食品表示は、消費者と事業者との信頼の架け橋です。
食品表示は、消費者にとってその商品の品質を判断し購入する上で、貴重な情報源となっています。また商品に関わる事業syは常に、安全・安心な食品を提供することが求められており、正しい食品情報を消費者に伝える上で、食品表示は重要な役割を果たしています。
生産者、食品メーカー、小売業者、消費者まで含めた、幅広い分野の皆さんに、食品表示の知識を習得する機会として食品表示検定を活用していただきたいと考えています。
初級と中級はどちらからでも受験していただけます。また同日に初級・中級を両方受験することも可能です。なお、上級は中級合格者の方が対象です。
第一章:食品表示は消費者と事業者をつなぐ架け橋
1-1.食品表示の目的と役割
①食品表示とは
食品の表示は、消費者にとって、その食品を購入する際に、正しく食品の内容を理解し、選択する上で、なくてはならない情報の宝庫であり、また生産者、流通業者、消費者を繋ぐ重要な役割を果たしています。
消費者は、商品を選択する際に、表示からその製品の名称、原材料、添加物、アレルゲン、保存方法、消費・賞味期限などの情報を読み取ります。それらは食品を摂取する際の安全性の確保や品質など、商品選択上の判断に影響を及ぼす重要な情報源であり、商品を納得して購入するために不可欠なものです。
このため食品には、それぞれ表示しなければならない事項が法令によって定められており、表示の責任者である食品関連事業syは、これらに違反すると行政処分や罰則を受けることになります。なお、食品関連事業者とは、食品の製造業者、加工業者(調整や選別をする事業者を含む。)、輸入業者、販売業者等のことをいいます。
②様々な表示方法
スーパー等の食品売り場の場合、図表1から図表3に示すように様々な品質表示の方法があります。生鮮食品の食品表示は、ばら売りの場合は、商品に近接した場所に図表1のように立て札、ポップ等で表示します。
生鮮食品、加工食品ともに、容器包装されている場合は、容器包装のみやすい箇所にそれぞれの食品に必要な事項をまとめて表示します。加工食品は図表2のような別記様式、またはそれと同程度にわかりやすい形式(プライスラベル等)で生鮮食品は図表3のようなプライスラヴェル等の形式で表示を行います。
③食品表示から読み取れる情報とは
一口に食品表示から情報を読み取ると言っても、具体的にどういう情報を得ることができるのでしょうか。
図表4は、食品表示から得られる情報の一例です。
このように消費者は食品表示から様々な情報を得ることができます。正しく内容を読み取る力を養えば、日常の食生活に活かすことができます。
④食品関連事業者にとっての食品表示の役割
食品表示は、消費者が食品を購入するとき、食品の内容を正しく理解し、選択する際の重要な情報源ですが、その一方で、食品関連事業者にとっても、以下の点から重要な役割を果たしています。
・消費者に商品の安全性をつたえることができる
・消費者に商品の持つ情報を正確に伝えることができる
・問題が起こった際に原因究明や製品回収などの対策を迅速、かつ的確に行うための手がかりとなる
食品の表示は、安全、安心などを消費者に正しく伝える上で、重要な役割を果たしています。食品関連事業者は、正しくわかりやすい食品表示を通して、消費者との間に信頼関係を気付くための努力をしていくことが大切です。
⑤食品の安全と安心を高めるために
私たちにとって、安全かつ安心して食品を摂取することは生活の基盤となるものです。安全は客観的な尺度で把握され、科学的に検証できるものです。一方、安心は人間の感じる主観的なものであり、言い換えれば「安全が確保できていると感じる状態ということことができます。
私たちの食生活を安全で、かつ安心できるものにするために、様々なウキゴキがありますが、食品の表示を的生活わかりやっすいものにすることも消費者の食品に対する理解を深め、信頼感を醸成するという点から、その1つととらえることができます。
こうした食品表示の重要性に鑑み、食品表示については、これまでも、その時々の社会情勢に合わせて、行政により規制が行われてきました。そういった中で、2009年に消費者庁が設立され、食品表示行政を一元的に担うこととなりました。
