就業規則とは、「会社が一定規模になったらとどけでなければいけないと法律で決まっているもの」「労働条件について法律に則ってまとめたもの」そんなイメージを持っている方が多い。
従業員数10人以上の事業所は就業規則を作成して労働基準監督署に届出なければいけないし、就業規則の内容に関する労働基準法の定めもある。
就業規則を作らないわけにはいかないので、本に載ってた就業規則の見本や、厚生労働省のホームページからダウンロードしてきたひな型を丸写しして届出してしまう。これが最悪のパターンです。
たしかにそれらひな型は法律的には間違ったことは書いてありませんが、その内容が自社の実情にあったものになっていいるわけでもない。
不必要に従業員に好待遇となっていたり、社長の意に反する規定になっていることすらあり得る。
一度就業規則を届け出てそれが受理されてしまえばその瞬間からそれがどんなに会社の実情とかけ離れていたとしてもあなたの会社の公式ルールとなってしまう。結果として余計な労務トラブルの種を抱え込んでしまう。
最近は労働基準監督署の抜き打ち行政指導も強化されてい。
どんな会社にしたいのかを出発的にして、そのためには従業員にどのような働き方をしてほしいのか、どのような行為は避けてほしいのかといった具体的なルールに落とし込んでいく
そうしたルールがまとまれば、あとは法律に沿った形に整えていくだけで、就業規則は完成する。
個性のある就業規則を作った会社ほど、その後力強く成長している。そうした就業規則には社長の思いが強く込められているから、その想いをルールという形で全ての従業員に伝えることこそが就業規則の本質。
就業規則の基本
就業規則という言葉は知っていても、それをなぜ作るのか、どんなことを書くべきなのかについては、誤解している経営者は多いようです。
就業規則を作る意味
就業規則とは、会社の労働条件や職場のルールをまとめた書類の事です。つまり会社のルールブックというべき存在。
ポイント①
なぜ就業規則を作らないといけないのか。まずは法律で決まっているから。
従業員数が10人以上いる会社では作らないといけない。労働基準法で定められている。
全従業員数ではなく、支店や工場、営業所などといった現場ごとにカウントする。パートも含んで10人。なぜ10人かというと、仲間内から従業員を集めるのはせいぜい5人程度で頭打ちになる。初めて求人を出してよその人を求める。そこでやってくる人は、給料とか休みといった労働条件を吟味して入ってくる人たち。会社の労働条件をはっきりさせておく必要がある。
ポイント②
会社のルールを従業員に知らせるというもの。ルールといものは決めただけでは意味がない。それを従業員に守ってもらわなければわざわざ定めた甲斐がない。
わかりやすい言葉で書くこと。
就業規則に記載する内容
法律的には、就業規則に書かれている内容は大きく分けると以下の3つ。
①絶対的記載事項(労働基準法上、必ず盛り込まなければならない事項)
②相対的記載事項(全従業員に適用する制度がある場合は、必ず記載しなければならない事項)
③任意的記載事項(労働基準法上の決まりはないが、記載してもいい事項)
①の絶対的記載事項とは、労働基準法上、必ず盛り込まなければならない事項のこと。法律上決まっていることのなので、書かないといけない。
ⅰ労働時間に関する事(始業時刻と終業時刻、休憩時間、休日・休暇、交代制で労働させる場合の勤務割)
ⅱ給料の支払い方に関すること(賃金の決定方法、賃金の計算方法、支払い方法、賃金締め切り日と支払日、昇給について)
ⅲ退職に関する事(退職の種類、解雇事由)
この3つしかない。
就業規則にかかなければならないことはほとんどない。そう思って作成に取り組んでください。
相対的記載事項とは、全従業員に適用する制度がある場合は、必ず記載しなければならない事項のこと。①と何が違うかということ、絶対的記載事項は「必ず全員適用の制度を作って、それを就業規則に記載しなければならない」事項なのに対して、相対的記載事項は「制度を作るかどうかは社長の自由だけれども、作ったなら、それを就業規則に記載しなければならない」事項だという点。
具体的には以下の事項が相対的記載事項となる。
ⅰ退職金に関すること(対象者の範囲、退職金の決定、退職金の計算方法、支払い方法、支払いの時期)
ⅱ臨時の手当、賞与に関する事(対象者の範囲、賞与の決定方法、支払いの時期)
ⅲ従業員の食事、作業用品、その他負担に関する事
ⅳ安全および衛生に関する事
ⅴ従業員教育に関する事
ⅵ業務災害補償に関する事
ⅶ表彰および懲戒にかんすること
Ⅷその他、従業員全員に適用されること
労働基準監督署への届け出
就業規則を作ったら、作りっぱなしではいけない。労働基準法上、所轄の労働基準監督署に届出義務付けられている。
では労働基準監督署への就業規則届はどのような流れで行われるのでしょうか。まず就業規則の届け出に必要なものを集めるところから始めます。
ⅰ就業規則
Ⅱ意見書
ⅲ就業規則(変更)届
これらを揃えるためにはまず①の就業規則を元に従業員説明会を開催します。そして説明会で②の意見書に従業員代表に記名、押印をもらいます。なお従業員代表は管理監督者以外のもののかなから全従業員による投票・挙手などの方法で選び出すことが労働基準法で決められている。
そして最後に③就業規則(変更)届の表紙に会社のゴム印と代表者印の押印となります。
②実際の労働基準監督署での就業規則の受理審査は、原則として労働基準監督官が行います。審査項目は、「書類に不備がないか」「必ずかかなければならない事項が漏れていないか」「労働基準法に違反している箇所はないか」の3点
ちなみに上記Ⅱの意見書に書かれている内容は、就業規則の受理には影響されません。万一「全面反対」との意見がかかれていたとしても、労働基準監督署は受理します。
これは就業規則は社長が一方的にでも作成できることになっているからです。就業規則の制定や変更に当たり、従業員の代表者の意見を添付することにはなっていますが、従業員の代表者から就業規則についての意見を聞けば事足りるのであって、意見の内容までは就業規則の受理には影響されません。そう考えると、就業規則の作成ハードルはかなり下がると感じます。
※従業員に意見を求めた際に最も多い意見は「何を書けばいいのか分かりません」です。その場合は、「特にありません」としても立派な意見として認められます。
総則
総則とは文字通り、就業規則内の全ての条文の基本となることがらについて定めた規則のことです。ここでは「会社で働くという事はどういうことか」を従業員に伝えることが目的となります。会社の義務に対しては労働法令が見張り役となっていますが、従業員の義務に対しては法律上野放し状態になっています。そのため、就業規則では「労働契約の重要性」を従業員に教えることから始める
0.雇用に対する理念~自社で働く意味を伝える~
例)
序章(雇用に対する理念)
1.〇〇株式会社(以下「会社」という)では、次の理念に基づいて従業員を雇用するものとする。
①会社は、従業員が仕事を通じて家族と安心して生活できる基礎を築けるように努力する。
②会社は、従業員が自己の成長と夢の実現を果たせるように努力する。
③会社は、従業員を雇用するにあたり、責任と義務を持って接するものとする。
2.従業員は、「会社のために働かせる」のではなく、「自己実現のための手段として会社の仕事を活用する」、そう思って働くよう努力すること。
【目的】
就業規則は、会社の雇用理念を伝えることから始まります。漫然と給料をもらうために働く。そう思っている従業員は結構多いはず。しかし会社とは、本来①人間関係を築き、②経済的な安心を得て③自己実現を果たす場です。会社からもらったお金で自己実現を果たすのではありません。よい仕事を通じて顧客や会社に貢献することによって、社会は認めてくれます。自己実現の目標から逆算して、必要な事項を見つけて積極的に仕事を活用してもらうのです。
会社のために働かされているのではなく、自己実現のためのステップを歩んでいるのだという事をまず伝えましょう。
そして、会社は従業員の成長を責任と義務を持って後押しすることも約束してあげましょう。会社は従業員の自己実現を先導する役割を担っている。
【POINT1】
本条の第1項では、「会社がどのような理念のもとに従業員を雇っているのかを明示します。もちろん決まった形があるわけではないですが、経営者であれば、雇用理念というものを必ず持っているはずです。それをダイレクトに従業員に伝えましょう。
カギとなる考えは、「従業員の成長が第一。会社の利益が第二」といった姿勢です。従業員は働かされると感じた瞬間、静かにやる気スイッチを切ってしまいます。
例えば、家族が安心して暮らせるようにする、自分のキャリアアップが図れる、経済的な支えを手に入れられると言った内容を入れておいた方がいいでしょう。
逆に利益至上主義的な姿勢はNG。就業規則を読み始めた最初の一歩で躓いてしまいます。総則では、訓示はオンリーになっている、何かを強制させる、禁止事項を並べ立てる内容は入れない方がいいでしょう。
【POINT2】
本条の第2項では、第1項とは逆に、従業員はどのような理念のもとにかいしゃに雇われるべきかを明示します。幸せになりたいですか?夢や目標を叶えたいですか?ではそのために、何をしなければならないですか?と言った従業員に対する問いかけを行ってみてください。
もっとも重要なことは、ここでも第一項と同じように、「無理やり働かせられている時分」を連想させないようにすることです。
夢をかなえるために仕事を活用してほしい、仕事を利用してステップアップを目指すこと、会社の一部分ではなく、自分の会社だと思って働くことなど自社で働くことに対する正当性を示す理由を含めた内容がいいでしょう。
仕事を通じての様々な経験のひとつひとつが自己実現に必要な糧となることをあなたの言葉で表現しましょう。
1.就業規則の意味~規則を定める意味を伝える~
第1条(就業規則の意味)
1.この就業規則には、社長が求める働き方と会社の決まりごとが本音で書かれている。書かれている内容を熟読することにより、会社が求める働き方を理解してもらいたい。
2.就業規則に書かれていることを全員で理解、遵守し、自己の成長と夢の実現を叶えてもらいたい。
【目的】
労働トラブルは「会社が求める働き方はどういうものか」を従業員が正しく理解できていないことに起因することが多いようです。そこで、就業規則には「会社が求める働き方」がハッキリと明示されていることを最初にアナウンスしておきましょう。
【POINT1】
就業規則は軽く読み飛ばされるのが通常です。そうされないためには「なぜ就業規則があるのか?」「就業規則には何が書かれているのか」といったことを従業員に伝えておかなければならない。
「この就業規則を読まずして当社にいる資格なし」「就業規則には社長の想いが込められている」「この就業規則を読めば、社長に評価される働き方がわかる」「この就業規則を熟読することにより、自己の未来が明るくなる」といった会社生活の将来を占う重要な役割を果たすことをはっきり伝えておく
2.会社の求める働き方~給料を受け取る意味を伝える~
第2条(会社の求める働き方)
1.会社は、従業員に「自分は何をすべきか」を言われる前に感じとる能力を求めている。
2.給料は、ただ会社に籍を置いてさえいれば受け取れるものと考えてはならない。給料を受け取る権利は、社長の指揮に従って、会社に貢献したことに対する報酬として発生する。「これだけ貢献したのだから。これぐらいの待遇は当然だ」というつもりで働いてもらいたい。
3.会社は、従業員が提供する実績に見合った処遇をもって応えるものとする。
【目的】
社長であるあなたは、従業員に会社を合わせたいでしょうか。そんなの嫌に決まっているじゃないかとお考えであるならば、社長の考える働き方を従業員に正確に伝えることが労務のファーストステップとなる。
就業規則を作る大きな目的は、社長の求める働き方のシナリオを、従業員がスムーズにトレースできるようにすること。それはつまり「社長の思考シナリオを従業員の行動プロセスに置き換えること」に他ならない。そのためには社長の求める働き方をダイレクトに掲示して、会社の義務と従業員の権利について誤解のないように明示しておく必要性がある。ここで遠慮すると、その瞬間に訳に立たない就業規則になる。
【POINT1】
本条の第1項では、会社が従業員に求める行動や能力について定めます。多くの社長が嫌がる働き方の上位にランキングされるものに、「指示されるまで動かない、指示されたこと以外はやろうとしない、そもそも働く思考を停止する」ことが挙げられます。そういった働き方を防ぐために、「言われる前に行動を起こす、ひとつ言われたら、その周辺も考える、自分の頭で考えて先手を打つ」と言った内容を入れておけば大丈夫でしょう。
【POIINT2】
第二項では、会社が何に対して給料を払っているのかについて定めます。「漫然と会社にいる時間に対しては、給料は支払いたくない」と考えるのが通常の経営者です。「給料は働いた分だけ支払う、会社への貢献があって給料は受け取れるものだ」というスタンスを明示しておきましょう。
さらに一方進めて、「貢献度に応じた評価と給料を交渉してくるくらいの意気込みを会社は期待していること」をアナウンスする事より、従業員のモチベーションを高める動機付けへとつなぎたいところ。
【POINT3】
第二項で「会社への貢献に対して給料を支払う」とするならば「会社にもたらした貢献度に応じた処遇」を約束しておく必要もある。上記例文では第三項でそれを明示している。ここでは、「努力に見合った処遇」「結果に応じた処遇」「実績に応じた役割」と言った公正なジャッジを行うことを明示しておきましょう。処遇を昇給・賞与の増額・昇格・勤務地の選択に変えてもいいでしょう。
3.労働契約を締結することの意味~労働契約により発生する義務を明示する~
第3条(労働契約を締結することの意味)
1.会社で働くということは、会社と労働契約を結んだことに他ならない。労働契約とは、会社の利益のために一生懸命働くことを約束することと、その対価として給料を受け取る契約である。
2.契約である以上、会社と従業員の双方が遵守しなければならない。
3.会社は、従業員が労働契約を守らないと判断した場合には、従業員側から契約の破棄の申し出があったものとみなす。
4.会社と労働契約を結んだ瞬間、従業員には次に定める【従業員の義務】が発生する。
【従業員の義務】
①仕事に専念する義務
仕事中は、給与を得ている時間であって、仕事中に私用をすることは、契約違反となる。
②意欲をもって仕事に取り組む義務
意欲なく漫然と仕事に就くことは、労働安全衛生上の観点から契約違反とみなす。なぜなら、意欲なく働くことは、会社と従業員の双方にとって不利益なことであって、時間の無駄だからである。
③人間関係に気を配る義務
職場での信頼関係の維持は、働く上での生命線となる。上司や同僚に気配りすることは会社で働く以上に重要な義務とする。
④会社に協力する義務
会社から指示があった場合には、快く協力することが求められる。自己中心的な言動は厳禁とする。
⑤会社の保有情報を守る義務
会社が保有する情報に関しては、すべて守秘義務が発生するものとする。退職後であっても守秘義務は継続する。損害賠償問題にまで発展することがあるので、留意すること。
《会社の保有情報》
1.顧客や従業員に関する個人情報
2.業務上知りえた情報
3.会社の経営に関する情報
4.その他、会社が指定する情報
【目的】
会社で働くことをひまつぶしのように思っている従業員がいます。そういった従業員はどうやって仕事の手を抜こうかと考えたり、始業時間~就業時間まで会社内にいれば給料が保証されていると勘違いするといった、周囲の迷惑を顧みない、身勝手な言動を繰り返します。従業員のそういったネガティブな発想は、やがてモンスター社員化へとつながる可能性をひそめています。
こういった勘違い従業員に対する有効な対策は、会社では働くという事は会社と契約を結んでいることだという点をわからせることです。契約である以上、会社も従業員も契約内容を確認した上で、契約履行を遵守しなければならないと、きちんと伝えておく必要があります。
そのために、会社が提示する「従業員の義務」を明記し、それが自社で働く契約事項に含まれていることをはっきり伝えましょう。
【POINT1】
本条の第一項では、労働契約とは何を意味するのかを定めている。「会社のために利益を上げる、会社の指示をよく守る、まじめに仕事に取り組む、仕事に貢献する、一生懸命働くといったことの対価として報酬を受け取る契約であることを明確にしておく。
【POINT2】
労働契約は会社側だけに遵守義務があるのではなく、従業員側にも遵守義務があります。第二項では、契約を結んだ以上、双方が契約内容を遵守し、破ってはならないことを伝えておく。
【POINT3】
第三項では、万一、契約不履行があった場合の対処も明記しておきましょう。ポイントは、契約内容の不履行があった場合、不履行を行った側に責任を取らせる文言にしておくということ。契約を結ぶ以上、契約違反は許されない。
契約の破棄の申し出でも退職の意思表示でも構わない。万一、契約違反があった場合には、退職理由が契約不履行を行った側にあることを明示しておく。
【POINT4】
第四項では「労働契約を結んだ以上、働くにあたっては様々な義務が課せられ、絶対に守らなければならないということを伝え、社長が考える「当社では働く上での遵守事項」を明記しておくこと。
この場合、社長にとってこれをされるとつらいと言ったことを列記し、それらを未然に防ぐための働き方を従業員の義務として書き出しましょう。仕事中の私用に対しては、「仕事に専念する義務、だらだら働くに対しては、意欲を持つ義務、協調性がないであれば人間関係に配慮する義務、会社の指示に従わないに対しては、会社への協力・同調の義務、個人情報の管理に悩むのであれば「情報保持の義務」といった具合に従業員に求める義務を決めていくといい。
労働契約はれっきとした取引契約です。契約を結んだ以上、毎日決められた時間までに出社し、決められた時間、会社の利益のために一生懸命働かなければならない義務が生じる。労働契約には、そういった契約事項が含まれている。組織で働く以上、身勝手な言動はできないことを教えておかないといけない。
4.従業員の種類~正社員とその他の区別を明示する~
第4条(従業員の種類)
会社で働く従業員を次の通り分類する
①正社員:常時契約の者(以下、「従業員」という)
②パートタイマー:非常勤の従業員として契約する者
③アルバイト:学生など、短期間、短期間で一時的に雇用する者
【目的】
会社には、正社員、パート、アルバイト、嘱託、派遣社員など様々な形態で働く人が混在しています。それぞれの役割を明確にするために、従業員の種類を区分し、交通整理しておくことが必要。
ただしあまり細かく区分する必要はない。通常の企業であれば正社員、パート、アルバイトの3種類に分類されるかと思います。働く時間と働く期間で分類してみましょう。
【POINT】
まず常勤か非常勤かで分けます。常勤の従業員は正社員しかいません。常勤社員以外の従業員は、全て非常勤社員に分類されます。嘱託、契約社員などは非常勤という枠組みで考えると「パートタイマー」に分類されます。
アルバイトと言われる人は、一般に労働時間が短く、出勤日数も少ない人をイメージしますが、そうではありません。学生など他に身分がある人が空いている時間に臨時的に働いていることをアルバイトと言います。
もう少し細かく分類するのであれば、「嘱託社員」(定年退職後に再雇用された臨時社員)や契約社員(一定期間、一定義務に就く臨時社員)を含めても構いません。
では派遣社員はどこに入るのでしょうか。派遣社員はそもそも従業員には入らない。
5.就業規則の適用者~就業規則が誰に適用されるかを明示する~
第5条(就業規則の適用者)
1.この就業規則は、正社員として労働契約を結んだ従業員に適用する。
2.パート社員、アルバイト、その他非常勤で採用されたものについては、個別に労働契約書(または雇用通知書)を交付することにより労働条件を通知するものとする。
【目的】
会社には、正社員、パート、アルバイト、嘱託、派遣社員など様々な形態で働く人が混在しています。これらのうち、だれに就業規則が適用されるのかを明確にしておかないとトラブルの素となる。
もしパート社員やアルバイトから自分たちが就業規則から除外されていない旨私的された場合には、会社は致命傷を負ってしまうことになりかねないので留意が必要。パート社員やアルバイトの給料や有給休暇日数等が正社員と同じでは会社は保てない。
【POINT】
本条の第一項では、就業規則が誰に適用されるのかを明示しておきます。基本的には、正社員の実を対象とするといいでしょう。なぜなら、正社員は画一的なルールで働くことが多いからです。
一方臨時に雇用するパート社員、アルバイトなどは個人差が大きく、画一的なルールがなじまないことが多い。したがって就業規則は適用せずに個別に異なる契約内容を定めたほうがいいかと思います。
第二項では、第1項で就業規則の対象外とした人たちについての扱いを定めておきます。ここは、前述の通り、パート社員、アルバイトに対しては、個別に労働契約書(または、雇入通知書)を交付することにより労働条件を通知するものとするのがいいでしょう。
なおこの部分がパート社員、アルバイトに関しては別に定めるとなっている就業規則をよく見かけます。もちろん別途パート社員やアルバイト向けの規約をきちんと定めるならば、そのように書いてもいいでしょう。
ただし、実際は「別に定める」規程等存在しないケースが多いようです。その場合、第1項で正社員を適用者だと明示していたとしても、正社員向けに作成した就業規則がそのままパート社員・アルバイトにも適用されることになってしまうので、気を付けること。
採用および人事異動
この章では正社員として雇用されるまでには、どんな関門をクリアしていかなければならないのか、つまり、選考基準に始まり、必要な手続きと届け出の遵守、さらには試用期間の経験と言った、会社が正社員としての労働契約を結ぶまでの手順を明確にしておきます。
本採用する前に会社の決まり事を守れないようでは、トラブルメーカーとなる確率が高まる。そういった人には試用期間満了時までに退場してもらえるようにルールを定めておくことがリスク管理の初歩
採用試験~どのような人材を求めているのか伝える~
第6条(採用試験)
1.会社は、従業員の採用にあたり採用試験を行う。
2.書類審査および面接などによる選考の結果、社長が合格と認めたも者を採用する。
3.会社が求める人材は、社長の発するシグナルを正確に受信できる者とする。
【目的】
法律的には就業規則に定める必要はありませんが、できれば採用方法についてもルールを定めておくといいでしょう。ルールを決めておくことで、トラブルの素となりがちな採用を防ぐことができます。
中小企業の場合、雇用のミスマッチが起こる原因は、仕事の内容や給料ではなく、社長と波長が合わないことから生じる誤解があることが多いようです。したがって、社長と同じ方向性を持った思考ができる人物か否かを採用時にテストすることによって、その後の労働トラブルを激減させることができます。社長が求める人材を選考基準として明示することによって、選考基準がぶれなくなり優先すべき選考基準を貫くことが可能になるのです。
その結果、入社後も社長と従業員との意思疎通がスムーズに行え気づかない間に良好な人間関係を築けるでしょう。良好な人間関係が継続する期間に比例して会社の業績もアップし、さらに職場環境が良くなるという好循環に入るわけ。
【POINT①】
本条の第1項では、従業員の採用にあたって、採用試験を行うことを明示しておきます。意外かもしれないですが、採用試験を行わない行き当たりばったりの採用をよく目にします。なぜそんなことが起こるのでしょうか。理由は簡単です。社長に選考試験を行うという感覚がないから。
採用試験をおこなうと明示する本当の目的は、社長自身のためにあります。無採用試験では企業は保てないのです。入社20年、30年と会社で働くということは、トータルで報酬1億円以上の契約を結ぶことを意味します。1億円の契約を結ぶにあたって、無頓着でいられる社長はいないはずです。社長には、きちんと採用試験に臨む姿勢が必要なのです。そのために採用試験の実施を明示する必要がある。
【POINT2】
第二項では、第一項で定めた採用試験の内容と、合格基準について明示しておきます。試験内容については、「書類審査および面接など」としておけば、ペーパーテストや実技試験についても「面接など」に含まれますので、どんなケースにも対応できます。なお書類審査で提出してもらう書類については、別上で定めます。
合格基準を社長が合格と認めた者とするのは、従業員には入社後、社長が進める方と同じ方向を向くことを求められるため、社長面接により、社長自身が採否の最終判断を行う必要があるということ。
【POOINT3】
第三項では、第二項で定めた試験内容によって、何を図りたいのかを定めておきます。中小企業の場合、従業員が定着するか否かが死活問題となっています。従業員にとって、もっともリラックスして働ける環境は、社長に対して親近感を持つことができ、場合によっては社長の無茶ぶりに対する激しいツッコミをいられられるような関係を築くことです。
また多くの社長が求める働き方は、自分の思うような成果を、言われないまでに仕上げていることではないでしょうか。こと中小企業の採用においては、決め手とすべきは、学歴でもなければ持っている資格でもありません。職務経歴や実務能力もさほど重要ではないでしょう。実は社長との波長が合うことが採用の決め手となっていることが多いものです。
であれば、会社で働くにあたって、社長である自分の発するシグナルに対して高感度に受信できる能力が求められることを、最初からアナウンスしておくといいでしょう。社長の発するシグナルを正確に受信できるもの以外であれば、社長の考えを理解しようとする姿勢がみられる者、社長の方針に同調できる者、機転を利かせて働ける者など、端的に欠くことがポイントとなります。
これによって、従業員は就業規則を読み返すたびに、「会社は何を求めているのか」を大原則に確認できるようになります
選考時の提出書類~書類審査に必要な書類を明示する~
第7条(選考時の提出書類)
採用試験を受ける者は、次の書類を提出することによって受験することができる。
①会社所定の履歴書(本人自筆、3か月以内に撮影した社員を添付。)
②健康診断書(3か月以内に実施たものに限る。)
健康診断書発行に要する費用は就職を希望する本人の負担とする。
会社は、これを以て採用時の健康診断に替える場合がある者とする。
③職務経歴書(本人自筆、最終学歴後すべての職歴の記入があるものに限る。)
④その他、卒業証明書又は卒業見込み証明書、運転免許証、各種資格証明書等、会社が必要と認める書類
