儲ける社長の人事評価のルールの作り方

社員のやる気はお金で買いなさい。

社員の一番の関心は「自分が頑張った後に、どれだけお金がもらえるか?」この一点に尽きます。

したがって、どうすれば給料が上がるのか、どうすれば賞与が増えるのか、どうすれば昇進できるのかとい3つの問いに答えを用意するだけで社員のやる気は自然と上がるのです。

落ちこぼれ集団を優良企業に変えた2つの要因

一つは社員教育に力を入れたこと。経営計画書と環境整備を取り入れて、社員の価値観を揃えること。

人間心理を無視して経営してはいけないと考えている。社員は面倒なことはやらない、都合の悪いことはやらない。面倒なことでも都合の悪いことでもやらざるを得ないルールを決定するのが社長の務め。

会社は個人のわがままが許されない場所です。会社は野球と同じで団体戦。社員は野球選手と同じ。

環境整備とは、仕事をやり易くする「環境」を「整」えて、「備」えること。

もう一つが人事評価委制度の見直し。社員にとっては愛はお金。誤解を恐れずに言えば、社員のやる気はお金で決まる。社員の一番の関心は、頑張ったあとそれだけお金がモラルか。

これをやったら、あなたに1000円あげるから。これをやらないと賞与が低くなってしまうよ。これだけ業績を出せば、給料がこれだけ上がるよ。とルールを決めておけばお金を欲しいという不純な動機から、嫌々ながら、しかたなく、面倒だと思いながらも頑張ろうと思う。これが人間の心理。

アルバイトを一人社員にできたら、B評価の人はA評価、A評価の人は、S評価、S評価の人は、SS評価としみなして賞与を多く払う。

頑張った社員と、頑張らなかった社員の差をつける制度。年齢や職責にかかわらず、頑張れば頑張った分だけ収入も増える。それがわが社の人事制度。

武蔵野にとって責任を取るとは経済的な損失を被ることを意味する。

中小企業の多くは、評価体系がありません。社長のどんぶり勘定や鉛筆ナメナメ(数字をいじる)で給料も賞与も決まる。

頑張ったらいくらもらえるかがわからないと社員は頑張れない。

鉛筆をなめることは、社員一人ひとりの人生をなめる(馬鹿にする)ことと同じだった。給料と人事に関する基準をつくり、運用していくのが社長の仕事。

どうすれば給料が上がるのか、どうすれば賞与が増えるのか、どうすれば昇進できるのかが明確になっている。

 

最初から正しい人事評価を作ろうとしない。

正しいルールがある事よりもルールがあることが正しい。ざっくりでもいいからとりあえず作って、運用してみる。そして不都合があったら変えればいい。ルールは変えるのが正しい。セパ交流戦、クライマックスシリーズ。

わが社の給料体系は賃金管理研究所の弥富式をベースにしている。

ところが弥富式はもともとは大企業向けに考案されたしくみだったため、中小企業の武蔵野ではうまく運用できなかった。そこでプロセスと成果を評価の対象とするといった弥富式の基本思想や賃金テーブルの考え方を活かしながら、時代、会社の規模、事業内容に合わせて作り変えてきた。

売上では不正できるので、粗利益額と営業利益の2つの利益で評価している。

実際に運用をしないと、不都合がどこにあるのかも分からない。とりあえず市の後も言わずに運用して、整合性が取れなかったら修正すればいい

頑張らない仕組みを作った私の責任。

会社経営もスポーツと同じ。ルールによって本人たちの頑張り方も会社の業績も変わる。

社員が不満に思うのは評価制度ではなく貰った額。

納得と満足は違う。給料(お金)は命に次に大切なもので少しでも多くもらいたいと思う。だからそう簡単には満足しません。

相対評価である以上、人事評価に不満な社員は必ず存在する。わが社の人事評価制度は、半期ごとの相対評価です。

賞与額、昇給額、昇格・昇進は、すべて相対評価の成績によって決定します。会社の業績が良くても悪くても必ず順位が付きます。

S評価(全体の5%)→A評価(全体の20%)→B評価(全体の55%)→C評価(全体の15%)→D評価(全体の5%)

自分の成績をあげなければ、給料も賞与も増えないことが分かっている。

チャンスは平等に与え、成績によって差をつける。

頑張っても、頑張らなくても評価が同じなら、頑張らない社員がまとも。

公平とは一部だけに手厚くしない、偏らないことではない、その逆。公平とは差をつけてあげること。

しっかりやってもやらなくても成績や結果で差がつかないのは不公平。

武蔵野の評価制度は社員を区別する仕組み。が中央官庁の場合、キャリアでなければ事務次官に慣れない。たたき上げではトップに立つことは難しい。学歴による差別。

中卒、高卒、大卒で、入社時の等級や号棒(その級の中のどれくらいの位置にいるか)は異なりますが、これは区別です。中卒でも高卒でも、昇給や昇進に制限はありません。チャンスは平等に与えています。

わが社の賃金テーブルを見ると、有卒はⅠ等級1号棒から始まります。中学を卒業して、15歳で武蔵野に入り、毎年A評価を取り続けます。

A評価を取った社員は、翌年、基本給が5号棒上がるのがわが社の決まりで、22歳になった時はⅡ等級11号棒に、23歳になった時は、Ⅱ等級16号棒になります。新卒の最初の評価はB評価とし4号棒上げる。

一方大卒は、2等級12号棒から始まります。新卒は仕事ができない分、最初の評価はB評価として計算しています。B評価だと基本給は4号棒上がるのがわが社の決まりで、23歳になったらⅡ等級16号棒になります。つまりA評価を取り続けた23歳の中卒と、2年目の23歳の大卒の基本給料は同じになる。

社員の賞与額に差をつけないと、優秀な社員が辞めてしまう。

成果が出ないと賞与も給与も増えませんが、降格しても頑張れば元に戻すと言った敗者復活戦(復活できるしくみ)を用意すれば、今期の評価が低いからといって、腐ったりする社員はいなくなる。

頑張れば頑張った分だけ評価されるから、社員五にとって、やりがいがあります。相対評価だから当然、C評価を取る人も出る。でも半期で一旦リセットされ、新しく全員が同じスタートラインに立てるので、社員は腐らずに頑張れると思います。

多くの社長は頑張っていない社員にもゼロ円ではかわいそうだと賞与を2から3万円支払います。けれどそれでは社員は辞めてしまう。

頑張った人にはたくさん支払い、そうでない人には払わない。頑張った人と、頑張らなかった人の賞与に格差をつけるのが正しい。

残業時間の減少を人事評価に連動させる。前年同月よりも総残業時間が減ったら賞与を増やす。

アルバイト・パートも含め、全従業員にタブレット端末(ipad mini)を支給した。

残業が減って出た財源は、賞与を120%に増やす、基本給の金額を上げる(ベースアップ)

