人事評価制度の作り方

今いる社員の戦力化。これこそ中小企業の最優先課題です。

人材育成は、会社にとって最重要課題である。

経営を軌道にのせ、会社を成長させていくためには、「人材」つまり、今いる社員を稼げる人材に育てていかなければならない。

しかし現実は、多くの中小企業は目の前の業績を伸ばすことに必死で、社員一人一人を育てる余裕がない。部下や後輩を指導していくべきリーダーは、ほとんどがプレイングマネージャー。個人に課された目標を達成することに一生懸命で、人材の育成まで手が回っていない。

つまり多くの中小企業が「人材育成」は重要であると理解しながらも、育成に手が付けられていない状況。

ドラッガーいわく「マネジメントのほとんどが、あらゆる資源のうち人が最も活用させず、その潜在能力も開発されていないことを知っている。だが現実には人のマネジメントに関する従来のアプローチのほとんどが人を資源としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている。」

中小企業で理想の組織が実現できる「ビジョン実現型人事評価制度」という仕組み

実際、ビジョン実現型人事評価制度をうまく運用すると、次のような効果が期待できる。

・将来を担ってくれるリーダーが育つ

・社員全員が経営理念や方針にそって成長する

・ほしい人材が採用できる

→会社のビジョンが実現できる

この制度には、「理念やビジョンが社員に浸透する」「人材の成長サイクルが自然と回るようになる」という2つの大きな特徴があるから。

理念やビジョンが浸透すれば、社長と社員全員が同じ目的・目標に向かって仕事に取り組める。人材の成長サイクルがまわっていくことで、社員は成長意欲を持って自ら学び課題にチャレンジしながら成長します。そしてそれが会社の成長にもつながる。

ビジョン実現型人事評価制度で理想の組織をつくる3つのSTEP

STEP1 ビジョン実現シートを作成する

①経営理念②基本方針③行動理念④ビジョン⑸事業計画⑹経営戦略⑦現状の人材レベル⑧5年後の社員人材像⑨ギャップを埋めるために必要な課題⑩人事理念⑪プロジェクト・コンセプト

STEP2 評価制度をつくる

①経営計画発表会を行う②ジョブ・ヒアリングシートを作成する③グレードを明確にする④評価基準を構成する⑴業績項目を定める⑵成果項目を定める⑶能力項目を定める⑷情意項目を定める⑤ウェイト配分表を作成する

STEP3 ビジョン実現型人事評価制度を運用する

①トライアル評価を3回行う②5つのプロセスで人材を育成する 評価の実施→育成会議→育成面談→目標設定→毎月コツコツ面談 ③毎月コツコツ面談で成長を支える④納得度アンケートで納得度を計測する⑤アクションプラン会議で実践のためのスケジュールを立てる

GOAL

 

人事評価制度の本来の役割とは、会社が望む方向に「社員」を成長させ、強い組織づくりを実現すること。

 

ビジョン実現型人事評価制度の最大の目的はみんなで幸せになること。

人事評価制度の中心は賃金ではなく評価。

そもそも多くの人は人事評価制度のゴールを、評価結果を昇給、賞与に反映させること、賃金で頑張った人のもちべーしょんを上げることと勘違いしています。

人事評価制度は、人材を会社の資産として活用するための仕組み。人事評価制度とは、評価制度、賃金制度、昇進・昇降格制度の3つの仕組みで構成され、評価制度を通じて行われた評価結果は、賃金制度や昇進・昇降格制度に反映される。

評価制度を活用して、人材を育成し、会社の経営目標の達成をめざす。これが人事評価制度の本来の目的。

会社の目標がいくら実現できても、社員に仕事の充実感ややりがいを実感してもらえなければ成長は維持できません。永続的に成長・発展する強い会社となるように、経営目標を達成した先に、社員全員が幸せになるというゴールをかかげる。