【目的】
第六条の第二項で書類審査があることを定めた場合、その書類審査に必要な書類も明示しておくといいでしょう。
選考時に必ず提出を求めておくべき提出書類は、本人自筆の会社所定の履歴書と健康診断書です。自身で経歴証明するものが履歴書、自身の健康状態を証明するのが健康診断書と考えればイメージしやすいかと思います。ただし、個人情報保護には細心の留意をし、不採用となった者に対しては返却することも大切です。
また職務経歴書については、自社の業務に有用なキャリアを有しているか、勤務期間、転職までの期間について情報を得ることを目的に活用します。
そのほか、資格保有を条件に採用を決定する職種などでは、会社が必要とする証明書等の提出を求めて確認する必要があります。注意点としては、必要な書類を必要な時に提出させることです。活用されない提出書類を無意味に増やすようなことがないようにする。
【POINT1】
履歴書は、採用希望者の現状を確認するために、必ず提出を求めましょう。住所、氏名、生年月日といった基本事項から、採用希望者の人間性までを履歴書から読み取らなければならない。そのためには履歴書は必ず本人自筆としましょう。ワープロ入力では感じられない入社意欲が読み取れるからです。
また履歴書は会社が様式を統一することにより、知りたい情報を入手しやすくすることです。自社でエントリーシートを提出できるとさらにベターでしょう。
市販の履歴書を個々提出されると、書かれている内容がバラバラで比較することが難しくなります。統一された様式を指定することにより、興津の質問を投げかけ、採用希望者に自分なりの考えを買いてもらうことができますし、「会社は何を知りたいのか」を明確に採用希望者に理解してもらえるというメリットもある。
【PPOINT2】
選考に当たっては健康診断書を提出してもらい、健康状態を把握することも会社としては当然です。健康診断書には、採否の決定に重要となる健康状態の自己申告の役割があります。健康状態が良好であることを自身で証明してもらうわけです。
というのも、会社には従業員を雇った場合に、雇入時の健康診断を行うことが、労働安全衛生法で義務付けられていますが、その時になって体調不良がわかっても、採用の取り消しは困難だから。不健康な状態の採用希望者は健康診断書を提出することを避ける傾向が高いようです。
なお健康診断書の提出は、採用されるために健康状態が良好であることを証明するために必要なもので、履歴書と同様に費用は自己負担とすることができます。
ただし健康診断書の提出を自己負担として求めることができるのは入社前まで、つまり採用選考時に限ります。入社後におこなう場合には、労働安全衛生法上、会社が費用を負担しなればならない
【POINT3】
そのほかに、選考にあたって提出してもらう書類としては、職務経歴書があります(中途採用の場合)。
職務経歴書からは、採用希望者の職歴と転職履歴、そして転職までの期間が読み取れます。ただし本人申告であるため、その信憑性が高いかどうかを判断しなければなりません。面倒でも職歴に挙げられている企業に連絡をし、職歴の確認と退職理由の確認を行うことで採用リスクを減らすことができる。
また必要に応じて各種証明書や免許証の提出を求めることもありますが、この場合には、コピーを提出させるのではなく、原本の提出を求め、会社が写しを取るようにしましょう。これにより採用後のトラブルをなくせます。
社用車を使った営業や納品などが多い会社では「運転記録証明書」も加えておくことをお勧めします。運転記録証明書とは、自動者安全運転センターが発行している、過去の運転履歴を証明する書類で、交通違反などの履歴が記載されています。営業車両での交通事故や交通違反のリスクを減らすためには、こういった書類の提出も求めておくことを検討しましょう。
内定後の提出書類~内定者に出してもらう書類を明示する~
第8条(内定後の提出書類)
1.採用が内定された者は、初出勤の日までに次の必要書類の全部を会社に提出することにより、会社の仕事に従事できるものとする。ただし、会社が特に認めた場合については提出書類の一部を省略することがある。
⑴入社誓約書(会社所定の様式)
⑵個人情報保護に関する誓約書(会社所定の様式)
⑶身元保証書(会社所定の様式、身元保証人による催告および検索の抗弁権放棄の記載を要する。)
⑷住民票記載事項証明書
⑸給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
⑹前勤務先の所得税源泉徴収票(暦年内に前職のある者)
⑺年金手帳(20歳以上)
⑻雇用保険保険者証(前職のある者)
⑼その他会社が必要と認める書類
2.期日を守ることは、会社で働くにあたって極めて重要なことである。初出勤の日までに提出ができない場合は、真剣に働く気がないと判断し、採用は取り消される。
【目的】
採用時の提出書類を規程する目的は2つあります。1つは、会社との労働契約上の義務を守らせる意識付けです。誓約書の提出が重要な役割を果たします。
もう一つは、会社の事務を円滑に行うための必要書類の提出です。雇用保険や、社会保険の加入手続き、税法上の手続きや給料計算(所得税の計算、各種手当の算定)をスムーズに行うために必要書類をすべて入社前に揃えておくようにしましょう。
留意点は、「入社後に提出」では遅いということです。採用決定から初出勤までに、通常、数日間はあるはずです。その間に入社準備をさせることにより、御社で働くことの意識付けを図ることができます。そのためにも提出期限は、初出勤の日までとしましょう。
【POINT1】
本条の第一項では、入社するにあたって、必要な手続きに私用する書類等を明示します。会社は必要書類を任意に決めることができますが、一般的には、以下の書類の提出を求めておくといいでしょう。ただし不必要な書類等の提出までは控えましょう
①入社誓約書
これから自社で働いてもらうためにあたって、労働契約遵守などの包括的な誓約書を取る必要があります。また、誓約書の文面に「履歴書、職務敬礼所、面接時の発言が事実である」旨の内容も盛り込むことで、入社後のトラブルに備えることができる。
②個人情報保護に関する誓約書
今の時代、情報の漏洩が企業活動に重大な影響を与えることが大いにあり得ます。これを防ぐため、個人情報保護に関する誓約書を取っておきましょう。
③身元保証書
身元保証書の役割は2つあります。1つは入社前に本人が申告した内容を保証する役割。もう一つは、入社後の不祥事に備える役割です。本人が追える責任は限られているので、本人と合わせて損害賠償を負ってもらえる人を確保しておく必要があるのです。
また、本人にもっと催促してからにしてくれとか、本人の財産を差し押さえてからにしてくれといった言い逃れができないようにするために、催告および検索の抗弁権を放棄するといった文言を必ず入れてもらいましょう。
④住民票記載事項証明書
住民票記載事項証明書は、住所確認のために提出を求めます。ただし、住民票そのもの、または戸籍謄本や戸籍妙本については、提出を規程すべきではありません。これらの書類は、採用者の門地・社会的身分に直結する事項が含まれているため、採用にあたって差別的取り扱いの誤解につながります。
⑤給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、所得税の計算に必要なだけでなく、健康保険証の申請にあたっての扶養家族の確認のためにも必要となる。
⑥前勤務先の所得税源泉徴収票
前勤務先の所得税源泉徴収票は、前に勤めていた会社から支払われた給与額と納付した源泉所得税の額を通算するため、その年の1月以降に転職した場合に必要になる。
⑦年金手帳
年金手帳は、厚生年金と健康保険に加入する際に必要な基礎年金番号が記載されているため、必要となる。
⑧雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険加入時に雇用保険番号を把握するために必要となる。
⑨その他、会社が必要と求める書類
その他、会社が必要と認める書類として、代表的なものに給与振込口座の指定申告書や、通勤経路申告書などがあります。給与振込口座は本人が指定する金融機関の口座を優先しなければなりませんが、会社の事務を軽減するために会社が指定する金融機関に口座を開設してもらうことの依頼はできます。ただし強制はできない。
また通勤経路申告書は、自宅から会社までの通勤距離を把握するとともに、通勤途中の事故が発生した場合の労災保険の適用に備えます。
【POINT2】
第二項では、第一項で定めた書類の提出期限を定めておきます。ここでは初出勤の日までに提出書類の全部を提出させることがポイントです。入社前に全部揃える時間は十分あることが多いので、入社前から会社の姿勢を伝えておきましょう。
これは単に事務手続き上の理由だけではありません。入社前に会社の指示を期限内に守ることができない人物は、入社後も同様のケースが多いようなので、もし期限内に提出がなされない場合には、採用を取り消すこともできるようにしておくといいでしょう。
※選考時に必要となる書類と、内定した後に必要となる書類は全く別物
身元保証人の届け出~身元保証の制度について明示する~
第9条(身元保証人の届出)
1.会社で働くには、経済的に独立したもので、会社が認める者1名以上の身元保証人の届け出を必要とする。この場合、経済的に独立した父母兄姉またはこれに代わる近親者を優先とする。
2.身元保証の期間は5年間とする。
3.身元保証人の届出がない期間については、原則として業務に就くことはできない。この場合、会社は出勤停止を命じることがある。
4.会社が特に必要と認めた場合、身元保証の期間の更新を求めることができる。
【目的】
正社員として労働契約を結ぶとという事は、期間の定めのない契約を結ぶことになります。年収300万円で契約するという事は、10年で3000万円、20年で6000万円、昇給を含むと30年で1億円ものお金を支払う契約を結ぶことを意味します。
会社としては、長期にわたり、働くことができる人物か否かを判断する期間内には、身元保証人を付けておきたいところです。
身元保証人を付けるということは、わかりやすくいうと、銀行で融資を受ける際に連帯保証人をつけることに似ています。連帯保証人が決まらない間は融資は実行されません。会社に採用されるということは、1億円の契約を結ぶことと考えれば、身元保証人が必要であることは理解できるはず。
【POINT1】
本条の第一項では、身元保証人の届出が必要なことと、どのような人が身元保証人になれるかを規程します。
身元保証人となれるものは、原則として直系親族の上位者がベストです。なぜなら、従業員本人の不祥事に対する責任追及や損害賠償の際に、もっとも真摯に向き合ってもらえるからです。
ちなみに身元保証人の人数は会社が自由に定められます。1人でも構いませんが、従業員の両親がいる場合には2人の届出を求めることがリスク管理上は望ましいでしょう。
なお、身元保証人の届出には、不祥事に対する責任追及の他に、もう一つの目的もあります。それは身元保証人を届け出ることによって、責任を持って職務に当たるといった従業員の自覚を促すという事です。これが不祥事の未然に防ぐことにもつながる。
【POINT2】
第二項では、身元保証期間について定めます。身元保証機関については、身元保証に関する法律の第一条と第二条に明記されていて、特に期間の定めがない場合は3年、期間を定める場合は5年が上限と定められている。したがってここでは上限ぎりぎりの5年と定めておくのが安心
【POINT3】
第三項では、身元保証人が定まらない期間についての扱いを定めておきます。前述の通り、身元保証人の果たす役割は、不祥事があった場合に備えて連帯保証人の役割を果たしてもらうことです。身元保証人が定まらないまま働き、重大な損害を出されては困りますから、身元保証人が定まらない期間については、会社は出勤停止とすることができるようにしておく必要があります。
【POINT4】
従業員の働きぶりから判断し、勤務を継続させるためには、身元保証人による身元保証期間の更新が必要となる場合があります。第四項では、その更新について定めておきます。なお、身元保証期間を更新することはできますが、自動更新はできません。新たな身元保証書を作成し、差し入れることが必要となります。
試用期間~試用期間の詳細について明示する~
第10条(試用期間)
1.試用期間とは、会社の仕事に適応できるかどうかを従業員と会社の双方で確認するために存在する期間である。
2.対象者は試用期間中に、ずっと働きたい会社かどうかを判断することができる。一方会社も長期間にわたって働いてもらいたい人物であるかどうかをこの間に判断するものとする。
3.試用期間は、入社日から暦日で3か月間の期間雇用とする。契約更新する場合には、正社員として本採用契約を結ぶものとする。
4.試用期間満了日の1週間前までに、本人との面談により本採用の可否を決定するものとする。
5.本採用の可否は、本人の意思および試用期間中の出勤状況、勤務態度、健康状態(メンタル面を含む)、発揮された能力などから総合的に判断するものとする。
6.次に該当する場合には、会社は本採用しないこととする。なお、採用後14日を経過していない場合は、即日解雇処分とすることがある。
①【従業員の義務】を守れない人物であると会社が判断した時
②会社が認めない遅刻、早退、私用外出、欠勤が1回でもあった場合
③会社の指示に従わず、または同僚との協調性が見られない場合
④顧客や問い合わせ電話等に対して、相手に不快感を与える言動があった時
⑤必要な研修や実習を行っても会社が求めるレベルまで達しなかった時
⑥経歴を偽り、会社に誤認させていた時(懲戒解雇)
⑦採用時の必要書類などを提出しない、または事実と異なる記載があった時
⑧担当業務に就ける健康状態ではないと会社が判断した時(メンタル面含む)
⑨その他、本採用しないことを合理的な理由が認められる場合
【目的】
試用期間の役割は、単純にいうと、会社と従業員間の「相互のおためし期間」のようなものです。この期間内に従業員側は長く勤めたい会社であるか、会社側は長く勤めてもらいたい人物であるかか見極めます。
一般的に試用期間は、期間満了時に自動的に正社員に切り替えられる単なるお飾り的なモノだと思われがちです。しかしそれは、大間違いです。試用期間は、入社後、正社員として本採用する前に、職業能力や企業への適用性、業務の適格性を判断するために設けられた制度です。
したがって、正社員に自動的に登用させるのではなく、会社が定める基準を満たした場合に限り正社員になれるということを従業員に明確にアナウンスする必要があります。
なお試用期間を設ける最大のメリットは、試用期間中の解雇は、通常の解雇よりも広い範囲において、解雇の自由が認められていることにあります。ただし、よく誤解されていることですが、試用期間中であれば自由に解雇できるわけではない。労働基準法では、合理的な理由を元に即日解雇ができる期間は、採用から2週間までとされています。それ以降に解雇を決めた場合には、会社は30日分相当の給料の支払いを伴うことには留意が必要。
【POINT1】
本条の第一項および第二項では、試用期間の役割について定めます。
先述のように、試用期間は、会社が面接などでは見抜けなかった適格性を見極める制度であるとともに、従業員がイメージしていた会社であるかどうかを判断するための制度でもあります。
一言で言えば、雇用のミスマッチを防ぐための制度だということを明確にしておきましょう。
【POINT2】
第三項では、試用期間の長さについて定めます。
労働基準法上、試用期間の上限はありません。そのため試用期間を長くとりたくなるかもしれませんが、従業員の働くモチベーションを維持するために、通常3か月から6か月の間を試用期間とする企業が多いようです。
【POINT3】
第三項で定めた期間の使用が終わる際には、試用期間の勤務を通じて出た答えを会社と従業員との双方で確認する場を待たなければなりません。第四項では、その確認方法について定めます。これは、遅くとも期間満了日の1週間前までには行う必要があります。
なお本採用する場合には、本採用時の労働条件等を明示する必要があります。
【POINT4】
第5項では、これをクリアできれば本採用されるといった基準を定めておきます。会社が本採用の可否を決定する重要な基準を明確にしておくことにより、自動的には本採用されないことに留意されるとともに、公正性を保つことができます。できれば出勤率95%以上など数値化できるものについては具体的な数字を明示できればベストです。
なお会社が認めることのできない遅刻、早退、私用外出、欠勤を、たとえ軽微であったとしても、試用期間中に1回でも行う者は、正社員登用後も繰り返すことが多いようです。
その者の勤務に対する姿勢がハッキリと現れるところですので、厳しく見ましょう。
【POINT5】
第六項では、第五項とは逆に本採用されない場合について、具体的な基準を設けておきます。本採用しない場合には解雇となるので、従業員を納得させるためにも得に客観的な理由が求められます。そこで「試用期間中にこれをされたら困る」という事例を具体的に上げておくことでそこに抵触するものについては本採用とはならないと理由付けできるようにしておく。
人事異動~配置転換、転勤、出向、転籍について明示する~
第11条(人事異動)
1.配置転換・転勤
会社は業務上の必要がある場合には、従業員に配置転換または転勤を命じることができるものとする。従業員は会社が合理的に認める正当な理由がない限り、業務命令である以上、拒むことはできない。
2.在籍出向・転籍
会社は、業務上の必要がある場合には、従業員に在籍出向または、転籍出向を命じることができるものとする。従業員は会社が合理的と判断できる正当な理由がない限り、業務命令である以上、拒むことはできないものとする。
なお、出向又は転籍を命じるに際し、出向、転籍先での労働条件等については、新たに定めるものとする。
3.業務の引き継ぎ・赴任
配置転換、転勤、出向、転籍を命じられた従業員は、会社が指定する期間内に業務の引継ぎを終えなければならない。また、事例発令日までに赴任しなければならない。
【目的】
会社には、当然の人事権として、従業員の職務内容や勤務地を変更できる権限があります。大きな会社に限らず、小さな会社でも適材適所と考える人員配置、配置換えによる社内活性化を図りたいと考える社長は多いものです。
【POINT1】
本条の第一項では、配置転換・転勤について定めます。配置転換とは、同一企業内において従業員の勤務地や所属部署、職務内容の変更を行うことを言います。そのうち、勤務地の変更を伴うものを転勤といいます。
人事異動は会社の業務命令で行うものである以上、個人的な事情は極力認めない方向で臨まなかければならない。
【POINT2】
第二項では、在籍出向・転職について定めます。
在籍出向とは、現在の会社(出向元)に籍を残したまま他の会社(出向先)の従業員となり、出向先に指揮命令以下で働くことをいいます。この在籍出向を命じる場合には、会社に籍が残る以上、従業員本人の同意は必要としません。
一方「転籍」とは、現在の会社とは完全に労働契約関係から切り離し、新たらな会社(転籍先)との労働契約関係に帰属させることを言います。労働契約も当然、その会社と新たに結びなおすことになり、労働条件が変わります。
これは全く別の会社の従業員になることを意味しますので、転籍を命じる場合には、従業員本人の明確な同意が必要となる。
【POINT3】
人事異動は、業務命令で行いますので、従業員の身勝手な理由で拒否権はありません。とはいえ、配置転換・転勤、在籍出向、転籍は、喜んで受け入れるケースばかりではありません。その場合、現在の業務の引継ぎを放棄できないようにしておかなければならない。そこで第三項には、業務引継ぎの義務と赴任義務も記載しておきます。
タイムリミットは移動の前日までです。それまでに現在行っている業務や今後予定される業務について、後任の者等にすべて引き継ぎを完了しておき、異動による業務の停滞が発生しないように業務命令できるようにしておくことが大切。
勤務
この章では、「労働契約上の出勤の義務と労働の免除」について従業員にアナウンスします。会社と労働契約を結んだ以上、従業員は毎日決められた時刻に出社し、その日1日会社のために働かなければなりません。しかし時には、日常生活上、どうしても遅刻や、早退、欠勤が必要な場合が生じてきます。また法律上、従業員の権利として労働が免除されるケースもある。そんなときに備えて、労働時間の管理方法について明示しておく必要がある。
出退勤の義務について~勤務時間中の基本ルールを明示する~
第12条(出退勤の義務について)
1.従業員は、会社が指定する場所にて始業時刻から終業時刻までの間、労働を提供する契約を結んでいる。
2.始業時刻になっても仕事を開始しないこと、または就業時刻となる前に仕事を終了することは重大な契約違反となる。
3.会社は、前項に該当する場合には、懲戒処分を与えることがある。
【目的】
労働契約の基本は、出退勤の義務を守ることです。毎日決められた時間までに出社し、終業時刻まで会社の利益のために働くことが労働契約の主目的です。
始業時刻とは業務を開始する時刻です。出社する時刻ではありません。当たり前と思うかもしれませんが、そうしたことでも就業規則に規定されていないとトラブルになることがあります。「会社と契約した時間内は業務を提供する時間である」ということをしっかり理解させておく必要があるのです。
【POINT1】
本条の第1項では、出退勤出退勤の義務の具体的内容について定めています。ここでは会社がしているする場所にて、始業時刻から終業時刻までの間、労働を提供するという3つの点を明記しておくことがポイントとなります。会社は従業員から労働時間を買い取っている以上、始業時刻から終業時刻までの間、きっちり仕事に従事しなければならないことを遵守させましょう。
なお労働契約は相互契約ですから、会社も従業員に対して毎日労働の機会を与える契約を結んでいます。自社の都合で従業員を休ませたり、労働時間を短縮することは契約違反になることにも留意が必要です。
【POINT2】
第二項および第三項では、始業時刻と終業時刻の扱いについて定めます。ここでは、会社が指定する時刻までに業務に取り掛かれるようにしておくよう明示することが大切です。始業時刻ぎりぎりに駆け込む出勤してきて、始業時刻になってからコーヒーを入れる、新聞を読むなどといった行為は契約違反に該当します。
また終業時刻までは業務に専念しなければならないということも明示しましょう。就業時刻前に帰り支度をすることも契約違反になることを認識させておくべきです。
そして、これらに違反した際には、場合によっては懲戒処分の対象となることも記載しておきましょう。
遅刻、早退、欠勤および私用外出~遅刻等に対する扱いを明示する~
第13条(遅刻、早退、欠勤および私用外出)
会社は、従業員に遅刻、早退、欠勤および私用外出があった場合には、契約不履行とし、労働の提供のない時間について給料の減額を行うものとする。
【目的】
会社と労働契約を結んだ以上、従業員には定められた時間、労働を提供する義務が発生します。理由の正当性、時間の多少にかかわらず、本来、遅刻、早退、欠勤および私用外出は契約違反となります。
会社は、働いていない時間についてまで給料の支払い義務はありません。これをノーワーク・ノーペイの原則といます。
従業員に精勤を遵守させるためには、給料と連動させて記載することが効果的です。欠勤が労働契約違反に該当することを理解させ、給料控除を行うことで精勤を目指しましょう。
【POINT1】
給料が月給制の場合、遅刻・早退・欠勤および私用外出があった場合についての欠勤控除の記載がないと、給料の減額はできません。そのため、ノーワーク・ノーペイの原則をはっきりと明示しておく必要があります。ただし、遅刻1回につき3000円の罰金といった罰則を就業規則等で決めておくことは、違法となる(法律に反する規則は、いくら就業規則等で定めていても無効となってしまいます)。あくまでも、給料は働いた分だけ支払われる契約であることから、労働の提供はない時間分の給料については支払われないという事をはっきりと伝えておくこと。
所定労働時間と休憩~始業、就業、休憩時間を明示する~
第14条(所定労働時間と休憩)
1.会社の所定労働時間は、休憩60分を除き、1日について8時間、1週間については40時間とする。
2.始業時刻および終業時刻は次の通りとする。
始業時間:午前9時00分
就業時刻:午後6時00分
休憩時間:正午から午後1時00分
3.始業時刻までには、仕事を開始できる準備を整えておくこと。仕事は開始しなくて構わないが、余裕を持って出社すること。
4.就業時刻とは、退社する時間ではなく、その日の仕事を終えた時間を指す。タイムカード等の記録は、退社時刻ではなく、仕事を終えた時刻を刻印すること。
5.会社は、業務の都合により、始業時刻、就業時刻、休憩時間を変更することができるものとする。
6.会社は、交代制勤務を命ずることがある。
【目的】
所定労働時間と休憩は、「絶対的必須記載事項」といって、就業規則で必ず記載しておかなければならない項目です。具体的には、最低でも始業時刻と終業時刻、休憩時間は定めておかなければなりません。
また、始業時刻と終業時刻、休憩時間を決めるにあたっては、労働基準法に定められた労働時間の上限を守らなければなりません。
具体的には、労働基準法では、1日に労働させることのできる時間の上限は8時間、1週間40時間が上限と定めています(特例措置対象事業に該当する場合は、1日8時間、1週間44時間となります。この該当事業となるのは、従業員10人未満の商業、映画の制作の事業を除く映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業となります)。これを「法定労働時間」といいます。
また休憩時間については、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければならない。
なお休憩は、全労働者に一斉に付与することが原則ですが、労使協定を締結すれば、一切付与はしなくても構いません。さらに、以下の業種については労使協定を締結しなくても、一斉付与はしなくても構わない。
①運輸交通業②商業③金融・広告業④映画・演劇業⑤通信業⑥保健衛生業⑦接客娯楽業⑧官公署
【POINT1】
本条の第一項では、労働時間の長さについて定めています。労働時間の長さについては、前述の通り労働基準法で上限が定められているので、その上限以内で設定しなければならない。
ちなみに労働法では、拘束時間と労働時間は区別されています。拘束時間は、休憩時間を含んだ会社にいる時間をさします。そして労働時間は、実際に働いた時間となる。
