アンケートの回答が手元に届きましたら、いよいよ分析してみましょう。
100億ロケット・マーケティングでは、次に上げる3種類の分析を行っていただきます。
1.基本分析
【基本分析ステップ1】ぜひ買いたい率を算出する
【基本分析ステップ2】価格の許容性みる
2.商品の魅力分析
【商品の魅力分析ステップ1】是非使いたいと答えた人の商品理由から商品の魅力を明らかにする
【商品の魅力分析ステップ2】ぜひ使いたいと答えた人の自分理由から商品の魅力を明らかにする
【商品の魅力分析ステップ3】意向なしの人の商品理由から商品アイデアの改良ヒントをみつける
【商品の魅力分析ステップ4】意向なしの人の自分理由から除外ターゲットを見つける
3.顧客属性分析
【顧客属性分析ステップ1】属性分析から商品の顧客ターゲットを明らかにする1
【顧客属性分析ステップ2】属性分析から商品の顧客ターゲットを明らかにする2
【顧客属性分析 補足】使用意向の理由を加えて仮説を検証する
ではひとつひとつ説明しましょう。
1.基本分析
【基本分析ステップ1】ぜひ買いたい率を算出する
1番はじめに、売上予測式フォーミュラーVの計算式に入れるぜひ買いたい率を計算します。ぜひ買いたい率は売上予測の計算式に入れる、とても重要な数値です。
次ページ図12に示した、1粒満腹菓子のアンケートの結果の例で説明しましょう。
図にある質問3がアンケートの購入意向の質問です。矢印の下は、アンケート結果の集計と是非かいたい率の計算式を明記してくれます。
ここでは、29人が是非買いたいと答えてくれました。回収したアンケートが154サンプルですから、29を154で悪と19%と算出できます。
この例では、ぜひ買いたい率は19%という結果になりました。
新カテゴリーの商品で是非買いたい率が30%以上であれば、商品は大ヒットする確率が高いです。反対に、企業によってばらつきがあるものの、是非買いたい率が20%未満の場合は、商品コンセプトを改良したほうが無難です。
1粒満腹菓子は、ぜひ買いたい率が19%なので、商品コンセプトなどの改良が必要です。
【商品の魅力分析ステップ1】以降で改良のやり方を説明します。
【基本分析ステップ2】価格の許容性みる
次に質問1の使用以降の回答結果と、質問3の購入意向の回答結果から、アンケートに提示した価格が打倒であったかどうか、いわゆる価格の許容性を分析します。
1粒満腹菓子のアンケートで提示した価格は6個入り六百円です。次ページ図13にあるとおり、1粒満腹菓子の使用意向の質問で、是非食べたいと答えた人と食べてみたいと答えた人を足した人数は131人でした。
続いて、購入意向の質問で是非書いたいと答えた人と、買ってみたいと答えた人を足した人数は77人でした。このBの人数をAの人数で割った数値で、提示した価格が妥当であったかを判断します。判断する時の原則は、
B÷Aが70%以上であれば→許容できる価格である
B÷Aが70%未満であれば→許容できない価格である
となります。つまり、商品の使用意向を示した人が、価格を提示されてどれだけ購入意向を示したか、その割合をみて、使用意向を示した人の70%以上の人が購入意向を示した場合は、許容できる価格、70%未満の場合は、許容できない価格であったと判断します。1粒満腹菓子の使用意向率85%という高い比率に対して、購入意向率19%という低い比率にも表れていて、使用意向率が高いにもかからわず、購入意向率が低いのは、価格をみて、高いから買わない(買えない)と思った人が多かったという理由が考えられます。
このように、許容できない価格である場合は、使ってみたいと思ったものの、この価格を払う程ええはないという理由が圧倒的に多いです。つまり、その価格に見合うほどの商品コンセプトの魅力はないことを示しています。
もう一つ、非常に稀なケースですが、使ってみたいと思ったものの、価格が安すぎて、こんなに安くて品質は大丈夫なの?と不信に思う人が多かったために、許容できない価格となる場合があります。
どちらに該当するかは、商品の魅力分析ステップ3の意向なしの人の理由を分析すればわかりますが、1粒満腹歌詞の場合は、品質を疑問視した意見はほとんどなかったので、6個入りで600円、1粒100円という価格が高いと思った人が多く、購入意向率が低くなったと考えられます。