基本給は過去の実績に基づいて決定する

基本給①基本給は等級制度。賃金テーブルを作って計算

武蔵野の給料は4つの要素から成り立っている。

①基本給(過去の実績/等級によって決まる)

②グループ手当(管理職手当/属するグループによって決まる)

③賞与(どういう成果を出したかで決める)

④その他手当(福利厚生費として支払う)

そして基本給は年功序列、グループ手当は能力、賞与は性かと支給の意味合いをはっきりさせている。

等級によって基本給の額が決まり、グループによって管理職手当の額がきまり、半期の成果で賞与の金額が決まるのがわが社のしくみ。

人事評価制度を理解するために、社内用語を統一している。

昇格:等級が上がる

降格:等級が下がる

昇進:グループ(役職)が上がる

更迭:グループ(役職)が下がる

昇給:規定により基本給があがる

大事なのは、年功序列(基本給)と「能力」(グループ手当)を分けて考えること。

 

賃金テーブルの横軸は「等級」

基本給ですが、わが社は賃金テーブルを作り基本給を計算します。。賃金テーブルは等級制度です。

等級制度は、社員を役割や責任、スキルなどによって区別する事です。等級で区別しておけば、それぞれどういう仕事(役割)を担っているのかがわかりやすくなります。

賃金テーブルの横軸は等級です。わが社は人事評価の要諦をまとめた「人事評価基準書」があります。人事評価基準書には各等級の役割について、次のように明記してあります。一部抜粋して紹介。

【実務階級】

◎Ⅰ等級:一般社員に該当

比較的短時間に習得できる定型業務を担当する。業務マニュアルや経験者の指導に基づいて任務を忠実に遂行する。

◎Ⅱ等級:一般社員に該当

応用動作をともなう定常的な業務(日常業務)を担当する。自分の担当範囲に責任を持ち、自己の経験と判断を加味して成果を出す。

【管理・専門階級】

◎Ⅲ等級:課長に該当

複数の定常的な業務(日常業務)を含む、計画的・応用的な業務を担当する。幅広い裁量や創意工夫により、お客様の期待に応え、業績に貢献する。

◎Ⅳ階級:部長に該当※業務管理責任職と業務統括スタッフに分かれる

・業務担当責任職

担当業務の責任者として上司を補佐しながら、最適な組織目標を設定・実行する。

・業務統括スタッフ

関連分野の専門職の責任者として、課レベルで扱う専門ノウハウに関する開発や意思決定を統括する。

◎Ⅴ階級:本部長に該当 ※部門経営責任職と部門統括スタッフに分かれる。

・部門経営責任職

会社の基幹事業、中枢機能の責任者として、経営首脳の意思決定を補佐する。担当部門の経営方針、事業計画を立案し、業績と成長性を確保する。

・部門統括スタッフ

部で扱う専門分野全体に関する戦略的意思決定を担当する。高度な専門的立場から、経営首脳の意思決定を補佐する。

◎Ⅵ階級:取締役に該当

◎Ⅶ階級:常務に該当

◎Ⅷ階級:専務に該当

◎Ⅸ階級:会長・副社長に該当

◎X階級:社長に該当

※経営計画書にはⅥ等級まで明記

 

基本給②等級を上げるには、3つの昇格要件を満たす必要がある

昇格ポイント、評価、条件の3つを満たすと昇格対象となる。

どうすれば自分の等級があがるのか、昇格要件を明確にします。

・昇格ポイント・評価・条件

の3つの要件を満たすと、「昇格」の対象となる。昇格とは等級が上がることです。

1等級は、評価の項目だけです。

昇格ポイント:なし

評価:3年間でA評価2回、またはS評価1回

条件:なし

つまり3年間でA評価2回、またはS評価1回を取れば、Ⅱ等級に上がれます。Ⅱ等級からは、昇格ポイントの項目が加わります。

昇格ポイント:40ポイント

評価:直近1年以内にS評価又はA評価

条件:なし

武蔵野では半期ごとの評価によって、昇格に必要なポイントを決めている。例えばA評価を取ると5ポイント、Ⅱ等級からⅢ等級に上がるには40ポイント必要です。上期も下期もA評価を取ると、1年で10ポイントになるので、はやい人は4年でⅢ等級に上がれます。

ただし、40ポイントに達していても、「直近1年以内にS、A評価」がないと上がれません。過去に似は100ポイント以上あったのに、あがれなかった社員がいる。

 

基本給③上司は独断で部下の昇格を決めていい

上司の申請がなければ良い成績を上げても昇格できない。

昇格は年1回行っています。(12月の役員会にて決定)。

前項で、「昇格ポイント、評価、条件の3つを満たすと昇格の対象になる」と書きましたが、対象となっても昇格できるとは限らない。3つの要件(昇格基準)を満たしていても、「上司の申請」がなければ昇格できないルールです。

私は上司に「生殺与奪権」を与えている。

基本給⑤「変わるもの」と「変わらないもの」を明確に分ける

賃金テーブルの縦軸は号棒

賃金テーブルの縦軸は、「号棒」です。基本給を見るとその等級の中のどれくらいの位置にいるのかをあらわしている。

武蔵野は中卒15歳はⅠ等級1号棒と規定している。義務教育を修了した人が本来の新卒と私は定義している。ですから高卒も賃金テーブルの体系上は中途採用です。

号棒は評価によって上がります。1年間の評価(昇給評語)がS評価は6号棒、A評価は5号棒、B評価は4号棒、C評価は3号棒、D評価は2号棒上がります。ただし新卒のさいしょの評価はB評価とする。

さらに社長賞を取ると、「5号棒」、優秀社員賞を取ると3号棒上がります。

A評価の社員が社長賞を取ると、翌年基本給が10号棒、優秀社員賞をとれば、8号棒上がります。

1号棒当たりの「ピッチ」(1号棒でいくらの差をつけるか)は等級によって異なります。「仕事ができる人」に手厚くするのが方針で、等級が上がるほど、ピッチの金額は高くなります。

賃金テーブルを見ると、Ⅰ等級のピッチは、1370円です。Ⅰ等級5号棒と、Ⅰ等級6号棒の差額は、1370円となる。Ⅱ等級であれば、ピッチは1720円。

 

ベースアップとは、Ⅰ等級1号棒の金額を上げること。

人事評価基準は時代とともに変化しますが、考え方の基本は、「変わるもの」と「変わらないもの」を明確に分けておくことです。

変わらないものは「しくみ」

変わるものは「賃金テーブルの数字」

わが社は中学校卒業生を「新卒」と定義し、高校、短大、大学卒業生は、給与体系上は中途入社になる。この新卒(中学校卒業生)をⅠ等級1号棒とする仕組みは変わらないもの。