例えば、店舗の営業時間が朝9時から夜21時までとします。この場合、拘束時間は12時間となりますが、休憩時間を4時間儲けているなら、実労働時間は8時間となります。そして給料の発生する時間は、休憩時間を除いた実労働時間8時間でいいことになります。
拘束時間の長い業種であれば、休憩時間を多く挟むことによって、法定労働時間の順守を図りましょう。
【POINT2】
第二項では、始業、就業の時刻および休憩時間を具体的に示します。就業規則に記載する労働時間は、必ずしも1つのパータンではなくても構いません。就業規則では、始業時間は必ずしも1つのパターンでなくても構いません。就業規則では、始業時刻と終業時刻のパターンを何通りでも書くことができます。例えば、月末に忙しくなる業種では、以下のように月末とそれ以外の日で、別々に始業時間と終業時間を設定することも可能です。自社に必要な勤務割を全て書きましょう。
2.始業、終業時刻および休憩時間は、原則として次の通りとする。
1日から24日まで 始業9:00 就業18:00
25日から末日まで 始業8:00 終業19:00
休憩時間 正午から13:00
【POINT3】
経営者としては、始業開始と同時に仕事に取り掛かれるよう、従業員には始業開始時に余裕を持って出社してほしいというのが本音でしょう。しかし、始業開始前に余裕を持って出社してほしいというのが本音でしょう。しかし、始業何分前までに出社することを命じると、時間外労働に該当してしまうことがあります。それを避けるために、第三項では、始業時刻には仕事を開始できるように前もって出勤すると記載し、かつ、始業時刻までは業務を開始しなくてもよい旨の記載もいれておきましょう。
【POINT4】
終業15分前になると化粧直しのためにトイレに立つ従業員。トイレから戻り帰り支度をして退勤のタイムカードを打刻した時間は終業後15分経った後。こうした日常の光景は、多くの経営者にとっておもしろくないことでしょう。そもそも終業時刻前に仕事をやめることは重大な契約違反に該当する。勤務時間を正確に管理する姿勢を従業員に示しておく必要があります。そのために、第四項では、終業時刻がその日の仕事を終えた時間を指すことを明示するとともに、「タイムカード等の記録は、帰り支度をする前の、仕事を終えた時刻を刻印する」などのルールを定めておきましょう。
【POINT5】
会社の業務は生き物です。当初決めた通りに勤務割を杓子定規に進めていたのでは、業務が成り立たないこともあります。その場合に備えて、第五項では、原則的な勤務割を変更して労働させることがある旨を記載しておきます。
就業規則に始業時刻と終業時刻、休憩時刻の変更がありえることを記載しておくことによって、従業員に対し、それらの変更を業務命令できるようになります。
【POINT6】
交代制勤務とは、製造業や飲食業など24時間継続して稼働している場合や、医療機関や介護施設など夜勤などがある業種にみられる勤務体制です。
この交代制勤務を命じる可能性がある場合は、上記例文の第六項のようにそれも就業規則に書いておくといいでしょう。
なお、交替勤務をする場合、勤務シフトのすべてを就業規則に記載する必要がある。
1か月単位の変形労働時間制~繁忙期と閑散期の労働時間を調整する①~
第15条(1か月単位の変形労働時間)
1.労働時間は、毎月1日を起算日とする1か月単位の変形労働時間制により管理する。
2.1か月単位の変形労働時間制とは、1か月を平均として1週40時間(特例事業は44時間)になるように毎日の労働時間を組み合わせる管理方法のことをいう。
3.各日の始業時刻、就業時刻は次の通りとする。
1日から24日まで 始業時刻午前9時00分から就業時刻午後5時00分
25日から末日まで 始業時刻午前9時00分から就業時刻午後7時00分
4.休憩時間は、正午から午後1時00分までの60分間とする。
【目的】
毎日、決まった時間ちょうどに業務を終えられる会社は少ないかと思います。ある月や週は猛烈に忙しく残業も多いですが、翌月、翌週になるとすっかり暇になって定時前でも帰れる。そうした業務の繁閑によって、毎日の労働時間を調整したいと思うのは、経営者であれば当然です。あらかじめ勤務シフトをくむことによって、月末に労働時間のボリュームを持たせ、月中は短くするなど工夫して超過勤務を削減することができたらと考えたことはあるのではないでしょうか。
実は労働基準法上、そういった業務の繁忙期や閑散期に合わせた変形労働時間制の導入が認められています。変形労働時間制には1か月・1年・1週間単位がありますが、ここでは利用率の高い1か月単位の変形労働時間制について説明しましょう(1年単位の変形労働時間制については次節で説明します)。
1か月単位の変形労働時間制とは、労働時間が1日、1週間ベースで法定労働時間を超えた場合であっても、4週間の中で調整し合計160時間(1週40時間×4週)ないとすれば、割増賃金の支払いは発生しなくなるという制度です。ただし、労働時間の上限が1週44時間と認められている事業(常時10人未満の労働者を使用する商業、映画、演劇業、保険衛生業、接客娯楽業)については176時間が上限となります。
1か月単位の変形労働時間制を導入するためには、基本的には労使協定が必要ですが、就業規則で定める場合には労使協定は必要ありません。そこで、就業規則に1か月単位の労働時間制による労働時間管理をする旨の記載をしておくことがおすすめです。
【POINT】
1か月単位の変形労働時間制を採用する場合は、就業規則に以下の項目を定めなければなりません。
①1か月単位の変形労働時間制を採用する旨の定め
②1か月を平均した1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない定め
③法定労働時間を超える特定の週または特定の日
④変形労働制の起算日
本条では、第一項で上記①と④、第二項で②、第三項で③について定めています。
なお、起算日を毎月給料計算期間の初日にすると、変形期間中の所定労働時間の上限がわからいやすくなります。下図に計算方法と各月(給料計算期間)の暦日数による所得労働時間の上限を示しましたので参考にしてください。
1年単位の変形労働時間制~繁忙期と閑散期の労働時間を調整する②~
第16条(1年単位の変形労働時間)
1.労働時間は、従業員代表との労使協定により、当該協定の適用を受ける従業について、1年間を平均して毎年4月1日を起算日とする1年単位の変形労働時間制により管理する。
2.1年単位の変形労働時間制とは、1年間を平均して1週40時間になるように毎日の労働時間を組み合わせる管理方法のことをいう。
【目的】
変形労働時間制としては、1年単位のものも、利用率が高いでしょう。1年単位の変形労働時間制とは、季節により業務量に繁閑のある場合、繁忙期に長い労働時間を設定し、閑散期に短い労働時間を設定することによって、柔軟に労働時間を運用する制度です。1年以内の一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間以下に収まるように勤務シフトを組みます。それにより、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることができるようになります。以下の制限が付きますので、注意してください。
①労働日数は、年間280日を限度とする。
②労働時間は、1日10時間まで、1週52時間までを限度とする。
③48時間を超える所定労働時間を設定した週は、連続3週間以内とする。
④起算日から3か月ごとに区切って、それぞれの期間で48時間を超える週は3週間以内とする。
⑤連続して労働させることの出来る日数は、6日までを限度とする(ただし、特定期間における連続労働日数は、労使協定の定めがある場合には、1週間に1日の休日が確保できる日数を限度とする)。
【POINT】
1ん円単位の変形労働時間を導入する場合は、以下の項目を就業規則に定めることが必要です。また、1か月単位の変形労働時間制とは異なり、就業規則に定めた場合でも、労使協定を結び、労働基準監督署への届出を行うことが必要となる。
①対象となる労働者の範囲
②対象期間(1か月を超え1年以内の期間に限る)を平均した1週間あたりの労働時間がほうてい労働時間を超えない定めと対象期間の起算日
③特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙の期間)
④対象期間における労働日及び労働日毎の労働時間
なお、上記④については、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する場合は、「最初の期間における労働日、最初の期間における労働日ごとの労働時間、最初の期間を除く各期間の総労働時間」を定めればよいことになっている。
例文では、第一項で②の起算日を、第二項で②の法定労働時間を超えない定めを規定している。
事業場外みなし労働時間~外勤従業員の直行・直帰などの扱いを明示する~
第17条(事業場外みなし労働時間制)
1.外勤する従業員が、直行・直帰を含め、1日のうちに会社を出たり入ったりする場合など、会社が労働時間を正確にカウントできないケースについては、内勤時間を含めてその日の1日分の所定労働時間働いたものとする。
2.明らかに残業時間があった場合には、その時間について残業代を支払うものとする。
【目的】
外勤従業員の社外での営業活動は、会社の目が行き届かず、労働時間管理ができないケースがほとんどです。そこで、労働基準法では、そうした外勤従業員に対して会社が労働時間の管理方法がない場合には、所定労働時間通りに働いたとみなしても構わないことになっている。
事業場外みなし労働時間制とは、外勤従業員に対する労働時間管理ができない場合には、あらかじめ決められた時間、労働したものとして取り扱うこととする制度。
【POINT】
本条の第一項では、事業場外みなし労働時間制を適用する条件について定めます。事業場外みなし労働時間制は、使用者である会社の具体的な指示などに基づかず、本人の裁量で業務を行うことを前提としますので、管理職が同行するなど、会社が外勤従業員の労働時間を把握できる場合には、事業場外みなし労働時制は適用できません。
【POINT2】
外勤従業員の労働時間が正確に把握できない以上、会社は残業時間についても把握できません。そのため、第二項では、みなし労働時間制を適用する場合の残業の扱いについて定めておきます。
明らかに所定労働時間を超える労働があった場合に限り、その時間分については、残業時間となり、割増賃金が発生します。
出張中の労働時間~出張時の扱いを明示する~
第18条(出張中の労働時間)
1.従業員が業務命令により出張し、会社が労働時間の把握が困難となる場合には、所定労働時間労働したものとみなす。
2.出張の際の往復の移動時間については、移動時間中に特段の業務の指示がない限り、労働時間には含まれないものとする。
【目的】
出張中の労働時間に関しては、会社と従業員とで認識が異なる点が多くみられます。特に出張の際の往復の移動時間が労働時間に該当するのか否かについては、賃金トラブルが発生しがち。
そうしたトラブルを避けるためには、どのような場合に労働時間と認められるのかを就業規則に明記しておくことが大切。
【POINT1】
本条の第一項では、出張先での労働時間についての扱いを定めます。出張時の労働時間管理は、前述のみなし労働時間と同じで、会社が労働時間を把握できない場合には所定労働時間通りに働いたとみなすことが労働基準法上、認められています。
【POINT2】
第二項では、トラブルとなりがちな移動時間の取り扱いについて定めます。出張時の移動時間については、前日から現地入りする場合を含めて原則として勤務時間には、含まないとすることができますので、その旨を条文中にしっかり記載しておきましょう。
裁判所の判例をまとめると、「移動時間中に、特に具体的な任務を命じられていないこと、従業員が自由に活動できる状態であることの2つの条件に当てはまれば、主張中の移動時間は労働時間とはならないとされている。ですので、特段の業務命令がない単なる移動時間については、労働時間に含まれないことを堂々と明示して大丈夫。
ただし、移動時間であっても、業務を伴う場合は、労働時間として算定しなければならない。
法定休日と休暇~休日と休暇の与え方を明示する~
第19条(法定休日と休暇)
1.会社は、法定休日として1週間に1日の法定休日を与えるものとする。
2.会社は、休暇として、法定休日以外の公休日を与えるものとする。休暇とは、本来は出勤日である日を会社が労働を免除する日である。休暇は次の通り定める。
- 〇曜日(週休2日制の場合)
- 国民の祝日
- 年末年始休暇
- 夏季休暇
- その他会社が定める日
3.会社は、従業員の過半数代表者との協定により、年間5日を除く年次有給休暇を本条で定める休暇として計画的に取得させることができるものとする。
【目的】
労働基準法上、会社は1週間に1日の休日を与えなければならない決まりになっている。この週1日の公休日を法定休日といいます。7連続勤務となってはならないということです。
ただし、1日の労働時間を8時間としている会社では、1週間に1日の公休日だけだと1日8時間×6日=48時間となることから、法定労働時間の1週40時間(一部業種では44時間)を守れなくなるため、同じ週にもう一日、公休日を設けることがあります(週休2日制)。このような法定休日以外に加算する公休日を休暇とする日を指します。
【POINT】
本条の第1項では、休日の与え方について定めます。
労働基準法でいう休日とは、法定休日を指します。前述の通り、労働基準法では、経営者に1週間に1日の法定休日を与えることを義務付けていますので、ここは例文通りに書いてください。
【POINT2】
第二項では、休暇の与え方について定めます。
前述の通り、1週間に法定休日1日だけの公休日では労働基準法で定める1週間の労働時間である40時間を超えてしまう場合は、休暇を設定する必要があります。単純計算で、1日の労働時間が6時間40分を超える場合には、週6日勤務だと40時間を超えてしまうので注意が必要です。
【POINT3】
第三項では、第二項で定めた休暇を、有給休暇として処理できるように定めている。
国民の祝日、年末年始休暇、夏季休暇は法律上の休日ではない。そのため経営者からすれば有給休暇処理をしたいところでしょう。労働基準法では、年次有給休暇の会社指定による計画的取得を認めていますので、計画的に取得される日に、国民の休日、年末年始休暇、夏季休暇を充てることが可能です。ただし、本人が自由に使える有給休暇は年間5日残しておかなければならない。それ以外の有給休暇日数は、労使協定を結ぶことにより、会社が計画的に取得させることができます。
時間外労働、深夜労働、法定休日・休暇日の労働~残業や休日出勤についての扱いを明示する~
第20条(時間外労働、深夜労働、法定休日、休暇日の労働)
1.仕事は、極力定時に終わらせるように段取りを組むようにしなければならない。
2.時間外労働、深夜勤務、休日・休暇日の出勤は業務命令に基づき行うものとする。原則として、自己判断で行うことはできない。
3.会社は、業務の都合上やむを得ない場合に限り、時間外労働、深夜(午後10時~午後5時)勤務、および休日・休暇日に勤務を命じるものとする。
4.時間外労働、深夜労働、休日・休暇日の労働は、業務命令である以上、原則として従業員は拒否することはできない。
5.自己判断により、時間外労働、深夜労働、休日・休暇日の労働が必要となった場合は、事前に上司に連絡し、業務命令の指示を受けてから行わなければならない。
6.事前が不可能であった場合には、翌営業日に上司の追認を得なければならない。
7.上司による業務命令または追認なく、勝手に時間外労働、深夜労働、休日・休暇日の労働を行った場合には、会社はその業務の必要性を認めず、その時間の給料および割増給料は支払うことはできない。
【目的】
労働問題で最も多発するのが、時間外労働と休日労働の管理方法についてです。労働基準法第32条により法定労働時間が定められている以上、法定労働時間を超える時間外労働、休日労働は本来違法となります。特別な取り決めを交わさない限り、会社から時間外労働や休日労働の命令を命じることも、従業員から求めることもできません。
もちろん、労働基準法第36条による労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることにより免罰効果はありますが、従業員の健康を考慮すると、「時間外労働、休日労働は当たり前」という風潮から「時間外労働、休日労働は特別なもの」という意識に変えていく必要がある。
そのためにも、時間外労働と休日労働の管理方法については、就業規則でしっかりと定めておいた方がいい。
【POINT1】
本条の第一項では、まず大原則として残業(時間外労働)や休日出勤(休日・休暇日の出勤)は避けるべきだということを明示しておきます。
これは本来、時間外労働が違法行為であり、36協定を締結した場合のみ、特別に許されているものだからです。また残業や休日出勤をさせれば、それに対して割増賃金を支払わなければならなくなる。
したがって、経営者がなるべく残業などを減らそうと心掛けることはもちろん、従業員に対しても安易な残業をしないよう、就業規則に明示しておきましょう。
【POINT2】
残業はなるべく避けるべきだとは言っても、繁忙期などで、どうしても時間外労働が必要な場合はあります。そうした場合には、会社が残業を命令できることを明記しておきましょう。本条では、第三項及び第四項でその旨を定めてあります。
残業は会社の業務命令で行うものと規定することにより、従業員は拒否できなくなります。また、だらだら残業や生活残業といった本来必要のない残業や休日労働を排除するためにも時間外労働や休日労働は業務命令に基づき行うものとしておきましょう。
【POINT3】
第一項で示した原則の通り、本当に必要な時間外労働以外の残業は可能な限り避けなければなりません。したがって、いわゆるだらだら残業や生活残業はできないように、明示しておきましょう。
大切なのは、時間外労働は業務命令に限り行うもの歳、従業員の都合や自己判断ではできない旨、きっぱりと言っておくことです。上記の例文ではそれを第二項に記載してあります。
ただし、どうしても残業や休日出勤が必要な場合はありますから、そうした場合には事前又は事後に上司の許可を得て、必ず業務命令を受けた形にするよう、記載しておくといいでしょう。上記の例文では、第五項および第六項にそれを記載してあります。
そして許可を得ない残業には給与が発生しないことを明記して、残業代トラブルを未然に防ぐと良いでしょう。上記の例文では、それを第7項に記載してあります。
生活残業やだらだら残業は会社の体力を奪います。時間外労働は、業務命令にて行うものと徹底しておきましょう。
法定休日・休暇の振替~振替のルールを明示する~
第21条(法定休日・休暇日の振替)
1.会社は、業務上の必要がある場合は、休日・休暇日を事前に他の日と振り返ることができるものとする。
2.振替により出勤となった日の給料については、同一の衆に法定休日がある場合には、休日出勤ではなく通常の労働または、時間外労働の扱いとなる。
3.会社は、振替休日、振替休暇として別の日に公休日を付加する。
4.会社は振替による出勤がある場合には、前日までに伝えるものとする。
【目的】
従業員は、労働基準法第35条により、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。本来、休日に従業員を出勤させることは労働法上、禁止されていますが、業務の都合によっては休日出勤をお願いせざる終えないケースもあります。実は、そのお願いの仕方一つで、公休日の出勤の取り扱いが大きく変わってきます。
休日や休暇に労働を行わせた後に、その代償措置として、以降の労働日の労働を免除することを代休といいます。一方前もって休日や休暇日と定められた日を労働日に変更し、その代わりに他の労働日を公休日とすることを「休日・休暇の振替」といいます。つまり、「代休」は公休日に出勤された後は休ませること、振替は公休日を取り消して他の日に変えることです。
代休と振替の労務管理上の決定的な違いは、割増賃金の計算方法です。公休日に出勤させることは、運用次第で大きな問題となることがありますので、留意が必要です。
【POINT】
雇用契約書や就業規則に定められた休日・休暇に労働させることは、本来は契約違反です。従業員に拒否されても文句は言えません。
しかし、就業規則の中で、会社は業務上必要がある場合には、公休日を出勤日に振り替えることができる旨の記載があれば、労働契約の一部となり、業務命令で出金させることができるようになります。そこで、本条の第一項では、振り返ることができる旨を記載しています。
【POINT2】
労働基準法では、法定休日の出勤対する賃金の割増率は35%以上となっています。これは経営者が1週間に1日の法定休日を与えなかったことに対するペナルティです。
これに対して、休暇日の出勤は時間外労働となり、その割増率は25%以上と決められています。これは週40時間の法定労働時間を守れなかったことへのペナルティです。
つまり、労働時間に対する一法制の度合いによって割増率は異なり、1週間に1日の休みも与えなかったことの方が、ペナルティは大きいという事です。したがって、なるべく割増率の低い時間外労働が適用できるようにしておきたいところです。
例えば、一般的な1日8時間労働、週休2日制の場合で考えてみると、法定休日が1週間に1日確保できていて、同じ週の別の公休日を出勤に切り替えた場合は、その週は週6日勤務となってしまいます。これは労働法上違法となる週48時間労働になってしまいますが、法定休日が確保されているので休日出勤にはならず、時間外労働となります。当然割増賃金の計算は25%増しとなります。
このように第二項には時間外労働を適用するケースを、しっかり明示しておきましょう。
【POINT3】
本来の公休日を他の日に振り替えた場合、代替休暇となる振替休日、振替休暇を与えなければなりません。第三項では、そのことを明示させるようにしましょう。
健康管理上の問題もあることから、代休は極力早めに取得させるようにしましょう。
【POINT4】
振替休日ができるのは、前日までに通知できる場合に限ります。なぜなら、休日は、午前0時から起算した24時間とされているためです。当日の朝連絡してもすでに休日に入っているため、振替はできません。そのことを明確にしておくため、第4項に前日までに通知する旨を記載しておきましょう。
あらかじめ、休日・休暇と出勤日を入れ替えることが、振替出勤が認められる要件なのです。
時間外手当、深夜手当、休日手当~残業代などのルールを明示する~
第22条(時間外手当、深夜手当、休日手当)
1.会社の業務命令に基づき、時間外、深夜および休日・休暇に勤務をさせた場合には、当該する時間外手当、深夜手当、休日手当を支給するものとする。
2.業務命令を伴わないものについては、会社は割増賃金を支払うことはできない。
【目的】
労働基準法上、時間外労働と休日労働は本来違法です。また、深夜労働は、体への負担が重くなるため、極力避けるべきとされています。
そのため、時間外労働、休日労働、深夜労働に制限をかける目的で、通常の賃金に割増率を乗じた割増賃金の支払いが義務付けられています。時間外、深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働させた場合には25%以上、法定休日に労働させた場合には35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
また1か月60時間を超える時間外労働に対しては、50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(中小企業については、当分の間、適用は猶予されます)。
このようにペナルティが経営者に発生する以上、時間外労働、休日労働、深夜労働については、従業員側の都合では勝手に行えないようにしておくべき必要があります。
【POINT】
前述のように、時間外労働、休日労働、深夜労働は、本来違法であることとと、会社に金銭的ペナルティが生じることから、管理は厳格に行いたいところです。そこで、時間外労働、深夜労働、休日労働を行うには、会社の許可を得なければならないとする規定を設けて管理しましょう。
だらだら残業や生活残業を防ぐためにも、時間外労働、休日労働、深夜労働は、会社の業務命令に限って行えるようにしておくべきです。また業務命令以外の時間外労働、深夜労働、休日労働については、会社はその必要性を認めず、割増賃金は支払うことはできないとしておきましょう。
適用除外~労働時間や休憩、休日および休暇のルールを適用しない場合を明示する~
第23条(適用除外)
1.次の者については、業務上緊急を要する場合には、時間外労働、休憩、休日および休暇の取得ができない場合がある。
①管理職も地区は監督職の地位にある者
②会社が機密の事務を取り扱うと指定した者
2.労働時間、休憩、休日および休暇に関する規定に関しては、適用除外となり、割増賃金の支払いは行わられないものとする。
【目的】
労働基準法では、管理監督者については労働時間、休憩、休日および休暇に関する規定が除外されています。つまり、会社は管理監督者については時間外労働や休日労働を気にせず勤務させることができるということです。
労働基準法上の管理監督者に該当するハードルは高いとされていますが、職場の士気を高めるためにも、管理監督者の適用外規定は記載しておきましょう。
【POINT】
本条の第一項では、適用除外者となる対象者について定めます。例文の①管理職もしくは監督職の地位にある者とは、経営者と一体になって仕事をする地位にある者で、一般的に部長、工場長など労働条件の決定、その他労務管理についての権限を有する者が該当します。役職の名称にとらわれず、重要な職務と責任を有し、労働時間などの規制を適用することがなじまない立場であり、待遇面においてもその地位にふさわしい待遇がなされているなどの要件があります。
また②会社が機密の事務を取り扱うと指定した者とは、秘書など、その職務が経営者や管理職、監督職の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理がなじまないものを指します。
【POINT1】
第二項では、第一項で対象とした者についての扱いを定めておきます。
労働基準法の管理職もしくは監督職の地位にあるものと認められる者については、労働時間、休憩、休日および休暇に関する規定に関しては適用除外となるため、割増賃金の支払いは行われなくても違法とはなりません。
管理職・監督職とはだれか?