提示した価格が高いとわかった場合は、改良として価格を下げるのが1番簡単です。しかし100億ロケット・マーケティングでは粗利7割以上の商品であることが条件ですので、安易に価格を下げるわけには行きません。価格を下げずに、いかに価格の許容性を上げるかを開発チームは知恵を絞って考える必要があります。
2.商品の魅力分析
【商品の魅力分析1】
是非使いたいと考えた人の「商品理由」から商品の魅力を明らかにする。まず図14をご覧ください。図14にある【質問2】では、1つ前の質問1のぜひ使いたい、使ってみたい、どちらともいえない、あまり使いたくない、ぜんぜん使いたくないのいずれかの回答に対し、その理由を書いていただきます。
質問1で是非使いたい、使ってみたいと答えた人は意向ありの人で、質問2で使用意向の理由を書くことになります。どちらともいえない、あまり使いたくない、ぜんぜん使いたくないのどれかを選んだ人は意向なしの人で、非使用意向の理由を書くことになります。
ここでは、ぜひ使いたいと考えた人の理由から魅力分析を行います。実務の現場では使用意向の理由として、是非使いたいと答えた人が多い場合には、ぜひ使いたいと答えた人の理由を中心に分析を進めていきます。ただし商品コンセプトによっては、是非使いたいという回答が少ない場合もあるでしょう。その場合には、使ってみたいと答えた人の理由も加えて分析をしてください。
本書は、是非使いたいと答えた人が多いケースとして、ぜひ使いたいという理由だけで分析します。分析にあたって、ぜひ使いたいと答えた人の商品理由を分類する簡単な作業をおこなっていただきます。作業の流れは図15のとおりです。
実際にアンケート調査をおこなって、回収したサンプルを使って、開発メンバー全員でこの作業をやっていただくのが、1番わかりやすいですが、まずは、この作業の流れをマンガでみていただきましょう。
いかがでしょうか。さらに漫画で見てもらった作業を詳しく説明しましょう。
まずはじめに回収したサンプルを質問1で是非使いたいと答えた人のサンプルと、それ以外の回答をした人のサンプルの2つに分けます。
次にぜひ使いたいと答えた人のサンプルに書かれた、是非使いたいと答えた理由を1つの表にリスト化します。リスト化にあたっては、エクセルを使えば便利です。
例えば、1粒満腹歌詞のアンケート調査で是非食べたいと答えた人の理由をまとめたら、次ページ図16のようになりました。
1粒満腹菓子のアンケートでは、ぜひ食べたいと答えた人が83人いました。表にまとめると、83個の様々な使用意向理由が並びます。中にはまったく同じ内容のものもあります。
次のそのリストを見ながら、開発メンバー全員で分担して、リストに書かれている理由をカードに書き写します。
このとき、1枚のカードに1つの理由を書くようにしてください。
例えば、図16の中の8番目の理由は、太る心配もなくお腹を満たせるお菓子ということに興味がある。濃厚なペーストというのも美味しそうです。
この人は是非食べたいの理由を2つ上げていますので、カードは2枚作ります。中には長文でたくさん理由を書いている人がいますので、カードが3万以上になることもあります。
この作業もエクセルでできますが、開発メンバー全員で分析のやり方を共有したほうがいいので、カードを使って作業をすることをおすすめします。1粒満腹菓子で言えば、83の使用意向理由をカード化して、カードの枚数は133枚となりました。
次にカード化された理由をひとつひとつ見ながら、カードを商品理由と、自分理由に分けます。
商品理由とは、商品を主語にして語られた理由のことです。例えば、商品が●●だから使いたいという理由は商品理由となります。
一方、自分理由は、自分を主語にして語られた理由のことで、私は、●●だからこの商品を使いたいという理由が自分理由となります。
例えば、図16の1番目の人の理由は、体に良い素材で体の中からきれいにしてくれるからというものですが、この理由は、体に良い素材で、体のなかからきれいにしてくれるからとなりますので、商品を主語にして語られた商品理由となります。
そして図16の10番目の「すぐお腹が空いてしまって、食べたくなるので」という理由は、私が が主語になりますので、自分理由となります。
ところで、なぜ商品理由と自分理由に分けて分析するかと言えば、商品コンセプトを見た瞬間に欲しい!と感じるニーズの強さや内容が、自分理由と商品理由を分けることで鮮明になるからです。