それを契機として、それまで別々の省庁で所管されていた食品衛生法、JAS法、健康増進法の3つの法律のうち、食品表示に関する分野を一元化した食品表示法が制定され、2015年4月1日から施行されました。これに合わせて関連法が快晴されるととともに、表示の具体的なルールを定めた食品表示基準が制定されました。
食品表示基準については、2017年9月に原料原産地表示に関する大きなルール変更が行われています。2019年4月には、遺伝子組換え食品の表示ルールに関して快晴が行われ、2023年4月に施行されます。
また2018年12月には、食品表示法そのものが改正され、食品関連事業者が食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収を行う場合、行政期間への届出が義務付けられました。
このように食品表示については、今後も改正などが予想されますので、その都度、事業者や消費者はそれらの同行について注視することが必要です。
※届出対象となる食品表示基準違反:アレルゲン、消費期限などの欠落や誤表示
1−2 食品表示に関する法律
①1つの商品の表示には、複数の法律が関係している
食品表示に関する法律は、中心となる「食品表示法」の他に「食品衛生法(保存方法の基準等)」「JAS法(有機食品の表示」「牛トレーサビリティ法(牛肉の表示)」「酒類業組合法(酒類の表示)」「健康増進法(特別用途食品の表示)」「景品表示法(虚偽・誇大な表示の禁止)」「計量法(内容量の表示)」「医薬品医療機器等法(医薬品等との誤認防止)」「資源有効利用促進法(リサイクルのための識別マーク表示)」等が関係しており、食品関連事業者は、これら全ての法令に適合するように表示しなくてはなりません。
食品には、みやすい箇所に複数の法律に基づきまとめた表示をします。図表1で具体的に事例をみてみましょう。
このように1つの商品の表示には複数の法律が関わっており、それらをすべて満たすように表示します。
2食品表示に関わる主な法律
食品表示に関わる主な法律とその概略は、以下の通りです。
●食品表示法(消費者庁)
目的:食品を摂取する際の安全性の確保及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保を鑑み、販売の用に供する食品に関する表示の適性を確保する。
対象:食品
食品衛生法に規定する添加物や酒税法に規定する酒類も含む全ての飲食物。ただし、医薬品医療機器等法に規定する医薬品及び医薬部外品は覗く。
<表示義務事項>
名称・原材料・添加物・アレルゲン・原料原産地名・保存の方法・消費・消費期限・食品関連事業者・栄養成分の量および熱量・原産地・遺伝子組換えに関する事項 等
●食品衛生法(厚生労働省)
目的:飲食に起因する衛生上の危害の派生を防止し、もって国民の健康の保護を図ること。
食品表示とのかかわり:添加物の承認、一部の食品の保存方法 等
●JAS法<正式名称:日本農林規格等に関する法律>(農林水産省)
目的:農林水産分野において、適性かつ合理的な規格を制定し、適正な承認及び試験などの実施を確保することにより、産業の発展と消費者利益の保護に寄与する。
食品表示とのかかわり:有機食品の表示、およびJASマーク(任意表示)の表示について
対象:有機JAS企画を遵守して生産されたことを表示する農畜産物及びその加工品。また各種JAS企画に適合した商品であることを表示する農畜水産物および加工食品
<表示事項>
農産物及び農産物加工食品に有機食品であることを表示する場合は、認証を受けた上で有機JASマークを表示しなければならない。そのほかのJAS規格に適合していることを表示すること自体は事業者の任意であるが、表示する場合はルールに従って表示する。
●資源有効利用促進法<正式名称:資源の有効な利用の促進に関する法律>(経済産業省)
目的:廃棄物の発生抑制、再利用、再資源化のための対策を行い、循環型経済システムの構築を目指す。
食品表示とのかかわり:表示義務の対象となっている容器包装に分別回収を促進するための識別マークの表示を行う。
対象:スチールやアルミニウム製の飲料缶、飲料・酒類・特定調味料用のペットボトル、プラスチック製容器包装、紙製容器包装
条例・ガイドライン
法律のほかにも、地方自治体が定めた「条例」、国や地方自治体が定めた「ガイドライン」や地方公共団体の条例等で規定された基準に基づく地域特産品認証制度(3Eマーク制度)、景品表示法に基づいて各業界が自主的に設定している公正競争規約などがあります。
