第一章 食品表示を規定している法の体系
1-1 食品表示の目的
①食品表示の機能
食品は、人の生命や健康を支える上で、また、美味しさという楽しみを人に与え、生活の質(QOL:Quality of Life)を維持・向上するという意味において、日々の生活に必要不可欠なものです。
現在の市場で流通する食品は、食品衛生法に基づく企画基準、輸入検疫制度等の適切なリスク管理が行われることにより、その安全性が確保される仕組みが整えられています。したがって、食品の購入時に、表示を見て食品そのものの安全性を確認しなければ購入の選択ができないということは基本的にはないと考えられます。
一方で、米粉を使ったパンのような新しい加工食品が次々と発売されている中で、食物アレルギー患者は自分にとって安全な食品を自ら選択しなくてはなりません。また、食品は品質が変化する特性を有しており、安全性を維持した状態で、供給・消費されることが求められます、すなわち、食品に関する情報は、消費者が自らの求める食品を適切に選択することや、食品を最もよい状態で安全に消費できるようにするために重要です。このように食品表示は、食品の供給者である食品事業者から消費者への情報の架け橋としての機能を持っています。
【消費者の商品選択の際に有効な情報】
消費者が食品を選択する際、単に食品のみならず、その食品に関する情報をセットで求める傾向が時代とともに強まっています。その食品の主要な原材料がどこで生産されたのか、アレルゲンとなる食品が含まれているかどうか、どのような栄養価を有するか等の情報は、消費者にとって関心の高い事項であり、こだわりを満たすとともに、付加価値の高い食品を選択するための重要な手段でもあります。
【食品の安全など消費に際して必要な情報】
食品を購入した時点では安全性に問題がなくとも、摂取までの時間の経過や保存方法によって安全性が損なわれる場合があります。また消費者の摂取時の健康状態などによって健康気概が発生する可能性があります。
このような事態を回避するため、食品表示は食品の最適な保存方法やその期間など、消費者に必要とされる情報を食品関連事業者から伝える機能を果たしています。そして、この機能は安全かつ最良の条件で消費してもらいたいという食品関連事業者の要望を満たすものでもあります。
また、万が一食品に事故が生じた場合、食品表示は、その原因の究明や製品回収などの措置を迅速かつ的確に行うための手掛かりになるなどの機能を有しています。
②途切れない情報伝達の必要性
一次生産から消費までの食品およびその材料の生産、加工、流通、保管および販売にかかわる一連の段階をフードチェーン(食品安全基本法では食品供給過程)といいます。こうした生産(川上)から消費(川下)へのフードチェーンの実態は、中食も含めた加工食品の増加に伴い年々複雑化する傾向にあります。
そのような中でも、消費者に提供される食品に適正な表示をするためには、その食品に関連する情報がフードチェーン全体を通じて適切に伝わらなければなりません。アレルゲンを含んでいるかどうかや、原材料の原産地に関する情報など、食品の外見から判断できない事項については、生産(川上)から消費(川下)までの正確な情報伝達が不可欠です。
こうした状況から、一般消費者向け食品以外に業務用表示の媒体としては、例外的に送り状等への記載を認めている食品もありますが、食品を摂取する際の安全性に関する情報の表示についてあは情報伝達を確実なものとするため、原則として、一般消費者向け食品同様、容器包装の見やすい場所に記載しなければならないこととされています。
このように、生産から販売に至る事業者が、常に適正な表示のルールを認識するとともに、関連する情報を的確に管理しておく必要があります。
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