客の問題を解決する新カテゴリーの商品であることが鍵になるのです。

BtoCであれば、顧客の生活上の問題を解決する新カテゴリー商品がロングセラーになりやすく、その中でも30年売れ続ける商品やサービスを、私は「新市場創造型商品=MIP(Market Initiating Product)と呼んでいます。

またBtoBであれば、ビジネス上の問題を解決する新カテゴリーのビジネスモデルが長期に渡って成功しやすく、30年反映し続けるビジネスモデルを「新市場創造型ビジネスモデル=MIBM Market Initiating Business Model と呼んでいます。

図3の3つのピースの中で「新カテゴリー」のピースが「商品コンセプト」と「商品パフォーマンス」よりも大きい理由は、「新カテゴリー」の商品でなければ、ロングセラー商品とはならないことを忘れてはいけないからです。

「商品コンセプト」と「商品パフォーマンス」の力がともに強い商品は世の中にたくさんありますが、ロングセラー商品になっているのは唯一、「新カテゴリー」の商品だけなのです。

つまり、新カテゴリーはロングセラーになるための絶対に必要な条件なのです。

かつて223の市場で10年以上シェアナンバーワンを保っている商品を調べた結果は、後発の類似商品つまり新カテゴリーでない商品が、1年以上シェアナンバーワンを保つ確率は、たった 0.5%、商品を200作って1つ当たるという確率です。

それに対して、新カテゴリーの商品だと、2つに1つ(50%)が10年以上シェアNo1を保ち続けます。この差はなんと100倍です。

もし、今準備している商品やサービスが、新カテゴリーの商品でなければ、ロングセラーにならず、売上が積み上がっていかない確率が高いです。

まずは新カテゴリーの商品かどうかを確認しましょう。そして今準備している商品が新カテゴリーの商品でなければ、商品コンセプトをつくりないましょう。

ゼロから革新的な新カテゴリー商品を時間がかかっても作りたいと思う方は、その方法を詳しく解説した前著30年売れて儲かるロングセラーを意図してつくる仕組みを参考にしてください。

②商品コンセプト

商品コンセプトは買う前に期待を与えて欲しいと思わせる力、初回購入を引き起こす力のことです。お客様が是非買いたいと思う魅力的な商品コンセプトであるかどうか、そのことが、長く売れる商品になるかどうかの成功の鍵を握っています。

駆け出しの頃、私は、食べて美味しいものは売れる、使っていいものは売れると考えていましたが、そうではなく、「食べる前」「使う前」に、食べたくなる、使いたくなるような商品でなければ売れないことがわかりました。

要するに、

売れるものは売れる前から売れると決まっている

売れないものも売る前から売れないと決まっている

ということです。

これまで勘を頼りに商品を作っていた人は、え、本当?とショックを受けるかもしれませんが、あきらかな事実なのです。

だったら売る前に、売れる商品か売れない商品がわかる方法があるの?という疑念の声が聞こえてきそうですが、実は、商品に対するお客様の気持ちや意見を聞けば、高い確率でそのことがわかるのです。それについては本書の3章でお話したいと思います。

100億ロケット・マーケティングでは、商品を売り出す前に、アンケートを使って、100人から1000人ぐらいのお客様の気持ちや意見を調査し、商品コンセプトの力、つまり、これから売り出す商品の商品コンセプトがお客様に是非買いたいと言ってもらえるようなものになっているかを見極めます。そして、その結果をみて、商品コンセプトの改良を行います。

もし「ぜんぜん買いたくない」というお客様が多い場合は、売り出しても売れない「商品コンセプト」ですから、出すだけ無駄だと言えるかもしれません。そういう場合は、いそがば回れです。一から商品コンセプトを作り直しましょう。これまでお客様の声を聞かずに、勘だけで決めて「えいや!」で商品を売り出していた会社にとって、この商品コンセプトを作るノウハウは目からうろこかもしれません。是非本マニュアルで身につけてください。そうすれば、何をつくれば売れるかが、売る前にわかるようになります。

③商品パフォーマンス

商品パフォーマンスは買った後に買う前の期待をかなえて「買ってよかった」と思わせる力、再購入や複数購入を引き起こす力のことです。

買う側のお客様の立場に立って考えるとよくわかりますが、買った後期待通りの商品でなかったら、「なんだ、がっかりした、期待はずれだった」と不満に思います。期待が大きいほど落胆が大きくなります。

当然ですが、買ってみてがっかりした商品は二度と買いません。買わないだけでなく、その製造元や販売元に対して悪いイメージを保ちます。企業に取ってはブランドイメージを下げることになります。

