自社に合った制度なら人手不足・人材不足もスムーズに解消できる
独立当初は、教えるより経営者や様々な立場の方々から教えていただくことの方がずっと多かった。大企業の単なる一社員としてのスタンスや視点では、経営者の方々の立場や思いが、なかなか理解できなかった。人事・賃金制度は経営そのもの、マネジメントそのものであるということ。まさに経営理念の実現、経営計画達成のための手段・道具となるのが人事・賃金制度。
人事・賃金制度を単に賃金を決めるための仕組みだと考えている方もたくさんいますが、そうではない。しっかりとした経営がなされた結果として、つまりルールに沿って人事・賃金制度が適切に運用された結果として、初めて社員が気持ちよく働き、公正な賃金決定ができる。
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1.まずは人事の仕事の本質を知る
人事制度や賃金制度を理解するためには、まずは人事という仕事そのものの本質や、人事担当者が知っておくべきめざすべき姿についてきちんと押さえておく必要がある。
【仕事・人・賃金】の3つをうまく回すのが人事。人事の仕事は会社組織には欠かせない。
3つのバランスが崩れると力を発揮できない。仕事の難易度、人の能力、賃金額などを調整する。適度な仕事に適切な人を当て、適性な賃金を支払う。言うは易く、行うは難しです。
低いレベルでバランスを取り、現状維持を狙う方法。小売業・飲食業・サービス業などの店舗で多い形。パート・アルバイト・フリーターなどを多用する職場では特に有効です。人の能力は限定的なので、詳細なマニュアルの整備が必要になる。3要素がバランスしているので悪くはない状態ですが、全社がこれでは問題です。
成長を願うなら、高いレベルでバランスを取る。人→仕事→賃金の順で少しずつ上げていく。人が高まり、仕事が高まり、賃金が高まるという全循環が回りだす。会社の成長は、社会への貢献増大にもつながる。
社員が出世したくないという会社は要注意。管理職になっても責任が増えるだけで、待遇はほとんど変わらない。だからなりたくない、そもそもこんな会社で管理職なんてなりたいと思わない。
2.人事制度の基本構造を押さえる
機能的な人事制度を設計するには、企業の人事制度がおおよそどのようにできているのか把握することも必要です。
経営者と働く人では立場や関心が全く違う。経営者ほどの切迫感は、社内のだれも持っていない。経営者は個人資産を担保に事業を行っているため、事業が失敗すると毛映写は自宅も財産も失い、残されるものは借金だけとなることもある。経営者は自社の発展や業績の向上に社内のだれよりも関心を持っている。従業員は、賃金や労働時間などの処遇・労働条件の向上により高い関心を持っている。人事を考える際には、異なる関心を持つこの2種類の人たちを同じ目標に向けて一致団結させるよう意識しないといけない。何もしなければ経営者と働く人の関心事項が一致することはない。
両者の関心事項を一致させる仕組みを作る。その仕組みこそが「人事(・賃金)制度」。期待する社員像を置くこと。うまく両者の興味・関心を一致させれらる。
この場合の期待する社員像とは、会社を成長させ続けるために、経営者が自社の人材にどうあってほしいと考えて居るのかを明らかにしたもの。どんな条件を満たすと、最大の関心事である処遇や労働条件の改善を実現できるのか具体的な道筋を見せる。動機づけの仕組みこそ人事制度であり、そうした仕組みをうまく設計、調整することも、人事の仕事の一つ。働く人が自分のために努力をすると、企業の利益にもなるように設計する。
人事(賃金)制度は、統合的に設計・運用する。ばらばらに運用していては混乱する。場当たり的な運用だと判断基準もあいまいになる。多くの企業では、処遇は処遇、育成は育成、採用は採用というよに、それぞれの業務が何の関連性も持たずバラバラに、場当たり的に行われることがほとんど。こうした事態を避けるためには前述した期待する社員像を中核として、人事関連の様々な制度やイベントを統合的に設計・運用する必要がある。基準がぶれると不満がたまる。
期待する社員像には等級を設けて成長を促す。多様な人材に対応するためにも等級は必要。レベル分けのない基準では実務に適さない。頑張れば手が届きそうな目標だからこそ努力する。こうした等級制度は働く人の成長を効率的に促すためにも必要。到底するには達成できそうもない目標を示しても、本気で努力する人は稀。格闘技の段位と同じようなもの。