そしてこれを全社員に理解、浸透させます。

ビジョン型人事評価制度の1つ目の効果

理想の組織とは=目的・目標をめざす協働体と考えている。メンバー全員が会社のビジョン(目的)にむかって協力しながら仕事をしていく組織。

こうした組織を作るために必要なのが、理念や目標を共有するための「経営計画書」と全社員が何に取り組めばよいかを理解して実践するための人事評価制度。

この2つを仕組みを徹底して運用することで、会社を「目的・目標を目指す協働体」とすることができる。連動していないといけない。

経営計画書と人事評価制度で社員を成長させる場合、重要なのが運用を重視することです。人事評価制度は評価結果にもとづいた課題や目標に取り組むことで各個人が成長する。

ビジョン実現型人事評価制度では、評価に納得した人が94.1%

2つ目の効果はリーダーの成長

この人事評価制度を活用することで、リーダーは社長の理念を繰り返し聞くことになり刷り込まれる。

 

3つ目の効果は全社員が理想の人材像へ向かって成長していく

幸せを実現する条件として、会社の目標達成が大前提です。そのためには各部門がそれぞれの役割を実践し、部門目標を達成する必要がある。

不思議とどんな会社でもそんなふうになっていく。会社の理念や考え方が合わない人材がいなくなる。これが中小企業が成長・発展するための大きな要因の1つ。

成長に向けて新しいことや高いレベルの仕事にチャレンジする人材という5年後の人材像を掲げた会社があるとしましょう。するとその会社では、これに向けて取り組んでいる人だけが評価されることになるわけ。

反対に、成長意欲のない人、後ろ向きの発言をする人はマイナス評価になる。

評価制度を通じてこれを徹底的に繰り返します。こうすることで、後ろ向き社員は、前向き社員になるか会社を去るかしかなくなる。成長意欲のある社員ばかりになる。

成長の遺伝子を呼び起こす

人間は本来成長することに喜びを感じる生き物です。成長の場と機会を与えてこなかった会社側にも責任はあるとかんがえるべきでしょう。成長を意識できない仕組みと環境に社員を置いてしまっている。

ビジョン実現型人事評価制度は、人間が本来もっている成長の遺伝子を呼び起こすことでイキイキと前向きに取り組む人材をつくる。

4つ目の効果は会社が求める人材を採用できるようになる。

転職理由が「今の会社にいても自分の将来が見えない」というもの

採用面接の時点で自社の経営理念や自社が求める人材塑像、人事評価制度の内容などを説明し、人材育成の基本的な考え方と仕組みを求職者に伝える。

こうしたステップを踏むことで、成長意欲を持って求める人材像を目指すことを約束した人だけ入社するようになります。

自社の求める人材像にマッチした人材の実が集まり、しかもその人材の質やレベルは上がっていく。

5つ目の効果は女性が輝く組織になる

1つ目、女性の方が決められたことをきっちりスピーディーに行うのが得意だから。

実際に、ビジョン実現型人事評価制度の運用では、経営計画書の落とし込みや評価制度の運用を手順とフォームにそって実行しますが、これをきちんと素直に実行してくれるのは圧倒的に女性が多数です。その結果、成果にもつながりやすく成長も早くなる。

2つ目の理由は、自分の将来像や目標が明確な点。

新卒採用を行う中小企業の社長に聞くと、全員が「女性のほうが将来の目標や夢を明確に持っていてしっかりしている」と口をそろえている。

女性は男性と比べ、結婚や出産、育児とライフステージの選択肢が多くあります。将来のことを見据えて、どのようなスキルアップを果たせるのか、そのときのポジションや給料がどうなっているのか真剣に考えてほしい。

3つ目の理由は、女性の方がきちんと評価してほしいという欲求が強い。

目的

全社員が幸せになる

ビジョン実現型人事評価制度でえられる5つの効果

①全社員のベクトルがそろい、同じ目的・目標を目指す組織となる

②リーダーが成長する

③理想の人材像に向かって全社員が成長する

④求める人材を採用できる

⑤女性が輝く組織になる

 

極めて実効性が高いA4いちまいの経営計画書

ビジョン実現型人事評価制度を導入するには、まずビジョン実現シートの作成から取り組む。

これは一枚の紙に経営計画書と人材育成計画をまとめたもの

一般的な経営計画書は少なくても20ページ程度あり、しかし一枚のシートにまとめたビジョン実現シートのほうが、多くのページを割いて作られた経営計画書より実行性が圧倒的に高い。