加えて、商品パフォーマンスの力が弱いと、リポピートや複数購入が起こらないので、当然売上が積み上がって行きません。

この商品パフォーマンスについても「商品コンセプト」と同様、率直にお客様の声に耳を傾けて改良していきます。「商品コンセプト」と違う点は、「商品パフォーマンス」は買ったあとの商品の良し悪しですから、実際にその商品をお客様に使っていただいた上で調査をし、「非常に満足した」という人の割合を増やして行くことになります。

ところで、なぜ、商品コンセプトと商品パフォーマンスが長く売れる商品をつくる上で大事かというと、

お客様は買う前と買った後の二度評価する

からです。これは世界共通、人がものを買うときの真理です。売れ続ける商品は、お客様が買う前に買いたくなるような魅力的な商品コンセプトであると同時に、買った後も満足できる商品パフォーマンスであること、つまり、「商品コンセプト」と「商品パフォーマンス」の力がともに強いことが求められるのです。これは、あくまでもお客様の意向に基づいたものです。大事なことは

聞くべき相手はお客様、見るべき相手はお客様

ということです。

そもそもマーケティングとは、売れる商品をつくり、それをいっそう売れ続けるようにするためのお客様の深い理解をベースにした理論と手法である、と私は定義します。

このように定義しないと、売れる商品を作り、いっそう売れるような施作や仕組みにつながらないのです。マーケティングに限らず重要な経営判断をお客様のニーズや意向を基準にして決める会社は強いのです。

 

 

たった1枚のアンケートで未来の売上がわかる!

さて、「新カテゴリー」と「商品コンセプト」と「商品パフォーマンス」の3つのピースに関するお客様の声を把握するのに有効なのが今からご説明する梅沢式アンケートです。

このアンケートは私の消費研究50年の経験から導き出されたアンケート手法です。「消費者の心を読み解くにはどうしたらいいのだろうか?」と何度も失敗しながら試行錯誤を続けてきた結果、このアンケート法で間違いない!と確信をもったアンケート法を、本マニュアルで初公開します。

このアンケート方は、どの業種・業態であっても使えるアンケート法ですから、明日から、あなたの会社でも使っていただけるでしょう。このアンケート法を使い、お客様のニーズを把握することから100億円商品の開発は始まります。このアンケート法は、実は未来の売上予測にも使える優れた方法です。つまり、

たった1枚のアンケートで未来の売上までもわかる

ということです。

アンケートの取り方については、3章で手順を示しますが。インターネットが普及した現在、アンケート調査の壁はとても低くなっています。市場調査会社に依頼しなくても、自社で簡単にできる状況となっています。

かつてアンケート調査と言えば、調査員が各家庭を訪問するというスタイルが多く一千数百万円からの費用がかかりました。それが今、調査員による訪問調査は減り、市場調査会社に依頼しても、インターネットを使った調査が主流で、数十万からできるようになりました。

それどころか、顧客のメールアドレスを保持している会社であれば、市場調査会社に依頼せずとも自社で作成したアンケートをウェブ上で公開して簡単に実施できます。

例えばグーグルフォームやサーベイモンキーを使えば、無料でアンケートを作成して、無料で回答が届き、集計も自動でやってくれます。

今まで一部の大企業だけが実施していた市場調査が中小企業でも簡単に実施できる時代となったのです。

 

50年間秘匿してきた売上予測法「フォームラーS」とは?

アンケートを使った商品コンセプトテスト、商品パフォーマンステストを行い、満足できる結果がでましたら、いよいよ売上予測の計算式を使って商品の力を測ります。

私が50年にわたり使ってきた売上予測の計算式フォーミュラーSはこれまで主に大企業で開発された新商品の売上予測に使ってきました。予測した商品の数を数えたことはありませんが、おそらく300は超えていると思います。そして予測したものは必ず結果が出ますので、現実の売上との差を縮めるために、予測と同時に改良も進めてきました。

ここで私が予測した商品名をあげれば、多くの方が、これも知っている、あれも知っている、家で使っているよとおっしゃることでしょう。依頼企業と守秘義務契約を結んでいるため、全ての商品名を明かせませんが、許される範囲でいえば、アサヒスーパードライ、R-1、明治おいしい牛乳、サンスターGUM、使い捨てカメラ写ルンです、禁煙パイポ、筆記用具お名前スタンプ、補正下着スタイルアップパンツ、天ぷら油処理剤固めるテンプルなどがあります。

そもそも私がフォーミュラーSを考案した理由は、私地震が開発した新商品を成功っせたかったからです。成功という意味は、長く売れる大ヒット商品にしたかったということです。そのためには、広告宣伝を欠かすことができません。