期待する社員像の等級は5から8段階。各等級には等級基準が設定される。適度な感覚で昇給がないとモチベーションが落ちる。10年くらいたたないと等級が上がらないというものでも問題。等級別に期待する社員像を細かく定義します。これを等級基準とか等級定義と呼ぶ。
【資格等級基準書】
資格等級6:【管理職】会社経営の基本方針に基づいて、最も大きな組織(部)の方針と目標を合理的に設定し、極めて広範かつ高度な見識と経験、並びに強力なリーダーシップ、統率力を持って担当部門を統括・管理し、所定の目標を効果的・効率的に達成できる能力を有す。経営絵的視野に立って、他部門との協調や調整も行えること。
資格等級5:【管理職】会社経営の基本方針と部門の運営方針・運営目標を的確に踏まえ、中規模組織(課)の方針と目標を合理的に設定し、高度な見識と豊かな経験、強力なリーダーシップと統率力を持って担当部署を管理し、所定の目標を効果的・効率的に達成できる能力を有す
資格等級4:【指導職】中規模組織(課)の方針と目標を踏まえ、小規模組織(店舗・サービス工場)の運営方針を合理的に設定し、実務的な知識と一定の経験を踏まえ、部下の動機づけを図りつつ、所定の目標を効果的・効率的に達成できる能力を有す。また、実務的な知識を活用し、中規模組織(課)の責任者をよく補佐できる。
資格等級3:【指導職】実務的案知識と一定の経験を踏まえ、比較的責任の重い業務を、自らの判断と創意工夫を持って強力かつ計画的に遂行できる能力を有す。小規模組織(店舗・サービス工場)の責任者の補佐として、メンバーを適切に監督できると同時に、業務の正確かつ迅速な遂行方法について、下位等級者に対して適切な指導ができる能力を有す
資格等級2:上司から業務の包括的内容と処理方針を示され、自らの判断・意思決定に基づいて、営業、専務、サービスなどの判断を要する定型的な業務を単独で、もしくは補助者を指揮しつつ、計画的・効率的に行える。
資格等級1:上級者による業務の処理方法の具体的な指導・指示を受けて、主として明確な処理基準が定められている、単純定型業務を自主的に行える
勤続年数による自動的な昇格はできるだけ辞める。年功序列はできる人によって不公平となる。なかには成長や出世ができない、したくない人もいる。一定数存在する。できる人には額に不利な制度となる。年功序列型の人事・賃金制度には会社の活力をそぐ危険性がある。できる人ほど見切りが早い。
人事制度は経営理念をブレークダウンしたもの。すべての会社の制度は、経営理念実現尾ためにある。経営理念が明確だと業績も好調になる。組織が活性化されていて社員の満足度も高く、業績も好調であるというはっきりした相関関係がある。人事制度を考える上でも、経営理念こそが最重要の要素で洗い、スタート地点と言えるわけです。
企業の人事制度はつまるところ、その会社の経営理念を実現するために作られます。経営理念は短くシンプルでなければならないので、理念を実現するために具体的な作戦を立てたものが、経営戦略や経営方針、中期計画等になる。
年度計画で業績効果を実施、人事考課に反映する。目標管理制度は、業績・行動面における理念実現の道具。
3.人事・賃金制度の種類と日本での潮流
仕事を基準に考えるか、人を基準に考えるか。日本で一般的な人間基準人事は国際的には少数派。
日本の人事制度は人中心。人事管理の手法は、仕事を基準に考えるか、人を基準に考えるか。。仕事基準の人事では、賃金額は職務内容に応じて決まる。
仕事基準人事:職務給
人間基準人事:職能給、属人給、年功給
高度経済成長期には主流だった年功給制度。高コスト体質を生みやすいため現在ではほぼ消滅。
多くの中小企業で現在も採用されている「職能給」。年功給制度が行き詰ったあと主流になった。職能給による制度では、働く人の能力をあらかじめいくつかのレベルに分けて等級を設定し、その等級に応じた賃金を支給します。働く人にとっても、教育や育成を視野に入れた制度であり、長期雇用が前提になっているために一定の安心感があり、企業への帰属意識や社員同士の一体感が醸成される。職能給。
低成長時代に入った今、職能給制度には課題が山積み。働く人の能力が上がる速度に利益が追い付かない。運用が以前の年功的なものになってしまいがち。こうした状態では奥の社員が高い等級にまで昇格していくため、人件費の行動を招いて経営を圧迫してしまう。以前の年功序列制度と同じような運用をすれば、同じような問題が起こる。
職能給制度の運用には、本来は仕事調べが必要。ほとんどの企業が実施していないのが実態。仕事調べをしっかり実施すれば現在でも十分通用する。仕事知ればというのは、その会社に心材する全ての仕事を洗い出して、そのすべての仕事について、それぞれの等級に求められる業務遂行レベルと、その実行に必要な能力を明らかにする作業です。課業一覧表と呼ぶ書類を作成する。この仕事調べを実施している企業の割合は、10社に1社。