STEP1-1 5つの手順で経営理念を作成する

超実践的経営理念の作り方

5つの手順で「経営理念」を作成する

①他社の経営理念を数多く見る

自分が好きな社長、会社のもの・同業種で業績が良い会社のもの・中小企業で尊敬する先輩経営者のもの

経営理念は、社員全員に実践してもらい、会社の成長と発展につなげていかなければならない。

②社長の考えを書き出す

自分は何のために存在するのか、自社はどうやって社会に貢献していくのか、世の中に何を広めたいのか、10年後はどうなっていないのか、誰からどんな支持を得たいのか。

③アウトプットした言葉をもとに3つの案を作成する

①と②で自分の言葉で、表現を変えたり、組み合わせたり、読み上げたりしながら、3つの案を作成する

④時間をおいて熟成・昇華させる

3つの案が出そろったら、それを一枚の紙に書きだし、一週間以上持ち歩きます。ことなるごとに経営理念を読み返す。

⑤10年後も使えるかどうかを検証する

必ず10年後でも使えるものかどうかを検証する。10年後の会社をイメージしたとき、その経営理念を全社員が目指し続けている姿が頭のなかにえがけるか。

 

STEP1-2 基本方針を定める

基本方針はストーリー仕立てで考える

【顧客】経営理念を実現するためのお客様に対する会社の姿勢・考え方

【商品】経営理念を実現するための商品に対する会社の姿勢・考え方

【社員】経営理念を実現するための社員に対する会社の姿勢・考え方

【会社】経営理念を実現するための会社・組織に対する会社の姿勢・考え方

【地域】経営理念を実現するための地域に対する会社の姿勢・考え方

【業界】経営理念を実現するための業界に対する会社の姿勢・考え方

【取引先】経営理念を実現するための取引先に対する会社の姿勢・考え方

このように基本方針をつなげて文章にした時に「経営理念」が見えてくるかということを確認しましょう。

 

STEP1-2 行動理念を明確にする

行動理念で社員のベクトルを合わせる。

行動理念とは、経営理念の実現に向けて基本方針を実現するためには、社員たちにどのような考え方、行動を求めていくのかを明確にしたもの。

経営理念と基本方針は、会社が主語ですが、「行動理念」は社員が主語になる。

社員たちのバラバラな仕事に対する考え方、かかわり方を行動理念によって揃え、ベクトルを一つにしていく。

 

7つの視点で社員に求める行動を明確にする

①【顧客】に対する方針を実行、実現するために社員はどう行動べきか

②【商品・サービス】に対する方針を実行、実現するために社員はどう行動べきか

③【社員】に対する方針を実行、実現するために社員はどう行動べきか

④【会社】に対する方針を実行、実現するために社員はどう行動べきか

⑤【地域】に対する方針を実行、実現するために社員はどう行動べきか

⑥そのほか、「基本方針」を実現するために実践、改善する必要がある行動は何か

⑦現在違う方向を向いて仕事をしている社員を正しい方向に向けるにはどういう指針が必要か

STEP1-4 ビジョンで5年後のあるべき姿を打ち出す

理想は一目見てワクワクするようなもの

ビジョンで5年後の「あるべき姿」を打ち出す

ビジョンとは、会社の将来像、数年後の会社の姿です。一般的には5年後のビジョン。

「社員成長・やりがい 地域ナンバー1」

「圧倒的業界ナンバーワン、給料2割、3割、5割増し」

定量ビジョン

規模、収益性、生産性の3つのなかで、いちばん経営上重視するものを定めます。

定性ビジョン

お客様満足度の72%→95%

STEP1-5 5か年事業計画でビジョンまでのルートを数値化する

事業計画と経営戦略を立てる

事業計画で業績をどう伸ばしていくのかを示し、経営戦略でそれをどうやって達成するかを明らかにする。

①売上②利益③人件費

STEP1-6 ビジョン実現のための経営戦略を立案する

中小企業で経営戦略が実行できないわけ

5か年計画を立てたら、その事業計画を達成するための経営戦略を立案します。ところが中小企業はこの経営戦略の立案、実行、進捗管理が非常に苦手。私の経験では、経営戦略をきっちり文章化して社員と共有し、推進できているところはごくわずかですが、決まって業績好調です。

