給与計算の事務手続き・届出ができる本

給与計算という業務は、会社の中でもトップレベルで大切な仕事です。給与計算は間違うことができない。

1.給与計算の基礎知識

毎月の作業として「勤怠管理」「支給額」「控除額」「手取り額」、1年間の中で定期的に行う「賞与の計算」「年末調整」「保険料と住民税の額」、必要に応じて行う「従業員の入社・退職」といった作業があります。

給与計算にかかわる作業は月間と年間、不定期があらう。

①毎月の給与計算:給与計算の基本は毎月の作業です。多きく次の3つのステップに分かれる。

1.勤怠項目のチェック:出勤日数や勤務時間、残業時間などの労働時間をチェックします。時間外手当や控除はこの勤怠項目から計算するため、給与の額を白湯する大事な作業のひとつ。

2.支給項目の計算:基本給や諸手当、時間外手当を計算します。欠勤した際の欠勤控除があれば、その分を差し引いて総支給額を計算します

3.控除項目の計算:社会保険料や、税額を計算し、毎月の総支給額から控除します。そうすることで「毎月の手取り額」が計算されます。

②年間の定期作業:年間に定期的に行われる給与計算には、主に次の3つがあります。

1.賞与計算:賞与が支給される月には、毎月の給与とは別に賞与の計算も行います。

2.社会保険料・住民税の変更:健康保険料や厚生年金保険料は、保険料と給与額のバランスを保つために原則として年に1度、9月(10月納付分)に変更します。住民税は毎年6月に変更します。

3.年末調整:毎月控除する所得税は、毎月の給与に対して計算されています。1年の中で給与額や扶養親族の数が変わると年間総所得に対する税額と控除額に違いが生じるので、その致死の最後に支払われる給与又は賞与にてその差額を調整する作業を行う。

③不定期な作業:必要に応じて行う給与計算には、主に次の2つがあります。

1.従業員が入社・退職したとき:給与の日割計算(期間の途中で入社・退職した場合)。社会保険の取得・喪失。

2.大きな給与額の変動があった時:社会保険料(健康保険、厚生年金)の変更

2.給与支給明細書から給与計算を理解する

給与支給明細書は、基本となる毎月の給与計算の全体を表している。

給与支給明細書は勤怠・支給・控除の3要素

①給与支給明細書:毎月の給与を支払うときには、給与明細書を従業員本人に発行します。次項は給料支給明細書の例です。記載される項目を見ると、給与計算に必要な作業がよくわかります。

②作業に入る前の準備:勤怠項目のチェックをする前に、入退職者の有無や交通費、扶養親族の変更など個々の従業員の異動チェックを行います。

③勤怠チェックで労働時間を把握:勤怠をチェックする項目には、勤務した日数と時間の項目があります。従業員が出勤した日数、欠勤した日数、有給休暇取得日数、遅刻・早退時間、時間外労働時間、休日労働時間を記入していきます。これが給与の支給項目計算へつながります。

④支給項目で総支給額を計算:基本給や諸手当など、従業員本人に支給する項目の額を合計します。時間外手当は勤務項目を元に計算します。支給項目をすべて合計した額が毎月の総支給額です。欠勤や遅刻・早退などの不就労控除(遅早控除を含む)がある場合は、その額を差し引いた額が総支給額になります。

⑤控除項目で差し引かれる額を計算:控除項目は、労働者が負担する「社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険)「税金(所得税・住民税)」といった法定控除と、「その他」の協定控除に分類されます。その他の項目には財形貯蓄や労働組合費、任意で加入する会社(団体)の生命保険料などがあり、これらは給与から控除するには会社と従業員の代表者が、あらかじめ協定を結ばなければならない。

⑥差し引き支給額が手取り額:④の総支給額から⑤の控除合計額を差し引いた額が、いわゆる手取り額となります。一般的には銀行振込で支給されるので、支給日に間にあうように手続きをします。

3.【賃金支払いの5原則・最低賃金法・時間外手当・36協定】給与計算に関係する法律と会社のルール

給与計算は法律の規定が前提となり、そのうえで会社のルールが決められています。

給与計算に関係する法律

①賃金支払いの5原則:一般的に、毎月の給与支払い日に現金が従業員の銀行口座(または直接)に支払われています。これは「賃金支払い5原則」という労働基準法にしたがったものです