職務給の制度ではより公平な運用ができる。人種や年齢、性別などによる差別が起きにくい。事前の契約で仕事の内容と賃金額をがっちり決める。職務給型の賃金制度では、それぞれの職務=仕事の価値に基づいて賃金を決める。同じ仕事なら同じ賃金。日系の多国籍企業では、現地法人にだけえ職務給を導入しているケースもある。同一労働・同一賃金という原則に基づいた仕組み
職務給制度は、柔軟で長期的な人材活用は苦手。配置転換が難しく、離職や転職が多いため。契約内容にない仕事は断られることもふつうにある。仕事と賃金が直結しているために、かえって会社にとって最適な人材配置がしにくい。同じ仕事をしている限り、あまり昇給は期待できない。能力開発は本人の責任。
職務給では現場ベースの業務効率化は起こりにくい。効率をよくする方法を考えるのは管理職の仕事。会社の業務の効率化を考えるのは、管理・監督者の仕事であって、そんな仕事は契約事項に入っていないので、それぞれの担当者の仕事ではないと考える。仕事基準人事の労働文化においては、雇用契約を結んでいる自らの仕事に対してはプロ意識もあり責任感が強いのですが、他人に対しての協力意識は低くなりがち。日本ではその逆で同僚との協力意識は高いものの、プロ意識は低くなりがち。職務給の下で業務改善を行いたいなら、業務改善のプロを雇う事。
能力の高い管理職等に適合する「役割給」制度。一時期流行した年棒制も役割給の一種。一定の裁量を認めて、結果で評価する制度。日本の一部の大企業において職能給に変わって主流になりつつある賃金制度として役割給がある。高い責任感や職務遂行能力、皿には権限も持っているホワイトカラーや管理職、あるいは専門的な業務を行う研究職や専門職などにマッチする制度。業績の評価期間は1年に設定されることが多く、年棒制として運用されるケースが多いようです。日本風土に合わせた形で、職能給を職務給に近づけた制度ともいえる。一定以上の役職の管理職にだけ、役割給を適用するという選択肢もあります。
多くが失敗に終わった成果主義賃金制度。現在では一部の要素のみが取り入れられている。役割給は成果主義賃金制度の代表格。うまくいかなかった事例が大多数だった背景には日本人の国民性もあったのでしょう。
成果主義賃金制度が挫折した理由①人間心理の無理解がモチベーションを下げた。
①うまく成果を出せないと、社員のやる気がなくなる②期待される成果(目標)や、評価への不満が高まる③全員が自分の成果だけを考え、チームワークが弱まる
成果を出したら賃金もたくさんもらえるとなれば、ほとんどの人が一旦は頑張ろうとします。しかしもともと無理な成果を要求されたり、成果を出せないことが続いたりすると、最初からあきらめて、頑張ろうとしなくなるのが人間です。心理学ではこれを学習性無力感と言います。賃金の減額は、増額時の喜び以上に働く人のモチベーションを下げる。
成果主義賃金制度が挫折した理由②賃金に直結するため、社員が公平性に敏感になる。
成果主義賃金制度が挫折した理由③チームの強みを活かせなかった。全員が自分の成果だ毛を考え、チームワークが弱まる。間接的な部門の人員も売上、利益に結び付くプロセスの中にしっかり位置づけ、バランスよく評価することができなければチームはガタガタになる。企業に成果は必須ですが、あまりに直接的に賃金に結び付けるとうまくいきません。バランスの良い評価が不可欠。
「歩合給」制度は成果主義賃金の一種。特定の職種にはマッチすることもある。歩合給は1個売ったらいくら、あるいは1個生産するといくら、などと言った非常に明瞭な形で成果に直結した賃金が支払われる制度。やればやっただけ賃金い繋がることが働く人にもすぐにわかる。そのため働く人のやる気を高める効果がらう。宅配便の配達員等。賃金全てを歩合給にするのは不安定すぎる。保険や自動車、不動産のセールス職などに導入されている。歩合給の導入割合は20%が限界。賞与や報奨金にだけ歩合給を導入し、働く人の賃金の安定性を高める手もある。ある意味一番分かりやすい。
中小企業に適している役割行動給制度。職能給と役割給のいいとこどり。売上や利益につながる具体的な行動を基準にする。今後主流になるかも。役割行動給では、優れた業績を出し続ける人の思考・行動特性を意味するコンピテンシーを参考に、会社の業績向上につながる社員の具体的な行動=役割行動を経営理念からのブレークダウンと、現場からのボトムアップの両方を使って事前につくり、それぞれの等級ごとにあらかじめ掲示します。そのうえで、その行動や考え方をどこまで実践できたかによって、働く人の賃金額を増減させます。その性質上、属人給と職務給のいいとこどりのような制度。