ですが、Ⅰ等級1号棒の基本給の金額は変わるものです。武蔵野はⅠ等級1号棒の金額を上げること(賃金テーブルを変えること)を「ベースアップ」と呼んでいます。「Ⅰ等級1号棒」金額が上がれば当然、2号棒以降の金額が上がります。

反対にⅠ等級1号棒の金額を下げることをベースダウンと言います。春闘で基本給を一律5000円あげたといった企業もありますが、これはベースアップではなく、ベアです。

・ベースアップ:Ⅰ等級1号棒の金額を挙げて賃金テーブルを変える

・ベア:基本給を全員一律の金額であげること。

ベースアップは上級者社員が優遇され、ベアは下級社員が優遇される。

 

基本給は年功序列が正しい。

わが社の基本給は年功序列。基本給を年功序列にするのも「変わらない」ものです。勤続年数の長さは全社の貢献度に比例します。基本給は年功序列が正しい。

中途入社の社員はC評価で採用し、その後基本給を読み替える。

中途入社の社員は、中途採用一覧表を利用し、C評価採用を基本にしている。なぜかというとA評価やB評価で採用した場合、次の評価で評価を落とすとやる気をなくすから。

ですからとりあえずC評価で採用して、最初の評価でB評価以上を取った場合は基本給の読み替えを行っている。

読み替えはA評価は「プラス2号棒」Bは評価「プラス1号棒」として、採用時に遡って号棒の差額を支給しています。(ただし6か月分)

差額がいくらになるのかを自分で計算させると「こんなにたくさん戻ってくるのか!」とやる気を出す。これも社員を頑張らせるしくみ。

 

グループ手当①「等級制度」に「グループ制」を併用して社員の実力を正しく評価する

基本給の計算は等級制度で行い、実際の運用はグループ制で行う。

当初、武蔵野の給与体系は、等級制度をベースにⅠ等級=新入社員、Ⅱ等級=中級社員、Ⅲ等級=課長、Ⅳ等級=部長として運用していた。ところが会社が成長するにともない、不都合が生じてきた。

Ⅱ等級の若い社員が課長クラスの実力を持っているのに、Ⅱ等級26号棒に届かないためⅢ等級にできない(課長の仕事のさせられない)とか仕事は一般社員と変わらないのにⅣ等級にいるために部長手当を支給するといった仕組みの矛盾が表面化してきた。

そこで私は基本給は等級制度をベースに計算しながら、運用面の仕組みとしてグループ制を追加した。グループは次の6つに分かれている。

1グループ:一般社員(現在のⅠ等級で、中途入社の短大・専門・高校・中卒)

2グループ:一般社員(大卒・中途入社の短大・専門・高校生で実務経験が多い人)

3グループ:(2.5グループ):課長(2.5グループは管理職候補生。3グループで評価し、2年以内にA評価1回で3グループになれる)

4グループ:部長

5グループ:本部長

6グループ:役員

こうしておけば、Ⅱ等級の一般社員でありながら、課長クラスの実力を持っている社員をⅡ等級3グループとして課長にすることができる。

逆にⅣ等級の部長でも課長レベルの仕事しかできないのなら、Ⅳ等級3グループにすることができる。そして課長や部長と言った、職責(現在どのような仕事をしているか)に応じてグループ手当=管理職手当)を付けます。

【グループ手当】

2.5グループ(3グループ候補生を2グループから選抜):4万円

3グループ:4万円

4グループ:6万5000円

5グループ:9万円

6グループ:12万円

格上と戦った社員は手厚く評価する。

3グループ(課長の仕事)には、Ⅱ等級の社員、Ⅲ等級の社員、Ⅳ等級の社員がいます。(ひとつ上のグループには行けるが、2つ上のグループには行けないルール。

わが社の相対評価は、グループごとに行うからⅡ等級の社員は「格上」(Ⅲ等級・Ⅳ等級)の社員と戦わなければならない。するとⅡ等級の社員はこう考えます。「2グループにいればA評価を取れるのに3グループにいると評価が下がるかもしれない、それは嫌だな」

そこで格下の社員が格上と戦った場合は、1号棒分、基本給を多く昇給させる。ようにした。

Ⅱ等級の社員が3グループで戦って、年間でB評価を取ります。B評価は基本給を4号棒上げるのが決まりですが、1号棒分余計にプラスして、5号棒分上げます。(これは2グループでA評価を取ったのと同じ)

若い人が上のグループで仕事をすると、下のグループで仕事をするよりも「給料が1号棒ずつ余計にあがっていく」しくみです。

一方Ⅳ等級なのに3グループで仕事をしている社員は逆になります。Ⅳ等級の社員が3グループでB評価を取ります。

B評価は基本給を4号棒上げる決まりですが、Ⅳ等級の社員が格下(Ⅲ等級・Ⅱ等級)と戦っている以上、評価も厳しい。4号棒から1号棒分減号して、「3号棒」しか昇給しません。(実際にⅣ等級が3グループで仕事をするという事は、きわめて少ない。

わが社は成績がいい社員ほど辞めません。なぜなら頑張れば頑張るほど評価が上がり、基本給も管理職手当も増えるから。

 

グループ手当②どうして部下を持たない管理職にも管理職手当を支払うのか

管理職は部下と一緒に現場を回らないと手当がもらえない。

経理課長が営業部長になると、この部長は現場のことがわからないため、部下にとんちんかんな指示を出します。そうならないように、多事業部へ管理職として異動した時は自分の部下と一緒に現場に出て、部下から仕事を教えてもらうのが決まりです。

現場に50回ないし100回同行しなければ、管理職手当をもらうことはできません。同行実施後に手当を支給しています。昇進日にさかのぼって差額も支給。すると社員は早く手当をもらいたいから早く現場にでるので、早く仕事を覚えます。また50回ないし100回も上司と部下が現場に行くと、上司が仕事を覚えるだけでなく、上司と部下のコミュニケ―ションが良くなる。

わが社は部下のいない管理職が存在する

わが社の管理職に次の2つのタイプが存在します。

①部下を持つ「ライン」の長

②部下を持たない「スタッフ」の長

部下を持たない管理職に手当を払うと、同じ課長なのに部下をもつオレと部下がいないあいつの手当てがおなじ金額なのは許せないという意見が出る。そこで3グループなら管理職手当の他に店長手当(1万円)を支払う。

 