そのため、毎月の給与の支払いを不定期にしたり、本人以外(両親など)に支払うことはできません。

②最低賃金法:最低賃金は「最低賃金法」によって定められています。都道府県別の「地域別最低賃金」と特定地域内の特定の産業を対象とした「特定(産業別)最低賃金」があります。原則として、この最低額よりも安い賃金に設定することができません。

③労働時間に関する法律:給与計算において、時間外手当は所定労働時間を超えて働いた時間に支払います。しかし時間外手当を支払ったからといって、時間制限なく労働させることはできません。労働基準法では、1日8時間週40時を通常業務の労働時間の原則として定めています。この法定労働時間を超えた残業や休日労働をさせるためには36協定を従業員側と締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。また法で定められた時間外労働には、割増賃金を支払うことも必要です。

基本は次項図の割増率ですが、「時間外+深夜」といった条件が重なった場合、計算が非常に複雑になります。

④給与支給に関する会社のルール:給与の支給内容や支給方法は、会社の就業規則で定めます。具体的には給与の締め日、支給日、給与の内容(基本給、手当の種類、金額など)、勤怠ルール、法律で決められた項目以外の控除項目などを決めていきます。

4.【控除項目・社会保険料・所得税・住民税】社会保険料と税金の控除額

控除項目の計算方法は法律で定められています。所得税と社会保険料では計算のももとになる所得が違います。

①健康保険料と厚生年金保険料:健康保険料、厚生年金保険料は同じ計算方法です。毎月の給与を一定の幅で区分した「標準報酬月額」が一覧になっている表にあてはめることで、それぞれが負担する社会保険料がわかる。給与の額によって、健康保険料なら50等級、厚生年金なら31等級まで区分されています。例えば、毎月の給与が23万円以上25万円みまんの場合、標準報酬月額の表に当てはめると、健康保険で19等級、厚生年金で16等級となり、標準報酬月額は24万円と分かります。この標準報酬月額に、共通の保険料率(毎年改定)を掛けることで保険料額を計算します。この保険料額は従業員と会社で折半するので、半額の本人負担分だけが給与から控除されます。

②雇用保険料:雇用保険料額は、税引き前の毎月の給与に掛けます。会社と従業員で負担割合が違うので、本人負担分だけを給与から控除します。事業によって違いがありますが、一般の会社の場合、平成30年度の保険料の負担割合は会社が0.6%、本人が0.3%です。

③所得税:一般的な会社員の所得税は、源泉徴収という形で毎月の給料から天引きされます。このとき、もうけに当たらないとされる「非課税所得」(交通費などの必要経費、傷病手当、出産手当など)と健康保険料や雇用保険料などの社会保険料を、総所得額から差し引いた金額に課税されます。所得税は、計算式で計算するのではなく、源泉徴収税額表に課税金額をあてはめることで簡単に求められます。源泉徴収税額表を見るときに必要なのが、扶養親族の数で、対象となる扶養親族が多いほど税額は安くなります。

④住民税:住民税も原則として毎月の給与から控除します。所得税とは違って、1年間の税額を12で割っているので、毎月同額になります。税額は6月から5月までの適用分なので、毎月6月に住民税の控除額が変更になります。

5.【控除項目・社会保険料・所得税・住民税・標準賞与額】賞与計算の基礎知識

賞与計算では、特に社会保険料や税の控除の計算方法に注意が必要です。

賞与とは

①賞与の支給(年3回以下):必ず支払われるものではありませんが、夏と冬にぞれぞれ一時金として支給することが一般的にです。そのほか、決算賞与として会社の業績に応じて徳悦に支給されるケースもあります。ちなみに、社会保険料を計算するうえで、賞与の対象になるのは、1年に3回以下の一時金です。年に4回以上支給する場合には、毎月の給与として処理しなければなりせん。

②賞与にかかる社会保険料:健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、賞与からも控除します。ただし、毎月の給与にかかる保険料の計算とは少し計算方法が違います。毎月の給与計算で使用する標準報酬月額ではなく、標準賞与額が基準になります。標準賞与額は、賞与金額の1,000円未満を切り捨てた額です。保険料率を賭けて計算します。