自分理由の数が多いほど、優れた商品コンセプトだということを示しています。これは、私が分析を重ねる中で発見したことですが、自分理由が多いということは、顧客が商品コンセプトに触れただけで、自分の悩みや実態に気づくことができた証拠です。
つなりそれだけ力強い商品コンセプトだということなのです。
ですから自分理由が多いほど、商品コンセプトが魅力的で、商品がヒットする確率が高くなります。実際にアンケートをとっていただくとわかりますが、自分理由は、商品理由と比べると圧倒的に数が少ないです。商品によってはゼロの場合もあります。
ここでは先に商品理由を分析しますので、自分理由のカードは別においておき、商品理由が書かれたカードを同じ理由ごとに集めてグループ化します。
そのグループ化が終わりましたら、理由ごとにカードの枚数を数えて、リスト化します。このとき理由が多かったもの順に表にまとめます。
1粒満腹菓子のアンケートで、グループ化した商品理由をリスト化したものが前ページの図17です。ちなみに図17の中のポイントとはカードの枚数のことです。
次にグループ化した理由を眺めて、さらに同類としてまとめらないかを検討し、上位3つの理由にまとめます。例えば、図17の1番目と13番目、2番目と6番目、そして4番目と5番目などは理由として同類なので、さらに1つにまとめて、最終的に多い理由上位3つが、図18のようになりました。
ご覧の通り、1粒満腹菓子をぜひ食べたいと答えた人の商品理由で一番多いのが、みたらし味、大福味、カレー味が楽しめて美味しそうと、太る心配がなくダイエットにいい。3番目が1粒で満腹になれるという結果になりました。
次に上位3つの商品理由を1つの文章にまとめます。1粒満腹菓子の場合は、図18の上位3つの理由を文章化して、
太る心配がなく、美味しく1粒で満腹になれて、満腹感が持続できる
となりました。これ以外にも組み合わせ方によっていろいろな文が考えられますが、一つの例としてあげました。ところでこの文章あなんであるかと言えば、是非食べたいと答えた人の上位3つの商品理由で作った文章ですから、商品の魅力が具体的に述べられている文章です。
ここで、アンケートの作成手順1で説明した、商品コンセプトの顧客に与える効用・便益を思い出してください。
顧客に与える効用・便益とは、商品がどう良いかの商品の魅力を示すものでした。1粒満腹菓子のアンケートでは、顧客に与える効用・便益として、太る心配なく、食事と食事の空腹感を満たせるを提示しました。しかしこれは開発メンバーが考えた仮説の商品の魅力です。
そして実際にアンケートをとったことによって、太る心配がなく、美味しく1粒で満腹になれて、満腹感が持続できるが、1粒満腹菓子の具体的な消費者視点から見た魅力だとわかりました。
したがって、上位3つの商品理由から作った文と仮説の「顧客に与える効用・便益」を比べて違った場合は、アンケートから得られた商品の具体的な魅力を顧客に与える効用・便益とします。これが効用・便益の改良です。
もし仮説と同じであった場合は、改良の必要はありません。1粒満腹菓子の例では、仮説と少し違っていたので、アンケートによって得られた、太る心配がなく、美味しく1粒で満腹になれて、満腹感が持続できるに変更したほうが良さそうです。
大事なので繰り返しますが、
お客様は、顧客に与える効用・便益のこの商品を買えば〜できるということに対して、お金を払って商品を買ってくれます。
この〜できるがお客様にとって魅力的かどうでないか、それによって売れる商品かどうかが決まるので、提示する顧客に与える効用・便益の内容はとても重要です。
また5章でお話しますが、この顧客に与える効用・便益から、商品がどう良いのかを短い言葉で示す梅澤式のキャッチコピーを作ります。商品のキャッチコピーは広告の質をあげるためにとても重要です。その顧客に与える効用・便益の改良ヒントを、是非使いたいと強い意向を示した人の商品理由から見つけるのが、ここでの手順となります。
【商品の魅力分析ステップ2】ぜひ使いたいと答えた人の自分理由から商品の魅力を明らかにする
次に、是非使いたいと答えた人の自分理由を分析します。分析に当たって、先の商品の魅力分析ステップ1で行った、理由をカード化して商品理由と自分理由に分けた自分理由のカードから、自分理由だけを集めた表を作り、リスト化します。