賞与は半期の成果に基づいて決定する

賞与①賞与の額は、半期ごとの成果によって決まる

配分点数×賞与単価=賞与額

基本給は過去の実績で、手当は職質(課長、部長等)で決めるが、賞与は半期(上期、下期)ごとの成果で決めます。

賞与の基準は等級ではなく、グループです。武蔵野の賞与は、基本給比例配分ではない。入社1年目の社員も入社10年目の社員も同一グループごとに相対評価で差をつけ、半期、頑張った方がたくさん賞与をもらえる仕組みです。

成果に応じてS・A・B・C・D評価に分け、賞与額を決めます。評価シートを使用し、社員の成績を点数化します。

1グループから4グループまでは相対評価です。同一グループ(職務)の中で、S評価(グループ全体の5%)、A評価(20%)、B評価(55%)、C評価(15%)、D評価(5%)の割合です。

会社の業績に関わらず、必ずA25%、B55%、C20%の比率で差をつける。

社員が10人なら、まず全体の上位25%の社員をA評価とする。すると、2.5人なので四捨五入して3人をA評価とする。

次にC評価を決める。Cは20%なので、残りの5人がB評価。そしてA評価の中でもっとも成績の良い社員をS評価、C評価の中で最も成績が悪い社員をD評価にしている。S評価に該当する社員がいない時はS評価はなし。その場合Dも出さない。

競争意識が働くため、緊張感を持って仕事に取り組める。

賞与額は、「成績別グループ別配分点数表によって決められた各人の点数と、賞与単価(1点当たりの金額)によって決まる。

最初に支給総額を決め、賞与単価はあとから決める。

2001年までは1点当たりの賞与単価は同じだったが今はグループによって異なる。

会社の業績がよければ、支給総額が増えます。支給総額が増えれば1点当たりの賞与単価も上がり賞与の額が増える。

個人の賞与額を上げるには、自分だけが頑張ってもダメで、会社全体が良くならなければいけない。社員がそのことを分かってきた。

本部長以上の賞与は絶対評価で決まる。

幹部(本部長以上)は数字が人格です。ですから5グループ(本部長)以上は、絶対評価。本人自身の成績で評価する。

比較するのは過去の自分。前年よりも業績が上がればB以下にはならない。さがると良くてB評価。

数字データを半期の自己アピールを提出し、役員会の独断で決める。と経営計画書に明記している。社長は、本部長に対して生殺与奪権を持っている。

賞与②業績が良い時は幹部を優遇、業績が悪い時は幹部を冷遇

本部長でも一般社員より賞与額が少なくなることがある。

わが社は業績が良い時は、幹部優遇(新人冷遇)主義で業績が悪い時は幹部冷遇(新人優遇)主義を基本とする。

業績が良い時は管理職に厚く賞与を配分し、業績が悪い時は厳しく配分する。

・業績がよいとき:一点当たりの賞与単価を上げる

・業績が悪いとき:1点あたりの賞与単価を下げる(ただし、1,2グループの一般社員の賞与単価はできるだけ固定する)

賞与単価表をみていただくと、上のグループほど「賞与単価の最低額と最高額に幅がある」ことがわかると思います。上のグループに行くほど、「優遇と冷遇の差が開くようになっている。

3グループ:750円から1800円

5・6グループ:100円から2500円

会社の業績が悪く

5グループの1点当たりの単価:100円

1グループの1点当たりの単価:1250円

とします。

このとき5グループの本部長はS評価をとっても、100円×800点で賞与8万円。

A評価を取った本部長よりもC評価の一般社員のほうが賞与額は高くなる。

新人が辞めるのは、賞与をたくさん払うから。

武蔵野のルールをわかっているから「わが社には天国もあれば、地獄もある」ことを承知している。だから賞与額が極端に下がっても文句は言わない

ところが新人社員は人事評価の仕組みをよく理解していないため賞与が減ると文句を言って辞めてしまう。

減ると文句をいうのであれば最初から減らさないようにすればいい。そのためには会社の業績が良くても極端に新人の賞与額を上げないこと。

私は一度だけ、会社の業績が良かったら、決算賞与を払うと経営計画発表会の壇上で社員に約束したことがある。わが社の社員はがぜんやる気をだして決算賞与を手にすることができた。

ところが翌年決算賞与を出さなかった。社内はブーイングの嵐。

社長は安易に社員が喜ぶことをやってはいけない。

賞与③4つの項目を点数化して評価を決める

職責下位の社員はプロセス重視、職責上位の社員は業績重視

わが社は評価シートに基づいて、半期ごとにA、B、Cと評価を決めます。

評価シートに評価項目が定められていて、次の4つの項目で点数をつけ、この点数を参考にしながら個人の評価を確定する。

①業績評価点

②プロセス評価点

③方針共有点

④環境整備点

①業績評価は粗利益額と営業利益で算出し、対前年対比で点が付けられる。

②仕事の基本行動・態度に関する「6項目」を評価する。

1.仕事の責任を自覚し、常にお客様第一の姿勢で仕事を行ったか。

2.会社や上司の方針を十分理解していたか

3.仕事遂行上の工夫改善や能率向上に努めたか

4.上司や同僚との仕事上の報告・連絡・相談は適格であったか

5.幅広くレベルの高い仕事ができるよう能力の向上に努めたか

6.実行計画(個人)を常に意識して仕事を行っているか

職責下位の社員は「プロセス重視」職責上位の社員は業績重視です。職責が低い人は、一生懸命やれば良い評価を得られますが、職責が高い人はいくら一生懸命やっても結果が出なければよい評価は得られない。

遊んでいて成績が上がった幹部と一生懸命やって成績が上がらない幹部では遊んでいて成績が上がった幹部を評価する。これが武蔵野のルール。

内勤部門のプロセス評価重視と思われますが、営業部門と同じで売掛金の回収・経営サポートのお手伝いなどで数字で評価される。

③方針共有点

早朝勉強会、政策勉強会、バスウォッチング、オリエンテーション、社員旅行など、価値観を共有するための勉強会や行事に参加した回数をポイントにする。

勉強会を1回さぼると3点減る。

①お金よりも自分のやりがいを大切にする高い能力の社員

②お金が欲しい!と不純な動機で働きながら、他の社員と価値観が同じ社員

の2人がいたら武蔵野に必要なのは②の社員です。

わが社は能力よりも価値観(考え方)を共有できることを重視しています。能力のある社員を集めても価値観が揃っていなければ組織はバラバラになる。

会社のレベルよりも優秀な人材を採用するとやる気をなくして辞めます。わが社のような中小企業は戦力を分散して持っておけない。ライバルとの戦いは総力戦。だから方針を共有し、社員の価値観を揃えておく必要がある。