商品がどんなに素晴らしくても、積極的に広告宣伝品しなれば売れないのです。それは100億ロケット・マーケティングが主張するところです。

多くの企業が、商品を打ってみて、売れたら広告を積極的にやろうと考えますが、そのやり方だと売上が天までのびません。特に新カテゴリーの商品は、顧客にその商品が何であるか、どんなに良いかを告知しない限り、商品の存在さえ知ってもらえず、売上目標に届かないことが経験上とても多かったのです。

しかし、作った商品がどれくらい売れる可能性を持っているのか、それを数字で確認しない限り、経営者としては、積極的に広告宣伝をやるという決断はできません。

私が売上予測を始めたのは、開発責任者として商品がもつ潜在的な力を数字で示して、少しでも多くの広告予算をとりたかった、というのが最初の動機でした。

そして、コンサルタントとして独立したあとは、大企業から商品開発を依頼されるようになり、同時にフォーミュラーSで売上予測もおこなってきました。商品開発と売上予測は一体です。これまで「フォーミュラーS」を公開してこなかったのは、依頼された大企業から多額の計算料金をいただいていたからです。

しかし今回、フォーミュラーSのダイレクトマーケティング版のフォーミュラーVを公開したのには理由があります。

それは今後、中小企業が中心となって新たなマーケットを創造し、成長するような新収益源を作り出さなければ日本のさらなる成長は難しいと考えるようになったからです。

さらにこれからは直接、企業も消費者に繋がる時代ですから、昔のように問屋に卸す販売モデルではないダイレクトマーケティング(直販)モデルのフォーミュラーの重要性が増してきたからです。

私の指導の軸足もこの10年で大企業から中小企業へと徐々にシフトし、中小企業の皆さんと今も試行錯誤を続けています。中小企業が画期的な新カテゴリー商品を開発し、新しいマーケットを創造していくためには、売上予測法が必ず必要になります。その想いから本マニュアルで初公開することにしました。

 

ダイレクトマーケティング版の売上予測法フォーミュラーV

ダイレクトマーケティング版フォーミュラーVは、今までの卸販売で必要だった配荷などの複雑な要素は排除してシンプルな形にしています。と言っても、計算式の根本的な構造は同じです。

ただし、実際の売上数字と大きく乖離しないようにするには、様々な仮説を立てる必要があります。ですから予測を行った経験の差はどうしてもでます。また業界によっては特有の要因もあります。

しかし、仮説と検証を重ねていくうちに、精度は高まっていきますので、各社でそのノウハウを蓄積していけばいいでしょう。具体的なフォーミュラーVの使い方は事象でわかりやすく解説しますが、まず売上予測とはどういうものか、簡単に説明しておきます。

まず誤解が内容に言っておきたいのは、売上予測は、ずばりこの商品は●億円売れます!というような条件なしで1つの金額を掲示する桃ではないということです。

商品が売れる要因はいろいろあって、売り出してみないとわからない要因もあります。計算式の中に入れる要素は6つから8つ。先に述べたアンケート調査によって得られた数字も計算式に入れます。

例えば、要因の1つが●%であれば売上●億円、△%だったら△億円というふうに、要因のパーセントごとに売上高を算出していきます。そういう意味では、シミュレーションという言い方が一番あっていると思います。

計算式そのものは掛け算で高等数学は一切使いません。やり方さえ別れば、電卓で簡単に計算できます。

ところで、なぜ売上予測が必要かと言えば、先に述べたように、新商品に対してどれくらいの規模の広告投資が可能かを測るためでした。

広告には大きなお金が必要でえ、投資する前にその商品が潜在的にどれくらい売れる可能性を持っているかを数字で知る必要があり、資本が潤沢な大企業でも売上予測をやった上で莫大なお金を広告に投下しています。

もう一つ、売上予測が必要な理由として、生産量の根拠をもって決められることに加えて、シミュレーションを行う家庭で、売上を最大化するために、マーケティング上、何をすべきかがわかります。そのやるべきことをしっかりやるかどうかで売上は大きく違ってきます。

つまり売上予測はいくら売るためにはどうするかを考えるための道具でもあるのです。

 

 

競合会社から依頼された売上予測

ここで、これまでw足しが依頼されておこなった売上予測の中で特に印象に残っている事例を2つ、参考までにお話しましょう。1つ目は、30年以上前に大ヒットして、一斉を風靡した辛口ビール、スーパードライのケースです。

スーパードライは経営不審に陥っていたアサヒビールが再起をかけた新商品でした。面白いのは、このビールの売上予測を依頼してきた依頼主は、発売元のアサヒではなく、競合するX社だったことです。X社はアサヒが新しい商品コンセプトのビールを売り出すという情報を事前に得て、私に予測の依頼をしてきたいのです。