ちなみに、自分理由を書いたカードがすでにあるから表にする必要はないのでは、と思う人もいると思いますが、アンケートの分析は、分析経験を重ねるほど精度が上がっていきますので、商品ごとにきちんと記録を残す意味で、表を作り管理します。
1粒満腹菓子のアンケートで是非食べたいと答えた人の自分理由をまとめた表が、次ページの図20です。ご覧の通り、私は●●だからという理由で、食べたい理由を述べています。自分理由かどうか判断しにくいものは省いたほうがいいでしょう。
先に述べた通り、自分理由が多いほど、提示した商品コンセプトが魅力的であったといえます。1粒満腹菓子の例で言えば、商品理由が71個で自分理由が9個、全体の11%が自分理由ですので、十分にいいスコアと言えます。
この自分理由の分析についても、先の商品魅力分析ステップ1と同じように、理由のグループ化を行い、理由の多い順に3つ並べてください。1粒満腹菓子で自分理由で多かった3つの理由が図21です。ご覧のとおり、1粒満腹菓子を是非食べたいと答えた人の自分理由で、多かったのは、食欲を抑えられない、すぐにお腹がすくので、ダイエットしているので、の3つです。
この3つの要素を商品コンセプトの顧客に与える効用・便益に付け加えるかを検討します。
先の商品魅力分析ステップ1の結果から、顧客に与える効用・便益は、太る心配がなく、美味しく1粒で満腹に慣れて、満腹感が持続できるに変更しました。
さらにここでの結果から、太る心配がなく、美味しく1粒で満腹に慣れて、満腹感が持続できるに、食欲を抑えられない、すぐにお腹がすくので、ダイエットしているので、の要素を付け加えるべきかどうかを検討します。
しかし、すでにこれらの要素が含まれている場合には、改良の必要はありません。1粒満腹菓子の例では、さらに改良する必要はないでしょう。
そのほか、是非使いたいと答えた人の自分理由から、想定外の顧客ターゲットが見つかる場合があります。1粒満腹菓子の場合は、食欲を抑えたい人、すぐにお腹がすく人、ダイエットしたい人がターゲットであることがわかりました。しかしこれは想定内のターゲットで、新たな発見ではありません。
しかし商品によっては、想定外の顧客ターゲットが明らかになることがあります。想定外のターゲットにも商品が売れることがわかれば、当初のターゲットを変更します。
以上が意向ありの人の理由の分析です。
次から意向なしの人の理由の分析に入ります。
【商品の魅力分析ステップ3】意向なしの人の商品理由を分析する
意向なしの人とは、質問1の使用意向をお聞きする質問で、どちらとも言えない、あまり使いたくない、全然使いたくないと答えた人のことです。そして、【質問2】で使用意向なしの理由を具体的に書いてもらいました。
まず意向なしの理由ですが、そもそも意向のない人の理由ですから、少数であれば無視してもいいのですが、場合によっては、意向なしの商品理由から商品アイデアの改良ヒントを探します。ここで説明します。
そもそも商品アイデアとは、商品コンセプトを構成する要素の1つで、顧客に与える効用・便益を実現させるアイデアのことでした。まず商品の魅力分析ステップ1でやったのと同じように、意向なしの人の理由を1つの表にリスト化します。1粒満腹菓子のアンケートで意向なしと答えた人の理由をまとめた表が、次ページの図22です。
1粒満腹菓子では、どちらともいえない、あまり食べたくない、全然食べたくない、と答えた人が、23人いました。ですから、意向なしの理由は23個ありますが、図22では紙面の関係で14個だけ掲載しています。
次に23個の理由をカード化して、商品理由と自分理由に分けます。分け終わった自分理由のカードは別に置いておき、ここでは、商品理由のカードをさらにグループ化し、理由の多い順に並べます。
1粒満腹菓子で意向なしの人の商品理由を多い順に並べた表が、次ページの図23です。さらに同類の理由をまとめて、上位3つ選んだものが、図24です。
1粒満腹菓子の場合、意向なしの理由上位3つは、味が好みではない、美味しくなさそう、植物由来成分がよくわからないので不安となりました。言い換えれば、この3つの理由で、多くの人が1粒満腹菓子をどちらともいえないも含めて、食べたくないと答えたのです。