役割行動給なら間接部門の人員の行動も、しっかり評価体系に組み込むことが可能となる。個々の社員がどう動けばいいかも具体的に示されているので、業務遂行能力が比較的低い中小企業の社員にも適用しやすい。あえて難点を言えば、導入時に会社の発展に必要不可欠な行動を具体化するのに、少々脳みそに汗をかく必要がある。
役割行動等級基準書
日本の人事制度の主流は15年ごとに変換してきた。そろそろ新しい主流に変わる時期。職能給制度への回帰と、管理職への成果主義導入の二極化。
今後欧米化が進むが職務給にまでは至らない。日本の労働文化や国民性を反映した制度になるはず。日本と欧米などでは人事の方向性が全く逆だった。逆に欧米企業の人事制度が日本かしている面も。無理に欧米型にする必要はなく、自社の実態と必要にあった制度にすればOK・
理想の人事・賃金制度はゴルフによく似ている?アメリカの行動科学者ウィリアム・もブリーは人々が後るを大好きな理由として①明確な目標がある②ゲームに完結性がある③フィードバックがある④多様な技能を駆使できる⑤判断を要求される
①目標がなければ仕事で何をめざせばいいのかわからない②ゲームの完結性がなければ、どこまで頑張ればいいのかわからないし、失敗した時に心機一転のやり直しができない③フィードバッグがなければ仕事の出来が良かったのか悪かったのかわからない。④多様な技能を駆使できなければ、ワンパターンな仕事になって飽きてし今います。⑤判断を要求されなければ、常にだれかの指示で動かなければならないため、自分の意思を表に出せず欲求不満に陥ってしまう。
これらの要素が欠けた会社や組織では社員のモチベーションが低下してしまう。ゴルフの要素を満たすような人事・賃金制度を整備できるように頑張ってください。
4.中小企業に適した人事制度はどれか
大企業と同じやり方は中小企業には通用しない。中小企業の特徴にあったアプローチが必要。
中小企業こそ人事制度を改革する効果は大きい。事前の人材開発が十分医にされていないため。そういう中小企業だからこそ、人事や賃金制度を改革することの効果が、大企業とは比べものにならないくらい大きくなるのも事実。人事制度の改革は、こうした社員に能力開発や業績向上につながる行動へのインセンティブを与える。人事制度を整備することは、経営者の指導力だけに頼ることなく、システムによって会社を運営することに他ならない。
成功した人事制度改革は悪循環を全循環に変える。ワンマン経営体制は職場の悪循環を導きやすい。こうした状況が慢性化すると自社の社員の教育や人材開発のチャンスを奪ってしまうため、彼らの意識や能力がますます低下する悪循環に陥る。
現実的に中小企業に適用できる制度はふたつだけ。運用の手間がほどほどで人材開発にも役立つ。中小企業の特徴を見てきましたが、それでは結局、これらの中小企業はどの人事制度を導入すべきか。ずばり、改善された職能給制度化役割行動給制度のいずれか。役員クラスに限定して年棒制度等の役割給を導入してもいいかもしれない。
経営者と働く人、両方の視点から制度を評価する。自社の事情に合わせて評価を行う。
5.実践編(改善された)職能給制度の導入
旧来型の制度運用ならば改善型に変更したい。低利益体質の慢性化や人材育成の停滞を招く。旧来型の年功序列的な職能給制度が維持されているケースが多い。
職能給制度再導入時の3原則
①人材を育成するという職能給制度本来の原点に立ち返る
②妥協して年功的運用に堕することなく、公正な運用に徹する(昇格・降格を適正に実行する)
③上記の①・②を可能にするため、仕事調べを実施して、会社が従業員に求める能力とは何かを明確にする
フレーム設定に先立ち各種の実態調査を行う。自社の現状を正確に把握する。能力を基準とした仕組みを具体化し、個々の実際の企業に適用するには、設計図の作成が必要。人事の世界では、こうした仕組みの設計図をつくる作業、フレーム設定。
・労働費用の現状分析:費目別金額、月例賃金構成比など。
・賃金分析:役職別、資格等級別、年齢階層別、雇用形態別、職種別の水準及び構成比など。
・役職・職種・資格の現状:職位の段階数、役職ポストの数と資格者数、年齢別人員構成、男女及び雇用形態別人員構成。