公正競争規約は、各業界団体に加盟している企業が遵守するために定められたものです。ガイドラインや構成競争規約には、法的強制力はありませんが、消費者に正しくわかりやすい情報を伝えるための大切なルールです。
1−3 食品表示法に基づく食品表示基準
①食品表示基準の概要
食品表示には、様々な法令が関係していますが、中心となるのは、食品表示法です。食品表示法の食品とは、すべての飲食物(医薬品医療機器等法に規定する医薬品および医薬部外品は除く。)をいい、食品衛生法に規定する添加物や酒税法に規定する酒類も含まれます。したがって酒類を含む飲食物に関わる食品関連事業者は、食品表示法に基づいて表示をすることが義務付けられています。
この食品表示法に基づいて、具体的な食品表示の内容を定めているのが、食品表示基準です。食品表示基準は、食品を「加工食品」、「生鮮食品」および「添加物」に区分し、販売者を一般消費者向けの食品を扱う食品関連事業者、業務用食品を扱う食品関連事業者および食品関連事業者以外の販売者の3つに区分して、それぞれの表示を規定しています。
また食品関連事業者以外の販売者はとは、小学校のバザーで袋詰めのクッキーを販売する保護者、町内会の祭りで瓶詰めの手作りジャムを販売する町内会の役員等を指します。この場合も、体や生命に重大な気概を与えるおそれがあるアレルゲン、期限表示、加熱の必要性などについては、表示の義務があります。
※添加物そのものを販売する場合にも表示が必要となります。
②加工食品、生成食品及び添加物の区分
食品表示基準において、加工食品の定義は「製造または加工された食品」とされています。調味や加熱等の処理をしたものが該当します。このうち、「業務用加工食品」は加工食品のうち、消費者に販売される形態となっているもの以外のものをいいます。
一方、生鮮食品の定義は、「加工食品及び添加物以外の食品」とされています。単に水洗いや切断、冷凍などの処理をしたものが該当します。このうち、業務用生鮮食品は、生鮮食品のうち、加工食品の原料となるものをいいます。また添加物は、食品衛生法で定められているものを、業務用添加物は、商品者に販売される携帯となっているもの以外のものをいいます。
※業務用として容器包装された業務用加工食品でもそのまま一般消費者に販売する場合は、一般用加工食品としての表示が必要です。
図表2食品表示基準における製造、加工、調整、選別の定義
用語 | 定義 | 具体的な行為の例 |
製造 | その原料として使用したものとは本質的に異なるものを作り出すこと。 | 食肉からハムを製造する。 |
加工 | あるものを材料としてその本質は保持させつつ、新しい属性を付加すること。 | 加工食品のハムをスライスする。異なる種類の生鮮食品を混同する。 |
調整 | 一定の作為は加えるが、加工には至らないもの。 | 収穫後の作業の一環として行われる大豆の乾燥行為 |
選別 | 一定の基準によって仕分け、分類すること。 | 一定の基準によって分別するりんごのサイズ分け |
図表3 食品表示基準において、加工食品・生鮮食品それぞれに該当する例
③食品表示の対象
ある食品が食品表示基準の適用の対象になるかどうかは、その食品が生鮮食品であるか、加工食品であるか、一般消費者に販売されるものか、業務用か、食品がどこで製造されたのか、あらかじめ容器包装に入れられているか、バラ売りか、量り売り等であるかによって異なります。
なお、ここでの容器包装に入れられたとは、容器に入れたまたは包装されたものを指します。ネットなどによる包装、袋を輪ゴムやホチキスで止めたものも含み、そのままの状態で客に引き渡せるものであれば容器包装されたものとみなされます。
※計量法における密封の考え方については、3−6を参照
食品表示基準で食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項として、食品表示基準で定めているのは、消費期限や保存の方法、生食用であるかどうかの別、アレルゲンを含旨、飲食に際して加熱を要するかどうかなどです。