ここで注目しなければならないのは、植物由来成分がよくわからないので不安という理由です。この内容は提示した商品コンセプトに対して、信じられない、信頼できないというものです。つまり、1粒満腹菓子のアンケートに提示した満腹中枢を刺激する香りと、胃で10倍に膨れる植物由来成分を入れるという商品アイデアを信じられないといっているのです。そもそも、
売れる商品コンセプトとは、魅力的であることはもちろん、それに加えて信頼できる物でなければなりません。
ですから、開発メンバーは、植物由来成分をより信じられるものにするにはどうするかを検討する価値はあるでしょう、そのほか権威ある研究所のお墨付きをもらうとか、国や次自体、業界団体などが製品の安全や品質などについて企画や基準を定めたマークを取得するとか、信頼性を高める方法を考えます。例えば、植物由来成分の成分名を明記したりします。
しかし信じられない、信頼できないといった少数の意見を聞いて、へたに商品コンセプトを変更して、逆に使用意向率を下げる結果になる場合があるので注意が必要です。あくまでも納得できる理由なら採用して、アイデアの改良に使いましょう。
また味については、バラエティがあって半生で美味しそうだから、是非食べたいと答えた人が多いので、召集の意向のない人の味についての意見は無視してよさそうです。
1粒満腹菓子の場合、ダメだから改良するというのではなく、さらに美味しくするにはどうするかという観点から検討すればいいでしょう、
【商品の魅力分析ステップ4】意向なしの人の自分理由から除外ターゲットを見つける
続いて意向なしの人の自分理由も分析します。それによって、主に除外すべき顧客ターゲットのヒントが見つかります。次ページの図25は、1粒満腹菓子を「どちらでもない」を含め、食べたくないと答えた意向なしの人の自分理由を表にまとめた物です。たったの3つしかなかったので、グループ化する必要はありません。この3つの理由をひとつ一つ読むと、いろんな理由をあげて食べたくないといっています。
1粒満腹菓子の場合、たった三人ですが、食べたくないと行っています。これらの自分理由から除外ターゲットを想定します。ダイエットに関心が薄い人、および、満腹感を満たすためにお菓子は食べない人、および、間食にはカロリーのあるものを避けている人となります。
ところで図25の1番目に書かれている自分理由の食事と食事の間にカロリーのあるものを食べると、ダイエット効果が落ちるに注目してみましょう。
この1番目の人の認識は過去の話で、適度な感触は極度の空腹による食べすぎや血糖値の急上昇を防いでダイエットに効果があることが証明されています。もしこの理由を上げた人が大勢いる場合は意識喚起メッセージを作って、今行っている方法に問題があることを気づかせる必要があります。
意識喚起メッセージの作り方は、5章で詳しく説明しますが、例えば、私が開発した風呂釜洗いのジャバという商品は、発売前に市場調査を行った結果、是非書いたい率が低く、0.4%という数字では商品化は難しい状況にありました。
意向なしの人の自分理由の多くが、私はホースを釜に突っ込んで洗っているので必要ないというものでした。
しかし実際にはホース洗いでは風呂釜の汚れは落ちません。そこでホース洗いでは、風呂釜の汚れは落ちないことを意識喚起させる必要があると考え、意識喚起メッセージを加えて、再度アンケート調査をおこなったところ、是非書いたい率が38%へ跳ね上がりました。
覚えている方もいるかと思いますが、奥さん、まだホース洗いやってんの?から始まり、ホース洗いにしても最近だらけの風呂釜の内部の映像と、Javaを使うと浴槽にドバーッと汚れが出てくる映像のテレビコマーシャルを流し、ジャバは大ヒット商品となりました。
このように意向なしの人の自分理由を分析すると、除外すべきターゲットがわかり、意識喚起メッセージを伝えることで、ぜひ書いたい率が急伸する場合が多くあります。
3。顧客属性分析
【顧客属性分析ステップ1】属性分析から商品の顧客ターゲットを明らかにする1
属性を調べる質問は、調査対象者の年齢、性別、居住地、家族構成、職業、あるいは調査対象者の会社の業種、年商、従業員数などをお聞きする質問でした。