社員に求める能力を順番に具体化させていく。「資格等基準書」や「等級概要説明書」に落とし込む。フレーム設定では、最終的に資格等級基準書や、等級概要説明書を作成します。具体的には以下のような順番で決定をしていくと、最後まで比較的スムーズに決定していけます。
①職種・職群区分の決定
②資格等等級数の決定
③各等級に対応する代表的な役職の決定
④等級定義の決定
⑤初任等級の決定
⑥モデル経験年数の決定
⑦資格呼称の決定
⑧昇格要件の決定
書類に落とし込みながら細かい部分まで検討する。図表にすることで分かりやすくなる。
書類に落とし込みながら細かい部分まで検討する。図表にすることで分かりやすくなる。等級区分の検討表です。最初に基本的な成長・昇進ルートを検討する。1から3等級がひら社員。4から6等級が役付き部下なし。7から9が等級が管理職部下あり。特定の業務において特別に高い技量・経験を持つプロフェッショナルについては、通常の成長・昇進ルートとは別の処遇をする必要があることから専門職ルートを別に設けている。またパートやアルバイトについても、昇給や昇格の可能性があることを示して動機づけするため全3階層の別ルートを設けている。
フレーム設定の段階で昇格要件も決定しておく。職能給制度の最重要ポイント。明確な条件を設定し、役職の乱発や人件費の増大を防ぐ。基準があいまいな情実人事で昇格が決定されてしまうケースが多かったからこそ、人事が年功的になり、人件費の増大などの諸問題を招いた過去の教訓を忘れてはならない。3等級までは高卒・短大卒・大卒で初任格付けが変わる。特段の事情がなければ勤続年数で自動昇格することとし、それ以降は能力や実績での昇格としました。なお尿力の評価については、後述する能力評価計算表を使って評価することとしています。昇格要件に上長の推薦を義務付け、能力や実績に見合わない昇格を抑制している。
検討結果を元に資格等級基準書を作成する。完成した等級基準をもとにして仕事調べへと進む。こうした検討作業によって、当たらに導入する人事制度のおおよその枠組みが確定したら、まとめとして、資格等級基準書や等級基準概要書を作成します。
資格等級基準書は各等級の社員に求められる能力を分かりやすい言葉で表現したもの。この段階では、部署が異なる社員に期待する能力をまとめて表現します。資格等級基準書に各等級に該当する役職名や、区分、モデル在位年数、モデル到達年齢などの項目を追加したものが、等級基準概要書だと考えてください。両方作った王がわかりやすいですが、どちらか片方だけ作成する野でも、実務上大きな問題はありません。これで職能給制度の導入時に必要なフレーム設定の作業は終了です。なおフレーム設定が終わったら、次は作成した資格等級基準書をベースに仕事調べを行います。この作業は職務調査ともよびます。この仕事調べは、各部門・各役職の社員が実際のところどんな業務を行っているのか、全体的にきめ細かく調査をしたうえで、こんごはどんな業務を行ってほしいと覆っているのかという要素も加え、それぞれの業務(課業)に必要な能力を、部署と等級ごとに割り振っていく作業です。この仕事調べは大きな労力のかかる大変な作業ですが、資格等級基準書があると比較的スムーズに進められます。逆にいうと決まっていないとうまく進まない。
仕事調べによって課業一覧表を作成する。仕事調べが行われなかったケースが多数派だった。多くの企業がフレーム設定の作業で等級基準を決めたら、そこで満足してしまい、それだけで運用してきた。曖昧な等級定義を具体的な仕事に落とし込む作業が仕事調べ。
仕事調べ(職務調査)をおこなう目的
①能力を公正に図るための「ものさし」の作成【評価】
②会社が期待する「能力」の明確化【育成目標の提示】
③等級別担当課業の設定【活用】
④「期待する社員像」の明確化【処遇の基準の設定】
⑤同一労働・同一賃金への流れへの対応
⑥目標設定や仕事の割り振りを行えるようにする
⑦仕事・能力・賃金の関係を明確化する
仕事調べは外部の協力も仰ぎつつ自社人員で行う。完全外注すると後々細かい調整ができない。中小企業が自社人員だけで行うのは現実的には難しい。一般の中堅・中小の企業が社内のスタッフだけで仕事調べを実施して、課業一覧表の作成段階にまで到達することは、なかなか難しい。経験豊富で信頼できる外部コンサルタントを助言や協力を仰ぎながら、社内のスタッフが主体となって調査を行うというのが成功しやすい方法。
【一般的な仕事調べの手順】①委員会・プロジェクトチームなどの発足準備②委員会・プロジェクトチームの発足③外部コンサルタントからの意見聴取④課業の洗い出し⑤課業の整理(追加・集約・除去)⑥課業のグループピング⑦難易度の設定(難易度基準5段階)⑧等級別習熟度の設定(習熟基準3段階)⑨課業分析表の作成⑩課業一覧表の作成⑪課業比較一覧表の作成⑫部門別・職種別調整⑬委員会・プロジェクトチームでの承認⑭部門長承認⑮役員会承認⑯課業一覧表の決定