①一般社員を管理監督する、人事権などを含む重要な職務と権限が与えられていること。
②タイムカードなどで労働時間を管理されず、自分の裁量で働くことが許されていること。
③役職手当等、給料面で明らかに優遇されていること。
年次有給休暇~有給の付与ルール~
第24条(年次有給休暇)
1.入社の日より6か月間継続勤務し、8割以上の出勤率がある従業員に対して、6ヶ月を超えた日(応当日)に10日の年次有給休暇を付与する。
2.毎年、応当日に次の通り有給休暇を付与する。ただし、応答日前日までの1年間に出勤率が8割以上あることを要件とする。
勤続年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
3.年次有給休暇は、取得希望日の1週間前までに申請することにより取得することができる。ただし、会社が特に認める場合にはこの限りではない。
4.会社は、原則として取得希望日の取得を認めるが、業務の正常な運営に支障が生じると判断した場合には、取得日の変更を行うことができるものとする。
5.会社は、従業員の過半数を代表する者との協定により、年次有給休暇のうち5日を超える日数について計画的に取得を振り分けることができるものとする。次の日が対象となる。
・国民の祝日
・年末年始休暇
・夏季休暇
・その他会社が指定する日
6.新規に付与された年次有給休暇は次年度に限り繰り越すことができる。
7.会社は、有給休暇の買取は行いわないものとする。ただし、退職時に限り、業務の引継ぎ等のために会社が必要と判断した場合にのみ有給休暇を買い取ることがある。
【目的】
ノーワーク・ノーペイの原則から、有給休暇は会社の判断で付与できると考える経営者がいます。しかし残念ながら有給休暇は付与日数から消滅時効まで法令でびっちり決められています。働いていない時間についてまで給料を支給しなければならないというのは、経営者にとっては酷な話です。
ただし、有給休暇の取得はできませんが、取得時期の変更、取得ルールについては、会社が決めることができます。そこで、そうしたルールについて就業規則で定めておきましょう。
【POINT1】
本条の第一項では有給休暇が付与されるための要件と、その際に与えられる日数について定めています。ここについては、労働基準法第39条、第136条により、入社後6か月経過した際に出勤率80%以上あるものについては、有給休暇10日の付与が義務付けられていますので、それをそのまま書きましょう。
【POINT2】
第二項では、経過年数ごとの付与人数について定めます。ここも、第一項と同様に、法律の規定をそのまま書くのがいいでしょう。労働基準法の定めでは、入社後6か月を経過した日を応当日として、以降1年経過ごとに有給休暇の付与日数は毎年増えていき、頭打ちになるのは、付与日数20日で入社から6年6か月経過となった時となっています。
【POINT3】
年次有給休暇を取得するのは、従業員の権利ですが、いつでも好きなタイミングで請求されたのでは、会社の業務に影響が生じます。そのため有給休暇の取得ルールを定めておきたいところです。それを、第三項で定めます。
申請時期のタイムリミットについては法律上決まりがないので、会社がじゆうに定めることができます。就業規則に定めておけば、申請期限以降の申請は受け付けない理由になります。
【POINT4】
会社は有給休暇の請求自体は認めなければなりませんが、同じ日に複数の取得申請があった場合や、その日に取得することによって業務に著しいい影響が生じる場合などには、法律上、会社による有給休暇の取得時期の変更権が認められています。そのことを従業員にもきちんと知っておいてもらうため、第四項で定めておきましょう。
【POINT5】
労使協定を結ぶことにより、有給休暇の日数(前年度からの繰り返し分を含む)のうち、5日を超える日数について、会社が計画的に有給休暇を取得させることができます。これを有給休暇の計画的付与と言います。
多くの経営者は、国民の祝日や年末年始休暇、夏季休暇を法律上決められた休日と誤解していることが多いようです。実はこれらの休暇は任意ですので、休暇とするか否かは会社が決めることができます。かといって、これらの日を出勤にすると従業員のモチベーションを低下させる恐れがあるため、出勤日にはできない企業が多いようです。このような場合に、有給休暇を計画的に付与し、取得させることができます。そしてその旨を第五項のように定めておけば、トラブルは未然に防げるでしょう。
【POINT6】
第6項では、有給休暇の繰り返しについて定めます。有給休暇の請求権、すなわち生滅事項は、労働基準法第115条の規定により、2年間と定められています。つまり付与された有給休暇は次年度に限り繰り越すことができることになります。
ただし、繰り越された有給休暇から先に消化するのか、新規に付与された有給休暇を先に消化するのかは、労使間の定めによります。
【POINT7】
第七項では、有給休暇の買い取りについて定めます。
実は有給休暇の買取は、労働基準法で禁止されています。ただし、退職時の業務引継ぎなどが必要がある場合は例外的に買取が定められていますので、例外的に買取を行うことがある旨を就業規則に明記しておきましょう。退職願を提出し、翌日から退職日までずっと有給休暇といったケースに対するリスク管理のためにも記載が必要です。
なお買い取り価格は、その人の日給換算と思われがちですが、当事者間で任意に決めてよいことになっています。
※コラム
①半日単位取得
原則として、有給休暇は「1日単位」です。しかし1日単位では、なかなか有給休暇を取得しにくいことから、行政は、半日単位での取得も認めています。これは、あくまで任意ですので、1日単位しか認めなくても構いません。
②時間単位取得
平成22年4月の労働基準法かいていにより、労使協定を結べば、1年に5日分を上限に時間単位で有給休暇を取得できるようになりました。
出産休暇、生理休暇、育児・介護休業の付与~産休等の付与ルールを明示する~
第25条(出産休暇、生理休暇、育児・介護休業の付与)
会社は、従業員から次の請求があった場合、休暇をあたるものとする。ただし、給料については無給とする。取得期間中の給与は支給されない。
①本人の出産(出産日は産前) 産前6週間後8週間・多胎妊娠の場合は産前14週間
ただし、産後6週間は法律上、就業は全面的に禁止とする。これは産前産後の母体を保護するために就業に制限を就業に制限をかけるものである。
②生理日の就業が著しく困難な時 本人申請日
生理休暇取得を有給休暇に振り替えることはできない。
③育児・介護休業をする時 育児介護休業法に定める期間
【目的】
会社と労働契約を結んだ以上、従業員は毎日出勤して、働くことを約束しています。とは言っても合理的な理由がある場合には、労働基準法上、労働の免除が認められることになっています。それが出産休暇、生理休暇、育児・介護休業の期間です。
法律で定まっている以上、出産休暇、生理休暇、育児・介護休業の期間については、そのルールを就業規則で明確にしておいた方がトラブルが少なくなるでしょう。
なお、この期間は労働は免除されますが、給料の支払いはなくても構わないこととされています。ただしもちろん、休業中の給料の支払いを行うことも可能です。その場合、通常の給与を支払う等、会社が定める給与の支払い方を明記しておきましょう。
【POINT】
6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性従業員が休業を請求した場合には、無理に労働させることはできません。
また産後6週間以内にある女性従業員については、母体保護の観点から労働させることは絶対的に禁止されています。
産後6週間を超え、8週間以内になる女性従業員については、原則として労働させることはできませんが、本人の労働する希望と医師の許可があれば労働させてもよいとされています。
【POINT2】
生理日の労働が著しく困難な女性が休暇を請求した時には、労働させることはできなくなります。自己申告があれば取得を認めなければなりません。しかも1か月あたりの取得回数制限はありません。
もちろん自己の都合であり、仕事の提供がないことより、会社は整理休暇日の給料は支払わなくてもいいことになっています。
【POINT3】
育児・介護休業法は、仕事と育児・介護の両方を容易にできるような配慮を経営者に負わせています。具体的には、①休業②子の看護休暇、介護休暇③時間外労働の制限④深夜労働の制限⑤時間外労働の免除⑥短時間勤務制度等があります。
母性健康管理のための休暇等~母性健康管理のための休暇の付与ルールを明示する~
第26条(母性管理のための休暇等)
1.妊娠中または出産後1年を経過しない女性従業員から、保険指導または健康診査を受けるために、休暇の請求があった時は、必要な時間の休暇を与える。
2.ただし、給料については無給とする。取得期間中の給与は支給されない。
【目的】
妊娠中と出産後の1年間は、母体保護の観点から、保険指導または健康診査を受けるために休暇の請求があった場合は、労働を免除し、必要な時間を与えなければならない。
これも出産休暇、生理休暇、育児・介護休業の期間と同様に、法律で決まっている以上、そのルールを就業規則で明確にしておいた方がトラブルが防げる。
【POINT】
保健指導または健康診査を受けるために休暇については、ノーワーク・ノーペイの原則により、給料は支払わなくても構いません。ただし、もちろん支払うこともできます。その場合には、通常の給与を支払う等、会社が定める給与の支払い方を明記しておきましょう。
子供の看護休暇~子供の看護休暇の取得ルールを明示する~
第27条(子供の看護休暇)
1.小学校に入学する前の子供を持つ従業員は、申し出により、病気やけがをした子供の看護または予防接種・健康診断を受けさせるために看護休暇を取得することができる。
2.子の看護休暇日の給料は無給とする。その間の給料は支給されない。
3.看護休暇の日数は、子供1人
【目的】
幼い子供が病気やけがをした場合には、親の看護が必要となります。また、子供が病気にならないための予防接種や健康診断の受診は親の義務です。
そういった場合には、従業員に休暇を与えなければなりません。労働基準法では、「小学校就学までの子を養育する労働者は1年に5日まで(子が2人以上の場合は、年10日まで)病気・けがの看護または子に予防接種・健康診断を受けさせるために子の看護休暇を取得できる」としている。
これも法律で決まっている制度ですから、そのルールを就業規則に明示しておくといいでしょう。
【POINT】
子の看護休暇は、請求があった場合は、取得させなければなりません。しかし、労働の提供がない以上、ノーワーク・ノーペイの原則により、給料は支払わなくても構いません。もし、支払う場合には、通常の給与を支払う等会社が定める給与の支払い方を明記しておきましょう。
また、前述通り、看護休暇には年間上限日数が定められていますが、その振出日は会社の任意に定められます。したがって、起算日を明示しておくとよい。
それから、看護休暇は、有給休暇とは異なり、次年度への繰り越しの義務はありませんので、繰越はできない旨も記載しておきましょう。
介護休暇~介護休暇の取得ルールを明示する~
第28条(介護休暇)
1.要介護状態にある家族の介護をする従業員が申し出た場合は、介護休暇を取得することができる。
2.介護休暇日については、無給とする。その間の給与は支給されない。
3.介護休暇の日数は当該家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度とする。この場合の1年間とは、4月1日~翌の3月31日までとする。
4.介護休暇は、次年度への繰り返しはできない。
【目的】
介護休暇は、その名の通り介護のために取得する休暇の事です。育児・介護休業法では「要介護状態にある対象家族の介護その他の世話をする労働者は、1年に5日まで(家族が2人以上の場合は年10日まで)介護その他の世話のために介護休暇が請求できる」と定められている。つまり、会社にとっては従業員に介護休暇を与えることは義務になりますので、そのルールを就業規則に明示しておくといいでしょう。
なお介護の場合、連続した長期の休業が必要ではないケースもありますので、その場合は1日単位での介護休暇が取得できるよう、育児・介護休業法では定められている。
【POINT】
介護休暇は、従業員から請求があった場合は、取得させなければなりません。しかし、労働の提供がない以上、ノーワーク・ノーペイの原則により、給料は支払わなくても構いません。もし支払う場合には、通常の給与を支払う等、会社が定める給与の支払い方法を明記しておきましょう。
公民権行使のための休暇~選挙や裁判のための休暇などの取得ルールを明示する~
第29条(公民権行使のための休暇)
1.会社は、公民としての権利および義務(裁判員制度を含む)のため従業員から休暇などの申請があった場合は、必要と認める時間の休暇等の与えるものとする。
2.休暇等の時間については、無給とする。その間の給与は支給されない。
【目的】
公民とは、国家または、公共団体の公務に参加する資格のある国民をいい、公民としての権利とは、公民に認められる国家または公共団体の公務に参加する権利をいいます。具体的には、以下のものが公民の権利として認められている。
・選挙権、被選挙権
・最高裁判所裁判官の国民審査
・住民投票、国民投票など
また公の職務として認められるものとしては、以下が挙げられます。
・衆議院議員、参議院議員その他の議員
・労働委員会の委員長
・裁判員など
労働基準法では、使用者は労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならないと定められている。したがって、裁判員制度など公民としての義務を果たすことのために、休暇が必要となった場合には、会社は必要な時間の休暇を与えなければならない。
これも会社としては義務ですから、その際のルールを就業規則に明示しておくといいでしょう。
【POINT2】
前述の通り、公民権行使のための休暇は、請求があった場合は取得させなければなりません。ただし、権利の行使・公の職務の執行に妨げがない範囲であれば、労働者から請求された時刻を変更することは可能です。
またこの休暇中は、労働の提供がない以上、ノーワーク・ノーペイの原則により、給料は支払わなくても構いません。もし支払う場合には、通常の給与を支払う等、会社が定める給与の支払い方を明記しておきましょう。
なお裁判員制度では、必要な日数休むことになりますが、裁判員になったことや裁判員休暇を取得したことを理由に、その者に対して不利益な取り扱いをすることは禁止されている。もちろん、給料を無給にすることは、ノーワーク・ノーペイの原則(労働のない時間については給料の支払いもない原則)により、不利益な取り扱いにはあたりません。
給料
給料が支払われるのは、何に対してなのか?を従業員にアナウンスすることを目的とする。給料は会社への協力の対価として受け取るものであって、漫然と過ごした時間には支払われないということを明確にし従業員にしっかりと理解してもらうことが大切。
人事考課~給与が決まる仕組みを明示する~
第30条(人事考課)
1.会社は、定期的および必要に応じて随時、人事考課を行うものとする。
2.会社は、人事考課に基づき適正と能力に見合った業務と給料に随時、変更(配置換え、昇給または降給)させるものとする。
3.この担当業務の変更、給料の昇給または降給は、人事考課に基づく業務命令である以上、従業員は拒否することができない。
4.給料の改定となる場合には、改定月の給料計算期間の初日に遡って改定支給するものとする。日割りでの計算は行わない。
5.人事考課では、社長および会社の方針に理解を示し、努力の跡が認められる者を高く評価する。
【目的】
労働基準法では、給料について、決定方法と計算方法、支払い方法、給料締切日と支払い時期、そして昇給について就業規則に記載しなければならないことを定めています。そこでこの条文では、それらの事項について定めておきます。
【POINT】
本条の第一項では、人事考課を行う時期について定めます。
ここでポイントとなるのが、人事考課を必要に応じて臨時に行うことを明示しておくことです。定期的に行う人事考課だけでは、会社は突発的な事案に対処することはできません。人事考課は労務管理の基準となるため、必要に応じてタイムリーに人事考課を行えるようにしておきましょう。
【POINT2】
第二項では、給料の額が、人事考課に基づいて改定されることを明示しておきます。前述の通り、労働基準法上は、昇給について就業規則への記載を義務付けていますが、降給についての記載は任意となっています。
しかし今の時代、将来にわたって毎年の昇給を約束できる企業ばかりではありません。経営環境が厳しい中、人件費をやりくりしなければなりません。
したがって、会社の業績や、従業員本人の成績によっては、昇給ができない、あるいは給料を下げなければならない状況も想定しなければならない。
そのためにも、降給について記載し、働きに応じて給料を変動させることができるようにしておくことがポイントとなります。そして降給させるためには合理的な根拠が求められますので、人事考課を基準に従業員の配置、担当業務、給料の決定が行われることをアナウンスしておきましょう。これにより、人事権に基づいた配置換え、給料の改定を行うことができるようになります。
【POINT3】
人事考課に基づく人事権は、会社の専権事項です。これを明示するため、第三項で、業務命令として発令された担当業務の変更、給料の昇給または降給に対しては、従業員側には拒否権はないことをアナウンスしておきましょう。
【POINT4】
給料の改定がある場合、いつから改定になるのかを明示しておく必要があります。第四項ではそれを示します。
なお給料の改定を給料計算期間の途中で行うと、日割り計算が生じて事務処理が煩雑化します。そこで給料計算期間の初日から改定としておけば、スムーズに改定できるようになるでしょう。
【POINT5】
人事考課にあたり、その評価基準を明確に示す必要があります。第五項はその基準を示します。ここでは、自社がもっとも評価される働き方を明確にしておきましょう。
給料の受け取り方~給与に対する考え方を明示する~
第31条(給料の受け取り方)
1.給料は、働いた分だけ支払う契約とする。ただ漠然と会社にいるだけで受け取れるものではなく、会社に協力し、発揮された成果に対して支払われるものと考えること。
2.働いていない時間については、給料を受け取ることはできない。
【目的】
労働基準法上は、給料は働いた時間に対して支払うことになっています。しかし経営者からすれば、従業員が会社に来てさえいれば給料は確保できるといった考えを持たれては仕事になりません。
会社はひまつぶしの場ではありません。労働契約を結んだ以上、会社の利益のために労働力を提供する義務があります。
会社は従業員に会社が求める姿勢を伝えなければならない。漫然と過ごした時間に対しては給料を支払うつもりがないこと、会社のために発揮された努力に対して支払うという意思表示をはっきりと示しておきましょう。
【POINT1】
本条の第一項では、給料が何に対して支払われるのかを定めておきます。働いていない時間までは給料は支払われないという労働契約上の大原則がある。これをノーワーク・ノーペイの原則といいます。従業員に、給料は貰うものではなく、稼ぐ者であることを理解させることが大事です。
また給料はアウトプットの質と量で決めたいというのが多くの社長に共通する本音のはずです。それもダイレクトに就業規則に書きこんでいきましょう
【POINT2】
本来、労働契約上従業員は決められた時間、会社の業務に就かなければなりません。しかし、現実には遅刻、早退、中抜け、欠勤など労働契約通りにはいかない場合があります。
そのような場合、ノーワーク・ノーペイの原則により、労働のない時間についてまでは給料は支払う義務はありません。そこでそのことを第二項で明示し、労働のない時間については、給料控除を行えるようにしておきましょう。
給料の種類~各種手当を明示する~
第32条(給料の種類)
給料の種類は、以下の通りとする。
基準内給料:基本給・役職手当・資格手当・精勤手当・通勤手当
基準外給料:時間外手当・休日出勤手当・給料・深夜手当・賞与
【目的】
就業規則では、支給される給料のメニュー表示が義務付けられています。つまり、自社ではどういった給料が支給されるのかを明示しておかなければならない。そこで、本条では、そのことについて定めておきます。ただし金額の表示までは義務付けられていない。
【POINT1】
給料の種類は、基準内賃金と基準外賃金に分けて考えることがポイントです。基準内賃金とは、毎月支給されるレギュラー的な給料の事です。基本給、会社所定の各種手当がこれに該当します。
一方、基準外賃金とは、本来は法律上、存在しない手当の事です。時間外手当や休日出勤手当、深夜手当などの臨時的に支給される給料を指します。
つまり、法定労働時間がある以上、本来は時間外労働も休日労働も存在するはずがありません。しかし実際は時間外労働や休日労働は発生しています。そういった法律上は存在しないはずなのに実務上は発生する労働に対する隠れた給料が基準外賃金ということです。
給料の支払い方~給料の計算方法と支払い方法を明示する~
第33条(給料の計算方法と支払日)
1.給料は、直接従業員に1か月に1回、支払日を決めて、その全額を本人に払うものとする。
2.給料は、前月〇〇日から、当月〇〇日を締め切りとした期間で計算し、翌日〇〇日に支払うものとする。
3.給料の支払い方法は、従業員の同意を得た場合は、本人が指定する金融機関の口座への振り込みにより行うものとする。ただし、退職時の給料に関しては、従業員本人に直接手渡しにて支払うものとする。その場合、従業員は会社が指定する日時に出社しなければならない。
4.給料は、所定支払日に指定口座へ振り込むものとするが、所定指定払日が金融機関の休日に当たる場合は、直前の金融機関営業日に振り込むものとする。
5.給料から控除されるのは次のものとする。
・源泉所得税
・住民税(市町村民税および都道府県民税)
・雇用保険料
・健康保険料(介護保険料を含む)と厚生年金保険料
・本人から申し出のあったもの
・その他必要と認められもので従業員代表と協定したもの
【目的】
給料は生活するための重要な手段であることから、支払いの方法については厳格な制限が設けられている。具体的には、労働基準法では、給料の支払い方に、以下の5つのルールを定めています。
①毎月1回は支払日を設ける
②一定期日に支払う
③全額を一度に支払う
④直接本人に支払う
⑤通貨で支払う
給料の支払いは、会社と従業員との信頼関係に直結することなので適正に行うことが大切です。
【POINT】
上記のルール①と②の通り、労働基準法上、給料は毎月1回の支払日を確定しなければなりません。ついうっかりでも給料の支払いが1か月を超えてしまってはならないのです。
また上記のルール③と④の通り、給料はその全額を本人に直接しはらわなければなりません。たとえ家族であっても、本人から委任を受けた代理人であったとしても給料を本人以外に支払うことは禁止されています。本条の第一項では、これらについて明確にしておきましょう。
【POINT2】
毎月1回以上確実に給料を支払うためには、給料計算の起算日と締切日、そして支払日を決めておく必要があります。第二項ではそれらについて定めておきます。
なお起算日や締切日は任意に決めて問題ありません。また、支払日は当月支払いでも翌月支払いでも構いませんが、毎月〇日と固定して支払わなければなりません。
【POINT3】
多くの会社では、給与は手渡しではなく金融機関への振り込みにより行っていると思います。しかし従業員の給料を金融機関への振り込みにて行う場合は、以下の一定の要件を満たすことが法律で決められています。
①従業員の同意を得ること
②従業員の指定する本人名義の預貯金口座に振り込まれること
③給料の全額が所定の支払日に全額払いだせること
そのため、これを第三項で定めておきます。なお、振込手数料がバカにならないということで、会社の口座がある金融機関の支店を給料の振込先として指定し手数料を節約する会社を見かけますが、従業員の同意がない限り、この方法は違法となります。また、振込手数料を従業員に負担させることも違法とされます。注意してください。
【POINT4】
上記の例文では、第三項で、退職時の給料に限って手渡しに限定しています。これには目的があります。
退職時に会社からの貸与物をなかなか返却しない場合、退職時の給料を会社まで取りに来てもらうタイミングで返却をしてもらいたいと考える経営者は多いようです。その時に給料の支払い方法が振込支給しかないと、会社まで受け取りにこさせること自体が不当な要求であるとして、拒否されるケースがあります。そんあことが無い世に、退職時の給料の支払い方法についての例外的取り扱いについて定めておくわけです。
返却物を確実に回収するためだけでなく、退職者に感謝の気持ちを伝えるためにも、退職時には出社を求めたいのが経営者です。「退職時の給料は手渡し支給」と定めておくことにより、退職時の給料に限っては直接手渡しで支払えるようにしておきましょう。
【POINT5】
第四項では、所定支払日が休日だった場合の取り扱いについて定めます。
給料の支払日が金融機関の休業日と重なった場合、直前か直後の金融機関営業日に振込を行うことになりますが、直後の金融機関営業日を選択すると、給料の支払い間隔が1か月を超えてしまい違法となてしまうケースがあります。そんなことのないように、給料支給日が金融機関の休日と重なった場合には、直前の金融機関営業日に振込を行うようにしておきましょう。
【POINT6】
第五項では、給料から控除するものについて定めます。ここでのポイントになるのは、「本人から申し出のあったもの」「そのほか必要と認められるもので従業員代表と協定した者」という項目を入れておくことです。
源泉所得税や住民税、雇用保険料、健康保険料(介護保険料含む)、厚生年金保険料については、給与から控除することが法律でも求められています。しかしそれ以外のもの、例えば旅行積立金、食事代など必要な費用などを、会社都合で従業員の給料から勝手に差し引くことは、原則として禁止されているのです。それらを給料から控除する場合には、金額の多少に関係なく、駆らず労使協定を結ばなければなりません。そうしたケースに対応するために、本人から申し出のあたもの、その他必要と認められるもので従業員代表と協定したものという項目を入れておくのです。
遅刻、早退、欠勤などの場合の給料控除~欠勤、遅刻等があた場合の給与の扱いについて明示する~
第34条(遅刻、早退、欠勤などの場合の給料控除)
遅刻、早退、欠勤、私用外出等、働いていない時間があった場合は、その時間分の給料は減額となる。
【目的】
会社は、ノーワーク・ノーペイの原則により、働いていない分までの給料は支払わなくても構いません。
ただし、労働基準監督署では、月給制の意味を、常に定額で支払われる給料と考えます。そのため月給制の場合、欠勤控除の規定がないと働いていない時間分の控除はできません。そうした事態を防ぐため、時間単位での欠勤控除の規定は忘れずに入れておきましょう。
【POINT】
欠勤控除においては、欠勤時間に応じて分単位で給料から控除できますが、次のことは禁止されています。
①あらかじめ欠勤10分につき1000円控除などといった罰金制を予定とすること
②欠勤時間を30分単位で計算するなど、実際の欠勤時間よりも多額となる欠勤控除を行うこと
したがって、上記に該当するような規定を定めても、無効とされてしまうので、注意してください。
中途入社または中途退職の場合の給料計算~給与の日割り計算について明示する~
第35条(中途入社または中途退職の場合の給料計算)
給料計算期間の途中で採用された者、退職した者に対するその月の給料は、在籍日数に応じた日割り計算により支給するものとする。
【目的】
前述の通り、労働基準監督署では月給の意味を、働く時間とは関係なく定額で支払う給料とみなします。しかし、入社日や退職日の都合で日割り計算が必要になるケースは、十分に起こり得ます。そうした場合に備えて、月給者であっても給料の日割り計算ができる旨の規定を入れておきましょう。
【POINT】
月給者の中途入社又は中途退職の場合、在籍期間に応じて給料の日割り計算を行うためには、就業規則への記載が必要となります。
カギとなるのは、在籍期間に応じた日割り計算の文言です。給料計算期間の途中に入社または退職があった場合、その月の給料については、日割り計算が行われ、月給の満額は支払われないことを明記しておきましょう。