生産場所の直売所などで容器包装した生鮮食品を販売する場合、原産地は表示しなくても消費者は理解できるし、養殖かどうかの情報もその場で販売員に聞くことができるので表示の必要はありません。ただし、その生鮮食品が生食用であるかどうかや、保存温度や消費期限などの事項は表示が必要です。
同様に店内の厨房で製造した惣菜を容器包装して販売する場合、原材料については店員に尋ねることができるので表示の必要はありません。ただし、その加工食品にアレルゲンが含まれているかどうか、また期限表示や保存の方法、飲食に供する際に加熱を要するかどうかなどの安全に関わる事項は表示が必要です。
なお、食品関連事業者などが、加工食品または生鮮食品を、設備を設けて飲食させる場合には、食品表示基準は適用されません。加工食品または、生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合とは、具体的にはレストラン、食堂、喫茶店等の外食事業者による食品の提供を指します。。
これらの概要をまたおめたものが図表4、図表5です。
なお、業務用の食品については、最終的に消費者に必要な情報が提供できるよう、それぞれ必要な事項が定められています。
図表4 生鮮食品の販売形態ごとの適用範囲の原則(一般消費者向け販売)
図表5 加工食品の販売形態ごとの適用範囲の原則(一般消費者向け販売)
生食用の牛肉については、過去に食中毒による死亡事故が発生したことを景気に表示のルールが定められ、食品表示基準においても、牛肉の生食には食中毒のリスクがある旨、特に子供、高齢者その他食中毒に対する抵抗力の弱い方は生食を控えるべき旨の注意喚起表示が義務付けられています。これは、容器包装への表示だけでなく、外食店に置いても店頭などで表示することが必要です。
1−4食品が食卓に届くまで
①食品の流通経路
食品が消費者に届くまでの流通経路は、産業や交通の発達とともに変化してきました。ここでは農産物を例に、現在の流通経路を見てみましょう。以前は周辺の地域で生産されたものが消費される地産地消が主流でしたが、輸送システムや保存方法の発達により、広く国内、国外から商品が集められるようになったため、消費者は多種多様な農産物を一年中食べることができるようになりました。
図表1 生鮮食料品等の主要な流通経路
①卸売市場
卸売市場は、円滑な流通を確保するために、卸売市場法に基づき設置されています。卸売市場は、主に生鮮食料品を国民に円滑かつ安定的に供給するための基幹的なインフラとして、多種で大量な物品を効率的かつ継続的に集分荷し、公正で統制性の高い価格形成等を行う重要な機能を有しています。
卸売市場では、卸売業者が産地の出荷者から多種多様な生鮮食品を集荷し、市場内の卸売場で、仲買業者や売買参加者(商品を受けた大口の購入者)に競売り、入札などの方法で販売します。食品製造業者や外食事業者、小売業者の多くが、この仲買人から生鮮食品を入手しています。
農林水産省の報告書では、成果物の6割程度、水産物の5割強が卸売市場を経由しています。
②市場外流通
卸売市場を通らない流通は、市場外流通と呼ばれ、年々増加傾向にあります。近年では生産者と食品製造業者や外食事業者、大口の小売業者が契約を結んで、直接の取引をするケースも増えています。
市場外流通には、この他にも様々な取引ルートがありますが、消費者に直接販売する形態としては青空市場や農産物直売所、道の駅での販売などがあります。インターネットの普及で農家自らがホームページを解説して通信販売している例も多くなっています。
③輸入食品の流通
2018年度の日本の食料自給率は、カロリーベースで37%となっており、いまや輸入食品無くして私たちの食生活は成り立たないといえます。食品を輸入するものは、まず輸入した空港や港を管轄する厚生労働省の検疫所に食品等輸入届出書を提出します。これについて検疫所の食品衛生監視員が食品衛生法に基づく適法な食品等であるかどうか審査します。
初めて輸入される食品等や書類審査で検疫が必要と判断された場合には、検疫所が命令検査や行政検査を実施し、その結果、不合格となった場合は、輸出国への摘み戻しや廃棄の措置が取られます。審査や検査の結果、適法と判断された食品は、通関の手続きをへて、国内市場に流通することになります。
②業者間取引における表示の義務付け