この質問によって、商品コンセプトに対して、強い購入意向を示す属性および強い使用意向を示す属性を明らかにして、商品コンセプトを改良したり、想定外のターゲットを見つけて、訴求する広告媒体を選んだりします。
例えば、1粒満腹菓子の調査でお聞きした属性の質問は次ページの図26の通りです。1粒満腹菓子の調査対象は全員が女性で行いました。ですから回答者は全員女性で、その上でさらに調べた属性の数は、年齢および未婚・既婚と子供の有無12個です。
この顧客属性分析ステップ1では、提示した属性の中で、全体の是非買いたい率を上回る属性を見つけ出し、どの属性が強い購入意向を示したかを調べます。そのためにまず属性の質問と、購入意向の質問の回答をあけあわせて集計します。
2つの質問の回答を掛け合わせて集計することをクロス集計といいます。クロス集計のやり方は、まずマンガでみていただきましょう。そのあとで、1粒満腹菓子の例を使って、クロス集計のやり方をさらに詳しく解説します。
このクロス集計も実際にアンケートを行って回収したサンプルを使って作業を行うのが、一番わかりやすいでしょう。
いかがでしょうか。さらにマンガでみてもらったクロス集計の作業を詳しく説明しましょう。
はじめに全サンプルを属性別に分類して属性ごとの人数を出します。次に属性別にぜひ買いたいと答えた人の人数を調べます。次に属性別、是非買いたいと答えた人の人数を、その属性の人数で割って、属性別のぜひ買いたい率算出します。
属性別のぜひ買いたい率が出ましたら、全体の是非買いたい率を上回っている属性にアミをかけるなど、一目でわかるような印をつけます。以上でクロス集計の表は完成です。漫画で完成させた1粒満腹菓子の属性と購入以降の質問をクロス集計した表が、次ページの図27です。
次に分析のやり方です、まず1粒満腹菓子の例で注意が必要なのは、属性別のサンプル数が基準を満たしていないという点です。前に述べた通り、サンプル数が少ないと誤差が大きくなるので、属性ごとに最低70サンプルを集めてください、と基準を示しました。1粒満腹菓子の場合、70サンプル以上ある属性は、12個の属性のうち、既婚と子供ありの2つなので、それ以外は誤差が大きいことを頭に入れた上で分析する必要があります。まず全体のぜひ買いたい率を上回っている属性を見つけます。1粒満腹菓子では図27のアミがかかった部分の5つです。その5つの属性とは、
30〜39歳
60〜69歳
70〜100歳
未婚
子供なし
この5つの属性を見比べると、女性という以外に共通点が内容に見えますが、5つの属性に共通するものを考えます。そして仮説を立てます。
例えば、30歳代で未婚の女性は、子供もいないので、自由に使えるお金を持っていて、美容や体型維持に気を使っています。だから美味しくて無理なくダイエットできて、しかも安心な1粒満腹菓子は、価格が高くても、ぜひ買いたいと答えた人が多かったという仮説が考えれます。
また60歳以上のサンプル数が少ないので、誤差が大きいですが、60歳以上の女性は結婚していても子供が成人して、お金の余裕もあります。日本の金融資産は56%が60際以上の高年齢層によって保有されています。この年齢層は、健康を維持するために、1粒満腹菓子は少々価格が高くても是非買いたいと答えた人が多かったという仮説が考えられます。
このように、強い購入意向を示す、一見バラバラに見える属性に共通するものを考えることで、その属性に合わせた改良のヒントや、広告のやり方がわかる場合があります。また開発メンバーが当初、60歳以上の人をターゲットとして想定していなかった場合は、今回の調査で、60歳以上の人もターゲットになることがわかりました。ただし、60際以上の人のサンプル数が少ないので、確信を得るには再度アンケートをおこなって、60歳以上の人のサンプルをとる必要があるでしょう。
【顧客属性分析ステップ2】属性分析から商品の顧客ターゲットを明らかにする2
次に属性の質問と使用意向の質問をクロス集計してみます。使用意向の質問とは、価格を提示せずに、1粒満腹菓子を食べたいか、食べたくないかの気持ちの強さを調べる質問でした。1粒満腹菓子の属性と使用意向をクロス集計したものが、次ページの図28です。
クロス集計のやり方は、先のステップ1と同じ要領で行ってください。ここでは、どの属性が全体の平均より、是非食べたい率、食べてみたい率が上回っているかをみて、使用意向を示す属性を明らかにします。