私はこの商品がこれまでにはなかった新カテゴリーのビールであることを確認した上で、すでに発売直後でしたので商品現物を入手し、それを下に商品コンセプト調査と商品パフォーマンス調査を行い、フォーミュラーSを使って計算しました。その結果はX社の想像をはるかに上回るものでした。X社の担当者はその数字をみて、梅沢先生、この数字は本当ですか?信じられないとしばらく茫然としていました。

結果的にこのビールは私の予測どおりになりました。いや、予測以上にうれました。予測を上回った理由は店頭配荷率と告知力をかなり低くみていた生でした。しかし、X社もさるもの、私の予測を聞くや否や、すぐに対応する新商品の開発に着手したのです。

今まで大企業のいろんな新商品の売上予測をフォーミュラーSで計算してきましたが、競合他社の予測にも使うことができるのです。

 

失敗したインドでの売上予測

もう一つは、失敗したケースです。依頼主は、インドの財閥の1つ、モディグループのゴッドフリー・フィリップス・インディアです。ゴッドフリーは、インドで第二位のタバコ会社ですが、タバコを長く見せるパイプ、パイパーという新カテゴリーの商品を発売するにあたっての売上予測でした。インドではタバコの長さがひとつのステータスシンボルで、安くて短いタバコしか吸えない喫煙者をターゲットにした商品でした。

インドでタバコを吸う人対象にアンケート調査を行い、その結果は、是非買いたいと答えた人が多い商品とわかりました。私は日本人を対象にしたときと同じように、アンケートから得られた「ぜひ買いたい率」を計算式に入れて予測しました。すると、私の予測を大きく下回る結果となったのです。私は肝を冷やしました。

あとでわかったことは単純なことで、インド人は、ぜひ買いたいと答えても、お金がないので買えない。インドの人々は、お金がなくてもぜひ買いたいと答える国民性だったのです。そのことがわかってからは、インドで発売される商品の予測はあたり続け、名誉挽回できてほっとしたことを覚えています。

ですから、新商品を日本と韓国以外の国で売る場合、その国の国民性と一人あたりGDPを考慮して計算しなければならないことが経験上わかっています。

本書で提示するダイレクトマーケティング版「フォーミュラーV」の計算式は、日本または韓国で販売する商品を想定していますので、そうでない場合は計算の仕方が変わってくることを予め申し上げておきます。

 

売上を最大化する最後の決め手「商品コンセプト」

売上予測シミュレーションをおこない、いよいよ発売の目処がたってきたあとは、最終的な商品名や、パッケージに記載する、お客様が買いたくなるようなキャッチコピーや商品説明、デザインなどの表現コンセプトを決める段階です。

どんなに良い商品でも、魅力的なネーミングやキャッチコピーをつけなければ、広告の質が下がります。広告の効果は、広告の質×広告の量で決まりますので、広告に大金を投ずることができない中小企業はとくに、広告の質をあげるために、ネーミングやキャッチコピー、デザインなどの表現コンセプトを疎かにできません。

特に新カテゴリーの商品は類似商品がないので。お客様にこの商品は今までになかった新しい物だ!これこそ前から欲しかった物!と瞬時にわかってもらう必要があるので、たんに覚えやすいとか、語感やひびきがいいというだけでは不十分です。できるだけ短い言葉で「その商品が何であるか」「どう良いのか」をイメージさせる必要があるのです。

そのため、新カテゴリーの商品は、商品名とは別に新カテゴリー名を考える必要があります。

具体的には、商品名、新カテゴリー名、キャッチコピーなどを決める段階で、何がどう伝わるのかの表現テストを社内でおこないます。ひと言で言えば、記憶テストです。このテストは簡単に実施できますが、広告調査をするよりも効果的です。

いい商品さえ作れば売れるものと考える経営者が多いですが、最終的な表現コンセプトの良し悪しで、売上が大きく違ってきます。つくり上手の売り下手の多くが、安易に表現コンセプトを決めているか、社外のクリエイターや広告代理店に丸投げしています。しかし表現コンセプトは売上を左右するものだけに、そのノウハウを自社で蓄積する必要があります。

本来は、お客様の声を聞きながら、自社でネーミングやキャッチコピーなどの表現コンセプトを作るべきです。クリエイターには、あくまでも自社で決めた表現コンセプトをわかりやすく伝えるイラストやデザイン、あるいは映像を作ってもらえばいいのです。詳しくは5章で説明します。

ここまできたら、いよいよ発売です。すでに売上予測シミュレーションで商品がどれぐらい売れるのかの可能性も数字でつかんでいることと思います。次はその新商品をロケットに積んで、軌道に乗せるべく、強力なエンジンで空高く飛ばすことになります。

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