③標準賞与額の上限:標準賞与額には上限があり、厚生年金の場合は1回150万円、健康保険・介護保険は同年度に合計573万円までが保険料の計算対象となります。雇用保険にはこのような上限はありません。

④雇用保険料:総支給額に保険料率を掛けます。

⑤税金は所得税額だけを控除:所得税の課税も、賞与用の特別な「賞与に対する源泉徴収税額表」を使用します。なお、賞与からは住民税は徴収しません。

6.【源泉徴収簿・所得税の還付または徴収・所得控除・税額控除・給与所得控除・源泉徴収票】年末調整の基礎知識

年末に、毎月の給与からすでに源泉徴収した所得税額と1年間の総所得から確定した所得税額との差額を調整するために、年末調整を行います。

1年間の源泉徴収税額を集計する

①年末調整とは:所得税は、毎月の給与から控除しています。そのため、毎月の給与額や扶養親族の数が変わった場合、1年間の総所得から割り出される所得税額とずれが生じてしまいます。そのずれた差額を調整するのが年末調整です。1年間の所得税の総精算ともいうべき作業です。

②年末調整の流れ:給与、賞与を含めて確定した1年間の総収入(総支給額)で所得税を計算し(中途入社の人は前職の収入も含める)、実際に源泉徴収済みの所得税と比較して、差額を還付又は徴収します。

③必要書類の準備:年末調整の手順は29項の通りですが、まず必要となる次の5種類の書類を準備します。

A.扶養控除等(異動)申告書

B.保険料控除申告書

C.配偶者控除等申告書

D.源泉徴収簿

E.住宅借入金等特別控除申告書

④必要書類の記入:A~Dの書類は、11月ごろ、税務署から会社に送られてきます。Eの住宅借入金等特別控除申告書は住宅の取得や増改築をした従業員のみ本人に送られてきます。A~Cの書類は、従業員に配布し、必要事項を記入してもらい回収します。これらの書類は、年末調整の計算過程の中で、所得控除や税額控除に使用します。

⑤源泉徴収簿の作成:年末調整は、源泉徴収簿に計算結果を記入しながら進めていきます。まず毎月の総支給額、社会保険料の控除額、源泉徴収税額を集計して1年間の総額を求めることから始めます。同様に賞与も1年間を集計し、給与額と合算します。これらは、各従業員の給与が記載された賃金台帳からの天気です。

実際の所得税額を計算し徴収済みの税額と調整する

①給与所得金額の計算:1月1日から12月31日までの1年間に支払った毎月の給与と賞与を合算し、総支給額を割り出します。このとき、中途入社の人は前職の収入も加算します。そこから、全ての会社員に認められている控除分である「給与所得控除」を差し引きます。

給与所得控除は、自営業者の必要経費(仕入原価など)に当たるものです。給与所得控除は計算でも求められますが、早見表が用意されています、さらに前項で用意した書類で確認したA扶養控除額B保険料控除額C配偶者特別控除額などの所得控除を差し引いたものが課税所得金額になる。

②課税所得金額から所得税を計算:①で求めた課税所得金額を、税額が割り出せる速算表にあてはめることで、年間に支払うべき所得税額である「年末所得税額」が求められます。住宅借入金等特別控除などの税額控除がある場合は、ここで控除します。

③還付と徴収で調整する:②で求めた年調所得税額と、毎月の給与から源泉徴収済みの所得税額を照らし合わせて差額を割り出します。税額を収めすぎている場合には、還付、不足している場合には徴収になります。還付や徴収には12月の給与支給時に行いますが、決められているわけではありません。

④源泉徴収要を発行する:年末調整が終了したら、従業員の氏名、扶養親族などの数や給与、所得税、社会保険料などの金額が記載された「源泉徴収票」を4枚作成します。従業員本人に1枚配布し、税務署提出用に1枚、空けた年の1月1日現在の住所の市区町村の役所に2枚送付します。市区町村では、翌年の住民税と国民健康保険料の計算資料として使います。

 

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