図28の1粒満腹菓子の例では、全体のぜひ食べたい率54%を上回った属性は3つで、全体の食べてみたい率31%を上回った属性は4つです。図28のあみがかかっているところが上回った属性です。
年齢でいうと、60〜69歳以外、全ての年代で使用意向が平均を上回っています。しかし60〜69歳は平均を下回ると言っても、ほぼ平均に近い数字ですので、1粒満腹菓子では全ての年齢で使用意向があると判断できます。
次に、ここでの属性と使用意向のクロス集計結果と、顧客属性分析ステップ1で明らかになった属性と購入意向のクロス集計結果を比べてみます。
ステップ1では、全体のぜひ買いたい率19%を上回ったのが、次の5つの属性でした。
30〜39歳
60〜69歳
70〜100歳
未婚
子供なし
対して、ここで全体の是非食べたい率54%と食べてみたい率31%を上回った属性は、次の7つの属性です。図28でアミのかかった部分です。
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
70〜100歳
未婚
子供なし
子供あり
この2つのクロス集計の結果を比べて見ると、40〜49歳が是非食べたいという強い使用意向を示したにもかかわらず、価格を提示した購入以降の質問で、ぜひ買いたいと答えなかった人が多いことがわかります。
食べたいけれど価格が高いから買わない(買えない)ということでしょう。この分析から、価格の許容性を上げることができれば、40〜49歳は子供がいる女性が多く、この層がぜひ買いたいと答えなかったことで、子供ありのぜひ買いたい率を押し下げたという仮説が立てられます。
これについては、是非食べたいと答えた、40〜49歳のアンケート回答を抜き出して1枚1枚調べれば、立てた仮説が正しいかどうか見極めることができる場合もあります。
【顧客属性分析 補足】使用意向の理由を加えて仮説を検証する
先の顧客属性分析ステップ1では、属性と購入意向の2つの質問の回答をクロス集計して分析しました。そして顧客属性分析ステップ2では属性と使用意向の2つの質問の回答をクロス集計して分析しました。さらに属性と使用意向に、使用意向(非使用意向)の理由を加えてクロス集計してみると面白い発見がある場合があります。
前ページの図29は、1粒満腹菓子のアンケートで強い使用意向を示した30〜39歳の人にぜひ食べたいと答えた理由を集めたものです。これが属性と使用意向に使用意向を加えてクロス集計したものとなります。
30〜39歳の人で、是非食べたいと答えた人は14人いましたので、その理由は14個です。
この表をもとに、商品の魅力分析ステップ1で説明したように、同じ理由をグループ化して最終的に上位3つの理由に絞り込みます。30〜39歳の人で1粒満腹菓子をぜひ食べたいと答えた人の上位3つの商品理由は、上の図30のようになりました。
図30にある3つの理由と、先の商品魅力分析ステップ1を比べてみるなど、使用意向の理由の観点から、様々な考察ができることと思います。このようにクロス集計することで、今まで見えなかった商品の魅力が見えてくるのです。疑問に思うことがあれば、疑問に関連するものをさまざまにクロス集計して、立てた仮説が正しいかどうか検討してください。
そして最終的な商品コンセプトの改良は、ご紹介した全ての分析結果を踏まえて、総合的に判断して決めるのがいいでしょう。
以上がアンケートをの分析と商品コンセプトの改良の説明となります。この章で解説したアンケートを使った市場調査は、100億円ロケット・マーケティングの大きな柱の一つです。売る前に売れる商品なのかどうかを調べるために、実際にアンケート調査を行って分析してみてください。自社商品の分析なら、理解が全然違ってくるはずです。今まで市場調査をせずに新商品を売り出していた企業は、目から鱗が落ちることでしょう。ただ分析は、最初難しいと感じるかもしれません。しかし、ヒット商品を意図的に作り出している強い企業はどこも、もっと精緻な調査で複雑な分析は行っています。
本書で紹介したものは、基本中の基本ですから、経験を積めば誰でもできるようになります。何事も習うより慣れよ、ぜひ自社のマーケティング力向上のために、トライしてください。
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