なぜこんなにも経営戦略の有無、実行状況が中小企業の業績に大きく影響するのでしょうか。それは経営戦略が現場の仕事を会社の事業計画へと導く案内役のようなものだから。

この経営戦略が明確になっていないと、社員が目標達成のためにどう動かいたらよいのかがわかりません。

なぜこんなに重要なものにかかわらず、経営戦略が明確になっていない中小企業が多いのでしょうか。

原因は2つあります。1つ目は、経営戦略そのものが非常に分かりにくいという事です。経営戦略とはどんなものか把握できていなければ、そもそも戦略を立てることができません。まずは経営戦略とは何かということをしっかり理解することが必要。

戦略とは「目標を最も効果的に達成するための仕掛け・打ち手・仕組み」という位置づけ。

顧客数を50社から100社に増やすを戦略としている会社をたまに目にしますが、これは仕掛けや打ち手は全く含みませんから戦略とは言えない。目標です。

営業エリアを〇〇まで広げる、既存客への高付加価値サービスで紹介を得る。営業マンを増員するという仕掛けが経営戦略になる。

もう一つは、結果が見えにくい、予想しづらいということ。

経営戦略とは新たな投資(お金・時間)が必要で、一種の賭けであると理解しておく。

中小企業でまず取り組むべき3つの戦略

①顧客管理の仕組みづくり

②顧客育成の仕組みづくり

③営業プロセスの仕組みづくり

この3つは中小企業の成長になくてはならない戦略。

 

STEP1-7 現状の人材レベルを把握する

ビジョンを実現する人材の成長目標も明確化

人材育成目標で、現状の人材レベル、5年後の社員人材像、ギャップを埋めるために必要な課題の3つがある。人材育成目標は会社の将来ビジョンを達成sるうために欠かせないもの。

まずは現状の人材レベルを把握する

現状の人材レベルを把握するところから始めます。具体的には、社長やリーダーが中心となって、現在の社員の強み・長所、弱み・短所・問題点を徹底的に洗い出します。

STEP1-8 5年後の社員人材像を具体的に明文化

5年後のビジョンを実現できる人材像を明確化

現状の社員レベルを把握したら、次は、5年後の社員人材像を明確にします。5年後の事業計画とビジョンを実現するには、どういう人材に成長してもらう必要があるかという視点で人材像を明確にする。

社員に成長してもらう必要があるにも関わらず、どのように成長してほしいかは明確にしていない。

STEP1-9 ギャップを埋めるために必要な課題を洗い出す

理想の人材を実現するために何が必要か

どうすればその目標レベルに到達できるのかを考えていく作業。

STEP1-10 人事理念で人材に対する考え方を明確にする

人事理念で社員に対する思いを発信する

人事理念も経営計画書に盛り込まれていない会社が非常に多い。これまでに作成した経営理念や基本方針を実現するにあたって、最終的にはどこに人材に成長してほしいのかという視点で考えるとよい。

人事理念は人材を重視した経営を目指すためには必要なものだから必ず明記すること。

STEP1-11 プロジェクト・コンセプトで人事評価制度改革のゴールを決める

会社と社員、両者の視点から考えよう

人事制度を適用しながら、実際にどのような組織づくり、風土づくりを目指していくのかを考えてみましょう。ポイントは会社側だけの立場で考えるのではなく、社員側の立場でも考えてみることです。どんな会社だとワクワクしながら成長イメージを描いて仕事に取り組みたくなるか。社員がそのゴールを一緒に目指したい、実現したいと本気で考えてみる。

社員がワクワクしながら目指したいと思うかどうか

 

 

STEP2 評価制度を作る

経営計画発表会で全社員とプロジェクトのゴールを共有する。

社員全員のベクトルを合わせる場。評価制づくりを行うためにはまず、ビジョン実現型人事制度の目的を全社員と共有する場を設けなければなりません。その場を経営計画発表会と呼んでいる。