④環境整備点

環境整備を義務付けている。環境整備とは仕事をやり易くする環境を整えて揃えること。作業分担表に全員の担当が決まっており、その部分を30分間ピカピカにする。

4週間に1回の環境整備点検で賞与評価に反映させる。

制度を新しく作るときは、社員の価値観が揃っていたり、会社の文化ができていたりした方が定着しやすい。環境整備などの取り組みをして社内コミュニケーションを円滑にしておくと、人事評価制度は運用しやすくなる。

業績だけで評価すると社員の評価が偏ってしまう

業績だけで評価すると、実績の足りない社員やキャリアの浅い社員はどうしても評価が低くなってしまいます。ですが勉強会にでるだけで方針共有点をもらえるし、整理整頓をするだけで環境整備点がつく。勉強会に出たり、掃除をするだけならキャリアが浅くてもできる。

また禁煙手当や安全運転手当なども年齢や社歴とは関係なくだれでも心がけ次第で貰うことができる。そう考えるとこの評価制度は若い社員でも評価してもらえる制度だと言える。

賞与④評価シートでは人ではなく人の行動を評価する

数値化すれば、人格ではなくやったことを評価できる

評価シートは社員の行動を数字で表すための道具です。ファジーなものは数値化して評価します。

上司と部下の評価面談で評価シートを使って数値化することで明確にすることができます。社員が自己採点し、上司が採点する。部下と上司で点数が違う時は、上司の点数を優先しその際にかならず点数の違いを説明する。

評価シートは、行動を評価するしくみだと思います。評価シートを使って数値化するようになったことで人ではなく、やったことを評価できるようになった。

数値化すれば人ではなく「こと」を叱ることができる。どうすれば点数が上がるのか、評価を上げるには何が足りないのか。を具体的に指示できるようになる。

社員が夢を持てるのは、とても大切なこと。頑張って成果を出しても報われなかったら働きがいがない。

賞与⑤給与はお客様に感謝、賞与は社長にありがとう

賞与は労働対価ではなく利益の一部配分である。

会社は業績が赤字でも社員に給与(月給)を支払います。給与の原資はお客さまです。

お客様が自社の製品やサービスを買ってくださるから、売上が上がり給与が払える。ですから社員はお客様に感謝の心を忘れてはいけない。

では賞与は誰が払っているのでしょう。賞与を払っているのは社長です。

わが社では、毎月の給与と賞与を次のように規定している。

・給与:労働対価

・賞与:利益の一部配分(業績によっては支給しないこともある)

お客様が賞与を払ってくださるのなら、会社の業績にかかわらず賞与を払うことができます。ですが実際は賞与を出せる会社と出せない会社がある。

賞与は労働の対価ではなりません。賞与は成果(利益)の再配分です。

黒字だから賞与をだせる。利益が少ない時は、賞与ではなく小与になります。赤字が続いて利益が出なければ、分配することはありません。

会社が黒字なのは社長の腕がいいから。

会社が赤字なのは社長の腕が悪いから。

社長が黒字にすると決定し、決定が実現できるように幹部が中心となって実践する。だから利益が上がり、賞与を出せます。ほとんどの社員は、賞与がもらえるのは自分が頑張ったからだと考えます。もちろん賞与にはそういう側面もある。

しかしそれ以前に社長が頑張って会社を黒字にしたからこそ、社員は賞与をもらうことができる。

賞与は社長が支払うもの。労働対価ではない。ことを明確にしていない社長自身に責任がある。

武蔵野の経営計画書は、規定通りに賞与を受ける条件について次のように明記している。

【規定通りの賞与を受ける条件】

※業績によって支給しないことがある。あくまでの成果(利益)の再分配

①会社が黒字で推移している

②正社員として6か月間を経過している(支給日に在籍していなくても支払う)

③前年よりも粗利益額が上回っている

賞与⑥賞与の額がもっとも少なかった社員に賞与を袋詰めさせる

賞与は現金、手渡しで支給する

わが社は、賞与は現金(万単位)で支給する。端数は口座振り込みとする」のが決まり。

しかも部長と課長の中で、賞与の額がもっとも少なかった社員が他の社員のボーナスを袋詰めすることになっている。

賞与の袋詰めをした社員の中で、会社を辞めた社員はひとりもいない。

渡すときも一回一番多い人の賞与袋を持つこと。

賞与を全額奥さんに渡す社員は出世できない。賞与を50万円もらったら10万円を抜き取り40万円だけ渡す。そして抜き取った10万円を部下との懇親のために使う。

その他の手当①家族手当 社員にとって最大の福利厚生は年収が上がること

手当を増やして社員の年収を上げる

福利厚生のためだからといって、リゾートマンションを所有しようとは思わない。最大の福利厚生は年収が上がること。これが私の基本的な考えです。

だから手当を増やして社員の年収をあげるよう尽力します。

その他の手当②家族手当 配偶者と子供がいる社員には家族手当を支給

家族が増えるほど、一人当たりの家族手当を厚くする。

配偶者の子供がいる社員に家族手当を支給します。子供の手当は「第四子」まで18歳の誕生日を上限にします。

【家族手当】

  • 配偶者:5000円
  • 第一子:1万円
  • 第二子:1万5000円
  • 第三子:2万円
  • 第四子:2万5000円
  • ※1グループと2グループ社員の子供の手当は半額

子供が増えればそれだけ育児にお金がかかるので子供の数が多くなるほど、支給額を厚くしている。奥さんと3人の子供がいる3グループ以上の社員なら家族手当は5万。5000円+1万円+1万5000円+2万円)

家族手当が厚いから、この7年間で退職した管理職はぜろ。

中途入社は、入社した年は、奥さんの分だけ。次の年は奥さんと子供1人分。さらに次の年は、奥さんと子供2人分を支給します。1年ごとに1人分ずつ増やしていく仕組み。

いきなり3人分の手当を支払うと、不公平感を覚える社員が現れます。能力も勤続年数も同じ2人の社員がいて、「独身か妻帯者か」の違いで、給料の額が最初から大きく変わってしまうから。

第三子が生まれた社員には、1,2グループ:30万円 3グループ以上:50万円を支給してささやかな少子化対策をしています。

家族に増減が生じた時は、スピード決済というグループウェアにて各自で申請してください。

ですから家族がいるのに家族手当が支給されていないなら、それは申請を忘れたからであり、評価制度の勉強を怠った自分の責任です。総務の責任ではない。

会社はぶら下がり健康器ではないからぶら下がっていても給料は増えない。わが社は人事評価委制度は勉強していない社員が損をする仕組みです。

その他の手当③禁煙手当 禁煙すれば年収が60万円アップ?