仕事調べの結果を各個人に割り振り、評価に利用する。誰がどんな仕事をしているのかが一目瞭然となる。まずは個人別課業分担表を作成する。まずは課業一覧表から主だった業務を10項目選んで記入するようになっていて、10項目もあれば実際に業務時間中に行っている仕事の8割程度は十分にカバーできるはず)
能力評価計算書で評価し、等級を決定する。一定の計算式で機械的に等級を決定できる。さて、前項で示した個人別課業分担表で、年度末などに各課業についての能力を習熟度で評価します。事例では◎、〇、△の三段階での評価になっている。能力評価計算表に書き写します。職能給制度の根幹である「能力」の評価を、個人別課業分担表と能力評価計算表を使うことで、情実を排して公平・明瞭に行うことができる。
仕事調べなしで導入するなら「格付基準書」を作る。規模の小さな会社ではこの方法でもよい。職種別・等級別に「会社が期待・要求する仕事の内容」「その仕事の難易度」「会社が期待・要求する仕事を遂行するために必要な能力」などを明らかにした書類=基準を作ることが必要です。
経営者のこんな能力を身に着けて、こんな仕事をしてほしいという思いを中心に大局的な視点から、各等級の社員に求める能力を整理しましょう。格付基準書。格付基準書を使った職能給制度は、いわば簡略版。しかし、格付け基準書の内容が適切であれば、仕組みがより簡素なので、特に中小企業においてはむしろ運用しやすい場合もある。
呼び方は、社員育成等級制度と呼ぶことが多い。
6.実践編:役割行動給制度の導入・移行法
行動を評価や賃金のものさしとする制度。中小企業の特徴にあった仕組みと言える。この役割行動給制度が中小企業における今後の人事制度のスタンダートになるはずだと考えている。
アクテンシー(役割行動)が基準。役割行動給制度でも同じように、役割行動等級基準書等を作成してその行動を定義します。
役割行動給制度の3つの特徴
①制度での基準・ものさしとなるアクテンシー(役割行動)を、現場の社員が中心となって作成する
②基準が具体的なので社員が迷わない
③制度が単純なため中小企業でも運用がしやすい
アクテンシーは社員が中心となって作成する。より機能する基準を作りやすい。自社の事情に合致した基準を作れるなどのメリットも。
役割行動給制度では、評価や処遇の基準となるアクテンシー=役割行動を決める過程に、原則として社員自身も参加させます。プロジェクトに加えた中核的な社員の成長、部署間コミュニケーションの改善、経営陣への信頼感醸成っが期待できる。原則があれば、常に例外もある。プロジェクトを編成しないで経営者や人事部門などが主体で進める例外的な運用も可能。
具体的な行動が基準なので社員が迷わない。どう動けばいいのかが明々白々。中小企業では具体的でなければ運用しにくい。業務を遂行する上で重要な行動だけを選んで取り上げ、働く人全員がどんな行動をすればいいのか共通のイメージを描ける程度に具体的であればそれで充分。
制度が単純なので中小企業でも運用しやすい。導入や運用のコストが小さい。全員が理解できる制度が理想。役割行動給制度では、ものさしであるアクテンシーが非常にシンプルなので、小さな会社であっても運用しやすい。アクテンシーでは、コア(共通)と専門別、管理職用(マネジメント)の3つしか作成しません。等級別にも分かれてない。すべての等級で同じ基準が使われている。さらには能力評価はありませんので、賞与用、昇給用、昇格用などと別々の基準を使うこともしません。複雑な 制度では運用しづらい。
全社員共通のコア・アクテンシー。簡単そうだが、作成するのは意外と大変。全社員に共通して適用されるアクテンシー(役割行動)があります。この種類のアクテンシーのことを、コア・アクテンシーあるいは、共通アクテンシーなどと呼んでいる。
職種別に作成する専門別アクテンシー。自社の業務を分類し、必要最低限の数を作成する。特定の職種や部門の社員にだけ求められる行動もあるので、それらについてのアクテンシーも作成する必要がある。(営業部門とか経理部門など)職種ではなく部門別に作成したり、非正規雇用専門のアクテンシーを作成したりすることもできますから、自社に適したものをつくればよい。ただしあまり数を増やすのはおすすめしない。
マネジメント層に使う「管理職アクテンシー」上司としての役割や行動を定義する。役職ごとに作成することも可能。課長用アクテンシー。部長用アクテンシーと役職ごとに。