卸売業者から食品製造業者への販売のような、販売先が消費者ではない取引を業者間取引といいます。この業者間で取引されている食品が、業務用食品です。食品表示基準では、消費者に販売される携帯となっているもの以外の加工食品、添加物、そして加工食品の原材料となる生鮮食品を業務用食品と定義しています。
業務用生鮮食品の具体例としては、レストランに納品される牛肉、水産加工場に納品されるアジなどがあります。業務用加工食品の具体例としては、食品工場に納品される味噌やしょうゆ、弁当店に納品される惣菜などがあります。これらの業務用の生鮮食品ならびに加工食品は、容器包装に入れずに、かつ、外食店やインストア加工用に納品する場合を除き、食品表示基準の義務表示対象となります。
なお、業務用として容器包装された加工食品を業務用スーパー等で消費者にそのまま販売する場合は、一般用加工食品としての表示が必要です。生鮮食品として消費者に販売する可能性のある業務用生鮮食品は、一般生鮮食品としての表示が必要です。
食品表示基準では業務用の生鮮食品並びに加工食品について、消費者が食品を摂取する際の安全性に関する情報(期限表示や保存方法、アレルゲン等)の表示が義務付けられています。また消費者の選択の機会確保に資する情報として、原料原産地表示が全ての一般用加工食品に義務化されたことに伴い、業務用生鮮食品の原産地や、業務用加工食品が生産された場所についての表示が必要な場合が出てきました。
業務用添加物についても、アレルゲンや、使用方法などの表示が義務付けられています。
これらの食品の表示の媒体としては、例外的に送り状、納品書または規格書への記載を求めている食品もありますが、食品を摂取する際の安全性に関する情報の表示については、原則として、一般消費者向け食品と同様、容器包装のみやすい場所に表示しなければならないこととされています。
1−5、食品情報を追跡するには
①トレーサビリティとは
トレーサビリティとは、trace(追跡) とability(可能性、能力)の2つの単語を組み合わせた言葉で、直訳すると、「追跡可能性」つまり食品の移動の履歴を把握する可能性や能力を意味しています。
農林水産省では、国際的な定義を採用し、「生産、加工及び流通の特定の1つ又は複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること。としています。具体的には、食品の取扱の記録を残すことにより、食品の移動を把握できるようにする仕組みのことです。このため、生産・流通・小売の各段階で、いつ、どこから、どこへ、誰が、何を、どれだけと行った入出荷の情報をここに記録しておきます。
②トレーサビリティの意義
トレーサビリティが確立していれば、食品の安全性に関わる事故や不適合が発生した際に、以下の対応が可能になります。
①対象商品を特定した迅速な対応
②問題の発生箇所の速やかな特定
③不適合食品の絞り込みや性格で迅速な撤去回収
④事業者の責任の明確化
これらの対応が可能になることで、原因の究明を容易にし、事業者の責任も明確になり、リスク管理手法として確立することができます。
また、食品の流通経路の透明性を確保し、表示の正しさを検証できるようになるだけでなく、消費者と取引先、国及び地方公共団体への迅速かつ積極的な情報提供を行うこともできます。これらによって、誤った表示や情報を排除しやすくし、取引の公正化にも寄与します。
③トレーサビリティの例
食品トレーサビリティに関して、我が国で法律が制定されているのは、牛トレーサビリティ法および米トレーサビリティ法です。
図表2 牛のトレーサビリティシステム
2001年の国内でのBSE(牛海綿状脳症)発生を契機として、牛トレーサビリティ法が制定され、国内で飼育される全ての牛に10桁の個体識別番号を付与し、これを一元的に管理することにより、生産・流通の各段階において性格に情報を伝達することが可能となりました。
これにより、消費者は、「独立行政法人家畜改良センターのホームページにアクセスし、牛肉に表示(あるいは店頭に提示)されている個体識別番号を入力すれば、その牛肉の生産履歴情報を確認することができるようになりました。
図表3 米トレーサビリティ法の概要
また、2009年に制定された米トレーサビリティ法は、生産から小売販売や外食産業における食事の提供までの各段階を通じ、米穀事業者に米穀等の取引記録を作成・保存することを義務付けられたものです。対象となるのは玄米や精米だけでなく、米菓や清酒等の米から作られた加工食品を含み、弁当の米飯やレストランで提供されるピラフなどの米飯類も対象です。