経営計画発表会でうまく社長や幹部の想いをつたえることができるかどうかがプロジェクトの成功に多きく影響してくる。

 

経営計画発表会で伝えるべき3つの事

①プロジェクトが会社の重要な経営改革であり、それに社長が本気で取り組んでいくこと

②人事評価委制度の目的は、経営目標を実現すること、そのための人材育成であること

③プロジェクトの成功には全社員の協力がかかせないこと

 

ジョブ・ヒアリングシートで社員全員に参加意識を

社員一人ひとりに参加の意識をもってもらう。社員一人ひとりに「現在の担当業務の内容、比重、課題」シートⅠと本来やるべきだが取り掛かれていない仕事シートⅡを記入してもらいます。

①評価基準作りのもとになるデータを集める

②社員が自分の取り組むべき課題を把握する

③社員自らがプロジェクトに参加しているいしきをもってもらう

リーダーにはメニューで意識付けを強化する。部下たちを評価するリーダーには別メニューで説明会を設ける必要がある。経営発表計画会終了後に開くといいでしょう。

いかにリーダーたちを巻き込んでいくかがプロジェクトの成功のカギとなります。

人事評価制度=人材育成の仕組み

 

グレードと仕事レベルを明確にする。

3つのステージをいくつかのステップに分類する。評価基準のフレームに必要な「グレード・レベル・イメージ」を作成する。プロセス項目の横軸に設定するグレードの段階数とレベルを「グレード・レベル・イメージ」で明確にする。

彼らはどのような段階を踏んでいくと、主任・係長・課長へとステップアップしていくのでしょうか。グレードの数はあなたの会社の育成ステップの数です。

①S(スタッフ)ステージ・・役職がない社員

②L(リーダー)ステージ・・主任・係長等クラス

③M(マネジメント)ステージ・・課長・部長以上の管理職クラス

育成のステップなんて考えたことがないのでわからないという会社はまずは7段階に設定してみてください。

一般的には、社員数50人以下であれば、7段階で十分対応できます。

50人越えの場合は最大7から9段階の間で自社に適した段階数にしましょう。

 

専門的能力を活かすスペシャリスト・ステージ

社員50名以上の会社に関しては「SP(スペシャリスト)ステージ」を設けほうがよい場合もあります。SPステージとは部署や部門のマネジメントをやらずに、ある専門分野の能力で会社に貢献していことでグレードをステップアップしてけるステージ。

 

評価項目を作成する

【4つの区分】

①業績項目

数値で表すことができ、その結果によって評価できるもの。個人売上や営業の訪問件数などが該当します。この業績項目はさらに、業績結果項目と業績プロセス項目に分類できます。

②成果項目

成果項目とは、数値で表すことはできないものの、業績に直結する重要な役割、仕事など。営業職の場は、企画提案や顧客管理、商品開発部門の場合は、新製品に関する企画、総務職であれば人材採用や労務管理などがあります。

③能力項目

実績を残すため必要な能力・知識・資格などの示したもの。スケジュール管理力はこの項目。部署の業務に必要な知識や技術、資格なども評価の対象とします。

④情意項目

情意項目とは、仕事に対する姿勢を明確にしたもの。仕事に対する積極性や成長意欲、チームワークなどです。この情意項目には、ビジョン実現シートの行動理念や目指すべき人材像、ギャップを埋めるための課題などから多くの要素を盛り込みます。

社員を動かす評価基準にするには?