武蔵野は喫煙者が管理職になれない

喫煙者でも入社はさせますが、たばこをやめないかぎり、管理職にしません。(勤務時間外も含めて禁煙が要件)

おまえは課長にならなくていいんだ、死ぬまでたばこを吸ってろ!

禁煙すると宣言した社員には、即座に30万円支給する。その後、1年間吸わなかったらさらに30万円支払う。

禁煙するだけで年収が60万円アップする夢の仕組み。もともと喫煙していなかった管理職には別途手当を支給した。

違反をしたら手当の3倍の額を返金する。

わが社の禁煙手当は、

1および2グループ:年間10万円

2.5グループ:年間15万円

3グループ:年間20万円

しかし違反をしたら手当の3倍の額を返金するのがルール。

その他の手当④安全運転手当 安全運転をした社員に年間12万円の手当を支給

交通事故を防ぐコストは惜しまない

【安全運転手当】

年間12万円(社員)

年間6万円(パート・アルバイト)

※勤続年数によって支給額を変更する

その他の手当⑤特別手当 社員を辞めさせないために「特別手当」を支給

幹部社員が持ち家を買うときは、最大100万円を支給する

【特別手当】

①持ち家購入手当

②永続勤続手当

5年、10年、20年、30年、40年勤続の役員および社員に手当を支給します。(支給額は5年は5万円、10年以上は10万円)

永続勤続手当は、個人の成績を問わず、会社にいれば誰でも表彰を受けることができるので平等な手当です。

③帰省手当

親への感謝を伝えに帰省した社員には、交通費を支給する。

新卒社員が入社後に最初の給料をもらったら親に挨拶に行くのがわが社の決まり。ゴールデンウィーク中に帰省して、両親に感謝の言葉を伝えれば交通費を支給します。

社員が部長に昇進した時は、実家に帰って、親に新しい名刺を見せてこい、その様子を写真にとってくれば会社で費用を支払ってあげるから。

昇進時に6か月以内に両親との食事会を開けば食事代(親ひとりにつき1万円)と交通費(都内は除く)を支給している。(社員提供が条件)

給料体系勉強会を開催し、10年後の自分の給料を計算させる

ルールがあるからといってルールを理解しているわけではない

社員にとって最大の関心事は自分の給料です。お金は命の次に大切なもの。それなのに、どうすれば自分の給料が上がるのかを知っている社員は少ない。

経営計画書に書いてあるのに、なぜ不満が出るのか。それは読んでいないから。ルールを作ってもだれも読まない。読まないけれど文句はいう。

ルールがあることとルールが周知されていることは違う。

武蔵野では、給料体系を勉強する「給料体系勉強会」を開催し、出席を義務付けています。

勉強会への参加は人事評価の対象「3回出席」になっている。参加しないと賞与が下がる。だから社員はしかたがなく出席する。

給料体系勉強会では、10年後の自分の給料を計算させます。自分の基本給をベースに人事評価が10年間「オールA評価」だった場合とオールC評価だった場合の10年間の給料の違いを計算します。差がものすごく出る。

頑張れば給料が増える。頑張らなければ給料が増えるのが遅いことがわかる。だからわが社の社員はたくさん給料がほしいという不純な動機で頑張るわけ。

給料体系勉強会では、毎回テストをおこない、テストの点数が一番悪かった社員が次回の講師を務めるルール。

人事評価制度がない会社な何から始めれば良いか?

武蔵野の人事評価制度をそのまま真似る。武蔵野の人事評価制度はレベルが高いので、丸ごと真似することはできません。そこでマイプレジャーでまねできそうなところだけ真似する。

・評価シート

社長や上司の主観で評価すると社員はやる気をなくすので、業績評価、プロセス評価、方針共有(勉強会の回数)といった評価の項目を決め、点数化する。評価の項目が多いと面倒になるのでできるだけ少なくした。この評価シートの点数を評価の目安とした。

・基本給

武蔵野の賃金テーブルを真似て、基本給を決めます。中卒を新卒とし、Ⅰ等級1号棒にします。高卒はⅠ等級16号棒、専門・短大卒はⅡ等級2号棒、4大卒はⅡ等級12号棒とする。

Ⅰ等級1号棒の金額は、最低賃金や所定労働時間参考にして決めるか、武蔵野賃金テーブルを数字をそのままマネします。

ピッチ(1号棒でいくらの差をつけるか)も、とりあえず武蔵野の賃金テーブルに倣って運用をしてみて、あとで調整します。飲食業やレジャー産業は仕事に年齢差がでないのでピッチを短くする。

号棒の上がり方は、相対評価の成績によって決めます(年間の成績がA評価なら5号棒上げる、B評価なら4号棒上げる など)

武蔵野もはじめはグループ制を導入していなかったので、最初は等級だけで運用しました。

等級に求められる能力や職務を定義し(Ⅲ等級は課長、Ⅳ等級は部長など)資格要件を満たした社員は等級を挙げます。

・手当

管理職(課長、部長、本部長等)についている社員には、管理者手当をしはらいます。そのほか家族手当や安全運転手当など、必要に応じて手当を決め、支給します。

・賞与

社員の半期の成績を相対評価し、一定の割合でS評価、A評価、B評価、C評価、D評価を決めます。評価は評価シートの点数を参考にして決めます。

賞与に使う総額を決定します。

一点当たりの金額は最初は全員同じにします。

賞与配分点数票を使って、全員分の配分点数の総合計を算出します。

賞与単価を計算します(賞与に使う総額÷配分点数の総合計)

賞与金額を計算します(賞与配分点数×賞与単価)。

社員が増えるまでは(目安25人以上)、人事評価制度を社員に公開しません。なぜ公開しないかというと、「優秀な人材が採れなくなる」からです。あとから入ってきた新人の方が高い給料だったら、既存の社員は面白くない。また環境整備などの社員教育が行き届き、社員の価値観が揃ってから公開したほうが、不満は少ないから。

公開しなくても基準を作っておけば、社員に対して「どうしてこういう評価になったのか」を自信を持って説明できる。

最初から正しい人事評価制度は作れないから、不都合が生じてきたら、制度を変えていけばいい。大切なのは適当でも根拠がなくても手探りでもよくわらなくてもいいからとりあえず、ざっくりとした人事評価の仕組みを決めて運用してみること。

頻繁に人事異動することを決定する

定期的な人事異動は、赤字という病気を防ぐ特効薬

人事異動をしない会社の5つの弊害

わが社は定期的に人事異動を行う。5年以上同じ部署で働くことはない。営業系の若手社員は、一つの職場での在籍期間を3年、事務系は5年として他の部署に転属させ、多くの経験をつませる。