<対象事業者>
米穀事業者(米穀等の販売、輸入、加工、製造又は提供の事業を行う者をいい、生産者も含みます。)
<対象品目(指定米穀等)>
①もみ、玄米、精米等
②米粉、米穀を挽き割りしたもの、ミール、米粉調製品、米菓生地、米こうじ等
③弁当、おにぎり、米飯を調理したもの、発芽玄米、乾燥米飯等の米飯類(冷凍、レトルト、缶詰類を含む。)等
④もち、だんご、米菓、清酒、単式蒸留焼酎、みりん
<取引などの記録事項>
品名、産地、数量、搬出入の年月日、取引先名、搬出入の場所等を記録します。
<保存期間>
取引などの記録の保存期間は、紙媒体又は電子媒体で原則3年です。
同時に消費者に米の産地情報を伝達することが義務付けられました。ただし食品表示基準で従来、原産地表示が必要な玄米や精米に関しては、食品表示基準にしたがって表示することで、米の産地情報が消費者に伝達されたことになります。
なお、2017年に食品表示基準が改正され、原則として、全ての一般用加工食品の重量割合第1位の原材料に原料原産地名の表示が義務付けられました。その中で米トレーサビリティ法によって米の産地情報を消費者に伝達すべき食品については、米トレーサビリティ法が優先され、食品表示基準の新しいルールの対象外となることが明記されています。
ただし、以前から原料原産地表示が必要であった「もち」については、原材料のうち50%以上を占める米穀は食品表示基準で、それ以下の割合の米粉などは、米トレーサビリティ法で米の産地情報を伝達します。
伝達の方法として、小売店では、米穀の加工品等の容器包装もしくは店内の立て札などにコメの原産地を表示する、あるいはコメの産地についての問い合わせ先の電話番号やウェブサイトのアドレスを表示する等の方法で消費者に伝達します。外食産業などにおいては、米飯類のみ米の産地情報の伝達が必要で、メニューや店頭に産地情報を提示する、店員による口頭での説明等の方法により行うことができます。
総額表示について
「総額表示」とは、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者が、値札やチラシなどにおいて価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含む。)を含めた価格を表示することをいいます。
これは、消費税が導入された際、「税抜価格表示」では消費者にとって最終的な支払額がわかりにくく。また、税抜価格、税込価格が、混在していると、価格の比較がしづらいといった状況が生じたために講じられた対策です。このような理由から、事業者間の取引については総額表示制度の対象ではありません。
具体的には、次に掲げるような表示が「総額表示」に該当します。
税率10%の例
110円、110円(税込)
110円(税抜価格100円)・110円(うち消費税額等10円)
110円(税抜き価格100円、消費税額等10円)0
ポイントとしては、支払い総額である110円さえ表示されてればよく、消費税額等や税抜き価格が表示されていても構いません。例えば100円(税込み110円)という表示も、消費税額を含んだ価格が明確に表示されているため、総額表示に該当します。
一方で、消費税率の引き上げがあると、事業者には大きな事務負担となります。このため特例として2013年10月1日から現に表示する価格が税込み価格であると誤認されないための措置を講じていれば、税込み価格を表示しなくてもよいとされています。ただし、これはあくまでの期間限定の対応で2019年10月時点では、適用期限は2021年3月31日までとされています。それ以降は総額表示が必要となるため、注意が必要です。
第二章 生鮮食品の表示
2−1 生鮮食品の表示の基本
①生鮮食品とは
食品表示基準において、生鮮食品は、加工食品および添加物以外の食品と定義されています。農産物、畜産物、水産物のように、私たちの食生活に身近な一次産品は、この生鮮食品に該当します。
図表1 生鮮食品に該当する主な食品
単品の食品を単に切断したもの、単に食品を冷凍したもの、同一の種類の食品で部位の違うものを盛り合わせたものなどは生鮮食品に該当し、複数の食品を切断し、混ぜ合わせたものや、複数の種類の食品を盛り合わせたものは加工食品に該当します。