評価基準づくりで気をつけたいのが、いかに行動に結びつけるかです。

 

業績結果項目で数値目標を明確にする

業績結果項目と業績プロセス項目を作成する

業績項目には、「会社」「部署」「個人」とありますが、「個人」については「業績結果項目」と「業績プロセス項目」。評価基準を作るときには、業績結果項目だけでなく、必ず業績プロセス項目も盛り込むと覚えておいてください。なぜなら、結果だけを追求しても指導や育成につながる評価や育成につながる評価はできない。

業績結果項目は5か年事業計画から考える。DMやはがきの件数、訪問件数、顧客からのアンケート点数など

業績プロセス目標は、社長や幹部だけで決めるのではなく、優秀な結果を残す営業マン、生産性が最も高い部署のリーダーなどと一緒に考えます。その人たちにプロセスを語ってもらい、これ参考にして会社としてのベストプロセスを導き出します。そこから数値に落とせるものを業績プロセス項目とする。

本人の成長はもちろんのこと、リーダーの指導力向上という成果を得られるのです。

2つの視点を盛り込んだ成果項目が会社の成長を後押しする。1つが会社の成長にとって重要であるにもかかわらずなかなか手が付けられない課題です。

ビジョン実現シートの行動理念、ギャップを埋めるための課題。

役割を実行するために必要な能力項目を定める。

 

STEP2-8 項目ごとの重要度を「ウェイト配分表」で明示する

グレードごとに評価ウェイトを考える

評価基準ができたら、今度は評価項目ごとに点数配分を決めないといけない。評価結果は最終的に、点数化して判断をする。

まずは「業績項目」「成果項目」「能力項目」「情意項目」の4つのそれぞれのウェイト配分を考えます。

基本的に業績項目のウェイトは、下位グレードが小さく、上位グレードになるほど大きくします。なぜなら上位グレードの方が数値責任を求められるから。管理職から半分のウェイトとするのが一般的。

能力・情意項目のウェイトは、上位グレードが小さく、下位グレードになるほど大きくします。これは下位グレードの社員に重要な仕事に対する考え方・姿勢を身に着けてもらいたいからであり、勉強に励んでもらって能力を身に着けてほしいから。

評価ウェイト配分はグレードだけでなく、部署や職種によっても差をつけます。

営業的な性格が強い部署は業績項目のウェイトを大きくします。反対に事務的な性格が強い部署は業績項目を小さくします。

仕事の重要度で評価ウェイトの配分を見直す

仕事の重要度別に各評価項目に点数を配分します。「総合ウェイト配分表」を参考にしながら決めてみましょう。社員の成長度合い、求められる仕事レベルに応じて、重要度を考えながら項目ごとにウェイトを振っていきます。

そのうえで会社が戦略的に重視する項目に大きくウェイトを振っていきます。

例えば新入社員が一番初めに教わるホウレンソウ。これは下位グレードに早く覚えてもらいたい仕事のため下位グレードのウェイトをおおきくします。

同じように「部下の指導育成」は上位グレードの重要な役割です。したがってこれは上位グレードのウェイトを大きくします。会社として強化していきたい部分にも同じ考え方ができます。

ウェイト表はExcelで作っておくこと。

評価結果を出すことより、育成を最優先したい場合には、項目8のウェイト配分表の作成を飛ばして運用に入っていただいてもかまいません。

キャリアチェックシートというオリジナルのネーミングを付けた評価基準を作成。正直育成面談は大変でしたが、確実にステップアップしているスタッフがいるし、客観的なものさしで評価ができるようになったので、社員からの不満がほとんどなくなった。

社員からもどう頑張れば評価され得るかがわかった。とモチベーションにも大きく貢献したことは間違いない。

パートから常務取締役に

STEP3-0 設計と運用の重要度は2対8

運用に力を入れないとこれまでの労力も水の泡

不満が出ない人事評価制度改革はない。不満が出るのは当たり前、その不満や要望に屈せずに最後までやり遂げるという覚悟を持って、人事評価制度の導入に踏み切っていただきたい。

STEP3-1 なぜ中小企業では「人事評価制度」が失敗に終わるのか

中小企業が陥りがちな運用の失敗、3つのケース

①評価者(リーダー)の不満

②社員の不満

③評価結果や賃金制度が活用できない

①はリーダーが忙しさを言い訳にしてきちんと取り組まないというケース。評価制度=人材育成の仕組みという意識付けをリーダーに徹底すること。

人材育成はリーダーとしての重要な役割であり、評価制度は自社で人材を育成するための大事な仕組みであるとリーダーに理解してもらわないといけない。

②の不満は不満は改善の種。焦らず余裕を持って対処していく。

③評価結果に妥当性が得られず、本人に結果を示せていない。評価結果を給与や賞与に反映してみたが、必要な原資が足りず、社長がこれまでどおりの決め方で給与を決めている。これらは評価制度のプロセス自体はまわしているが、面談や給与・賞与への繁栄はまったくできていないケース。