基本給だけ日割り計算をするのか、各種手当も含めて日割りで計算するのかも決めておくとよいでしょう。
基本給~基本給の決め方について明示する~
第36条(基本給)
1.従業員の基本給は月給とし、額は個別に定めるものとする。ただし、遅刻、早退、欠勤、中抜け等、労働のない時間については欠勤控除するものとする。
2.人事考課により発揮された能力および仕事のアウトプットの量と質を評価し、従業員の基本給は、随時昇給または降給するものとする。
【目的】
第32条(給料の種類)で給料の種類について定めましたが、ここでは、そのうち基本給について計算方法を定めます。
基本給は、その名の通り給料の最も基本となる部分であり、従業員の生活基盤ともなるものです。そのために法律上、最低賃金などの制限を受けます。
しかし、多くの社長は、従業員の努力や業績に対して報酬を変動させることにより、モチベーションを保たせようと考えているのではないでしょうか。
そのためには、一度しきゅうされた給料の額が永遠に継続支給される保証はないということ、つまり給料は働きぶりによって変動することをアナウンスしておく必要があります。
【POINT】
第一項では、基本給の金額について定めます。月給者であっても、働いていない時間については、欠勤控除されることを明記しておきましょう。
また、月給以外、例えば日給月給制度を採用している場合であっても、同様に欠勤控除できる規定を定めておきましょう。日給月給制度の意味することは、労務の提供があろうとなかろうと、1日当たり定額の〇〇円を支給するということです。そのため、欠勤控除の規定が定められていない場合、働いていない時間についても給料を支払わなければならなくなります。
【POINT2】
一般に、基本給は降給させることはできないと考えられていますが、人事考課に基づく降給規定がある場合は、降給があっても構いません。ただし、就業規則に降給についての規定がない場合には、労働条件の不利益変更と指摘される恐れがある。
労働基準法では、就業規則への絶対的記載事項としては、昇給についての記載が定められていますが、降給について記載することは禁止されていませんので、第二項では降給についてもぜひ触れておきましょう。
役職手当~役職手当の決め方について~
第37条(役職手当)
1.役職手当は、会社が定める役職に就いている間、会社が定める額を支給する。
2.役職手当には、会社が定める時間分の時間分労働に対する割増給料が含まれているものとする。
3.役職手当に含まれる時間外労働の時間数は、職務内容に応じて個別に定めるものとする。
【目的】
役職手当とは、その名の通り、役職に対して支払われる給料です。第32条(給料の種類)で役職手当を定めた場合、この条文で、役職手当の計算方法について定めます。
役職手当を規定する目的は、①会社からの期待度のバロメーター②仕事に対する責任感の意識付け③残業代の抑制の3つです。役職手当は従業員のモチベーションアップに有効な手当であると同時に、従業員の残業代の管理に有効な手当となっている。特に③の残業代の抑制に対する役職手当の役割は重要です。役職手当には残業代が含まれていることを明示するとともに、役職手当でカバーされる時間外労働の時間数の決め方についても規定しておきましょう。
【POINT】
本条の第一項では、役職手当の金額について定めます。ただし、役職手当の額について、就業規則に具体的な金額を明示する義務があるかのように誤解されていますが、支給額の決め方が規定されていれば、支給額までは記載しなくても問題ありません。
社長からすれば、役職手当の支給は、会社が定める役職に対して実際にその役職に就いて仕事をしている間だけ、会社が定める額を支給したいところでしょう。そのためには役職手当の支給対象となる役職は会社が定めるということと、役職から外れた場合には支給されない、額は会社が決めるということを明記しておくことがポイントとなります。
【POINT2】
上記の通り、役職手当には、残業代を抑制するという目的もあります。一定範囲内の残業に対する残業代については、役職手当に含めてしまうことで、残業代を一定範囲内に収めるわけです。
第二項では、その点について定めます。役職手当に残業代を服務場合んは、残業時間をカバーする手当が含まれていることを明記しておきましょう。
【POINT3】
役職手当に、残業代を含める場合には、何時間分の時間外労働の時間数が含まれているのかをはっきりさせておく必要があります。第三項ではそれについてさだめます。
なお、もちろん、全従業員に同じ時間外労働の時間数を設定する必要はありません。個別に異なる時間数を定めることもできます。しかし、それでは給料計算事務が煩雑になるため、会社が定める時間数と定め、具体的な数字を記載しないとしても構いません。
資格手当~資格手当の決め方について明示する~
第38条(資格手当)
資格手当は、会社が定める資格を保有し、資格を活用する業務に就いている間、会社が定める額を支給する。
【資格手当】
資格手当とは、その名の通り、資格に対して支払われる給料です。第32条(給料の種類)で資格手当を定めた場合、この条文で資格手当の計算方法について定めます。
経営者としては、資格手当は、単に資格を持っていることに対してではなく、その資格を仕事に活かしてもらうことに対して支払っているというのが本音。資格手当の支給を通じて、従業員のキャリアアップを目指し、会社に有用な資格保有の促進を図りたいところです。
【POINT】
資格手当の支給は、「会社が定める資格」に対して実際にその資格を活用して仕事をしている間だけ会社が定める額を支給したいところです。
ポイントとなのは、資格手当の支給対象となる資格は会社が定めるということと資格を活用する業務に就いている間の限り支給される、額は会社が決めるという事です。
支給対象となる資格は会社が自由に定められます。資格手当の額については、役職手当と同様に、支給額までは記載しなくても問題ありません。
精勤手当~精勤手当の決め方について明示する~
第39条(精勤手当)
精勤手当は、その月の給料計算期間内に、遅刻、早退、中抜け、欠勤がなかった場合に、会社が定める額を支給する。
【目的】
精勤手当とは、毎日出社したことに対して支払われる給料です。第32条(給料の種類)で精勤手当を定めた場合、この条文で精勤手当の計算方法について定めます。
では月給の従業員に対して精勤手当を支給するとはどういうことでしょうか。毎日出社するのが当たり前の人たちに精勤手当を支給することに意味があるのでしょうか。
もちろんあります。遅刻、早退、中抜け、欠勤を防ぐためです。精勤手当の支給を通じて、無遅刻、無欠勤、完全フルタイム勤務を目指す。
【POINT】
精勤手当は、何を持って精勤とするかがトラブルとなりがちです。したがって精勤手当が支払われる条件をできるだけ明確に定めておきましょう。
なお精勤手当を支給する場合、支給要件、支給額は会社が任意に決めて構いません。また精勤手当も他の給料と同様に支給額まで記載しなくても構わない。
通勤手当~通勤手当の決め方について明示する~
第40条(通勤手当)
従業員が通勤するにあたり、会社が認める経路について、会社が定める額をの通勤手当を支給をするものとする。ただし、会社は支給上限額を設定するができるものとする。
2.通勤手当は、実費支給であるため、原則として欠勤の日については支給しない。
【目的】
通勤手当とは、通勤にかかる費用に対して支払われる給料です。第32条(給料の種類)で通勤手当を定めた場合、この条文で通勤手当の計算方法について定めます。
通勤手当は必ず支給しなければならないとお考えの社長結構多いですが、通勤手当の支給、不支給は会社が任意に決めてよいことになっています。
ですので、通勤手当の支給がない企業もたくさんあります。当然、通勤にかかる費用は、会社が全額負担する事でも、一部のみ負担することでも構いません。通勤手当の上限も会社が自由に決めて良いことになっています。
【POINT】
前述の通り、通勤手当は、支給の有無から支給額まで会社が任意に決めて構いませんが、個人ごとに算定方法がバラバラでは管理ができません。そこで本条の第一項で通勤手当の支給要件を定めます。ポイントは、会社が認める合理的な通勤経路にて算出することと明記しておくことです。これにより、わざと遠回りの経路を申請して過大な通勤手当を得ようとする不正行為を防ぐことができます。
また通勤手当は非課税扱いとできますが、非課税扱いにできる金額には上限がある。そのため、支給額は税法上の非課税額を上限とするということも入れておくのもいいでしょう。
【POINT2】
第二項では欠勤日の扱いについて定めます。通勤手当は実費支給が原則です。そのため、1か月低額で支給している場合は、通勤していない日についてはその日数分を控除することができます。
この点を明記しておくといいでしょう。
ただし定期券などで現物支給している企業については、欠勤などによる減額がなじまないので、控除についての記載は不要です。
時間外労働・休日出勤・深夜労働に対する手当~残業代などの決め方について明示する~
第41条(時間外労働・休日出勤・深夜労働に対する手当)
1.業務命令による法定の労働時間を超えた労働時間については、算定基準給料の3割5分増しの休日手当を支給する。
2.業務命令による法定休日の労働時間については、算定基準給料の3割5分増しの休日手当を支給する。
3.業務命令にする深夜(午後10時から午前5時までの間)の労働については、算定基準給料の2割5分に相当する深夜手当を支給する。
4.算定基準給料とは、基準内給料から通勤手当を除いたものとする。
5.時間外労働、休日労働、深夜労働は、業務命令に基づき行うものとする。個人的な都合により行った場合には、通常の給料および割増賃金の支払いは行われないことがある。
【目的】
第20条(時間外労働、深夜労働、法定休日・休暇日の労働)のところでも解説したように、もし時間外労働、休日出勤、深夜労働が発生した場合には、それに対する手当を支払う必要があります。そのため、この条文で、これらの手当の計算方法について定めます。なお法定休日労働に対する手当は、1週間休みなく労働となった場合に会社が課されるペナルティという意味合いがあります。深夜労働に対する手当は、本来、人間が寝ているべき時間に働かせていることに対するペナルティです。
【POINT1】
本条の第1項から第三項では、それぞれ時間外労働、休日出勤、深夜労働に対する割増率を定めています。
割増手当を計算するにあたり、算定基準給料を用いますが、これは労働基準法により、給料の総支給額から、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた手当、1か月を超える期間ごとに支払われる給料を引いた額と定められています。
ここで注意しておきたいのが、時間外労働に対する割増率は、2割5分以上、法定休日日勤務に対する割増率は3割5分以上、深夜労働に対する割増率は、2割5分以上と法律で定めているということです。したがって、会社の都合で一律いくらという支払い方は違法となる可能性がある。
なお、法定時間外労働となるのは、1日8時間又は1週間40時間を超えた場合だけです。
【POINT2】
残業代が多くて大変と嘆いている社長は多いようです。残業代が膨れ上がっている理由は、自己申告制になっているからではないでしょうか。
法定労働時間がある以上、時間外労働、休日出勤は、本来は違法行為です。だらだら残業、生活残業など本来必要のない時間外労働については、会社が毅然とした態度を取れるよう、上記例文の第五項のように、会社が必要に迫られ命じたもの以外についての手当は拒否できる規定にしておきましょう。
ただし、会社が従業員が残業を行っていることを知っていながら、そのまま放置した場合は、残業の許可を与えたとみなされます。黙示の指示といいますが、会社が残業を黙認したと扱われ、残業代を支払わなければならなくなるのです。ではどうすればいいのでしょうか。早く帰れとその者に指示すれば大丈夫です。帰れという業務命令を出すのです。今日やる必要のない仕事まで従業員にさせないよう留意することが大切です。
休業手当~会社都合の休業時の手当の決め方について明示する~
第42条(休業手当)
1.会社の都合により、従業員を自宅待機させる場合がある。
2.その場合、労働基準法に定める前3か月間の平均賃金の60%を時給換算にて休業手当として支払うこととする。
3.休業手当が支給されるのは、会社都合による休業が命じられた日についてのみとする。会社の責任の及ばない休業については支給されないものとする。
【目的】
労働契約を守るのは従業員だけではない。当然会社も守らなければならない。会社には仕事を与える義務があります。会社の都合で一方的により工事が延期となり、その日を公休とした場合や飲食業で客の入りが悪い日について早帰りさせる場合などです。
このように会社都合により、労働契約で定めた日または時間の仕事を与えることができなかった場合には、休業手当の支払い義務が生じます。そのため、この条文で休業手当の計算方法について定めておきます。
【POINT】
本条の第二項では、休業手当の金額を定めます。会社都合で休ませた場合には、労働基準法上、臨時の手当を除く前3か月に支払われた給料の総支給額の平均(平均賃金)の60%以上の支払いがペナルティとして会社に課されます。したがって、ここで60%未満の数値を設定しても無効となり、60%の支払いが求められますので、注意してください。
【POINT2】
会社の責任の及ばない事由により従業員を休業させる場合まで、休業手当を支払う責任はありません。例えばインフルエンザにかかったなど、会社の責任外で出勤を認めることができない場合がこれに該当します。
この場合、休業手当は支給しなくても構いませんが、就業規則に記載しておかないとトラブルになることがあります。そこで上記条文の第三項のように会社責任の休業についてのみ、休業手当を支給する旨記載しておきましょう。
なお休業手当を支給するということは、自宅待機を命じることを意味します。休業イコール公休日ではないことには留意が必要です。
また状況によっては再出勤もあり得ますので、従業員には、連絡がつくようにすることと、再出勤できる体制をとっておくことを指示しておきましょう。
賞与の種類~賞与の次期と決め方について明示する~
第43条(賞与の種類)
賞与は、原則として毎年、夏季賞与として6月、冬季賞与として12月に従業員各人の勤務成績を人事考課に基づいて算定し、支給するものとする。
ただし、会社の業績によっては、支給の時季を変更しまたは支給しないことがある。
【目的】
賞与とは、いわゆるボーナスの事です。第32条(給与の種類)で賞与を定めた場合、この条文で賞与の計算方法について定めます。
なお賞与を必ず支給しなければならないと思っている社長は結構多いようですが、しかし実は、賞与の支給の有無は会社が自由に決めてよいことになっています。支給時期および支給額も会社が任意に定めて構わない。
そのため、賞与には、会社の年間人件費の調整弁の役割を持たせることができる。
【POINT】
賞与があるのであれば、支給額の決定方法と支給時季について明示しておかなければなりません。支給額も任意ですので、個人ごとに人事考課によって決定させることも伝えておきましょう。
賞与規定を定めるにあたって、もっとも重要なことは、会社の業績の変動を想定し、賞与の支給が行えない場合があることも規定しておくことです。したがって、支給の時季を変更する場合があることと、支給自体ができない場合があることは、必ず記載しておきましょう。
賞与の支給要件から賞与の対象者と算定期間を明示する~
第44条(賞与の支給要件)
賞与の算定期間は、次の通り定める。支給対象者は、算定期間に在籍し、かつ賞与支給日に在籍している者(入社後6か月を経過しない者を除く)とする。
夏季賞与12月1日から5月末日
冬季賞与6月1日から11月末日
【目的】
賞与を支給する場合、もっとも労働問題に発展するのが、退職者からの請求です。社長からすればなんで退職した者にもまで賞与を支給しなければならないんだとお考えになるのも無理はありません。しかし、退職した人からすれば、賞与の算定期間内に在籍していた分だけは貰えるはずと考えるわけです。そうしたトラブルを避けるため、賞与の支給要件をきちんと定めておくといいでしょう。
【POINT】
賞与の支給要件のポイントは2つあります。1つ目は賞与算定期間に在籍していることです。そして2つ目は、賞与支給日に在籍していることです。こう表記することにより、退職者への賞与支払いは免れます。
なお、賞与の支給回数は、年間2回に限らず何回支給しても構いません。ただし、それぞれの賞与支給には人事考課の反映がなされる算定期間を設定しなければなりません。
服務の基本原則~服務規律とは何かを明示する~
第45条(服務の基本原則)
服務規律は職場ルールの基本となる大事な約束事となる。従業員は、会社生活を送る上での「秩序・行動規範」を遵守し、会社に協力しなければならない。
【目的】
一定の秩序と行動規範がない会社では、従業員は自分の都合のいいように解釈を拡大し、身勝手な言動をとるようになりがち。
「服務規律は何のためにあるのか」「会社で働くにはどんなことを守らなければならないのか」「どんな働き方をすれば評価されるのか」「どんなことをすると契約違反になるのか」を従業員に伝えておく必要がある。
【POINT】
ここでのポイントは、服務規律が会社が定める「秩序・行動規範」であり、労働契約を結んだ以上、それを守らなければならないということを伝えることです。具多的には各服務規則の内容については、この後に続く各条文で定めていきます。
出退勤の管理~出退勤の管理方法を明示する~
第46条(出退勤の管理)
始業、就業、休憩の時刻は厳守し、会社が定める方法によって、本人が直接に出退勤の時刻を記録しなければならない。出退勤の記録を代理で行うことは禁止とする。
【目的】
労働時間管理は会社の労務の基本です。従業員にとっては大きな問題ではなくても、会社にとっては重要なことです。
労働基準法上、会社には法定労働時間を遵守するために、従業員の労働管理が義務付けられています。実働時間を把握するためには、始業時刻、終業時刻、休憩時間の把握が必要になります。したがって、出退勤の時刻を記録するルールは、きちんと就業規則で明示しておいた方がいいでしょう。
【POINT】
会社が定める方法としては、タイムカードへの打刻、出勤簿への記入などがありますが、いずれにしても、従業員本人が記録しなければならないことを明記しておくのがポイントとなります。
正確な労働時間管理のためには、タイムカードの刻印は必ず従業員本人に行わせる必要があります。遅刻しそうだから同僚にタイムカードの刻印をお願いするとか、たとえ5分でも早退する時も誰かに定時に刻印をお願いすることは厳禁であることを伝える。
遅刻・早退・欠勤・中抜け~遅刻・早退・欠勤・中抜けの際の手続きを明示する~
第47条(遅刻・早退・欠勤・中抜け)
1.従業員は、定められた時間、仕事に専念しなければならない旨の労働契約を会社と結んでいる。原則として、自己都合による遅刻・早退・欠勤・中抜けは契約違反となることに留意すること。
2.労務の提供がない時間については、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき給料の支払いは行われない。
3.やむを得ず、遅刻・早退・欠勤・中抜けがある場合には、事前に会社に連絡をし(メールは不可)、承認を得なければならない。
4.正当な理由があって、事前に連絡ができなかった場合には、事後速やかに会社に届出を行い追認を得なければならない。追認が得られない場合は、職務放棄の扱いとし、懲戒処分とする。
5.遅刻・早退・欠勤・中抜けがった場合、会社が認めない限り、有給休暇への振替は行わない。
6.不在により業務に支障をきたさないよう申し送りを行い、同僚に迷惑を掛けないように配慮しなければならない。
【目的】
従業員は、会社と毎日働く契約を結んでいます。そのため、本来は従業員の都合による遅刻・早退・欠勤・中抜けは許されません。
そうはいっても、病気になったり、家庭の事情などにより、完全にフルタイム出勤することは難しい場合もあります。そうした場合については、いっさい認めないという事では厳しすぎるでしょう。
ただしそうした場合に、その場その場で対処を決めていては、「あの時はこうだったのに」「あの人の時はああだったのにといった不公平が生じ、労務トラブルに発展する可能性があります。そうした事態を防ぐために、あらかじめ就業規則で、やむを得ず遅刻・早退・欠勤・中抜けする際のルールについて定めておきましょう。
【POINT】
労働契約の基本は、毎日必ず出社して、所定労働時間、労働を提供することです。従業員に精勤を推奨するためにも、自己都合による遅刻・早退・欠勤・中抜けは、ノーワークに当たる契約違反であるという大前提をまず第一項で伝えておきましょう。
【POINT2】
法律上、従業員側の都合により労働の提供がなされない場合には、その時間分の給料は減給とできます。第二項では、そのことを明示しておきましょう。
ただし、減給できるのは、労働の提供がない実時間相当分までですので注意してください。それ以上の罰金を科すような規定はできません。
【POINT3】
やむを得ず、遅刻・早退・欠勤・中抜けがある場合には、事前にかいしゃに連絡するのが社会人としての常識ですが、無断で欠勤して後で会社に報告すればいいと考える人もいます。そこで第三項で、遅刻・早退・欠勤・中抜けはあくまでも例外的に認めれられるものなので、事前の承認が必要であることを理解させておきましょう。
【POINT4】
事前連絡が原則とは言っても、急な病気やけがなど、当日の朝までに会社に連絡ができないけーすも考えられます。第四項では、そうした場合のルールについて定めておきます。
ポイントは、会社の追認が必要だということを明記しておくことです。会社から追認が得られない場合は、一方的に職務放棄に該当し、懲戒処分を与えることもできます。
【POINT5】
遅刻・早退・欠勤・中抜けをしておいて、有給休暇への振替を主張する人もいますので、第五項では、そうした扱いについて明示しておきます。有給休暇への事後振替は会社に決定権がありますので、ここでは、原則は認めないが、会社が認める場合には振り返るとすることで、リスク管理ができます。
【POINT6】
第六項では、会社が遅刻・早退・欠勤・中抜けを承認した場合に、従業員に求める義務を定めておきます。これも社会人としての常識ですが、不在となる場合については、同僚に配慮することと業務に支障をきたさないことをルール化しておきましょう。
無断欠勤等~無断欠勤等とみなされる要件と処分を明示する~
第48条(無断欠勤等)
1.会社の承認または追認を得られない遅刻・早退・欠勤・中抜けがあった時、虚偽の理由で遅刻・早退・欠勤・中抜けした時、または年次有給休暇の請求に対し、取得日の変更を指示されたにも関わらず欠勤した時には、いずれも無断での遅刻・早退・欠勤・中抜けとみなす。
2.無断での遅刻・早退・欠勤・中抜けとみなされた場合には、懲戒解雇を含めた懲戒処分を行う。
3.無断欠勤が連続し、従業員本人との連絡が取れなくなり行方不明となった場合、無断欠勤があった最初の日に退職の意思表示があったものとみなし、その日から14日を経過した日に会社は、自己都合退職又は懲戒解雇とする。
【目的】
無断での遅刻・早退・欠勤・中抜けは本来あってはならない行為です。従業員側の都合で労働の提供がなされないのは、重大な労働契約違反に該当します。
当然、そうした労働契約違反に対しては、会社は厳しい態度で対処することになりますが、これもその場その場での対応では、労働トラブルに発展する可能性があります。したがって、その際のルールを就業規則に明示しておきましょう。これにより、労働トラブルを未然に防ぐことができると共に、重大な労働契約違反に対する会社の姿勢を従業員にアピールできます。
【POINT】
第一項では、どのような場合に無断欠勤などとみなされるかを定めておきます。これを定めておかないと、労働トラブルとなった際に無断欠勤に当たる、当たらないの水掛け論になる可能性があります。
会社の承認を得ていない場合はもちろんですが 、虚偽の理由で承認を得た場合など、想定できるケースをもらさず記載しておきましょう。
【POINT2】
第二項では、無断での遅刻・早退・欠勤・中抜けとみなされた場合の処分について定めておきます。実際にはその悪質さに応じて処分を変えることになると思いますので、ここでは、場合によっては、懲戒解雇を含めた懲戒処分を受けることを明記しておけば、どのようなケースにも対応できるでしょう。
【POINT3】
最近は、入社後すぐに出社しなくなるケースが増えています。従業員本人と連絡がつかず、どう対処してよいのかわからない。とはいえ、行方不明となった従業員をいつまでも放置することはできませんので、会社が退職の手続きを行うことになる。
ただし、本人からの退職の申し出がないうちに退職の手続きを行うと、会社から解雇されたと訴えられるリスクがある。そこでそうしたリスクを避けるために、第三項で行方不明となった従業員の取り扱いについて記載しておきます。
個々では、どこで退職となるかの線引きを定めておくことがポイントになります。労働基準法上、退職は本人の申し出があった日から理由を問わず、14日経てば労働契約は解除されることになっていますので、無断欠勤があった最初の日を退職の申し出のあった日とみなし、そこから14日経過後に退職の手続きが取られる旨の記載が基本となるでしょう。ただし14日以上であれば、退職手続きの日は会社の任意で構わない。
私傷病欠勤~けがや病気による欠勤の扱いを明示する~
第49条(私傷病欠勤)
1.私傷病による欠勤は、原則として無給とする。
2.私傷病欠勤があった場合、会社が認めた場合を除き、有給休暇への振替は行わない。
3.私傷病による欠勤期間における社会保険料については、無給であっても法律上当然に徴収される。給料の欠勤控除により社会保険料等の本人負担分の控除ができない場合は、会社が指定する期日までに本人負担分を会社に納付しなければならない。
【目的】
私傷病とは、仕事とは直接関係のない個人的なけがや病気の事です。本来、会社と労働契約を結んでいる以上、従業員は個人的な事情で会社を休むことはできません。しかし、ケガをしたり病気に罹った場合には、出勤しても、よい仕事の提供は見込めないでしょう。その場合、会社は欠勤を認め、労働を免除することになりますが、欠勤するにあたっての自社ルールを定めておかなければならない。
【POINT】
第一項では、私傷病による欠勤があった場合の給料の扱いについて定めます。基本的に労働の提供がない時間に対して、給料の支払いが発生するか否かの判断は、仕事をしなかった理由が従業員側にあるか、会社側にあるかで決まります。従業員側の責任で労働の提供がなかった場合には、ノーワーク・ノーペイの原則通り、給料の支払いは行われなくても構いません。したがって、私傷病で欠勤する場合には、冷たいようですが従業員側の責任となり、無給となります。
【POINT2】
当日の朝、私傷病を理由に欠勤したいとの連絡はよくあります。その場合、有給休暇への振替も同時にお願いされることが多いようです。
しかし、社長からすれば有給休暇への振替は必ずしも認めたくないケースもあるでしょう。そんな場合に対応できるように、上記例文の第二項のように、有給休暇の当日申請は原則として認めないとしておきましょう。
【POINT3】
長期で休んだ場合、ノーワーク・ノーペイの原則により給料の支払いが発生せず、給料から控除すべき社会保険料の自己負担分が徴収できなくなり、ずるずると滞納につながるケースがあります。
そのようなことが起こらないように、上記例文の第三項のように、会社が指定する期日までに会社に納付しなければならないことを明示しておく必要がある。
医師の診断書~ケガや病気の際に診断について明示する~
第50条(医師の診断書)
1.会社には従業員の健康状態を把握し、勤務の可否を判断しなければならない使用者責任があることより、従業員が私傷病(メンタル不全を含む)を理由に欠勤する場合、医師の診断書の提出を求めることがある。個人的な傷病である以上、診断書の発行に要する費用は本人負担とする。
2.前項の診断書が提出された場合であっても、会社は、労務管理上必要と認める場合には、会社の指定する専門医の受診を命じることがある。
3.従業員は、会社が指定する専門医の受診を拒否することはできない。ただし、この場合の受診に要する費用は会社が負担するものとする。