②生鮮食品の表示事項
食品表示基準では、一般消費者向けに販売される全ての生鮮食品に義務付けられた横断的義務表示事項と、特定の品目に義務付けられた個別的義務表示事項があります。生鮮食品に該当する物でも、処理することにより食品衛生上の危害発生の恐れがあるもの、食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項があるものについては、食品に応じて必要な表示が義務付けられています。
表示義務者は、生産者、卸売業者、輸入者、小売業者等、販売に到までのすべての関係者です。横断的義務表示事項は次の①から③の通りです。
①名称
その食品の内容を表す一般的な名称を表示します。内容を的確に表現していれば、標準和名等で表示することができます。また、地域特有の名称がある場合、その名称が一般的に理解されると考えられる地域であれば、地域特有の名称を表示することができます。
標準和名とは、生物の種の学名と一対一となるように調整した和名のことをいいます。国内で統一されているため、図鑑等において使われています。
②原産地
農産物はその土地で収穫される、畜産物は、生まれた場所、飼養された場所と、畜された場所がそれぞれ異なる場合がある、水産物は特定の水域で漁獲されるといったように、それぞれ生産の実態が異なることから、原産地の記載方法を一律に定めることが困難です。そのため、それぞれに即した原産地の表示法が規定されています。原産地は、次ページ図表2のルールに基づいて表示します。
同じ種類の生鮮食品で複数の原産地のものを金剛した場合は、その製品に占める重量の割合の高いものから順に原産地を表示します。
異なる種類の生鮮食品で複数の原産地のものを詰め合わせた場合は、該当する生鮮食品の名称に原産地を併記します。
③その他の表示事項
「名称」と「原産地」のほかに放射線を照射した食品の場合は、放射線照射に関する事項、特定保健用食品の場合は、「特定保健用食品に関するう事項」、遺伝子組み換え食品の表示の対象農産物の場合は、「遺伝子組み換え農産物に関する事項」、乳児用企画適用食品の場合は、「乳児用企画適用食品である旨」、特定商品の販売に係る計量に関する政令に規定する「特定商品」であって、密封されたものは、内容量、及び食品関連事業者の氏名又は名称及び住所を表示します。
3 表示方法
容器包装に入れられた生鮮食品には、容器包装を開かなくても表示内容を容易に見ることができるよう容器包装の見やすい箇所に、邦文で8ポイント以上(表示可能面積が概ね150センチメートル平方以下のものは5.5ポイント以上)の大きさの文字を飼養して表示します。
ただし、「名称」(一部の食品を除く。)、「原産地」、個別的義務表示事項である「栽培方法」「解凍した旨」および「養殖された旨」の表示は、生鮮食品に近接した掲示物その他見やすい場所に立て札やポップ等で表示することができます。
バラ売り、量り売り等容器包装されない生鮮食品は、名称、原産地、栽培方法、解凍した旨、および養殖された旨を近接した掲示物その他見やすい場所に表示します。
2−2−1 農産物 野菜
1 表示事項
①名称
名称は、きゅうり、白菜、トマト等と、一般的な名称で表示します。品種名やその名称が一般に理解されると考えられる地域であれば地域特有の名称で表示することもできます。
品種名の例:桃太郎、男爵、メークイン
地域特有の名称の例:とうきび(とうもろこしの地域特有の名称)等
②原産地
国産品は、農産物が収穫された都道府県名(長野県、北海道等)を表示します。また、市町村名のほか、一般に知られている地名で表示することもできます。一般に知られている地名とは、次の例のようなものです。
郡名→秩父郡
旧国名→土佐
旧国名の別称→信州、甲州
輸入品は、原産国名を表示します。また一般に知られている地名として、アメリカの州名(カリフォルニア、フロリダ等)や中国の省名(山東省、福建省等)を表示することもできます。
③栽培方法
生しいたけには、名称、原産地のほかに栽培方法を表示します。栽培方法には、原木栽培、菌床栽培の2種類があります。
また原木栽培と菌床栽培のしいたけを混合した場合は、重量の割合の高い順に、原木・菌床、又は菌床、原木と表示します。
Q:どうして栽培方法が表示されているのですか?