理想の評価結果や昇給、賞与額に1、2回の運用でぴったり一致させることはできない。

STEP3-2 評価制度は「5つの運用プロセス」で理想の人材を育成する

評価制度運用の5つのプロセス

①評価の実施

評価者(リーダー)が評価基準に基づき、被評価者(部下)ごとに「育成シート」を作成します。

②育成会議

評価者同士のばらつきを調整し、部下育成のための指導ポイントを話し合い、育成の方向性を決めます。

③育成面談

評価結果を本人に伝えて、リーダーとともに次の目標を明確にする

④目標設定

チャレンジシートを使って育成面談で決めた目標の達成レベルとプロセスを定めます。

⑤毎月コツコツ面談

リーダーが部下の目標や役割の達成度を毎月の面談を通じて確認し、必要な指導を行います。

評価は三者で実施する

評価の実施には3つの特徴があります。

1つ目は評価は三者で行うこと。部下本人、直属の上司、その上の立場の上司。

上司2人で評価することによって評価結果に客観性をもたせることができる。部下に自己評価を行ってもらうことで自分自身の仕事のレベルを適正に把握できる力を身に着けてもらいます。

2つ目は、その三社がそれぞれ個別に評価を実施すること。

1枚の評価シートを使って順番に評価した場合、どうしても部下の自己評価に上司が引っ張られたり、一次評価者の評価に二次評価者が影響されたりするためそれを防ぎます。

3つ目は、必ず判断理由を記入する事。

リーダーが根拠に基づいて評価するようになるため、部下の日常業務を観察するようになる。さらには育成面談、目標設定と次以降のステップにもスムーズにつながっていく。評価は、評価シートという記入用紙に三者が個別に行う。全員の評価が出そろったら、育成シートの形式にまとめて次のステップ、育成会議の準備をする。

育成会議でベクトルを合わせる

育成会議とは、2人の上司によるすり合わせの場です。育成会議の目的は2つある。

①評価者同士の判断基準を統一する

②被評価者の育成方針を共有する

上司2人が同じ部下の評価を行うと、必ず評価結果にばらつきが生じる。これをそのままフィードバックすると、本人は高い評価をしてくれた上司に評価してほしいとか、評価が低かった上司に不満を持ってしまうなどの弊害が出てきます。またそれぞれの上司が部下に異なる見解を伝えてしまうと、評価制度そのものの不信感につながる。こうしないためにも育成会議では、評価に差異がある項目はすべてすり合わせをする。

育成会議には調整役が必要。外部でも、社長か人事・総務の担当役員クラスが担当する事。

評価結果のすり合わせをおこなってみる

 

STEP3-3 育成面談は上司・部下のコミュニケーションの場

育成面談の目的は成長目標を明確にすること

一般的な面談は評価結果を伝えることに重点がおかれがちですが、ここでは成長支援の場として時期の課題や目標を明確にすることに主眼を置きます。育成が人事評価制度本来の目的だから。

育成面談シートで上司と部下の信頼関係を築く

評価者には育成面談を行う前に、必ず育成面談シートを作成してもらう。これをきちんと作成しておくことが本人の納得度と成長に大きく影響してきます。直属の上司が育成会議の内容をもとに育成面談シートを作成し、その上の上司が内容を確認して面談を行います。面談の進行は、シートを作成した直属の上司に任せる。

STEP3-4 チャレンジシートで成長目標を共有する

チャレンジシートで各自の成長イメージを具体的に描く

次はチャレンジシートで具体的な実践計画に落とし込みます。チャレンジシート作成時のポイントは3つ

①将来のキャリアプランを明確にすること

②目標を3つに絞ること

③目標の達成レベルとそのプロセスを明確にすること

目標は3つに絞り込んで確実な取り組みを目指す

また2では目標をあえて3つに絞ってもらいます。チャレンジシートのレベルアップ目標の項目に設定。

STEP3-5 毎月コツコツ面談で全社員の確実な成長が実現

毎月コツコツ面談が社員の成長を支える

チャレンジシートで全社員の目標とその達成のプロセスが明確になりました。何も対策を行わないと、次の評価の次期になって必要な部分を埋めて提出するという形式的な運用になってしまいます。