役割行動等級基準書で等級別の行動レベルを定める。同じ行動でも異なる行動レベルを求める。役割行動給制度でも職能給制度などと同様に等級制度は必要となります。会社という組織はピラミッド型の組織ですから、完全に等級をなくしてしまうと、さすがに様々な問題が出てくる。賃金の決定などでも等級制度は不可欠です。そこで必要になるのが、役割行動とうきゅ基準書です。設定した等級ごとに、最低限の役割基準を規定すると同時に、各アクテンシーをどのようなレベルで実行すべきかを定義したものです。Ⅰ等級→半人前、Ⅱ等級→一人前といった感じで、同じアクテンシー、つまり具体的な行動に対しても等級によって異なるレベルや責任を設定します。
新制度へと変更する際に気を付けておくこと。結果だけでなくプロセスも重視する。①制度改革だけでなく組織風土改革も②制度の内容だけでなくプロセスも重視③制度づくりではなく人づくり④機密に決めずに方向性を決める④緻密に決めずに方向性を決める⑤トップダウンではなくボトムアップ⑥賃金の明確化より行動の明確化
要するに役割行動給制度は、導入のプロセス自体を自社の社員を育成したり、企業風土を改革したりするきっかけとすることを重視。出来るだけボトムアップ型にして結果だけでなくその検討プロセスも重視する。
手順①組織と人材の現状を正確に把握する。現場の課題は、現場の人員から聞き出すこと。聞き取り調査やアンケート調査を活用する。組織と人材の現状を正確に把握し、何が自社の課題なのかをあぶりだして、解決の方向性を決定する事です。経営トップが何人アの社員と直接会って、自社の課題としてどのようなものがあるか聞き取り調査してもよいでしょう。このようなアンケート調査は、モラールサーベイと言う。自社の現状が把握出来たら、次は課題を改善するための大まかな方向性を検討・決定します。そしてそれを会社の今後の方針として全社員に事前に伝え、協力を得られる体制を作る。
【役割行動給導入の大まかな手順】
①組織と人材の現状を正確に把握し、課題と解決の方向性を共有する:労働費用の現状分析、現在の制度の実態把握、聞き取り調査、もーらるサーベイなどを行う
②最適なプロジェクトチームを編成し、方向性をさらに固める:成功しやすいメンバー選びに留意して、次世代のリーダーと目する人材を各現場から集めます。そのうえで、自社の問題や改善すべき点などについて自由な議論をさせてメンバーのモチベーションと結束を高める
③会社の課題を解決できるアクテンシー(役割行動)を決める:一定の手順を踏みながら、制度の根幹となるアクテンシーを作成していきます。この段階で等級の設定も行います。
④評価を行う方法を検討・決定する:等級別の定義を使て、評価基準と考課表を作ります
⑤新しい人事・評価制度を社内へ公表して周知徹底する
⑥評価を賞与、昇給などの賃金につなげる仕組みをつくる:昇給や降給などの賃金改定と、賞与に評価を反映させる仕組みを作ります。細かい賃金表をつくったり、ウェイト配分などを検討する必要もあることから、この部分については専門家に制度設計を依頼するケースが多いでしょう。
⑦新しい賃金制度を社内へ公表して周知徹底する。
手順②プロジェクトを編成し、方向性をさらに固める。準備段階で決定した方向性をより具体的にする。多様な人材を取り込んだチームを作る。新しい人事・賃金制度を導入するプロジェクトを立ち上げ、そのメンバーとして意欲のある社員を集めることです。社内公募を行って立候補を募ると同時に、次世代のリーダーとして期待している人材には、経営側から声をかけて応募させるようにする。
7.賃金制度の基本構造を再確認する
66.賃金の二つの面を理解しておく
企業にとってはコスト、社員にとっては所得。
会社にとっては人件費という費用。
働く人は、賃金によって生活を営んでいかなければならない。扶養家族がいれば家族の生活費も必要。所得としての賃金にはこうした性格がありますから、ある程度の生活を維持できるだけの金額が最低ライン。
会社の利益が上がり、社員の生産性が上がれば賃金も上がる。より高い賃金を実現するには、社員1人当たりの生産性を高め、付加価値を高めることで、会社の利益も上げるほかには手段がない。
67.賃金を決定する要因も大きく分けて二つある
社内要因と環境要因によって決定される。
経営方針や賃金制度によって大きく変わる。人材ととらえるかコストととらえるか。
インフレ下では賃金も上げないと実質価値は目減りする。
賃金の決め方は環境要因に左右されやすいので慎重に決定すること。
68.賞与や退職金、各種手当も賃金の一部