【目的】
会社には、労働安全衛生法上の使用者責任があり、従業員が健康で安全に働けるように配慮をしなければなりません。したがって、従業員が体調不良を理由に勤務できないと訴えた場合、会社は労働の免除を検討せざるを得ません。
とはいえ、その際には、事実確認が必要となります。単に従業員の自己申告だけで欠勤を認めていては、不正のし放題になる危険性があるからです。
そこで、従業員に自らの体調不全を証明してもらう際のルールを就業規則に定めておくといいでしょう。
【POINT】
本条の第一項では、従業員が私傷病で欠勤した場合の、自己の健康状態の証明方法について定めます。一般的には、主治医による診断書の提出を求めることが、最も合理的な証明方法となるでしょう。
短期間の欠勤に対してまで診断書の提出を求めることは合理的ではありませんが、欠勤の長期化が見込まれる場合には、状況把握のため診断書の提出は必須とすることをお勧めします。
なお、その際、診断書の発行に要する費用は本人負担で構いません。採用選考時に提出する履歴書を購入する費用と同じ考え方です。履歴書の費用を会社が負担することなどありえません。
【POINT2】
第二項では、従業員が私傷病で欠勤した場合に、会社が命じる診断について定めます。主治医による診断書があるにも関わらず会社が診断を命じるとなると、医者ぐるみで嘘を吐いていると疑っているように感じるかもしれませんが、そうではありません。これは、従業員の主治医が必ずしても、その傷病の専門医であるとは限らないからです。
従業員の私傷病が原因で休みがちになった場合、会社には、安全衛生配慮義務というものがあるので、安易に就労判断を行う必要があります。そうした場合に備えて、会社が指定する専門医への受診と診断書の提出を求めることができるようにしておく必要がある
【POINT3】
第三項では、第二項で定めた会社が命じる診断の扱いについて定めます。ここでは業務命令として、会社が命じる診断を従業員が拒否できないようにしておくのがいいでしょう。ただしその場合は会社の命令で診断を受けるわけですから、診断書発行に要する費用の費用負担責任は、会社側にあると考えるのが適正です。
服務の基本~基本的な勤務態度について明示する~
第51条(服務の基本と遵守事項)
労働契約とは、会社が勤務時間を買い取る契約である以上、従業員は個人的な都合で働くことはできない。会社の求める働く姿勢として服務の遵守事項を定める。
【服務の遵守事項】
1.挨拶、礼儀は人間関係の基本となる。会社は、毎日の挨拶、対人関係に関する礼儀作法やマナーの遵守を最重視する。挨拶など礼儀作法を大切にし、良識ある行動を心がけること。
2.常に健康には留意する事。体調には自ら気を使い、健康な状態で出社できるように心がけること。
3.従業員の給料はすべて顧客から支給されていることを忘れないこと。顧客には、親切、丁寧に接することをこころがけること。
4.会社のルールを順守し、常に誠意を持っても責任ある行動を提供する事。
5.勤務中は仕事に集中すること。
6.会社の方針および自己の責務を良く理解すること。
7.社長の指揮と計画の下に、全員が協力して業務に就くこと。
8.故意に業務命令、会社の諸規則に違反した場合には、会社は労働契約の破棄の意思表示があったものと判断し、労働契約の解除の扱い(懲戒解雇)をすることがある。
9.仕事は正確かつ迅速に処理し、いつも能率を意識して行うこと。
10.業務上のミス・クレームなどがあった場合には、すぐに事実を社長に報告し、会社の指示を仰いで対処すること。
【目的】
自社での働き方はこうあるべきだとか逆にこれをされると会社はちょっとつらいといったことを規定にしたものを服務と言います。服務の基本を定めることにより、会社が求める働く姿勢を明らかにできます。今どきの従業員は、自己中心的に物事を考える傾向があります。自社で働くにあたっての基本となる約束事を定め、「これができないようでは自社にいる資格なし」といった会社生活の初歩を伝えておきましょう。
【POINT】
記載内容は社長が自由に決められます。「社長の身振りから、自分が何をすればいいのか考えること」など、社長の求める働く姿勢について明記しておきましょう。
ただし、禁止事項を並べたてることはタブーです。従業員がやる気をなくしてしまいます。前向きな訓示を書きましょう。
働く上での禁止事項~禁止となる勤務態度について明示する~
第52条(働く上での禁止事項)
会社で働く以上、周囲に気を配り協調が求められるため、上司や同僚に迷惑をかける言動は厳禁とする。会社で働く約束事として、働く上での禁止事項について具体的に定める。
【禁止事項】
1.職務の権限を越えての勝手な判断で仕事を進めること。
2.職場、同僚が迷惑と感じるような言動は厳禁とする。
3.服装などは清潔を保ち、他人に不快感を与えるファッションは差し控えること。
4.自身の品位を保ち、ひんしゅくをかう言動は慎むこと。
5.会社の名誉を傷つけ、会社に不利益を与える言動はいっさい慎むこと。
6.会社の秩序を乱す行為。
7.セクハラ・パワハラで不快感を与え、職場の空気を悪化させること。
8.従業員同士での金銭貸借すること。
9.会社の名誉を汚し、信用を失墜させるような言動。
10.会社に虚偽の申告をすること。
11.飲酒運転をし、または飲酒運転をほう助すること。
12.勤務時間に勝手に職場を離れ、私事を行うこと。
13.会社施設、社有車、備品などを私用に使うこと。
14.会社での立場を悪用して私的利益を得ること。
15.会社内で宗教活動、政治活動、販売活動をすること。
16.業務上必要でない日常携帯品以外の私物、危険・衛生上有害なものを会社内に持ち込むこと。
17.服装などの身だしなみについて他人に不快感や違和感を与えるものを着用すること。
18.会社の施設、備品等、書類等を粗雑に扱うこと。
19.業務上知り得た情報を勝手にもちだすこと、あるいは情報を漏洩すること。
20.会社が貸与したパソコンを業務に必要な範囲内で使用できるものとし、私用に利用することは不許可とする。
21.許可されたソフトウェア以外のインストールは禁止とする。
22.会社のパソコンなどを利用してインターネットにて業務に関係のないWebサイト等を閲覧すること。
23.会社の情報、顧客情報、取引先情報、個人情報、データ、ID、パスワード等を第三者に教えること。
24.個人で開設したホームページやブログ等により、会社・顧客に関する情報を漏洩させること。
25.私物のパソコンに業務に関連する情報を保有すること。
【目的】
会社が求める働き方を明記しようとする場合、反作用として会社が求めたくない働き方が生じます。本当に求める働き方は、されたら困る働き方を挙げていくことによりあぶりだされます。
そのため、会社はこれをされるとちょっと辛いということを働く上での禁止事項として列挙していく必要がある。
【POINT】
記載内容は社長が自由に決められます。社長の本音で、これをされるとかなりつらいということをできる限り多く、遠慮なく列挙してください。
所持品検査命令~所持品検査について明示する~
第53条(所持品検査命令)
会社は、従業員が会社の情報、物品などを外部に持ち出す恐れがあると判断した場合には、会社情報保護の観点から、その者に対して所持品の点検を求めることができるものとする。従業員はこの点検を拒むことができないものとする。
【目的】
会社情報保護の観点から、会社の重要な情報などが外部に持ち去れないよう予防線を張ることも必要です。今の時代、会社情報が流出されてしまってからでは手遅れとなり、会社存亡に直接影響してきます。会社情報保護は、企業にとって厳重な管理が求められます。
【POINT】
ここで書くべきことは、「会社が所持品検査を実施できる」ということを「従業員はそれを拒否できない」ということです。
ただし、いくら所持品検査命令を発令できるからといって、やはり安易に所持品検査命令はトラブルの元です。したがって、実際には目撃者がいるなど明らかな証拠がある場合に限り行うようにしましょう。
パソコンデータ閲覧~パソコンデータの点検について明示する~
第54条(パソコンデータ閲覧)
会社は、業務上必要と認める場合には、会社のパソコン内に蓄積されたデータ等をいつでも閲覧することができるものとする。従業員はこの点検を拒むことはできないものとする。
【目的】
今の時代、1人1台のパソコンが与えられ、個人ごとにパソコンを通じて会社情報を作成し、顧客情報を保有していることも多いでしょう。そうしたパソコン内のデータもやはり会社の機密事項です。
したがって従業員のパソコンによる機密情報の流出と不正などの事故防止の観点から、会社がパソコンの検閲もできるよう就業規則で定めておきましょう。
【POINT】
カギとなるのは、会社が必要と判断する場合に抜き打ちで閲覧できるようにしておくことです。パソコンを介しての不正アクセスや情報の漏洩を未然に防ぐために行います。
ただし所持品検査命令と同様に、やはり安易な点検はトラブルの元です。情報の漏洩、不正アクセス等の疑いが強い場合に限って行うようにしましょう。
ハラスメントの禁止~セクハラやパワハラへの対処について明示する~
第55条(ハラスメントの禁止)
1.セクシュアルハラスメントの禁止
①セクシュアルハラスメントとは、職位を悪用した性的な言動に対する従業員の対応等により、労働条件に関して不利益をあたえること、または性的な言動により職場の就業環境を害する迷惑行為をいう。
②会社は、セクシュアルハラスメントを行ったものについては、懲戒解雇を含む重い懲戒処分を与えるものとする。
2.パワーハラスメントの禁止
①パワーハラスメントとは、職位を悪用して甲斐の従業員に対し、業務の範囲を超えた言動により、精神的、肉体的な被害を与えることをいう。
②会社は、パワーハラスメントに該当する行為を行ったものについては、懲戒解雇を含む重い懲戒処分を与えるものとする。
【目的】
会社内の職位を悪用して、立場の弱い従業員を精神的に攻撃することをハラスメントと言います。大きく2つのハラスメントがあり、1つはセクシュアルハラスメント。もう一つがパワーハラスメントです。
いずれも立場の弱い従業員がストレスを溜めてしまい、会社の業績に大きく影響を及ぼします。ハラスメントを解決できるのは社長しかいません。大切な従業員を守ってあげてください。
【POINT】
セクハラやパワハラは、加害者側からするとその認識が低いことが多く、ハラスメントをしていることに気が付いていないことが多いようです。したがって、セクハラとパワハラの定義を記載しておくことにより、従業員にきちんと認識させることが大切です。
物品などの取り扱い~設備や備品等の取り扱いについて明示する~
第56条(物品等の取り扱い)
1.従業員は、会社車輌、設備、備品を大切に扱い、消耗品や水道光熱の節約に努めなければならない。また、書類等は丁寧に扱い、その保管を厳にする義務がある。
2.会社車輌の運転は常に慎重に行い、安全運転を心がけること。
【目的】
会社の備品は、社長としては大切に使ってもらいたいと思っていても、従業員は消耗品位にしか思っていないことが多いようです。わざわざ就業規則にかくほどのことでないと思うかもしれませんが、会社の備品や資源を大切に扱うことを従業員に意識付けるため、あえて就業規則に明記しておくのも一つの手です。
【POINT】
会社の備品は大切に扱い、経費削減を心がけることも、従業員の義務であるということを明記しておきましょう。
また特に業務上運転することが多い会社であれば安全運転も従業員の義務であることを伝えておくといいでしょう。
情報管理及び保護関係~社外秘の扱いについて明示する~
第57条(情報管理および保護関係)
1.会社が保有する情報を部外者に漏らしてはならない。
2.職務上知り得た個人情報および会社の機密情報を社内であっても第三者に漏らしてはならない。
3.在職中および退職後であっても、業務上知り得た会社の情報および会社の不利益となる事項を第三者に漏らすことは禁止する。
【目的】
個人情報保護法により、企業に対する個人情報の管理の徹底が求められています。個人情報や会社の機密情報の漏洩があれば、今の時代、損害賠償にまで発展することも想定しなければなりません。
情報漏洩対策というと、ウィルス感染などへの技術的な対策をイメージするかもしれませんが、実は最も起こりやすいのは、従業員の油断やうっかりミスによる情報漏洩です。会社が保護する必要のある情報については、従業員にも十分に注意を喚起しておき、慎重な取り扱いを求める必要があります。
【POINT】
在職中はもちろん、退職後であっても会社情報の保護は継続し、情報の漏洩は禁止であることも伝えておきましょう。なお条文中で具体的に保護の対象となる情報について列挙することも可能ですが、会社が保有する情報とすることにより、広範囲に保護対象となる情報を指定できます。
内部通報~内部通報の義務と扱いについて明示する~
第58条(内部通報)
1.従業員には、迷惑行為や不正を発見した場合には、直ちにそれを社長に報告する義務がある。
2.社長は、通報した者を不利益に取り扱うことはしないことを約束する。また、報告者についての秘密は厳守し、保護することを約束する。
【目的】
社内で問題が発生しているときに、従業員の間では周知の事実になっているにも関わらず、社業が気づくまでに相当の時間がかかるというケースがあります。このような場合、最初は小さい問題だったのに、時間と共にどんどん大きな問題になってしまい、社長が気づいた時にはもう手遅れという事もあり得ます。問題は、なるべく早期に発見した方や、解決しやすいものです。
したがって、知らぬは社長だけという状態にならぬように、従業員が迷惑行為や不正を発見した時には、直ちに社長に知らせる規定を作っておきたいところです。もちろん、社長自身が社内が問題がないか常にきちんとアンテナを張っておくというのが大前提ですが、就業規則で社内の問題行為の報告を義務付けておくと、従業員側も心理的に報告をしやすくなるはずです。
【POINT】
本条の第一項では、問題行為を発見した場合の報告先を定めておきます。従業員数が何百人、何千人といる大企業では難しいかもしれませんが、基本的には社長が直接窓口となるんがベストです。人事部長や担当役員への通報では対処が遅れ、傷口が広がる可能性があります。従業員間のナーバスな問題に対しては、社長が直接窓口となって解決を図らなければなりません。
また、情報提供者に対する守秘義務を徹底するためには、なるべく関与する人数を少なくする必要があります。その意味でも、社長が窓口となるのがベストでしょう。
【POINT2】
第二項では、報告者の扱いについて定めます。問題行為の報告を妨げる一番の要因は、自分が社長に報告したことが明らかになると、密告者として社内から孤立してしまうのではないかという従業員の不安感です。そうした不安感を取り除くためには、情報提供者に対する守秘義務が発生すること、通報したことによる不利益な処遇をすることがないこと、報告者が特定されないよう、最新の注意を払うことをはっきりと明示しておくことがポイントとなります。
従業員教育~社内教育の扱いを明示する~
第59条(従業員教育)
1.会社は、従業員の技能を向上させるために必要に応じて社内教育を行い、または外部教育に参加させることがある。
2、業務命令である以上、従業員はこの教育を拒否できないものとする。
3.会社は、従業員教育の結果を人事考課に反映させるものとする。
【目的】
会社にとって、従業員は一番の資産です。従業員の能力の向上は、そのまま会社の成長につながります。社長としては、従業員が自主的に賢さんして成長してくれるのが理想でしょうが、なかなかそうはいきません。そこで業務に必要な知識やノウハウを従業員に身に着けてもらうために、社内や社外での教育・研修を行うことになります。
同じ知識とノウハウを従業員に与えて、横一線の状態から一斉にスタートさせることによって、従業員がどう成長するのかを評価することもできます。
しかし、せっかくコストをかけて教育を行っているのに、社長の想いとは裏腹に惰性的に受講しようとする従業員は多いものです。また教育が必要なものに限って、教育を嫌がる傾向がみられます。業務が忙しいとか、顧客とのアポイントが優先と言い訳をして参加を嫌がる従業員はいるものです。これでは思い通りの成果は上がりません。
そうした事態を防ぐためには、就業規則で従業員教育の意味を伝え、教育を受ける上でのルールを定めておくといいでしょう。
【POINT】
ここでは、教育を受けることは従業員の義務であるということを理解させるのがポイントとなります。そのためには従業員教育の結果を人事考課に反映させるということも定めておくといいでしょう。
従業員教育は、人事戦略上必要なものである以上、個人的な判断で受講しないことは許されません。受講拒否はできないことと、受講結果を人事考課に反映させ給料に連動することを明示して、従業員教育の成果の極限化を目指しましょう。
従業員教育が単なる通過点に思われては困ります。従業員教育を受けることは義務であって、権利ではないことを理解させる必要があります。
安全配慮義務と自己保健義務~健康管理に関する会社と社員の義務を明示する~
第60条(安全衛生配慮義務と自己保険義務)
1.会社は、従業員の安全衛生の確保および改善を図り、安全で健康に働ける職場環境のための必要な措置を講ずる。
2.従業員も会社が定める安全衛生に関する指示に協力し、自己保健を図り、健康な状態で勤務できるように努力しなければならない。
【目的】
労働安全衛生法上、会社は従業員の安全を脅かすような作業命令や、健康を害するほどの長時間労働をさせない義務があります。これを安全衛生配慮義務といいます。特に就業規則で宣言しなくても、会社に安全配慮配慮義務と言います。特に就業規則で宣伝しなくても、会社に安全配慮義務がある事には変わらないのですが、あえて会社が安全配慮義務を遵守することを明示しておくことで、会社が健全で快適な職場を作っていく姿勢であることを従業員にアピールすることができます。
【POINT】
ここでのポイントは、会社に従業員の健康と安全を守る責任があることを示すと同時に従業員にも自分の健康良好な状態に維持しなければならない義務があることを示しておくことです。
従業員の健康管理は、会社が努力するだけでは成り立ちません。業務上の事故や健康障害について会社に一定の責任があることは確かですが、従業員自身が日ごろ不健康な生活を繰り返している場合など、従業員にも責任が問われて然るべきベースも存在します。
そのため、労働安全衛生法では、従業員に対して自分自身の健康管理の努力についても同時に義務付けています。これを自己保健義務と言います。
会社のために働く労働契約を結んだ以上、従業員は、毎日健康な状態で労働力を提供しなければならない。会社が負うべき義務と責任を明らかにした上で、従業員にも自信の健康と安全を守る責任があることを理解させておくことが重要です。
健康診断~定期健康診断の扱いを明示する~
第61条(健康診断)
1.会社は、入社の際および毎年1回の定期健康診断を行うものとする。定期健康診断に要する費用は会社の負担とする。
2.従業員は、健康診断の受診を拒否することができない。定期健康診断を受診しない場合は、懲戒処分とする。
3.健康診断結果の情報は、安全配慮義務の関係上、会社が一括して管理を行う。よって、従業員個人に健康診断結果が通知された場合でも、従業員はその結果を会社へ提出する義務を負う。
4.従業員は健康診断の結果に異常の所見がある場合には、再検査等を受診しなければならない。この場合の再検査に要する費用は従業員本人の負担となる。
5.従業員が正当な理由なく再検査などを受診しない場合、労働安全衛生上の理由から会社は当該従業員に対し、就業禁止の措置又は配置換えを行うことがある。健康と安全確保のために行うことより、従業員は拒否することはできない。なお、就業禁止期間についての給料は、ノーワークノーペイの原則から無給とし、配置替えに伴う職務の変更にあたっては給料の変更もあり得る。
6.会社は、従業員の日常の勤務状態から、健康管理上必要と判断した場合には、従業員に対し健康診断の受診ないし、医師への検診を命じることがある。この場合も従業員は受診および結果を会社へ通知することを拒否することができない。なお、この場合の受診に要する費用は、従業員本人の負担とする。
【目的】
もともと心臓に不調を抱える従業員に対し、心臓に負荷のかかる作業をされた結果、重大な心臓疾患を引き起こしてしまったら、会社は労災の責任を負わされるだけではなく、多額の慰謝料を請求されることもあります。「もし、事前に心臓の不調を知っていれば、負担のかかる仕事はさせなかったのに」と悔やまれることでしょう。
そういった事態を防ぐための手段が健康診断です。労働安全衛生法では、会社に1年に1回定期的に健康診断の実施と記録の保持を義務付けています。
会社側に安全衛生配慮義務、従業員側に自己保健義務がある以上、健康診断を実施するのは会社の義務、その健康診断を受診するのは従業員の義務と言えますが、現実には健康診断を面倒くさがる従業員も少なくありません。そのため、就業規則で健康診断についてのルールを定めておくといいです。
【POINT】
本条の第一項では、会社による定期健康診断の実施時期と、その費用負担について定めます。前述の通り、労働安全衛生法上、会社には入社時と毎年1回定期に健康診断の実施が義務づけられています。法定義務である以上、この健康診断の費用は会社負担となります。また、業務命令で健康診断を実施するため、検診時に不在となる時間の給料も通常通り支払うことになります。
【POINT2】
第二項では、従業員の受診義務について定めます。健康診断は、業務命令で実施するため、従業員の個人的な都合で受信しないことは許されません。受診義務を果たさない場合には、懲戒処分が与えられることを明記しておきましょう。
【POINT3】
会社には、定期健康診断結果の記録の保存が義務付けられています。そのため、第3項では、健康診断結果の提出義務について定めておきます。
従業員の中には、「自身の健康情報はプライバシーにかかわるものであり、会社には知られたくないとの理由で健康診断結果の提出を拒否する人がでてくる可能性があります。それを防ぐため、就業規則で提出は義務であることを明記しておきましょう。
【POINT4】
第四項では、再検査や精密検査について定めます。会社には、定期健康診断結果に基づいた保健指導を行うことが義務付けられていますので、要再検査や要精密検査の結果が出た場合、労働安全衛生法上、会社はその者に対して再検査や精密検査の受診を働きかけなければなりません。
ただし、この場合は、会社には受診の強制権はありません。つまり本人の責任において受診を進めることになります。
会社の強制でない以上、再検査や精密検査に要する費用の負担も会社は義務付けられていません。不在となる時間分の給料も、会社負担としなくてもよいことになっています。
もちろん、会社が負担することにしても問題ないのですが、いずれにしても、どちらの負担になるのかでもめなように、事前にルールを定めておくべきでしょう。
【POINT5】
第五項では、再検査や精密検査を受けない場合の扱いについて定めます。前述の通り、再検査や精密検査については、会社には受診の強制権はありません。しかし、会社は、従業員の健康と安全を確保する義務があります。そのため、従業員の健康状態に不安がある場合は、終業禁止も含めた措置を検討する必要があります。そこで、正当な理由なく再検査や精密検査を受診しない者に対しては、就業禁止の措置を取ることがあることを伝えておきましょう。なお、これにより就業禁止とした場合、当然ノーワーク・ノーペイの原則から給料の支払いはなくても構いません。
【POINT6】
第六項では、定期健康診断以外の受診について定めておきます。体調が不調にもかかわらず、無理をして勤務しようとする従業員もいます。会社は健康状態が悪化しそうな従業員を就労させるわけにはいきません。その場合、会社は使用者責任において、健康診断の受診ないし医師への検診を命じることができるようにしておきましょう。
なお、この場合の受診は、法律上の義務ではない以上、費用負担は従業員本人になるとしても構いません。
※定期健康診断を受診する義務がある従業員の範囲
①正社員②1年以上雇用が予定している者③パートタイマーで、1週間以上の契約労働時間が、同種の業務に就く正社員の4分の3以上ある者
疾病の就業禁止~感染症にかかった場合の扱いを明示する~
第62条(病者の就業禁止)
1.従業員又は同居の家族が、インフルエンザなどの感染症の予防および感染者の患者に対する以上に関する法(感染症法)に定める病気に感染した場合には、会社は必要な期間就業を禁止することがある。
2.従業員は同居の家族が感染症法に定める病気に感染し、またはその疑いのある場合には、直ちに会社へ届け出て必要な指示を受けなければならない。
3.労働衛生上の理由から就業禁止となった期間については、無給とする。
【目的】
労働安全衛生法第68条では、「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならないと規定されています。
具体的には以下の者が就労禁止の対象とされています。
①病毒伝ぱの恐れのある伝染性の疾病にかかった者
②心臓、腎臓、肺などの疾病で労働のため病勢が著しく憎悪する恐れのあるものに罹った者
③前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかった者
法律で決まっている以上、就業規則に定めていようがいまいが、上記に該当するものは就労禁止にしなければならない。ただ、どうせ就労禁止にしなければならないのであれば、あらかじめ就業規則において従業員に知らせておいた方が、混乱は少なくなるでしょう。
【POINT】
本条の第一項では、従業員およびその家族が、感染症法で就業制限を受ける「感染症の患者又は無症状病原体保有者に該当する証明書がある疾病に罹患した場合の扱いについて定めます。前述の通り、この場合、会社は自宅待機を命じ、他の従業員の健康を守らなければなりm線。
ここでポイントとなるのは、インフルエンザが伝染性の疾病その他の疾病で厚生労働省令で定めるものに当たるかという点です。現時点における行政解釈によると、これには該当せず、就業禁止の措置を講ずるぎむはないとされています。
しかしながら、従業員がインフルエンザに感染し、医師から自宅療養が必要があるとのしどうがなされている場合には、本人の病勢や他の労働者への影響を考慮して、就労さえないように規定することがのぞましいでしょう。そのため、上記例文では、インフルエンザも対象に含めてあります。
【POINT2】
第二項では、感染症にかかった場合の届出義務に就いて定めます。
感染症にかかった場合に自宅待機命令を下すのは、法律で決まっているからと言いうだけではなく、本人の病状を悪化させたり、他の従業員に感染させたりしないためでもあります。したがって、会社としては、従業員が感染症にかかった恐れがある場合は、なるべく早めに対処しておきたいところです。中には感染症にかかっているのに、それを隠して無理をして働こうとする従業員もいますので、会社のためにも本人のためにも早めの届出が義務であることを明言しておきましょう。
【POINT3】
第三項では、従業員がインフルエンザなどの感染症に罹患した場合の休業時の給料の扱いについて定めておきます。
この場合は欠勤ですので、給料も支給しなくて構いません。また会社に責任のない休業であるため、休業手当の支給は不要です。もちろん、給料を支払ってもいいのですが、いずれにしても後々もめないように、しっかりとルールを定めておきましょう。
なお、不必要に長い期間休ませる場合には、会社責任が加わり、平均賃金の60%以上の休業手当の支給が必要となる場合がある事には留意が必要です。
就業禁止について考えるとき、どの病気が法律上の就業禁止に当てはまるのかが非常に分かりにくいため、不安になる経営者も多いようです。その場合、判断基準となるのが、会社には従業員の就業環境を守る義務があるということです。つまり会社は、社内の安全や衛生環境を守らなければならないのです。したがってほかの従業員を守らなければならないと判断した時、病者の就業禁止を命じます、
なお給料は支給しなくても構わないと書きましたが、実際は、有給休暇処理することが多いでしょうし、休業が長引く場合には欠勤扱いとし、健康保険の傷病手当金の手続きを取ることで、従業員の収入が途絶えないような対処を取る方が望ましいでしょう。
災害補償~労災の扱いについて明示する~
第63条(災害補償)