毎月コツコツ面談の徹底。月初めに部下本人がチャレンジシート内の「自己コメント」欄に状況と反省、改善点などを記入し、リーダーに提出する。リーダーは上司のコメント欄に推進のためのアドバイスなどを記入したうえで面談を行い、本人の目標達成へ向けてアドバイスします。

次の3つをルール化して実行してください。

①面談は1人10分以内

②面談実施の日時を毎月評価者から本担当者に報告してもらう

③評価者が集まるリーダー会議などにチャレンジシートを持参させる

STEP3-6 運用は焦らず、トライアル評価を必ず3回実施する

結果的に成果を確実なものにするトライアル評価

1回目は評価と育成会議まで。

2回目はチャレンジシートまでを一通りやってみます

3回目は評価を実施したあとに納得度アンケートを行います。

このトライアル評価のプロセスを時間をかけてじっくり行うことが逆に成果を早めることにもつながる。

3回のトライアル評価には、次の目的があります。

1回目 評価者の評価手順の理解、評価基準の改善

2回目 評価者の評価スキル確認・評価結果の妥当性確認

3回目 評価者の部下指導レベル確認、被評価者の納得度の確認

 

STEP3-7 「納得度アンケート」で定期的に納得度を計測

納得度アンケートで効果測定を継続

納得度アンケートを始めた当初は、納得度50%ぐらいからスタート。これを継続し、その都度、対策を行うことで94%越えの高い数値を得ることができた。

アンケートは育成面談の終了後に全社員に実施する。アンケートは、人事評価制度や組織上の問題点が把握できるという効果もある。

STEP3-8 四半期評価が成長スピードを速める

評価の期間は四半期がベスト

一般的に、評価は6か月ごとに行うことが多いと思いますが、ビジョン実現型人事評価制度では、3か月ごとの評価を推奨している。その理由は3つです。

①適正な評価とするため

②給与が下がった人のやる気を下げないため

③成長スピードを速めるため

①の6か月間を振り返り、総合的な判断を適正に出来る人はほとんどいない。

②の通常、昇給は年に1回という会社が多い。会社によって違いはありますが、評価結果が良くない人は給与が下がるという仕組みを導入しているところも少なくない。年1回の昇給だと、給与が下がってしまった人のモチベーションは1年間さがったまま。評価の直前のみがんばって、前半は力を抜く人が出てくる場合もある。よって当社では少なくとも年2回、6か月に1回は昇給の機会を設けるようにしている。これに結び付けやすくするために3か月ごとに評価する。

③は評価=人材育成の機会ですから、出来るだけ多く設けたほうが成長スピードも速まるという考え方。

6か月ごとより、リーダーの成長スピードが3から10倍変わってくる。

STEP3-9 経営計画書を絵にかいた餅にしないために

リーダーがアクションプラン会議を主導して成長する

経営計画書に盛り込んだ経営戦略を実現するためには、実践計画のスケジュールを立てなければいけません。何を、いつまでに、誰が、どういう手順で行うのかを作成し具体化します。

毎月リーダーとともに検討する会議がアクションプラン会議。

商品提案コンクールの開催を決めた。

STEP3-10 ツールの掲示で定着と浸透を実現する

各ツールを掲示することで実行度を高める。

会社のもの→個人への浸透

個人のもの→全員へ告知

ビジョン実現シートとアクションプランに関しては、社員各自に定着を図るために掲示を実施します。社員全員が毎日目にするところに貼っておきます。こうすることで業務中も常に意識し、理念や方針に沿った言動が多くなるという効果があります。

チャレンジシートも個人の成長目標を明記した他の社員にも見える場所に掲示して本人の達成意欲を高める。

コミュニケーションの充実が業績改善の一番の要因。

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