A:しいたけの栽培では、原木栽培がよく知られていますが、菌床栽培の場合、屋内で水分・温度管理をすることにより、計画的な出荷ができることから、菌床による栽培が多く行われています。栽培方法の違いにより品質が異なることから、消費者の商品選択に役立てるため、栽培方法の表示が義務付けられています。
②カット野菜の表示
1種類の野菜をカットしたカットキャベツのような商品は、生鮮食品に該当し、名称と原産地を表示します。一方、サラダセット(レタスとキャベツの混合品)やきんぴらセット、(ごぼうとにんじんの混合物)のように、種類の異なる野菜をカットして混ぜ合わせた商品は、加工食品に該当し、加工食品に規定されている表示をします。その場合、重量割合第一位の野菜の産地を原料原産地として表示します。
2−2−2 農産物 果物
①名称
名称は、バナナ、かき、ぶどう等と一般的な名称で表示します。また品種名などで表示することもできます。
品種名の例:ふじ、富有
②原産地
野菜の場合と同様のルールで表示します。
<詰め合わせ果物の表示例>
贈答品として多く販売されている複数の種類の果物を詰め合わせた製品の場合、果物の名称に原産地を併記します。
りんご(青森県)、なし(鳥取県)、パパイヤ(フィリピン)等。
③防カビ剤
バナナ、キウイー、西洋なし、かんきつ類、アボカド、パイナップルなどの果物の一部やばれいしょには、カビの発生を防ぐため、防カビ剤が使用されている場合があります。食品衛生法に置いては、添加物として、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、フルジオキソニル等の防カビ剤の使用が認められています。
これらを使用した果物を容器包装に入れて販売する場合は、容器包装に防カビ剤(イマザリル)等と用途名を併記して添加物を使用していることを表示します。
なお、容器包装に入れられたものが表示の対象ですが、小売店でバラ売りされる場合に置いても、消費者への情報提供として、値札・品札や陳列棚などに、わかりやすく表示することが指導されています。
2 カットフルーツについて
1種類の果物をカットして包装した商品は、生鮮食品に該当し、名称と原産地を表示します。一方、カットフルーツの盛り合わせ(メロンとすいかの混合品、パイナップルとキウイの混合等)のように、種類の異なる果物をカットして混ぜ合わせた商品は、加工食品に該当し、加工食品に規定されている事を表示します。その場合、重量割合が第一位の果物の産地を原料原産地として表示します。
生鮮食品と添加物
生鮮食品には、使用基準の範囲内で保存料、酸化防止剤、殺菌剤といった添加物を使用することが認められています。これらの添加物を使用した場合、食肉や鶏卵、生食用の鮮魚貝類など一部の生鮮食品に関しては表示が義務付けられており、義務付けられていない生鮮食品に置いても、添加物を使用しているのであれば表示することが望ましいとされています。
なお、食品の品質・鮮度等について消費者の判断を誤らせるおそれのある添加物の使用は、たとえ添加物としての使用基準に反しないものであっても使用しないようにとの指導がなされています。
2−2ー3 農産物 玄米・精米(袋詰めされているもの)
<単一原料米の表示例>
単一原料米とは、「産地、品種および産年か同一である原料玄米で、農産物検査法による証明を受けているものをいいます。
<複数原料米の表示例>
複数原料米とは、単一原料米以外のものをいいます。
1 表示事項
①名称
玄米、もち精米、うるち精米(又は精米)、胚芽精米の中から、その内容を表す名称を表示します。
②原料玄米
【単一原料米の場合】
単一原料米であることのほか、原料玄米の産地、品種、産年を表示します。これらの表示ができるのは、国産品は農産物検査法による証明を受けたもの、また、輸入品は、輸出国の公的機関などによる証明を受けたものに限られています。
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