1.会社は、従業員が業務を原因とした傷病について、労働者災害保険法に従って労災保険申請の手続きを行うことにより、使用者責任を果たすものとする。
2.通勤時のケガについても会社は労災保険の申請手続きを取るが、自動車事故の場合、労災保険よりもその者のかけている任意保険ないし自賠責保険の給付内容が上回っている場合には、従業員本人のかけている保険を優先させることがある。
【目的】
従業員が仕事中に事故に遭ってケガをしたり、仕事が原因で病気になった場合には、労働基準法は社長に補償責任を負わせることを定めています。会社に落ち度がない場合であっても容赦ありません。「仕事のせいで、傷病に見舞われてしまった。だから犯人は社長だ。社長が全部悪い」と決めつけられます。「そんな無茶な」と思われるかもしれないけど、それが労働災害を取り巻く現実です。
じゃ一体どうすればいいんだ?と嘆きたくなる社長は多いはずです。そんなときのためにあるのが、労災保険なのです。
労災保険は社長に変わって、ケガや病気になった従業員に対して保証をしてくれます。対象となるんは、業務上災害(業務が原因となって発生した災害)と通勤災害(通勤時に発生した災害)です。これらにより、傷病に罹った場合や、障害が残った場合には、その治療費と労務不能となった期間の生活費を従業員に支給してくれます。またこれらの災害で不幸にして従業員が死亡した場合は、その遺族に対し所定の保険給付が行われます。
従業員を雇っている会社には労災保険の手続きを速やかに行うことにより、使用者としての責任を果たせることになります。
もちろん、会社に案z念衛生配慮義務がある以上、労働災害はなるべく起こさないのが大前提です。しかし、不慮の事故というのはあり得ますので、そのような場合の対処法について就業規則にてあらかじめ従業員に知らせておけば、無用な混乱は防げるでしょう。
【POINT】
労災保険は、仕事が原因の傷病に対する補償がメイン契約ですが、通勤災害時も補償してくれる無料特典がついています。
ただし、一般的に通勤災害では、交通事故の割合が多く、その場合、労災保険よりも従業員本人が掛けている損害保険や自賠責保険が有利なケースがあります。労災保険の給付は、治療費全額と給料の80%の休業補償ですので、交通事故で自分の過失割合が低い場合は、民間の保険の方が労災保険の給付を上回ることも多いでしょう。
こうした場合、労災保険の申請は任意であり、どの保険を活用するかは本人の任意となります。ただし両方もらえないかと持っても、残念ながらそうは問屋が卸しません。通常、労災保険か任意保険かの二者択一を迫られます。
そこで、そうした場合に備えて、本条第2項のように「原則、任意保険や自賠責保険を先行。自分の過失割合が高い場合には、労災保険を先行ということ就業規則に書きこんでおくといいでしょう。
休職
休職制度とは、ざっくりいうと「従業員が病気やけがで働ける状態にないと判断した時に、会社が仕事を休ませて治療に専念させる制度です。法律上は、必ずしも休職制度を定めなくてもいいのですが、従業員が病気などで長期に会社を休まざるを得ないことになった場合でもいきなり退職っせるのは労務トラブルの元となります。そうした場合に備えて、ルールを整備しておくことをお勧めします。
休職命令~私傷病などによる休職の扱いについて明示する~
第64条(休職命令)
1.休職とは、従業員が私傷病などで長期に会社を休むことになった場合、会社に籍を残したまま治療などに専念して治ればまた会社に戻れる制度である。しかし、人員配置上、無期限にはできない。よって、会社は、従業員が次に該当する場合は期間を定めて休職を命じる。
①業務外の傷病による欠勤日数または傷病欠勤の有給休暇への振替が認めらた日数が2か月以内に通算20日になった時
②業務外の傷病になり完全な仕事ができず、労働安全衛生上の理由から休職が必要と会社が判断した時
③その他、健康上(メンタル不全を含む)の理由から休職させる必要があると会社が判断した時
2.休職の判断にあたり、会社は指定する専門医への受診と診断書の提出を命ずることがある。会社が命じた場合の費用は、会社負担とする。
3.会社は、健康上の理由から常勤が困難と判断した場合には、本人と協議の上、一時的にパートタイマー等へ変更を行うことができるとする。
【目的】
休職制度とは、従業員が健康上の理由から、働ける環境にはないと会社が判断した場合に、労働契約を存続させつつ、労働の義務を一時免除する制度の事を言います。
私傷病により正常な勤務が困難とみられる場合には、労働安全衛生の観点から安易に働かすことはできません。何かあった時には、会社の使用者責任が問われます。その場合、会社が業務命令で一定期間の休職を明示、労働を免除させるわけです。
休職制度は任意ですので、必ずしも設けなければならないわけではありません。ただし、休職制度を設けるのであれば、きちんとルールを決めておくべきでしょう。当然、休職に関するルールは、原則として会社が自由に作ることができます。
【POINT】
第一項では、休職の定義と判断基準について定めます。
ここでは、休職というのは単なるお休みではなく、労働契約が存続している以上、休職中の従業員には、早めに業務に戻れるように回復に努める義務があるのだという意識を持たせたいところです。そのため、休職が業務命令として会社主導で行われるものであるということと、休職中も従業員は会社に続知っているという事を明示しておくことがポイントとなります。
また休職命令を出す、出さないをめぐって、無用なトラブルが起凝らないように、会社は休職命令を出す判断基準を明示しておく必要があります。休職命令に至る私傷病欠勤日数について、具体的な数字を定めておくことが大切です。もちろん、日数は会社が任意に決めて構いません。
【POINT2】
会社は、休職の判断を行うにあたって、主治医以外の専門医の客観的な意見を求めることも想定しなければなりません。そのために、第二項で、受信命令を出せるようにしておきます。なお、この場合の受診費用は会社が受診を命じる以上、会社が負担すべきでしょう。
【POINT3】
第三項では、プレ休職制度について定めます。プレ休職制度とは、いきなり休職命令を発令するのではなく、正社員契約を一時的にパート契約に変更する制度です。長期の休職までは必要とはしない軽い傷病の場合に有効です。
プレ休職制度を作っておくことにより、従業員は、体に負担のかからない範囲で働くことができるようになります。一方、会社にとっては、給料、社会保険料と言った人件費が抑えられるメリットがあります。つまり、プレ休職制度とは、会社にとっても従業員にとっても好都合な制度なのです。
休職制度が任意であるのと同様に、プレ休職制度も任意ですので、必ずしも設定しなければいけないわけではありせんが、導入することをお勧めします。
休職期間~休職期間中の扱いについて明示する~
第65条(休職期間)
1.休職期間は、暦日で60日以内で会社が定めるものとする。ただし、情状により期間を延長することがある。
2.休職期間中の給料は無給とする。
3.休職中であっても社会保険料については、無給であっても本人負担分は法律上納めなければならない。休職により給与から社会保険料の本人負担分の控除ができない場合には、会社が指定する期日までに納付しなければならない。
4.休職者は、休職期間中少なくとも1週間に1回は会社に状態を報告しなければならない。正当な理由なく報告がない場合には、無断欠勤扱いと無成す。その場合、懲戒規定を適用する。
5.休職期間中に一時的に出勤しても、1か月以内に同じ事由で欠勤する時は、休職期間は通算されるものとする。
6.復職後1年以内に同一事由により休職する場合も、休職期間は通算するものとする。
7.休職は、同一または類似の事由につき通算90日以内とする。
8.休職期間中は、労働の提供がないため、勤続年数には参入されない。
【目的】
通常、休職というのは、すでに体調を崩して欠勤が続いている従業員に対して命じるものです。ではなぜすでに休んでいる従業員に対して、わざわざ休職を命じなければならないでしょうか。
それは会社にも復職を待つことのできる限界があるからです。冷たいようですが、働ける環境にない状態が長く続くのであれば、「労働契約は継続できない状態」と判断しても仕方がないでしょう。
そこで休んでもいい期間にタイムリミットを設定し、「一定期間まとまって休暇を与えるが、期限までに復職できない場合には退職してもらう」という規定が必要になるわけです。これを規定しておかないと、いざ退職させようとしたときに、不当解雇だと労務トラブルに発展する可能性があります。
【POINT】
本条の第一項では、休職期間の日数について定めます。休職期間には、労働基準法上、下限も上限もありません。したがって会社が自由に日数を決めることができます。
とはいえ、ぎりぎりの人員で業務を行う中小企業の場合、休職期間が1年、2年という言設定は実現が困難でしょう。休職を命じるまでの様子見期間が1か月、実際の休職期間が3か月の計4か月が、なんとか会社が許容できる上限ではないでしょうか。自社の体力を考え、その範囲内で休職期間を設定してください。
【POINT2】
第二項では、休職中の給与について定めます。休職期間中の給料は、会社の都合で休ませているわけではないので、ノーワーク・ノーペイの原則により、支払いは不要です。
会社の温情により、給料の全部または一部を支給することは構いませんが、その場合には至急機関の上限を定めておくことが重要となります。休職している従業員が、いつまでも支給が続くと勘違いすることを防ぐためです。
【POINT3】
第三項では、休職中の社会保険料について定めます。求職中であっても、従業員が在籍している限り、社会保険料の納付は続きます。そのため、休職により無給になり、給料から控除できなくなったのであれば、自主的に納付してもらわなければなりません。社会保険料は、毎月月末に前月分の保険料が会社の口座から自動的に引き落とされますので、休職期間中の社会保険料の納付方法については、きちんと取り決めておく必要があります。
一般的には、社会保険料を会社が指定する期日までに持参してもらうことが多いようです。その際に本人と面談ができ、傷病の近況報告と今後の予定について話会えるからです。本人が入院などにより出社できない場合には、家族に来社してもらい、社会保険料を納付してもらいます。
【POINT4】
第四項では、休職中の報告義務について定めます。休職というのは、単に労働の義務の一時免除しているだけであって、労働契約は存続している状態です。労働契約が存続している以上、従業員を自由に休ませるのではなく、会社側が、ある程度の義務を負わせることができます。復職のタイミングを計るためにも、傷病の経過もしりたいところですから、1週間に1回は会社に近況を連絡させるようにしておきましょう。
また、特に病気療養している場合には、従業員の家族などと連絡を取ることも必要となってきます。従業員の家族と話し合っていると、会社の姿勢が理解され、もし休職期間満了時に完治できていないことから、自己都合退職とせざるを得ななくなった場合であっても、家族の理解が得やすくなります。
【POINT5】
第5項から第7項では、休職期間の通算について定めます。病気によっては、ちょっと具合がよくなって出社したかと思えば、再度休むケースも出てきますので、そうした場合に備えて、欠勤の休職期間への通算も視野に入れておきましょう。従業員とトラブルになりそうなことを想定して、休職期間のルールの設計図を作っておくことが大切です。
【POINT6】
第8項では、休職期間の勤続年数へのカウントについて定めます。なぜこのような規定が必要かというと、退職金制度のある企業では、在籍期間に応じて退職金の額が多くなることが多いからです。労務の提供がない休職期間まで勤続年数にカウントし、そのぶん多く退職金を支払わなければならないのは、会社にとってはつらいのではないでしょうか。
ですから、上記の例文のように、休職期間については、勤続年数から除外しておくようにするのがいいでしょう。
復職~復職の判断基準について明示する~
第66条(復職)
1.復職の判断は専門医の意見の元、慎重に行うものとする。会社には法律上、使用者責任というものがあり、従業員が健康を悪化させる可能性がわかっているにも関わらず、安易に職場復帰を命じることはできないためである。
2.病気やけがで休職していた場合、会社は復職判断の重要な参考とするため、専門医の診断書の提出を求める。診断書に通常の業務に就ける旨の記載があることが復職を認める要件の一つとする。
3.診断書等発行に要した費用は、自身の健康状態を証明するものである以上、従業員本人の負担となる。
4.会社が診断書を発行した医師に直接意見を求める場合には、協力しなければ復職は求められない。業務命令で行うため医師の面談等にかかる費用は会社負担とする。
5.専門医の診断書が提出された場合であっても、会社は状況によっては、セカンドオピニオンとして会社が指定する別の専門医の検診を命ずることがある。業務命令で行うため、検診費用は会社負担とする。拒否した場合には、会社は復職を認めない。
6.会社は復職を認めた場合、休職前の仕事に戻す努力をするが、人員配置上の問題から異なる配属となる可能性がある。その場合、職種に応じた給料に変更されることがある。
7.会社は、復職にあたり一定の様子見期間(リハビリ勤務時間)を設けることがある。従来通りに働いて貰って本当に大丈夫かどうかを見極めるために行う。本人と協議の上、仕事の内容、労働時間、給料等を一時的に変更することになる。
8.復職したものの、類似の症状で遅刻、早退、欠勤等により、まだ完全に治っていないと会社が判断した場合には、再度の休職を命じる。この場合、休職期間は前の休職期間と通算され、休職できるのは残日数までとなる。
【目的】
休職というのは、体調を崩した従業員に大対し、労働を免除して治療に専念してもらうことで、再度、職場に復帰してもらうことを目的とした制度です。
もちろん、会社としては無期限に回復を待つことはできないという事情もありますので、会社が定めた休職期間の限界を超えての療養が必要な場合には、退職を視野に入れなければなりませんが、通常は、あくまで復職してもらうのが基本となります。
そのため、休職制度を作る際には、復職についてのルールも定めておく必要があります。
【POINT】
第一項では、復職の判断主体について定めます。
休職に入る際には、会社が主体となって判断し、従業員に命令しました。それと同じように、復職についても、会社が主体となって判断し、従業員に命令することを明記しておきましょう。
従業員に復職の判断を任せてしまうと、すでに回復しているのにぎりぎりまで休もうとする人が出たり、逆にまだ回復していないのに無理に復職してまた体を壊してしまう人が出てきたりと、様々なトラブルが発生する可能性があります。従業員が健康で安全に仕事を就ける状態であるかどうかを判断するのは、あくまで会社であるという事を明記するのがポイントです。
【POINT2】
第二項では、復職の判断基準について定めます。休職命令と同様、復職命令についても、判断基準を明確に定めておくことが大切です。
具体的には、「休職前の状態に回復して、従前の職務に就いたとしても何の支障もない状態」になっていることを復職の判断基準とするといいでしょう。
ただし、一般的に医師の発行する診断書には、「復職は可能」としか書かれていません。これでは、従前の業務に耐えられるまでに快復しているかどうか判断できません。本人の強い復職希望を踏まえ判断しているケースもあります。そのような場合に備え、会社が指定する専門医の意見を判断材料とすることを定めておくといいでしょう。従前の職務を通常レベルで遂行できまで回復していない場合には、復職は認めらない姿勢を貫きましょう
【POINT3】
第三項では、第二項で定めた復職のために要する診断書の費用負担について定めます。
基本的に、この場合は、従業員側に自己の健康状態を会社にアピールする責任があるので、従業員の負担として問題ありません。もちろん会社が診断書の交付に要する費用を負担することは構いませんが、一般的に従業員自身に負担してもらうことがシンプルでしょう。
【POINT4】
従業員の健康と安全に配慮する義務がある以上、復職の判断にあたっては、会社はなるべく多くの情報を集め、慎重に判断を下す必要があります。そのためには、傷病の現状を知るために、従業員の主治医との面談が必要になることもあるでしょう。
第四項では、そうした会社の判断のために、従業員が協力する義務があることを定めておきます。なお、この場合、面談は会社の命令で行うことになるので、その費用については会社が負担することになります。
【POINT5】
前述の通り、復職の判断にあたっては、会社はなるべく多くの情報を集め、慎重に判断を下す必要があります。そのためには、従業員の主治医の診断だけでなく、会社の指定する専門医にセカンドオピニオンを求めたいケースも出てくるでしょう。
第五項では、そうした場合に、従業員に会社の指定する専門医での検診を命令できることを規定しておきましょう。この場合、業務命令で行うことから、費用負担は会社が行うことが一般的です。
【POINT6】
第6項及び第7項では、復職後の業務について定めます。本来、休職前の業務に復帰してもらうのが原則となりますが、従業員の状況によっては、それが困難なケースもあり得ます。そこで、業務量を調整するために、従前の業務とは異なる配属としたり、一時的に負担の少ないリハビリ的な配属をしたりできるように定めておきましょう。
これを定めておくのは、実は非常に重要です。というのも、配属が変わればそれに伴って、当然、給料等の労働条件も変わるからです。労働条件が下がるような配置転換は、典型的な労働トラブルの元ですので、あらかじめ就業規則に定めて置き、従業員の合意を得ておくことがとても大切になります。
【POINT7】
第8項では際休職について定めておきます。復職の判断に当たっては慎重な判断が求められますが、どんなに慎重であったとしてもやはり判断ミスというのはあり得るものです。そこで、復職をした者の、まだ完全に治っていないと会社が判断した時には、再度休職を命じることができるようにしておきましょう。
なおその際には、7-2休職期間の条文で定めたように、再度の休職の場合、前の休職期間と通算することを明記しておくといいでしょう。
休職期間満了時の取り扱い~休職期間満了時の復職と退職について明示する~
第67条(休職期間満了時の取り扱い)
1.会社は、休職期間満了の日までに休職事由が消滅し、労働契約の遵守が可能な場合には復職を認める。
2.私傷病で休職していた場合、休職期間満了の日までに治癒せず、働ける環境にはないと会社が判断した場合には、休職期間満了日をもって、自己都合退職となる。「会社が仕事を与えて給料を支払う約束」と、「従業員が決られた時間必ず出勤して働く」という労働契約が本人の都合により継続できなくなった以上、自己都合退職とする。
【目的】
通常、会社は休職期間が満了する前に復職できることを期待して、休職期間の日数を設定します。しかし、残念ながら、タイムリミットを迎えてしまうことがあります。
休職制度を作る場合、そうした場合についてのルールも設定しておく必要があります。
【POINT】
本条は第1項で復職、第2項で退職について定めます。通常、ここでは、休職期間満了の日までに完治しているかいないかで、復職か大食家を線引きします。
ここでポイントとなるのは、やはり第2項の退職についての取り決めです。休職期間が満了する日になっても、休職事由が消滅していない場合には、休職のルールに基づいて退職の手続きを踏むことになります。では退職自由はどうなるのでしょうか。
冷たいようですが、従業員側の責任で労働契約が守られなくなった以上、自己責任という事になります。会社都合の退職ではありません。従業員側の責任による労働契約の維持ができなくなった場合んは、退職理由は「自己都合退職」と定めておきましょう。解雇なのか自己都合退職なのか規定がないと、トラブルになる可能性が生じますので、注意して下さい。
表彰および懲戒処分
会社に対して功績があった従業員に対しては、その功績に感謝し、報いるのが大切です。逆に会社に対して害をなす非行があればそれを改めさせるために罰則を与える必要があります。信賞必罰を徹底させるためのルールを決めておけば、会社はより強くなるでしょう。
表彰事由~表彰される要件について明示する~
第68条(表彰事由)
会社は従業員が次に該当した場合には、審査の上表彰することがある。
①きわめて会社に有益な業績があった時
②会社の名誉となる活躍があった時
③災害・非常時に特に功労があった時
④その他、会社が認める著しい功績が認められる時
【目的】
会社に対して功績があった従業員に対しては、もちろん、給料や昇進昇格、その他の待遇で報いるのが本筋です。しかし、給料や役職は一度上げると、その後に下げるのは難しくなります。また会社全体の業績や組織上の都合から、なかなか思うように従業員の頑張りに報いられないという事もあるでしょう。
そうした場合に活用したいのが、表彰制度です。一般的には、朝礼などでの発表と共に金一封を贈ったりしますが、必ずしもきんせんは出さなくても構いません。要は、あなたの働きを会社は認めています。と従業員につたえるための制度だと考えてください。
もちろん、表彰制度は法律で義務付けられたものではありませんので、設けなくてもかまいません。しかし、従業員が元気な会社というのは、上手に表彰制度を活用しているものです。人はみとめてられることによってモチベーションが上がるものですから、是非、表彰のルールを整備しておきましょう。
【POINT】
表彰規定には、「こういう働き方をすれば、高く評価される」といった働き方を明らかにする役割があります。したがって、本条では、どのような場合に表彰されるのかをなるべくわかりやすく定めておきます。
あなたが考える「理想の働き方」とはどういうものでしょうか。「まじめに働く」「協調性を持って働く」「約束を守る」「向上心を持って取り組む」など、上げていくとたくさん出てくるものです。
表彰制度は任意の制度ですから、当然、ルールは会社が自由に決めて構いません。表彰規定を通じて、自社の理想とする従業員増を明確に伝えておきましょう。
退職慰労金~退職時の支給について明示する~
第69条(退職慰労金)
会社は、特に功績が認められた従業員が退職する場合には、退職慰労金を支給することがある。
支給額については、会社がその都度、評価することにより決定されるものとする。
【目的】
従業員が退職する場合、経営者が気になるのが退職金の支給ではないでしょうか。
実は、ほとんどの社長がかんちがいしているようなのですが、退職金制度は任意の制度です。退職金制度がないからと言って、法律違反にはなりません。そして退職金制度がなければ、当然、退職金を支給もしなくて構いません。
ただし、労働基準法では、退職金規定を定めるのであれば、全従業員に同じルールで支給計算を行わなければならないことになっています。つまり、ついうっかりでも退職金規定を定めてしまうと、退職者全員に一律で退職金を支給する義務が発生してしまう。何も考えずに一般に配布されているひな型を丸写しして就業規則を作ってしまった場合などにやりがちなミスですので、注意してください。
とはいえ、全ての退職者に対して退職金を支払わないというのも、それはそれで抵抗があるでしょう。やはり長年に渡り会社に貢献してくれた従業員に対しては、その労をねぎらいたいというのが自然な気持ちだと思います。また何らかの問題を起こして退職する従業員に対して、言葉は悪いですが、手切れ金的なものを支払っておきたいケースも考えられます。
そんなときに、有効な制度が退職慰労金制度です。退職慰労金制度とは、特に会社が支給を決めた従業員に対してのみ支給する、退職金に相当するものです。
退職金と退職慰労金の決定的な違いは、全員に同じルールで支給するのか、特別に活躍のあった従業員に対してだけ支給するのかです。全従業員に同じルールで退職金を支給するのであれば、退職金制度を規定する必要があります。一方、特定の従業員に対してだけ支給したいのであれば、退職慰労金制度を規定することでこと足ります。
中小企業であれば、退職金規定でなく、退職慰労金規定を設けておくというのがおすすめです。
【POINT】
本条では、退職慰労金の支給について定めます。前述の通り、退職慰労金制度は、支給するも支給しないも会社がその都度判断できる制度です。退職慰労金の金額も、都度、会社判断にて決めることができます。
したがって、そのことを条文に明記しておき、すべての退職者が必ず一定の退職金をもらえるわけではないということを従業員に伝えておきましょう。
懲戒処分~規則に抵触する従業員に対する処分について明示する~
第70条(懲戒処分)
1.会社の秩序を守るため、会社規程に抵触する従業員に対しては懲戒処分を行うものとする。
2.会社は懲戒処分に先立ち、事実を確認するために当該従業員に対し、事実報告書の提出を求める。従業員は事実報告書の提出を拒否することはできないものとする。
3.事実報告書を提出しない場合、または虚偽の報告を行った場合は、懲戒解雇となることがある。
4.従業員に減給以上の懲戒を行う場合は、社長を委員長とした懲罰委員会を開き、事実確認、本人へ聴取を元に検討したのち処分は決定されるものとする。
5.状況に応じ、会社は当該従業員には自宅待機を命じることがある。
6.会社は、自宅待機を命じた場合、前3か月間に支払われた給料の60%の額を休業手当として支給する。
7.懲戒処分に関連し、他の従業員に悪影響を及ぼす言動があった場合は、懲戒解雇することができる。
【目的】
会社という場所は、複数の従業員が集まって働く場所です。一定の秩序を維持して働かなければなりません。この秩序を維持するために、会社は従業員に対して服務規程を定めます。
そして、この服務規定にリンクさせて、会社で働く上でのルールを守れない者に対しては、罰則を与えることで秩序の維持を図ります。その罰則について定めておくのが、懲戒制度です。
懲戒制度は必ず定めなければいけないものではありませんが、もし定めるのであれば就業規則に記載しなければならない事項となっています(これを相対的記載事項という)。
懲罰処分というのは、なにかと労務トラブルに発展しやすいものですから、あらかじめ懲罰についてのるーるを定めておき、いざ懲罰処分を下した時にトラブルが発生する可能性を下げておくのが大切でしょう。したがって、懲戒制度はなるべく就業規則に記載しておきましょう。
【POINT】
本条では、懲戒処分を決定するまでの流れを規定します。じつは懲戒処分を決めるために何が必要かという事は、法律で明確に決められているわけではありません。ただ、あまりに安易に懲戒処分を決定すると、万が一裁判になった時に、不適切な処分として無効と判断されてしまう可能性が高くなります。
そうした事態を防ぐためにも、一般的には、以下の事については規定しておいた方がいいでしょう。
①会社規程に抵触する行為が存在すること
②事実確認をすること
③重い懲戒処分を与えるときには、懲罰委員会を開催すること
④処分が決まるまでの間は、自宅待機とすること
⑤自宅待機期間の手当の支給について定めること
懲戒処分の種類と程度~どのような懲戒処分があるかを明示する~
第71条(懲戒処分の種類と程度)
懲戒処分は、次のとおりに定める。
①厳重注意
口頭注意の上、始末書の提出を命じる。
②減給
口頭注意の上、始末書の提出を命じた上、減給する。減給の額は、1回の事案に対する額が平均給料の1日分の2分の1、一給料支払期間に2回上の事案が発生した場合には、給料総額の10分の1以内で減給とする。この場合、複数月にわたって減給を行う場合がある。
③出勤停止
始末書を提出させ、7労働日以内の出勤停止を命じる。当然その期間の給料は支給しない。
④降格
始末書を提出させ、役職などの引き下げをする。この場合、給料を含めた労働条件の変更を伴うものとする。
⑤諭旨退職
退職願の提出を勧告する。ただし、勧告した日から3労働日以内にその提出がない時は懲戒解雇とする。
⑥懲戒解雇
解雇予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合、所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた時は予告手当を支給しない。
【目的】
従業員の非行があった場合、従業員が行った非行の悪質度に応じて、会社は責任を取らせなければなりません。「非行の悪質度に応じて」というのがポイントで、よほどのことで限り、いきなり懲戒解雇にするのは行き過ぎとなります。そんなことをしたら、裁判をおこされた時、まず無効と判断されてしまうでしょう。