固定費的な部分と変動費的な部分にさらにわかれる。
賃金は基本給をベースに、そこに役職手当や住宅手当などの各種手当が付加されて、毎月の給与が形成されている。
職務や業績、能力、行動等を反映して変動する(昇降給する)部分と、最低限の生活を保障する固定的な部分のふたつで構成されている。
賃金制度の変更は職務や業績、能力、行動等を反映して変動する(昇降給する)部分を大きくし、逆に固定的に昇給される部分は減らして、最低限に抑えていく傾向が強まっている。
69.昇給分での各要素の配分が賃金の性格を決める
実際には多様な要素の組み合わせ型となる。どんな賃金制度であれ、固定的な部分と変動的な部分の両方があり、混在してくる。
変動的部分には職務(仕事)、業績(成果)、能力、行動(努力)があり、固定的部分には生活(保障)があります。
70.一部の手当は廃止・減少させていく方向にある
一気になくすことは難しいが。
役職手当など職務に直結する手当は外せない賃金。営業手当や特殊作業手当等、通常の業務よりも社員の肉体的・精神的な負担が大きな業務を行う場合には、特別な手当を設けてその負担に報いることも、それなりに正当性があることだと思います。
これに対して、配偶者手当等の生活関連手当は縮小、あるいは廃止していく傾向が最近はみられる。一旦出し始めた手当を急に廃止することは、社員五取っては賃金の大幅な減額に直結しますからなかなかできない。調整手当を出しながら、時間をかけて修正していく。
同一労働・同一賃金は、本来欧米型の職務給を表す言葉。
8.人事考課と目標管理
71.人事考課では能力・行動・成果の3つを評価する
すべてを評価しないとバランスが悪くなる。
一般的に人事考課とは、ある社員の能力の評価と行動の評価(原因の評価)、さらにその期間の業務上の成果に関する業績評価(結果の評価)の3つから成り立っている。そしてその人の能力や実際の行動等について、一定の仕組みで賃金や処遇に反映していくもの。
役割行動給制度では、役割行動に能力を含めるため、行動に対する評価の比重が大きくなります。一方職能給制度では、能力開発を重視するので、能力に対する評価の比重が大きくなります。
人事考課を公正する3つの評価のうちのひとつ、業績評価は、要するにその期間の結果がどうであったかを問うもの。
72.人事考課は事実とコミュニケーションが命
企業風土を改革し、理念実現へと近づける。人事考課とは、経営理念や経営方針として示されている会社の考えを末端の社員にまでしっかり伝えるための道具。
適切な人事考課を行ううえで決定的に重要なもののひとつはコミュニケーションです。
73.一部の書式を使い、常に部下の行動を記録する
ばらうきの押さえ、事実に基づいた評価を可能にする
半年や1年前の行動を覚えられていられる評価者はいない。人事考課の精度が向上する。評価について部下と面談して話し合いをする際にもこうした記録があった方が具体的な話ができる。
74.目標管理制度を導入して意思疎通をしっかり行う
3つの面接で部下と上司のコミュニケーションを実現する。
役割行動給制度では、特に目標管理制度との相性がいい。上司と部下で緊密にコミュニケーションを取りながら人事考課を行っていくには、目標管理制度を導入するのが有効。
年に最低3回は上司と部下が話し合う機会を持つ。目標設定面談。中間面談。フィードバック面談。
75.管理者には研修を受けさせて、評価能力を高める
中小企業では検証の実施は必須。外部の人材やセミナーなどを有効活用する。自社に新しい人事制度を導入しようとするとき、社内の管理者に事前に人事考課の能力を高める評価者研修を受けさせておくと、よりスムーズに新制度を運用できる。
【人事考課の3つのステップ】
①職務行動の観察:どの事実を取り上げるか観察する
・職務行動における事実What
・社内における事実Where
・考課期間内における事実When
②効果要素の選定:どの考課要素で評価するか選定する
・ひとつの事実に対して、原則として複数の効果項目で評価しない
③評価段階の決定:評価段階をどれにするか決定する
・期待するレベルが基準となる
・上回るか、下回るか、期待レベルちょうどなのか
実質的な男女別賃金表となるのは避けるべき、との考えから現状、男性のみの営業職も現状女性のみの事務職も同じ賃金表にして、最低限の生活を保障する意味で年齢給の要素を取り入れることは、すんなりいった。
日本に欧米型の完全な職務給が定着することはまずない。
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