事務系の部長クラスは一度、営業の体験をさせる。特に経理部長には営業課長を経験した人を登用している。

同じ仕事をさせ続けると次のような弊害が起きるから。

①無理・無駄・ムラが放置される。

同じ仕事を長く続けていると、新鮮味が薄れ、すべて風景になり客観性が失われる。

②仕事が属人化する

属人化するとは、ブラックボックス化すると同義です。この件は〇〇さんに聞かないとわからない。あの仕事は〇〇さんでないとできないとできないと、人に仕事がつくとモンスター社員が育ったり、仕事がブラックボックス化して不正の温床になる。またその人が病気で休んだり、退職をしたら、仕事が回らない

③ひとりの上司の固定的な評価から逃れることができない。無能な管理職が幅を利かせることになります。長くその部署においておくと、「幹部」がガン部になる

④組織が赤字病にかかる

数年に1度の組織変更は、会社を赤字という病気から守る最良の薬。組織を作るときは、はじめに病気にならない組織を作成して、あとから人を割り振るくのが正しい。人を見て組織を変えると、常に、短くしたすきに長しで何もできない。

⑤新しいことに挑戦しなくなる

同じ部署に長くいると、自分は仕事ができると錯覚してしまう。また過去の体験にしがみつき、変化や失敗を恐れるようになる。

会社の業績が良い時は、どうしても社員の気持ちは緩む。幹部の危機感をあおるために12月の繁忙期に50%を人事異動しました。組織を活性化させるためには、人事異動によって会社を変化させることが重要。変化とは人をかえること。

わが社は人事部はありません。総務部が手続きを行う。人事部は全社全体・社員全体を把握することができず、良くも悪くも社員の表面的な部分しかみることができない。

幹部数名に人事異動案をつくらせ、彼らの意見を踏まえながら最終的には社長の私が決定します。

成績の良い人を中心に人事異動をする

仕事ができる人ほど頻繁に異動させる

人事異動は、職場のナンバーワン、あるいはナンバーツーを動かすことが慣例。

普通の会社は仕事ができない人を動かします。しかしわが社では仕事ができる人ほど頻繁に異動させます。仕事ができる人は、何をやらせてもすぐに習熟する一方で、同じことを長く続けさせていると、飽きてしまう。かれらのモチベーションを下げないためにも、定期的な人事異動が必要。

私は、ダメな人は何をやらせてもダメ、出来る人は何をやらせてもできるという考え。

2対6対2の法則で、上を抜くと下の人たちが優秀になり、後ろのダメな人が入ってきて、常に組織が活性化します。だから層が厚くなる。

社員に失敗の経験をつませるのは、社長の仕事。

成績の良い人は、高速回転がいちばん。多くの部門を担当させ、多くの失敗経験をさせることで10年後花が咲いて実が採れる。

人間は失敗からしか学ぶことができない。上司やお客様から叱られ、恥ずかしいという思いをして、ようやく一人前になる。学生が時代は、記憶力で勝負したが、社会に出ると経験で勝負することになる。その経験をさせるのは社長の仕事。

成績が悪い人は、その場でずっと習熟させて5年に1度ぐらいのスパンで異動する。若い人はつらい仕事はしたくないでも課長になりたいといいます。それは勉強はしたくないけどいい学校に入りたいというのと同じ。そんなことは不可能。人はきつい仕事をさせないと育ちません。

新しいことをやれば必ず失敗する。でも失敗とは自分のキャパシティーを広げることであり、実力とは失敗の数です。新しい部署で新しい仕事をする。経験がないから失敗する。なぜ失敗したのかどうすれば次はうまくいくのかを考え、改善する。こうして人は成長します。

人の成長なくして会社の成長はありえない。そして人の成長は失敗なくしてありえない。

人事異動を拒否した場合は、評価を下げる。わが社は人事異動の回数を評価しています。人事異動は社長の権限だから、社員は拒否できない。その代わり、人事異動に応じて回数が多いほど評価する。人事異動に聖域はない。

人を動かすときは、早すぎても遅すぎてもダメ

元部下や同期を上司にすることも必要

私は意図的に、同期の社員を上司にしたり、部下だった社員を上司にすることがあります。同期や元部下が自分の上司になれば悔しいと思い、早く成績を上げて別の部署に異動しようと頑張る。

悔しさは人を動かすエネルギー・

カモを投入してB評価の社員のやる気に火をつける。武蔵野はグループ内の相対評価でA評価の社員(成績が良い社員)が昇進していなくなると、B評価以下の社員はやる気をなくす。上がいなくなるとA評価とれるかもしれないと思うから。

配属を変えると、人のやる気が変わります。だれをいつどのように配属しどのタイミングで昇進させたら頑張るようになるか。人を動かす時は、早すぎてもダメで遅すぎてもダメ。

水をあげすぎると根が腐り、上げないと枯れてしまう。そのタイミングを見極めるのは社長の力量。

武蔵野が半数近い社員に「課長職以上」の肩書を与える理由

石を投げたら課長に当たる。投げなくても課長に当たる

わが社は社員・パート・アルバイト・外交員750名の組織です。課長職以上が80人以上います。石を投げたら課長に当たる。投げなくても課長に当たるのが武蔵野です。

過去7年にいないにやめた人は、実質ゼロ。

大相撲でも入れ替え戦がある。J1J2も入れ替え戦がある。

更迭してもすぐに復帰できると思えば、社員は卑屈にならない。

グループが下がる事を更迭と呼びます(グループが上がることは昇進)

更迭されても3年以内にA評価を取れば復帰できる。課長がb長になるには、A評価を3回取らないといけない。ですが、部長から更迭されて課長になった社員は、3年以内にA評価を1回取るだけで部長に上がれる。3回取る必要はない。1回だけで復帰できる。

更迭者を優遇しているのは腐らせないため。次に結果を出せばすぐに復帰できる。だから社員は更迭されても卑屈にならない。

仕事ができる者同士、仕事ができない者同士で組織を作る

頑張っているのにA評価が採れない2つの理由

①仕事があっていない(その仕事に向いていない)

単純な仕事ではA評価が採れないのに、複雑な仕事に変えたとたんA評価が採れる社員がいる。人には、得意・不得意があるから一生懸命仕事をしているのに結果が残せないのは、不得意な仕事をさせているから。そんな時は人事異動を行って仕事を変えてあげる。