そこで、まずは軽い処分から始まり、それでも行動が改まらなかった場合は、段階を経て懲戒処分の内容を引き上げていくといった過程が必要となります。そのためには、何種類かの懲戒を用意しておき、事案によって、振分けることができるようにしておかなければなりません。
懲戒制度は必ず定めなければいけないものではありませんが、もし定めるのであれば、懲戒の種類について就業規則に記載しなければなりませんので、忘れずに記載してください。
【POINT】
実は、懲戒の種類やその内容は、会社が自由に決めていいことになっています。ただ、あまりに一般的な規定からかけ離れていると、やはり裁判になってしまったときに不利になるでしょう。
一般的には、懲戒処分は上記例文の通り、口頭での厳重注意に始まり、減給、出勤停止、役職降格、諭旨退職、懲戒解雇の6段階に分けて規程されることが多いので、ここはこの通りに規定しておくのが無難だと思います。
懲戒事由と適用~懲戒処分の対象となる要件を明示する~
第72条(懲戒事由と適用)
懲戒事由とその適用について、次の通りに定める。
1.厳重注意、減給および出勤停止、降格
次のいずれかに該当する場合には、その程度に応じて厳重注意、減給および出勤停止、降格に処分するものとする。ただし、行為の程度が著しく重い場合、または繰り返し処分を受けた場合には、諭旨退職、懲戒解雇に処する場合もある。
①会社の承認を得ないで欠勤・遅刻・早退・外出が1回でもあった場合
②正当な理由なく欠勤・遅刻・早退・外出が一回でもあった時
③軽度の過失により業務上の事故を発生させ、会社に損害を与えた時
④会社に提出した書類に事実と異なる記載(会社が軽微と判断するものに限る)をした時
⑤出退勤の記録を代理した時(不正を依頼、または不正に協力した場合)
⑥欠勤、休職、介護休業等により、給与から社会保険料の本人負担分の控除ができない場合に、社会保険料の本人負担分を会社が定める期日までに納付しなかった時
⑦法令または会社の定める諸規定に違反した場合であって、その事案が軽微な場合
⑧その他前各号に準ずる飛行行為、秩序違反行為があった時
2.諭旨退職、懲戒解雇
次の各号の一に該当する場合は、情状に応じ諭旨退職または懲戒解雇処分とする。
①正当な理由と認められない欠勤が連続又は通算して14暦日に及んだ場合
②法令違反で逮捕され、労働契約の継続ができなくなった時
③経歴を偽り、または過大に示したことによって採用された時
④営業上の重大な事故を発生させ、会社に大きな損害を与えた時
⑤業務上の立場を利用し、わいろを受けたり、接待を受けるなど、自己の利益を図った時
⑥厳重注意以上の処分を3回以上受け、なお改善の見込みがないと会社が判断した時
⑦会社が定める従業員の義務または服務の遵守事項に違反した場合であって、その事案が極めて重大と会社が判断した時
⑧不法行為・迷惑行為を行い、職場内の秩序を乱した時
⑨業務上の指示・命令に従わず、業務に支障を生じさせた時
⑩会社の名誉、信用を傷つけ、重大な悪影響を及ぼす行為があった時
⑪会社の情報を外部に漏らした時
⑫法令、就業規則、その他会社が定める禁止事項に抵触する重大な行為があった時
⑬その他前各号に準ずる程度の非行、秩序違反行為があった時
【目的】
会社の秩序維持が目的であれば、自由に懲戒処分が認められるわけではありません。懲戒処分が有効になる要件は次の通り。
①処分の根拠を明らかにすること
②従業員の行った非行に対する処分が重すぎないこと
③特定の従業員だけをターゲットにしないこと
④手続きが適正であること
したがって、懲戒処分を行うには、対象となる行為を具体的に定めておく必要があります。
【POINT】
一般に懲戒処分は、処分を下すことで行動の改善を促す」段階と、これ以上の改善が見込めないとして社会を去ってもらう段階の2つに分けて考えます。したがって、本条でも第1項と第2項で、それぞれの段階について規定します。
どちらの項目も原則としては、会社が自由に定めることができるので、自社の考える「これをされると、会社は我慢ならない」といった事例を出来る限り多く書き出しておきましょう。
ただし、いくら就業規則で規定していても、あまりに理不尽な事由による処分はもめる原因になりますし、裁判になった時に無効と判断させる可能性も出てきます。どの程度の自由ならどの程度の処分を下しても適切といえるか、上記例文を参考にしてください。
加重~懲戒該当行為を重ねた者に対する処分を明示する~
第73条(加重)
懲戒処分を受けたものが、その後1年以内にさらに懲戒に該当する行為をした時、または同時に2つ以上の懲戒該当行為をしたときは、その懲戒を加重し懲戒処分内容を判断する。
【目的】
ここまで説明してきたように、懲戒処分イコール即解雇にはなりません。軽微な非行については、今後の戒めを与える内容となります。しかし複数回繰り返すようであれば、会社も考えなければならなくなります。その場合、懲戒処分を加重し、悪質さレベルを引き上げ、懲戒解雇も視野に入れた処分に切り替えていく必要があります。
この規定は就業規則に記載しなくても問題はありませんが、いくら軽微な非行でも、複数回繰り返せば罪が重くなる、一度懲戒処分を受けたらそれでおしまいではなく、懲戒処分は積みかなっていくものだということを社員に明確に伝えるためにあえて記載しておくことをお勧めします。
【POINT】
個々では、懲戒が加重される条件に付いて定めます。内容は会社が自由に決めて構いませんが、一度懲戒をうけたら、その後は永遠に加重されるというのでは厳しすぎるでしょう。やはり従業員のモチベーションを下げすぎないために、非行を改めたなら、罪を許すという姿勢を見せておきたいところです。そのためには、上記例文のように1年以内、同時に2つ以上など、なるべく具体的に条件を決めておくことがポイントとなります
弁明の機会~懲戒該当行為を疑われた者に対する対応を明示する~
第74条(弁明の機会)
諭旨解雇ないし懲戒解雇事由に該当するとして、諭旨退職ないし懲戒解雇になる恐れがある従業員については、会社は、事前に弁明の機会を与えるものとする。
【目的】
各種の懲戒処分の中でも、諭旨解雇や懲戒解雇のような従業員が会社を去らなければならない処分については、慎重に判断を下す必要があります。
もし労使トラブルに発展し、裁判になってしまうと、法律というのは基本的に労働者に有利になるようにできています。現実的には、よほど従業員側が悪質で、今後の改善の見込みもなく、会社を去ってもらわないと会社側が将来にわたって相当の損害を受けるという状況でもない限り、強制的な解雇は認められないと思っていた方がいいでしょう。
とはいえ、やはりどうしても諭旨解雇や懲戒解雇を検討せざるを得ないケースが発生する可能性はあります。そうした際の備えとして規定しておきたいのが本条です。
【POINT】
ここでのポイントはずばり、事前に弁明の機会を与えると明記しておくことです。前述の通り、解雇には相当の根拠が求められます。したがって、解雇となるような重大な非行があったとされる場合には、本人にたいし、事実確認を行うと同時に、弁明の機会を与えなければならない。事実や事業を確認することなく懲戒解雇処分内容を決定すれば、まず裁判になったら勝てないでしょう。逆に就業規則に「事前に弁明の機会を与える」と明記してあれば、会社としてもきちんと事実確認をする姿勢がある証拠になります。
また現実的な話としては、やはり解雇せざるを得ないにしても、従業員本人ときちんと話し合い、同意を得てからの処分とした方が、圧倒的にトラブルに発展する確率が低くなります。そのためにも従業員には十分な弁明の機会を与えるべきでしょう。
自宅待機~自宅待機命令の扱いについて明示する~
第75条(自宅待機)
1.懲戒処分に該当する行為があった場合、あったと疑われる場合には、会社は社内秩序の維持のため、当該従業員に対し、期限を定めて自宅待機を命じることがある。
2.従業員は、業務命令である以上、拒むことはできない。
3.自宅待機を命ぜられたものは自宅で待機し、会社が連絡した場合には、直ちに対応できる体制を整えておかなければならない。
4.会社は、自宅待機を命じた場合、休業手当として平均賃金の6割に相当する額をその者に支払うものとする。
5.自宅待機の期間は、状況によっては短縮または延長される場合がある。
【目的】
懲戒処分が確定するまでには、事実関係を調査し、処分の程度の検討するために、ある程度の日数がかからうことがあります。その場合、非行の内容によって、会社としては、出勤を避けてもらいたいこともあります。
そういった場合には、業務命令で自宅待機を命じることができます。処分内容が確定するまでの間、自宅で待機し、会社からの連絡を待ってもらうわけです。
この自宅待機は、あくまで懲戒処分としての出勤停止ではなく、業務命令での自宅待機ですので、実は就業規則に記載しておかなくても、命令を下すことはできます。ただし、懲戒処分を決めるためのルールをあらかじめ従業員に示しておくという意味で、やはり就業規則に記載しておいた方がいいでしょう。
【POINT】
ここでのポイントは、自宅待機が業務命令であることを明示しておくことです。自宅待機は単なる休暇ではなく、業務として行うことであり、自宅待機中も会社に協力する義務があることを、従業員がきちんと理解できるように書いておきましょう。
なお、自宅待機が業務命令である以上、原則として、待機中には、給料が発生します。具体的には休業手手として平均賃金の6割に相当する額を支払う必要がありますので、注意してください。
損害賠償~損害賠償責任の扱いについて明示する~
第76条(損害賠償)
1.従業員が会社に損害を与えた場合、会社は損害を現状に回復させるか、または回復に必要な費用の全部もしくは一部の損害賠償を命じることがある。
2.損害賠償責任は退職したとしても免れることはできないものとする。
3.本人より損害賠償がなされない時は、会社は直ちに身元保証人にその責任を追及する。
【目的】
故意または、重大な過失により、社有車や高額な危機を損傷させた場合、会社はその者にペナルティとしての損害賠償を請求することができます。これは懲戒処分とは別の話で、単純に損害を受けた側が、損害を与えた側に賠償を請求することが民法上認めらられているという事です。
したがって、就業規則として定めていなくても、当然の権利として損害賠償を請求することはできます。ただし、従業員の注意を喚起するために、あえて就業規則でアナウンスしておくのは有効です。
【POINT】
第一項では、損害賠償の金額について定めます。損害賠償ですから、自己清算的に、原状回復に要した費用の全部または一部損害賠償として徴収することは構いません。
ただし、会社が、前もって損害賠償額を設定しておくことはできません。例えば、社有車を損傷すると罰則5万円などと決めておくことは、労働基準法上禁止されていますので、注意してください。
【POINT2】
第二項および第三項では、損害賠償できる対象について定めます。
民法上の損害賠償ですから、当然、従業員としての資格の有無にかかわらず、損害賠償の責任はあります。つまり、退職したからといって、その責任がなくなるわけではないというのが、ポイントとりなります。
また従業員本人はもちろんのこと、入社時に設定した身元保証人に対しても損害賠償を求めることができるように規定しておくと、より安全でしょう。
労働契約の終了
退職に関することは、就業規則に必ず記載しなければならないとされています(絶対的記載事項)。ただし退職について具体的にどのようなルールを定めてるかについては、基本的に会社の裁量で決められます。要は退職についてはきちんとルールを決めて就業規則に記載しておきましょうという事です。
退職の種類~各種の退職の意味について明示する~
第77条(退職の種類)
退職の種類は、次の通りとする。
①定年退職:会社が定める定年年齢に到達し、雇用契約上、自然に労働契約の解除となるもの
②自己都合退職:従業員側の都合により、労働契約が解除となるもの
③会社都合退職:解雇、退職勧奨など会社側の都合により、労働契約が解除となるもの
④懲戒解雇:従業員側の責任に基づく懲戒解雇により、労働契約が解除となるもの。
【目的】
労働契約を結んだものであれば、必ずいつかは労働契約を解除する時がやってきます。ただし、労働契約を解除する理由によって、当然扱いを変えておきたいところです。
そこでまずは労働契約の解除となった理由から、退職の種類を明確にしておきましょう。ここで定めた種類に応じて、この後の各条文でルールを定めていくことになります。
【POINT】
退職の種類は、一般に、上記の例文の通り、定年退職、自己都合退職、会社都合退職、懲戒解雇の4種類となります。
ここでポイントとなるのは、自己都合退職と会社都合退職について、きちんと線を引いておくという事です。退職というのは、つまり労働契約を解除するということですが、その原因を従業員と会社のどちらが作ったかという事が重要なのです。
自己都合退職であれば、従業員側に責任があるのですから、当然、会社は従業員にある程度の配慮を求めることができます。逆に会社都合退職であれば会社側に責任があるのですから、従業員に対してある程度配慮する義務が生じます。
具体的にどのような配慮を求めたり求められたりするかは、この後の各条文で見ていきますが、自己都合退職と会社都合退職は、きちんと分けて扱えるように規定しておきましょう。
定年退職~定年退職の扱いについて明示する~
第78条(定年退職)
従業員の定年は60歳とし、定年に達した日の翌日(誕生日)をもって定年退職とする。
【目的】
高齢労働者が一定の年齢(定年年齢)に達すると自動的に雇用関係が終了する制度を定年制と言います。以前は60歳から年金支給が開始されることもあり、60歳を定年としている会社が多かったかと思います。
しかし平成25年4月より、高年齢者等雇用安定法により、会社は以下のいずれかを採用しなければならない。
①定年年齢60歳+65歳までの継続雇用制度
②定年年齢65歳
③年齢とは無関係な終身雇用(定年制廃止)
このうち中小企業にとって最も都合がよいのは1でしょう。つまり定年年齢を60歳に定め、その後65歳になるまで1年ごとに労働契約を更新し雇用を継続する方法(継続保養制度)です。この方法であれば、60歳からの労働契約の更新で、給料を含め、労働日数、労働時間などの労働条件について毎年見直すことができるメリットがあります。
【POINT】
本条では、定年となる年齢と退職日について定めます。ポイントとなるのは年齢です。ここでは、定年年齢60歳+65歳までの継続雇用制度を採用するという前提で、60歳と設定してます。なお法律上は、60歳以上であればいいので、例えば定年年齢62歳+65歳までの継続雇用制度という設定も可能です。
もし定年年齢を65歳以上とする場合は、上記例文の年齢をその年齢に書き替えてください。
また定年制を廃止する場合は、この条文自体が不要です。
継続雇用~定年退職後の継続雇用について明示する~
第79条(継続雇用)
1.定年に達した従業員が希望する場合は、定年退職日の翌日から嘱託として継続雇用する。
2.嘱託として継続雇用する場合の労働時間、賃金等の労働条件については、個別に協議し労働契約書を締結する。その場合、原則として従前の労働条件とは異なる内容となる。
3.継続雇用期間の労働契約は1年以内の更新制とする。労働時間、給料などの労働条件については、毎回更新時に見直し、個別に労働契約を結ぶものとする。
4.年次有給休暇については、定年前の日数を引き続くものとする。
【目的】
60歳定年制+65歳までの継続雇用制度を導入する場合、当然ですが、継続雇用のルールを決めておく必要があります(定年についてのルールは、9-2定年退職で決めています)。
なお65歳定年にした場合や、定年制を廃止した場合は、継続雇用をする必要はなくなりますので、この条文は不要です。
【POINT】
本条の第1項では、継続雇用の対象と開始日について定めます。ポイントとなるのは、「従業員が希望する場合はという部分です。高年齢者等雇用安定法の狙いは65歳までの雇用を確保することですので、基本的には定年退職した全ての従業員を継続雇用することなります。ただし、従業員が継続雇用を希望をしない場合は別です。その場合は、定年退職後に継続雇用しなくても構いませんので、そうしたケースに対応できるようにしておきましょう。
【POINT2】
第二項では、継続雇用した場合の労働条件に付いて定めます。「継続雇用」と言っても、実際には一旦定年退職して、改めて労働契約を結びなおすことになります。したがって、これまでの労働条件を引き継ぐ必要はありません。60歳定年で一旦全ての労働条件をリセットすることになります。
もちろん、定年前と同様にバリバリ働きたい人もいるのでしょうが、中には体の負担の軽い業務に変わったり、労働時間を短縮したりして、セミリタイア生活に入りたい人もいるはずです。その場合、当然、定年前とは給料や役職を変えることになります。
高齢者が働きやすい環境を提供すると共に、会社にとっても人件費の負担を軽くで切るように、様々なメニューを用意しておきましょう。
【POINT3】
第三項では、継続雇用の契約期間について定めます。
個々では60歳から65歳までの5年間契約としてもいいのですが、例文の通り、1年ごとに更新する契約とすることをお勧めします。こうして置けば、毎年労働契約を柔軟に見直せますので、継続雇用している従業員の希望に応じて、徐々に負担の軽い仕事に変更していったり、あるいは途中で継続雇用を打ち切ることも可能になります。
自己都合退職~自己都合退職の扱いについて明示する~
第80条(自己都合退職)
1.労働契約の解除となる事由が、従業員側に発生した場合には、自己都合退職となる。
①従業員から退職の申し出があり、会社との合意があった時
②休職期間満了日までに休職事由が消滅しない時
③従業員が、届け出なく欠勤し本人と連絡を取ることができない場合、欠勤開始日から14日を経過した時(懲戒解雇となる場合を除く)
④従業員本人の健康状態、メンタル不全などの事情により、完全な労務の提供が行われず、労働契約が成り立たなくなった時
⑤その他、従業員の死亡等、労働契約の解約がやむを得ない時
2.退職の申し出は、退職予定日の1か月前までに書面で会社へ退職願いの提出により行い、会社にも考える時間を与えること。
【目的】
自己都合退職とは、会社が従業員側の都合による労働契約の解除の申し出を受け、労働契約を解除することを指します。
例えば転職するなどで、従業員が希望して退職する場合はもちろんですが、それ以外にも、労働契約を維持できなくなった責任が従業員側になる場合は自己都合退職とできます。
【POINT】
本条の第一項では、自己都合退職となる条件に付いて定めます。従業員側の退職にあたって、自己都合退職とするか会社都合退職とするかは、その後の失業保険の受給や、最終局活動などにも影響するため、意外ともめる原因になります。従て、どのような場合に自己都合退職となるのか、なるべく具体的に列挙しておきましょう。
【POINT2】
本条の第二項では、自己都合退職をする場合の申し出について定めます。ある日突然辞めますといって、仕事の引継ぎもせず退職されてしまったのでは、会社としてはたまったものではありません、したがって退職予定日の何日前までには申し出るということをルールとして定めておくといいでしょう。
申出を何日前にするかは、会社の自由です。それどころか、実はひどい話なのですが、法律的には、就業規則に申出の期日が書いてあっても、従業員にそれを守る義務はありません。
ただそうであっても、ルールとして期日を決めておけば、従業員も無駄なトラブルを避ける意識が働きますから、やはり就業規則で定めておいた方がいいかと思います。
会社都合退職~会社都合退職の扱いについて明示する~
第81条(会社都合退職)
1.会社は、極力解雇を避ける努力をするば、場合によっては解雇の判断をせざるを得ない場合がある。従業員は次に該当すると会社が判断した場合、解雇となる。
①勤務態度および職務能力が会社が期待する水準に達することができず、今後の業務に支障が生じると会社が判断した時
②規律性、協調性、責任性を欠き、他の従業員に悪影響を及ぼすと判断した時
③採用時の提出書類などを会社が定める日までに提出しなかった時、または提出書類などに会社が重大と判断する事実と異なる記載があった時
④試用期間中または試用期間満了時までに、本採用することが不適当と判断した時
⑤従業員の義務、服務の遵守事項を履行できないと会社が判断し、労働契約を継続することが不適当と判断した時
⑥その他、会社が求める従業員としての姿勢に著しく欠けると判断した時
⑦著しい業績の悪化により、事業継続のために人員削減をせざるを得なくなた時
⑧事業の運営上、天災事変その他これに準ずるやむを得ない事業により事業の継続が困難になった時
2.会社は、解雇を決定した時は、解雇日の30日前までに本人に通知するものとする。ただし30日前までに解雇予告できなかった場合は、30日に不足した日数分の平均給料を解雇予告手当として支払うものとする。
3.会社は、解雇予告を行わず平均給料の30日分を支給することにより、即時解雇することができるものとする。
4.平均給料とは、解雇予告した日の直前3か月分の給与明細に基づき、平均日給額を算出したものを指す。
5.解雇予告が行われた日に有給休暇日数に残日数がある場合でも、会社は買取は行わない。また解雇日以降に取得することもできない。
6.解雇されるにあたり、当該従業員により退職理由証明書の請求があった場合は、会社は解雇の理由を記載した解雇理由証明書を交付する。
【目的】
会社都合退職とは、会社の都合により、労働契約を解除することを指します。つまり解雇と同じ意味合いを持ちます。
ただし、懲戒解雇とは異なります。懲戒解雇の場合は、懲戒処分として解雇されるわけですから、従業員側にそれなりの責任があることになります。しかし、会社都合退職の場合、労働契約を維持できなくなった責任は、会社側にあるとされます。
もちろん、会社都合退職であっても、実際には従業員側にそれなりの原因があることも多いのですが、あくまで建前としては「あなた従業員には責任がないけど、会社側の都合で雇い続けることができなくなりました」というのが会社統合退職になるわけです。
【POINT】
本条の第一項では、会社都合退職となる条件に付いて定めます。従業員側の退職にあたって、自己都合退職とするか会社都合退職とするかは、意外ともめる原因にもなりますので、9-4自己都合退職の条文と併せて、どのような場合に自己都合退職となり、どのような場合に会社都合退職となるのか、はっきり線を引いておきましょう。
特に会社都合退職(解雇)の場合、就業規則に解雇事由を書いていなかったり、あるいは解雇事由が不合理なモノだったりした場合、「解雇権の濫用」として、裁判で解雇を無効とされることになるので、注意が必要です。
【POINT2】
第2項から第4項では解雇予告についてだ冷めます。
会社都合で解雇する場合、原則として解雇日の30日前までに本人に通知することが労働基準法で定められています。もし30日前までに解雇予告できなかった場合は、30日に不足した日数分の平均給料を解雇予告手当として支払う必要があります。
これは法律で決まっていることですので、会社独自のルールを設定する事はできません。就業規則には、例文通りに書いてください。
【POINT3】
第5項では、解雇する場合の有給休暇について定めます。3-13年次有給休暇で説明したように、有給休暇の買取は、労働基準法で禁止されています。退職時の業務引継ぎ等の必要がある場合んは、例外的に買取が認められますが、これはあくまで例外措置なので、もちろん、買い取りに応じなくても問題ありません。
【POINT4】
第6項では、退職理由証明書について定めます。労働法では、解雇した従業員から退職理由証明書の請求があった場合は、会社は解雇の理由を記載した解雇理由証明書を交付しなければならないと定められています。これは法律で決まっていることですので、例文通りに書いておきましょう。
懲戒解雇~懲戒解雇の扱いについて明示する~
第82条(懲戒解雇)
会社は、第〇条の懲戒処分規程に基づき、従業員との労働契約を強制終了させることができるものとする。
【目的】
故意または重大な過失によって、労働契約を解除することを、懲戒解雇と言います。雇用の一種ですが、会社都合退職と異なり、従業員本人重大な責任がある場合に行われます。
本書では、別に第8章で懲戒処分規程を定めているので、あえてここで懲戒解雇の条文を入れる必要性は低いのですが、他の退職からの流れで懲戒解雇の位置づけを従業員に理解してもらうために、念のため記載しておくといいでしょう。
【POINT】
前述したように、別に第8章で懲戒処分規程を定めていますので、そこを参照するようにしておけばOKです。くれぐれも第8章で定めた懲戒処分規程の内容と矛盾するようなルールをここで設定してはいけません。なお懲戒解雇の場合も、就業規則に解雇理由が具体的にされていないと、懲戒解雇はできませんので注意してください。
退職者の義務~退職前後の義務について明示する~
第83条(退職者の義務)
1.解雇、自己都合問わず退職する者は、退職日までに業務の引継ぎ、その他指示されたことを完了し、貸与または保管されている金品を返納しなければならない。
2.従業員が退職するにあたっては、在職中に得た会社の情報、顧客情報、名刺並びに個人情報等について、必ず返還もしくは破棄について会社の指示に従うこと。退職後は、その情報をいかなる媒体として保持してはならない。
3.従業員は、退職後といえでも在職中に得た会社の情報、顧客情報ならびに個人情報はいっさい漏洩してはならない。
4.従業員は、退職にあたって自己もしくは第三者の利益のために、会社の関与先を誘導するなどの行為をしてはならない。これは退職後も同様とする。
5.会社は、競合する起業への就職もしくは競業での独立開業について、合理的な範囲で従業員の退職後の競業を言って期間制限することがある。
【目的】
退職が決まったからと言って、すぐに従業員と縁が切れるというわけではありません。特に退職の直前直後というのは、何かとトラブルが発生しやすい時期です。
そうしたトラブルを未然に防ぐためには、退職時のルールについてはきちんと定めておく必要があります。どのようなルールを定めるかは、法律に違反しない範囲であれば会社の自由です。
一般的には、上記例文のような内容を定めておけば安心でしょう。もちろん、自社の事情に合わせて、さらなるルールを設定してもOK。
退職後になってからあれこれ文句をつけるのでは、辞めた従業員もいい気持はしません。従業員に気持ちよく退職してもらうためにも、会社として、これだけは守っておいてほしいというルールをなるべく具体的に列挙しておくこと。
【POINT】
退職時に起こりがちなトラブルとしては、以下のものが挙げられます。
①十分な業務の引継ぎがされないまま辞められて社内が混乱した
②会社備品を返却しないまま退社された
③顧客情報等個人情報や社外秘情報を流出させられ被害を被った
④従業員の転職先の会社に、自分の顧客や取引先を奪われた
上記例文では第一項で①と②、第二項から第三項で③、第四項から第五項で④についてのトラブルを防止しています。
第二項から第三項で定めた情報流出については、5-13情報管理および保護関係でも規定していますので、その内容と矛盾が出ないように注意してください。
また第五項の転職の制限については、実際にはよほど明確に自社の営業妨害になることが証明できない限りは制限できないでしょうが、従業員に対して会社の意向を示しておくという意味で、念のため記載しておくことをお勧めします。
付則~就業規則の施行日について明示する~
付則
この規則は平成〇〇月〇月〇日から施行する。
【目的】就業規則の最後には、就業規則の施行日についての付則を記載しておきます。これはお約束のようなものですので、決して忘れないでください。
【POINT】
ここでポイントとなるのが日付です。就業規則が有効になるのは、労働基準監督署に届け出た日からではありません。ここに記載された日から有効になりますので、気を付けてください。
これは、この日付以前の出来事については、就業規則に書かれたルールを適用できないという事でもあります。
なお就業規則には従業員への周知義務があるため、施行日の時点で見やすい箇所に備え付けるなどして全従業員に周知しておく必要があります。施行日を過ぎても周知義務が果たせていない場合にはその就業規則の有効性が認められないこともありますので、気をつけましょう。
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