②上司と部下の実力差がありすぎる

上司が優秀すぎると部下はやる気をなくします。同じように部下の実力が上司よりありすぎても部下はやる気をなくします。

仕事ができない部下は仕事ができない部下の下に配属させる

仕事ができる部下は仕事ができる上司の下に配属させる

と個人も組織も活性化して業績が上がります。

同等の力を持っている人同士で組織を構成したほうが、切磋琢磨しやすいから。大相撲の番付を例にする。

横綱と序二段が同じ土俵で相撲を取ったら、序二段はいっこうに勝てない。でも序二段同士なら勝てる確率が高くなるから頑張る。

優秀な社員と力のない社員を戦わせても意味がない。

優秀な社員は小さく固まるし、力のない社員は、どうせA評価以上は期待できないから、頑張っても仕方がない。とあきらめムードに包まれる。

仕事があってないなら得意な仕事ができるように異動させる。上司と部下の実力差がありすぎるなら上司をかえる。こうすることで伸び悩んでいる社員の成長を促すことができる。

定期的に部下と面談することを決定する

毎月1回、上司と部下の個人面談を義務化する

個人面談は質よりも量を重視する。

評価制度に納得するために、評価面談を月1回している。面談を行って、どこが良かった、どこが悪かった、こうすればもっとよくなると具体的に示唆。

人事評価が下がった社員も不満を持つことなく次回は絶対に良い評価をもらおうと頑張るようになる。

①直属の上司と部下の個人面談

毎月1回必ず実施することを義務付けている。コミュニケーションは回数。1回の面談につき500円支給する。面談したとうそをつく社員もいるから面談をしたら、評価シートに上司のハンコを押させている。

評価シートを見ながら面談をする。

②社長と社員の評価確定面談

わが社の暗部社員(2.5グループ以上)は年に3回、社長の私と面談します。

半期ごとの賞与面談が2回(1回7分)、昇給面談が1回(1回3分)。

評価シートを見ながら、①業績評価点②プロセス評価③方針共有点④環境整備点と合計点の確認。

昇給面談は2回の評価の確認と昇給評語の確定。新しい号棒が決まり、賃金テーブルを自分で見て新基本給を確認します。

評価確定面談では直属の上司も同席させている。社長と社員の1対1では社員が緊張するし、また上司がいちばんその社員のことをよく知っているから。

上司が座っていれば社員の緊張も和らぎます。それに嘘がつけない。

評価確定面談では社員に自己採点、自己評価させる

評価確定面談(賞与面談)の流れ

【賞与面談の流れ:ひとり7分】

①自己採点

前期と比べて今期は100点満点中何点だと思うかを自己採点させます。私は、前回の自己採点の点数をノートに書き残しているので、今回の点数が前回よりも上がったのか下がったのかを確認します。

このとき0点50点100点は付けてはいけない決まり。0点は賞与はいらないという意味ですし、100点は完璧という意味。どちらもありえない。

②社員の振り返り

最初の5分は、社員が前期を振り返り、「良かったこと」「悪かったこと」「どうすれば改善できるか」について話をします。話す時間の長さもその社員の評価する目安になる。良ければ長くなる。

③評価シートの点数の確認

評価シートに基づき①業績評価点②プロセス評価点③方針共有点④環境整備の点数をすりあわせ、合計点を社員に答えさせます。

④評価を確定する

合計点が出たら、では人事評価は何だと思いますかと私から質問し、社員に自分の評価ABCを答えさせる。私の評価と社員の評価が一致すれば評価が確定します。

自己評価は本当に甘い。

⑤賞与額の計算

評価が確定したら、賞与がいくらになるのかをその場で計算させます。(配分点数×賞与単価で算出した金額に手当を加えた額)

そして前回よりもいくら上がったか(下がったか)を社員に答えさせます。昇進する予定の社員には、上のグループでA評価を取った場合は、賞与がいくらになるかも計算させる。

例)

3グループ:1500円(賞与単価)×280点(A評価の配分点数)=42万円

4グループ:1900円(賞与単価)×400点(A評価の配分点数)=76万円

すると賞与の額が大きく変わる。だからやる気になる。

⑥評価の説明とアドバイス

環境整備の点数があと5点上がると、A評価になれる、業績評価点があと2点上がればA評価になれると言ったように、自分のどこが悪くて評価を下げたのか、どうすれば評価が上がるのかを具体的に伝えます。

社長との面談に人事評価制度の極意がある。

株式会社関通 上司と部下が行う毎月の面談はもちろんですが、社長が直接社員と話をする年2回の賞与面談と年1回の昇給面談が特に大切。

そうしてこの評価になったのか、どうすれば評価を上げることができるのかを社員に具体的に説明できるから、たとえ評価が低い社員でも納得させることができる。

面談は社長にとっては、社員のやる気を高める場であり、社員にとっては次の半期に向けて気持ちを切り替える場です。

部下をえこひいきする上司が正しい

課長になりたいと手を挙げた社員をえこひいきする。

個人面談は、上司が自分をえこひいきをする部下を見つける機会です。多くの社長は、社員をえこひいきしてはいけないと考えますが、それは視野が狭すぎる考え。上司は自分の言うことを聞く部下をえこひいきするのが正しい。

そもそも会社経営は、お客様からえこひいきをしてもらうための活動です。上に上がりたいと自分から手を挙げる社員は、上司の言うことを聞かないと上に挙げてもらえないことがわかっているので指示に従う。

上に上がりたいという気持ちがない社員には時間を掛けない。手を挙げない社員は放っておく。それが武蔵野のルール

部下をえこひいきすることが部署の実力アップにつながる。

5人部下がいるとする。分散すると20%になるが1人を80%で育てて、課長にし、その人が80%でもう一人育てると、結果的にシナジー効果が働き部署全体が強くなる。

社長は部下がつけた評価を変えてはいけない

部下がつけた間違った評価は正しい

武蔵野が給与も賞与もすべて公開できるのは、部下がつけた評価を私が変えないから。社長にも聖域はない。

部下がつけた間違った評価は正しいと考えている。

定年退職後、本人と会社の希望が合えば嘱託社員として働ける

武蔵野が退職金を支払わない理由

武蔵野に退職金制度はない。その代わり嘱託社員(正社員とは異なる契約によって勤務する非正規雇用)として再雇用制度がある。

退職金がある会社とない会社では、多くの社員が「退職金のある会社の方が、いい会社だと考える。

ですがそれは違う。

退職金が無くても嘱託社員として再雇用してくれる会社の方がいい会社です。500万円の年収がある人が定年退職するときに1000万円の退職金をもらっても2年でなくなる。

年金を加えると正社員だった時の3分の2ぐらいの収入を得ている。だから退職金をもらうよりも嘱託として働く方が得。

朝、起きて仕事ができることに感謝です。

本人と会社の希望が合致するときは、等級嘱託として働くことができると経営計画書に書いているので、働きたくても働けない場合もある。

嘱託社員は1年ごとの契約。退職日はその社員の誕生日にしている。

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